2 / 7
リリーは玉砕した
しおりを挟む
「はじめましてリリー、ぼくはグレイン。
キミのこんやくしゃだよ」
わたし達が初めて顔を合わせたのはまだ互いの親が健在で、何の悲しみも知らない頃だった。
わたしが5歳で彼は6歳。
早すぎる婚約と思われるかもしれないが、貴族間ではよくある事だった。
宮廷貴族であるわたしの両親と、地方貴族のグレインのお父様とは古くからの友人で、互いに子どもが出来たら縁を結ぼうと予ねてより約束をしていたらしい。
そして都合よく両家に男児女児とそれぞれが誕生して、約束通り婚約を結んだのだった。
その2年後にグレインのお母さまが病気で亡くなり、そしてその3年後、わたしの両親が馬車の事故に巻き込まれ帰らぬ人となった。
他に身寄りもない同時10歳だったわたしは修道院に入り、そのまま婚約は解消されると思われた。
だけど前ライト伯爵であったグレインのお父様が、大切な親友の娘を修道院に送れる訳がない。リリーは息子の婚約者として、そして大切な家族の一員としてライト家へ迎え入れると仰り、わたしを引き取って下さったのだ。
おじ様はその言葉の通り、ライト家の二人のご令息と共にわたしを過不足なく育てて下さった。
ここでライト家の二人のご令息を紹介しよう。
まずはご長男であらせられるヘイワード様。
年はわたしよりも7歳年上で、とても穏やかでお優しい方だ。
文武両道というけとれど、どちらかというと“武”の方はイマイチで、だけど“文”の方にとても秀でた優秀なお方なのだ。
そしてわたしの婚約者である次男のグレイン。
ダークブラウンの髪にブルーアイズ。我が婚約者ながら惚れ惚れするほど顔が良い。
お兄様のヘイワード様が“文”に秀でたお方ならグレインは“武”にその才を持つ。
幼い頃から騎士になるという夢を持ち、暇さえあれば剣ばかり振っているような少年だった。
かといって粗雑で乱暴という事もなく、わりと人懐っこい優しい性格の持ち主で、婚約者であるわたしをいつも特別扱いしてくれた。
大らかで朗らかで懐深いおじ様を筆頭とするライト家の暮らしはとても居心地がよく、温かなものだった。
だけど数年後、またもや悲しい出来事が起こってしまう。
おじ様が……ライト伯爵が急な病に倒れ、看病虚しく天に召されてしまったのだ。
わたしが15歳、王都の騎士団で準騎士となったグレインが16歳の時だった。
爵位は当然嫡男であるヘイワード様が襲爵され、ライト伯爵となられた。
それと同時に婚約者であったジョゼット様と結婚されたのだ。
ジョゼット様は小柄で少しふくよかな愛らしい女性だ。
性格も明るくて笑い上戸、わたしは以前から彼女の事が大好きで、本当の姉のように慕っていた。
わたしはまだグレインとは結婚していないから正式な義姉妹ではないが、いずれそうなる事を互いに心から楽しみにしていた。
だけどグレインはまだ準騎士になったばかり。
このまま順調にいけばすぐに正騎士の試験にも合格するだろうから、結婚式はその後でという事になった。
「リリー待ってて。必ず立派な騎士となってリリーを迎えに来るから」
王都へ旅立つ日、グレインがわたしにそう言った。
「わかった。体にだけは気をつけて頑張って!でもグレイン、お手紙をいっぱい頂戴ね。わたしも沢山書くから」
騎士になるという彼の夢を全力で応援する気持ちは誰にも負けない自信はある。
それでもやっぱり離れ離れになるのは寂しくて、とても辛かった。
わたしの表情が曇ったのだろう、グレインはそっとわたしの手を掬い取り、そして指先にキスをした。
「!」
「俺もリリーと離れるのはとても寂しい。可愛いリリー、必ず手紙を書くよ。そして可能な限りは会いに来る。だからいい子で待ってて欲しい」
先ほどまでの曇り空から一転、急に陽光が差し込み快晴となったわたしの様子を見て、グレインは吹き出した。
そしてもう一度わたしの指先にキスを落とした。
約束通り、グレインはマメに手紙を送ってくれた。
それに併せて花やお菓子の贈り物も沢山送ってくれたのだ。
そしてまとまった休みが取れた時は例え一瞬しか領地に居られなくても、必ずわたしの顔を見に帰って来てくれた。
もちろんわたしも沢山手紙を出す。
いいお嫁さんになれるように花嫁修行を頑張っている事や、ヘイワード様とジョゼット様と毎日楽しく暮らしている事、そしてグレインが大好きで大好きでたまらない、グレインのお嫁さんになれる日が待ち遠しい……と。
今思えばなんて重くて暑苦しい圧力を掛ける女なんだと頭を抱えたくなるような事を書いていたのだった。
そしてグレインが領地を去って2年が経った頃、努力の甲斐あって彼は適性試験に合格し、晴れて正騎士となった。
しかも王宮騎士。
王太子殿下の目に留まり、殿下直属の護衛騎士となったのだ!
凄いわグレイン!
流石はわたしのグレイン!
と、そう呑気に思っていられたのは束の間だった。
王家専属の、しかも王太子殿下直属の護衛騎士の大変さをわたしは知らなかったし、ナメきっていた……。
準騎士時代とは打って変わってグレインは超多忙な人となってしまったのだ。
勤務体制や休日も不規則で、いつ何時でも有事に対応出来るようにしていなくてはならないらしい。
当然、手紙の回数は減り、休みがあったとしてもとても領地まで戻って来れるような感じでは無さそうだった。
それでもグレインが夢を叶えて頑張っているのだから、寂しいなどと我儘を言ってはいけない。
わたしももう18歳になったのだから、分別を弁えてじっと待つしかないと自分に言い聞かせていたのだ。
そしてそれからあっという間に一年が過ぎ、とうとう手紙も滅多に届かなくなってしまった。
届くのは届くのだ。
以前は週に1~2回だった手紙が月に一度くらいになってしまったけど。
でも内容が大いに変わってしまったような気がしていた。
前はわたしの事をいつも考えてるだとか、街で見かけた猫を見てわたしを思い出したとか、いつもわたしに会いたいと思ってくれているとか、ラブレターめいた内容だったのが、護衛騎士の仕事は大変だけどやり甲斐があるだとか、家族のみんなは元気か?だとか、寝る時は暖かくして寝るようにだとか、まるで親戚のオジさんのような内容になっていったのだ。
思えばその時から“兆し”はあったのだろう。
グレインの心からわたしが居なくなった兆しが……。
そしてその頃からある噂が、ヘイワード様の友人や領地の商人の口からわたしの耳に入るようになる。
グレインに王都で恋人が出来たらしいと。
「「「……………まさか~~!」」」
その噂を耳にして、わたしもヘイワード様もジョゼット様も最初は否定した。
だってグレインは自惚れではなくわたしを好きでいてくれている筈だし、そんな不誠実な事が出来る人ではない。
やはり単なる噂だとうという事になり、気にしない事にした。
しかしその後も噂はどんどん耳に入って来る。
「…………」
グレインを、彼を信じてる。
彼はそんな人じゃない、そう思っていても否が応でも入って来る噂話に、わたしの心は千々に乱れ始めた。
……………よし。
ウジウジ悶々としているのはわたしの性格に合わない。
それならばこの目で確かめてやろうじゃないの!
思い立ったら即行動しなければ気が済まない性質なので、わたしはその日すぐに王都へ向けて一人領地を飛び出した。
もちろんヘイワード様とジョゼット様には置き手紙を残した。
でも二人に何も言わずに王都へ向かったのだ。
だって反対されるのはわかっていたし、
王都までは道も整備され、治安部隊のお陰で女性一人での長距離馬車の移動も近頃では当たり前になって来ているくらいなので身の危険の心配もない。
だから強硬手段に出たわけなんだけど……
結果はご存知の通り、玉砕だった。
噂は真実だった。
ショックが大きすぎて、情けない事にグレインに問い正す事も、罵る事も殴る蹴るも出来なかったから玉砕とは言い難いかもしれないけど、わたしの心は粉々に打ち砕かれたのだから玉砕と言ってもいいだろう……。
とにかくわたしはヘイワード様とジョゼット様の元へと逃げ帰る事しか出来なかった。
屋敷へ帰るなりわんわん泣くわたしを、二人は懸命に慰めてくれた。
わたしは泣きながらも二人にお土産の王都マンジュウを渡し、それからまた大いに泣いた。
泣いて泣いて泣き続けた。
そうして三日三晩泣いた後、わたしは王都を出る時に決めた覚悟をヘイワード様とジョゼット様に告げる。
グレインとの結婚は諦めて婚約を解消する、と。
全てこちらで用意を整えて、グレインの顔に婚約解消の書面を叩きつけてやる!と……。
キミのこんやくしゃだよ」
わたし達が初めて顔を合わせたのはまだ互いの親が健在で、何の悲しみも知らない頃だった。
わたしが5歳で彼は6歳。
早すぎる婚約と思われるかもしれないが、貴族間ではよくある事だった。
宮廷貴族であるわたしの両親と、地方貴族のグレインのお父様とは古くからの友人で、互いに子どもが出来たら縁を結ぼうと予ねてより約束をしていたらしい。
そして都合よく両家に男児女児とそれぞれが誕生して、約束通り婚約を結んだのだった。
その2年後にグレインのお母さまが病気で亡くなり、そしてその3年後、わたしの両親が馬車の事故に巻き込まれ帰らぬ人となった。
他に身寄りもない同時10歳だったわたしは修道院に入り、そのまま婚約は解消されると思われた。
だけど前ライト伯爵であったグレインのお父様が、大切な親友の娘を修道院に送れる訳がない。リリーは息子の婚約者として、そして大切な家族の一員としてライト家へ迎え入れると仰り、わたしを引き取って下さったのだ。
おじ様はその言葉の通り、ライト家の二人のご令息と共にわたしを過不足なく育てて下さった。
ここでライト家の二人のご令息を紹介しよう。
まずはご長男であらせられるヘイワード様。
年はわたしよりも7歳年上で、とても穏やかでお優しい方だ。
文武両道というけとれど、どちらかというと“武”の方はイマイチで、だけど“文”の方にとても秀でた優秀なお方なのだ。
そしてわたしの婚約者である次男のグレイン。
ダークブラウンの髪にブルーアイズ。我が婚約者ながら惚れ惚れするほど顔が良い。
お兄様のヘイワード様が“文”に秀でたお方ならグレインは“武”にその才を持つ。
幼い頃から騎士になるという夢を持ち、暇さえあれば剣ばかり振っているような少年だった。
かといって粗雑で乱暴という事もなく、わりと人懐っこい優しい性格の持ち主で、婚約者であるわたしをいつも特別扱いしてくれた。
大らかで朗らかで懐深いおじ様を筆頭とするライト家の暮らしはとても居心地がよく、温かなものだった。
だけど数年後、またもや悲しい出来事が起こってしまう。
おじ様が……ライト伯爵が急な病に倒れ、看病虚しく天に召されてしまったのだ。
わたしが15歳、王都の騎士団で準騎士となったグレインが16歳の時だった。
爵位は当然嫡男であるヘイワード様が襲爵され、ライト伯爵となられた。
それと同時に婚約者であったジョゼット様と結婚されたのだ。
ジョゼット様は小柄で少しふくよかな愛らしい女性だ。
性格も明るくて笑い上戸、わたしは以前から彼女の事が大好きで、本当の姉のように慕っていた。
わたしはまだグレインとは結婚していないから正式な義姉妹ではないが、いずれそうなる事を互いに心から楽しみにしていた。
だけどグレインはまだ準騎士になったばかり。
このまま順調にいけばすぐに正騎士の試験にも合格するだろうから、結婚式はその後でという事になった。
「リリー待ってて。必ず立派な騎士となってリリーを迎えに来るから」
王都へ旅立つ日、グレインがわたしにそう言った。
「わかった。体にだけは気をつけて頑張って!でもグレイン、お手紙をいっぱい頂戴ね。わたしも沢山書くから」
騎士になるという彼の夢を全力で応援する気持ちは誰にも負けない自信はある。
それでもやっぱり離れ離れになるのは寂しくて、とても辛かった。
わたしの表情が曇ったのだろう、グレインはそっとわたしの手を掬い取り、そして指先にキスをした。
「!」
「俺もリリーと離れるのはとても寂しい。可愛いリリー、必ず手紙を書くよ。そして可能な限りは会いに来る。だからいい子で待ってて欲しい」
先ほどまでの曇り空から一転、急に陽光が差し込み快晴となったわたしの様子を見て、グレインは吹き出した。
そしてもう一度わたしの指先にキスを落とした。
約束通り、グレインはマメに手紙を送ってくれた。
それに併せて花やお菓子の贈り物も沢山送ってくれたのだ。
そしてまとまった休みが取れた時は例え一瞬しか領地に居られなくても、必ずわたしの顔を見に帰って来てくれた。
もちろんわたしも沢山手紙を出す。
いいお嫁さんになれるように花嫁修行を頑張っている事や、ヘイワード様とジョゼット様と毎日楽しく暮らしている事、そしてグレインが大好きで大好きでたまらない、グレインのお嫁さんになれる日が待ち遠しい……と。
今思えばなんて重くて暑苦しい圧力を掛ける女なんだと頭を抱えたくなるような事を書いていたのだった。
そしてグレインが領地を去って2年が経った頃、努力の甲斐あって彼は適性試験に合格し、晴れて正騎士となった。
しかも王宮騎士。
王太子殿下の目に留まり、殿下直属の護衛騎士となったのだ!
凄いわグレイン!
流石はわたしのグレイン!
と、そう呑気に思っていられたのは束の間だった。
王家専属の、しかも王太子殿下直属の護衛騎士の大変さをわたしは知らなかったし、ナメきっていた……。
準騎士時代とは打って変わってグレインは超多忙な人となってしまったのだ。
勤務体制や休日も不規則で、いつ何時でも有事に対応出来るようにしていなくてはならないらしい。
当然、手紙の回数は減り、休みがあったとしてもとても領地まで戻って来れるような感じでは無さそうだった。
それでもグレインが夢を叶えて頑張っているのだから、寂しいなどと我儘を言ってはいけない。
わたしももう18歳になったのだから、分別を弁えてじっと待つしかないと自分に言い聞かせていたのだ。
そしてそれからあっという間に一年が過ぎ、とうとう手紙も滅多に届かなくなってしまった。
届くのは届くのだ。
以前は週に1~2回だった手紙が月に一度くらいになってしまったけど。
でも内容が大いに変わってしまったような気がしていた。
前はわたしの事をいつも考えてるだとか、街で見かけた猫を見てわたしを思い出したとか、いつもわたしに会いたいと思ってくれているとか、ラブレターめいた内容だったのが、護衛騎士の仕事は大変だけどやり甲斐があるだとか、家族のみんなは元気か?だとか、寝る時は暖かくして寝るようにだとか、まるで親戚のオジさんのような内容になっていったのだ。
思えばその時から“兆し”はあったのだろう。
グレインの心からわたしが居なくなった兆しが……。
そしてその頃からある噂が、ヘイワード様の友人や領地の商人の口からわたしの耳に入るようになる。
グレインに王都で恋人が出来たらしいと。
「「「……………まさか~~!」」」
その噂を耳にして、わたしもヘイワード様もジョゼット様も最初は否定した。
だってグレインは自惚れではなくわたしを好きでいてくれている筈だし、そんな不誠実な事が出来る人ではない。
やはり単なる噂だとうという事になり、気にしない事にした。
しかしその後も噂はどんどん耳に入って来る。
「…………」
グレインを、彼を信じてる。
彼はそんな人じゃない、そう思っていても否が応でも入って来る噂話に、わたしの心は千々に乱れ始めた。
……………よし。
ウジウジ悶々としているのはわたしの性格に合わない。
それならばこの目で確かめてやろうじゃないの!
思い立ったら即行動しなければ気が済まない性質なので、わたしはその日すぐに王都へ向けて一人領地を飛び出した。
もちろんヘイワード様とジョゼット様には置き手紙を残した。
でも二人に何も言わずに王都へ向かったのだ。
だって反対されるのはわかっていたし、
王都までは道も整備され、治安部隊のお陰で女性一人での長距離馬車の移動も近頃では当たり前になって来ているくらいなので身の危険の心配もない。
だから強硬手段に出たわけなんだけど……
結果はご存知の通り、玉砕だった。
噂は真実だった。
ショックが大きすぎて、情けない事にグレインに問い正す事も、罵る事も殴る蹴るも出来なかったから玉砕とは言い難いかもしれないけど、わたしの心は粉々に打ち砕かれたのだから玉砕と言ってもいいだろう……。
とにかくわたしはヘイワード様とジョゼット様の元へと逃げ帰る事しか出来なかった。
屋敷へ帰るなりわんわん泣くわたしを、二人は懸命に慰めてくれた。
わたしは泣きながらも二人にお土産の王都マンジュウを渡し、それからまた大いに泣いた。
泣いて泣いて泣き続けた。
そうして三日三晩泣いた後、わたしは王都を出る時に決めた覚悟をヘイワード様とジョゼット様に告げる。
グレインとの結婚は諦めて婚約を解消する、と。
全てこちらで用意を整えて、グレインの顔に婚約解消の書面を叩きつけてやる!と……。
782
あなたにおすすめの小説
[完結] 私を嫌いな婚約者は交代します
シマ
恋愛
私、ハリエットには婚約者がいる。初めての顔合わせの時に暴言を吐いた婚約者のクロード様。
両親から叱られていたが、彼は反省なんてしていなかった。
その後の交流には不参加もしくは当日のキャンセル。繰り返される不誠実な態度に、もう我慢の限界です。婚約者を交代させて頂きます。
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
悪役令嬢として、愛し合う二人の邪魔をしてきた報いは受けましょう──ですが、少々しつこすぎやしませんか。
ふまさ
恋愛
「──いい加減、ぼくにつきまとうのはやめろ!」
ぱんっ。
愛する人にはじめて頬を打たれたマイナの心臓が、どくん、と大きく跳ねた。
甘やかされて育ってきたマイナにとって、それはとてつもない衝撃だったのだろう。そのショックからか。前世のものであろう記憶が、マイナの頭の中を一気にぐるぐると駆け巡った。
──え?
打たれた衝撃で横を向いていた顔を、真正面に向ける。王立学園の廊下には大勢の生徒が集まり、その中心には、三つの人影があった。一人は、マイナ。目の前には、この国の第一王子──ローランドがいて、その隣では、ローランドの愛する婚約者、伯爵令嬢のリリアンが怒りで目を吊り上げていた。
[完結]裏切りの果てに……
青空一夏
恋愛
王都に本邸を構える大商会、アルマード男爵家の一人娘リリアは、父の勧めで王立近衛騎士団から引き抜かれた青年カイルと婚約する。
彼は公爵家の分家筋の出身で、政争で没落したものの、誇り高く優秀な騎士だった。
穏やかで誠実な彼に惹かれていくリリア。
だが、学園の同級生レオンのささやいた一言が、彼女の心を揺らす。
「カイルは優しい人なんだろ? 君が望めば、何でもしてくれるはずさ。
でも、それは――仕事だからだよ。結婚も仕事のうちさ。
だって、雇い主の命令に逆らえないでしょ?
君に好意がなくても、義務でそうするんだ」
その言葉が頭から離れないリリアは、カイルの同僚たちに聞き込み、彼に病気の家族がいると知った。「治療費のために自分と結婚するの?」 そう思い込んだリリアに、父母がそろって事故死するという不幸が襲う。
レオンはリリアを惑わし、孤立させ、莫大な持参金を持って自分の元へ嫁ぐように仕向けるのだった。
だが、待っていたのは愛ではなく、孤独と裏切り。
日差しの差さない部屋に閉じ込められ、心身を衰弱させていくリリア。
「……カイル、助けて……」
そう呟いたとき。動き出したのは、かつて彼女を守ると誓った男――カイル・グランベルだった。そしてリリアも自らここを抜けだし、レオンを懲らしめてやろうと決意するようになり……
今、失われた愛と誇りを取り戻す物語が始まる。
とある令嬢の勘違いに巻き込まれて、想いを寄せていた子息と婚約を解消することになったのですが、そこにも勘違いが潜んでいたようです
珠宮さくら
恋愛
ジュリア・レオミュールは、想いを寄せている子息と婚約したことを両親に聞いたはずが、その子息と婚約したと触れ回っている令嬢がいて混乱することになった。
令嬢の勘違いだと誰もが思っていたが、その勘違いの始まりが最近ではなかったことに気づいたのは、ジュリアだけだった。
【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。
大森 樹
恋愛
【短編】
公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。
「アメリア様、ご無事ですか!」
真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。
助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。
穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで……
あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。
★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。
【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・
月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。
けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。
謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、
「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」
謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。
それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね――――
昨日、式を挙げた。
なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。
初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、
「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」
という声が聞こえた。
やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・
「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。
なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。
愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。
シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。
設定はふわっと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる