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外伝 イズミルと後宮の隠し部屋
挿話 優しいグレアム君
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「イズミルはジルトニアの公女だったのだな。曽祖父殿はかの高名なバニシアム大公だ」
「はい。そうなのです。わたくしは残念ながらひぃお祖父様にお会いした事はないのですが」
「そうか。俺は肖像画は拝見した事があるぞ」
「そうなのですね。お髭が立派でしたでしょう?」
「真っ白でたっぷりしたお髭が格好いいな!俺も大人になったら髭を生やすぞ!」
「まぁお髭を?きっととてもお似合いになるでしょうね」
「大人の俺は髭を生やしていたか?」
「いいえ。グレアム様はいつも綺麗にお髭を剃られておられましたわ」
「そうか。イズミルは髭を生やした俺と生やしていない俺と、どちらが好きだ?」
「そうですわね……間違いなくどちらのグレアム様も好ましく感じると思いますわ」
「イズミルは本当に俺のことが好きなのだな!」
「はいグレアム様。わたくしは貴方の事が大好きです」
「俺もイズミルが大好きだ!」
「ふふふ」
こんな微笑ましい会話をしたばかりの次の日……
前日の勢いとは打って変わって、チビグレアムはしょんぼりと元気なくイズミルの居室へとやって来た。
「すまなかった…イズミル……」
あまりの凹み様にイズミルは何事かと驚く。
「どうされました?お元気がないようですが、何故わたくしに謝罪を?」
俯いていたチビグレアムはちらりとイズミルを見遣り、言い辛そうにしながら言った。
「……ジルトニアが……ハイラントの属州になっている事をランスに聞いた……知らなかった事とはいえ、無神経なを事を言って悪かった……」
十年前に内乱により国が滅亡した事を、八歳時の記憶しかないチビグレアムが知らないのは当然だ。
「そんな、お気になさらないでくださいませ」
「でも……そなたの家族がその内乱で……それなのに、ごめん、イズミル……」
「グレアム様……」
この人は……幼い頃から優しい方だったのだなとイズミルは思った。
と、同時にチビグレアムの子ども特有のふっくらした頬が俯くと少しだけ下膨れるのが可愛くてたまらない。
イズミルの胸に愛しさが込み上げる。
「大丈夫ですわ。家族の仇は、他ならぬグレアム様がお取りになって下さったのですから!」
それを聞き、チビグレアムはぱっと驚いたように顔を上げた。
「お、俺がかっ?」
「ええそうです。グレアム様のお力を以て内乱の首謀者と簒奪者を捕え、正当に裁いて下さいました。それどころではありません、祖国ジルトニアの民を救い、属州となった後は常に安寧に暮らせるように守って下さっているのですから!」
自分の功績ではないが、イズミルは誇らしげに本人の前で告げた。
「そ、そうか!俺がイズミルの無念を晴らしたのだな!」
「さようでございます。わたくしはグレアム様に感謝しても感謝してもしきれないほどの恩義を感じているのですわ」
「夫として当然の事をしたまでだ!」
「……!」
その言葉を聞き、イズミルは小さく息を呑んだ。
あの当時の、かつてのグレアムもそう言ってくれたのだ。
やはり、グレアムはグレアムだ。
イズミルはそう思った。
「……わたくしは、本当によい旦那様と結ばれる事が出来て幸せです」
「そうか!イズミルがそう思ってくれて良かった!」
「ふふ。グレアム様……」
イズミルはふいにグレアムの前で屈み、その額にキスをした。
「!!」
チビグレアムが額を抑えて顔を赤らめる。
「親愛の証ですわ」
「ふ、ふ、夫婦であれば…と、当然の行いだなっ!」
まるで自分に言い聞かせるように言うグレアムがこれまた可愛いと思うイズミルであった。
その後は二人でお茶をしながら、イズミルは祖国ジルトニアの話などをグレアムに語って聞かせた。
もちろん、口の周りにケーキのクリームを付けたグレアム君のお口をハンカチで拭ってあげるまでが、このところの夫婦のティータイムのお決まりである。
「はい。そうなのです。わたくしは残念ながらひぃお祖父様にお会いした事はないのですが」
「そうか。俺は肖像画は拝見した事があるぞ」
「そうなのですね。お髭が立派でしたでしょう?」
「真っ白でたっぷりしたお髭が格好いいな!俺も大人になったら髭を生やすぞ!」
「まぁお髭を?きっととてもお似合いになるでしょうね」
「大人の俺は髭を生やしていたか?」
「いいえ。グレアム様はいつも綺麗にお髭を剃られておられましたわ」
「そうか。イズミルは髭を生やした俺と生やしていない俺と、どちらが好きだ?」
「そうですわね……間違いなくどちらのグレアム様も好ましく感じると思いますわ」
「イズミルは本当に俺のことが好きなのだな!」
「はいグレアム様。わたくしは貴方の事が大好きです」
「俺もイズミルが大好きだ!」
「ふふふ」
こんな微笑ましい会話をしたばかりの次の日……
前日の勢いとは打って変わって、チビグレアムはしょんぼりと元気なくイズミルの居室へとやって来た。
「すまなかった…イズミル……」
あまりの凹み様にイズミルは何事かと驚く。
「どうされました?お元気がないようですが、何故わたくしに謝罪を?」
俯いていたチビグレアムはちらりとイズミルを見遣り、言い辛そうにしながら言った。
「……ジルトニアが……ハイラントの属州になっている事をランスに聞いた……知らなかった事とはいえ、無神経なを事を言って悪かった……」
十年前に内乱により国が滅亡した事を、八歳時の記憶しかないチビグレアムが知らないのは当然だ。
「そんな、お気になさらないでくださいませ」
「でも……そなたの家族がその内乱で……それなのに、ごめん、イズミル……」
「グレアム様……」
この人は……幼い頃から優しい方だったのだなとイズミルは思った。
と、同時にチビグレアムの子ども特有のふっくらした頬が俯くと少しだけ下膨れるのが可愛くてたまらない。
イズミルの胸に愛しさが込み上げる。
「大丈夫ですわ。家族の仇は、他ならぬグレアム様がお取りになって下さったのですから!」
それを聞き、チビグレアムはぱっと驚いたように顔を上げた。
「お、俺がかっ?」
「ええそうです。グレアム様のお力を以て内乱の首謀者と簒奪者を捕え、正当に裁いて下さいました。それどころではありません、祖国ジルトニアの民を救い、属州となった後は常に安寧に暮らせるように守って下さっているのですから!」
自分の功績ではないが、イズミルは誇らしげに本人の前で告げた。
「そ、そうか!俺がイズミルの無念を晴らしたのだな!」
「さようでございます。わたくしはグレアム様に感謝しても感謝してもしきれないほどの恩義を感じているのですわ」
「夫として当然の事をしたまでだ!」
「……!」
その言葉を聞き、イズミルは小さく息を呑んだ。
あの当時の、かつてのグレアムもそう言ってくれたのだ。
やはり、グレアムはグレアムだ。
イズミルはそう思った。
「……わたくしは、本当によい旦那様と結ばれる事が出来て幸せです」
「そうか!イズミルがそう思ってくれて良かった!」
「ふふ。グレアム様……」
イズミルはふいにグレアムの前で屈み、その額にキスをした。
「!!」
チビグレアムが額を抑えて顔を赤らめる。
「親愛の証ですわ」
「ふ、ふ、夫婦であれば…と、当然の行いだなっ!」
まるで自分に言い聞かせるように言うグレアムがこれまた可愛いと思うイズミルであった。
その後は二人でお茶をしながら、イズミルは祖国ジルトニアの話などをグレアムに語って聞かせた。
もちろん、口の周りにケーキのクリームを付けたグレアム君のお口をハンカチで拭ってあげるまでが、このところの夫婦のティータイムのお決まりである。
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