【完結】王配に選ばれなかった男の妻となった私のお話

キムラましゅろう

文字の大きさ
13 / 26

崩御

しおりを挟む
ハリエットとルキウスの結婚生活は表面上、とても穏やかで順調であった。

……それは偏に、恐妻家であるルキウスの涙ぐましい努力のもとにおいて。

『やぁハリエットっ……キミも食事の間に行くの?』

『えぇ。だってお夕食の時間だもの』

『奇遇だね、僕も今から行こうと思っていたんだ……!』

『?……そうでしょうね』

『せっかく会えたんだから食事の間までエスコートするよっ……』

『?自分のいえのいつもの食事にわざわざ?』

『お、夫として当然の事をするだけさ』

『そうなの?じゃあ……お願いするわ』

『よ、喜んでっ……!』

と、互いの執務も(すでに執務室は分けている)あり、毎回ではないが時折待ち伏せでもされていたのか?と思うタイミングで邸の中の移動にエスコートされたり、
またある日は……

『ハ、ハリエットっ……こんな重い物を運ぶときは誰かに申し付ければっ……もしくは僕を呼んでくれたら代わりに持つのに……!』

『重い物って……たかだか大判の貴族名鑑じゃない』

『キミの小さな手では持ち辛いだろう?』

『そうでもないけど』

『とにかくこれは僕が持つよ、キミの執務室に運べばいい……?』

『ええ……じゃあお願いするわ?』

『う、うんっ……任せて!』

と、あたかも重大な任務を引き受けたかのような緊張感をもって本を運んでくれたりと、まるで始終ハリエットの行動を見張っているかのようなタイミングで声を掛けてきて、夫としての務めを果たそうとする。

そしてそう、その夫の務め……この場合は“努め”であろうか、ルキウスの最大のである夜の営みの方も彼は下手すれば執拗しつこいくらいに励んでいるのだ。

王配候補としてフェミニズムを叩き込まれたルキウスは、まるでハリエットを愛しているかのように優しく甘く時に情熱的に彼女を抱く。
なんとまぁ責任感の強いことかと、翻弄されヘロヘロになったハリエットは毎回そう思うのだ。

一度引き受けたのであれば、ルキウスは何事においても真摯に取り組む性格である事は、結婚してから嫌というほど解った。
そんな性格だからこそ、覚悟の無いまま無責任に婚姻など結べないと固辞していたのだろう。

──でもそのおかげで、これならば早く子どもを授かるかもしれないわ。

夫婦となって三ヶ月。
婚約式での初顔合わせから数えれば半年間。
もうこれ以上、彼に感情を抱く前に早く当主夫妻の義務を果たしてしまいたい。
後継となる嫡子もしくは嫡女、そして言い方は悪いがスペアとなる第二子を儲ければもう閨を共にする必要はなくなる。

王宮で家族を悼む言葉をルキウスに告げられて以来、ハリエットの心には何かが芽生えていた。
その何かに名を付けるのをずっと避けてきたのだ。
だから早く、一日でも早く、その何かが名を持たぬままハリエットの胸の内に仕舞い込んでおける内に、彼と適切な距離を保つ夫婦となりたいと願っていた。

そんな日々を送る中、

ミラフィーナに玉座を渡し療養していた前国王の容態が突然急変し、みまかったのであった。

前国王崩御を告げる大聖堂の鐘の音が王都中に響き渡り、
社交シーズンがはじまるために滞在しているオーラウン伯爵家のタウンハウスにも聞こえてきた。





•*¨*•.¸¸☆*・゚•*¨*•.¸¸☆*・゚•*¨*•.¸¸☆



すみませぬ…明日の更新はお休みでござる…
るちあんはあるでござる…
申しわけサーセン(o_ _)oペコリン
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました

鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と 王女殿下の騎士  の話 短いので、サクッと読んでもらえると思います。 読みやすいように、3話に分けました。 毎日1回、予約投稿します。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

王太子殿下との思い出は、泡雪のように消えていく

木風
恋愛
王太子殿下の生誕を祝う夜会。 侯爵令嬢にとって、それは一生に一度の夢。 震える手で差し出された御手を取り、ほんの数分だけ踊った奇跡。 二度目に誘われたとき、心は淡い期待に揺れる。 けれど、その瞳は一度も自分を映さなかった。 殿下の視線の先にいるのは誰よりも美しい、公爵令嬢。 「ご一緒いただき感謝します。この後も楽しんで」 優しくも残酷なその言葉に、胸の奥で夢が泡雪のように消えていくのを感じた。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」「エブリスタ」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、雪乃さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎泡雪 / 木風 雪乃

冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様

さくたろう
恋愛
 役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。  ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。  恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。 ※小説家になろう様にも掲載しています いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。

「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました

唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」 不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。 どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。 私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。 「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。 身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。

だって悪女ですもの。

とうこ
恋愛
初恋を諦め、十六歳の若さで侯爵の後妻となったルイーズ。 幼馴染にはきつい言葉を投げつけられ、かれを好きな少女たちからは悪女と噂される。 だが四年後、ルイーズの里帰りと共に訪れる大きな転機。 彼女の選択は。 小説家になろう様にも掲載予定です。

マリアの幸せな結婚

月樹《つき》
恋愛
花屋の一人娘マリアとパン屋の次男のサルバトーレは子供の頃から仲良しの幼馴染で、将来はマリアの家にサルバトーレが婿に入ると思われていた。 週末は花屋『マルゲリータ』でマリアの父の手伝いをしていたサルバトーレは、お見舞いの花を届けに行った先で、男爵家の娘アンジェラに出会う。 病気がちであまり外出のできないアンジェラは、頻繁に花の注文をし、サルバトーレを呼び寄せた。 そのうちアンジェラはサルバトーレとの結婚を夢見るようになって…。 この作品は他サイトにも投稿しております。

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

処理中です...