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王女の暴言
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長い昏睡状態からようやく目覚めたエゼキエル。
目覚めて直ぐにアンリエッタの元へと転移して来たというエゼキエルに驚きつつも、とにかく意識を取り戻してくれた喜びの方が勝ったアンリエッタはわんわん泣いてしまった。
そんなアンリエッタを抱きしめながらエゼキエルは言う。
「アンリ。キミにどうしても伝えたい事があるんだ……」
「……伝えたい事……?」
エゼキエルの言葉にアンリエッタは顔を上げて彼の顔を見た。
が、結局、その時にエゼキエルが何を告げたかったのかアンリエッタは知る事は出来なかった。
突然昏睡から目覚めたと思ったら何処かへと消えたエゼキエルと、
王女たちをギャラリーへと案内していた筈のアンリエッタの姿が忽然と消え、王宮が大騒ぎとなったからである。
エゼキエルがアンリエッタを捕まえた後転移した場所は彼女の自室で、侍女のマヤにより二人揃って発見、エゼキエルは体の状態を詳しく診察される為に直ぐに寝室へと連行されたからであった。
アンリエッタは当然エゼキエルの側で様子を見ていたいとは思ったが、エゼキエルが回復して寝室から出たという話をどこからか聞きつけた王女が騒ぎ出した為に、そちらの対応に追われる事となった。
「エゼキエル様がお元気になられたのなら、すぐにでも会わせて頂戴!」
「申し訳ありませんヴィルジニー王女殿下、必ず面会の席を設けますので今少しだけお待ちくださいませ」
エゼキエルに会わせろと詰め寄る王女をアンリエッタが宥めると、
ヴィルジニー王女はもう我慢ならぬといった様子でアンリエッタを詰り出した。
「いい加減にしてっ!貴女っ、わたくしにエゼキエル様を奪われるのが怖くて邪魔したいだけでしょう!お生憎さまね!そんな事をしても、わたくしとエゼキエル様の婚姻は生まれた時から決まっていた事なのよっ!!勝手に横入りをしておいて邪魔をしないでっ!!」
「っ……!」
それを言われ、アンリエッタは何も言えなくなってしまった。
確かに前国王が急逝しなければ、彼女が然るべきタイミングでエゼキエルの元に嫁ぐ事になっていた筈なのだから。
「アンリエッタ様……」
ユリアナがアンリエッタを気遣い、心配そうに見つめている。
その隣でシルヴィーが王女に向かって言った。
「時が経てば情勢が変わるのと同じように、人と人との繋がりも変わるものですわ!そして今はもう、陛下の正妃候補者は貴女お一人ではありませんのよっ!この国の筆頭公爵家の娘であり、王家の傍流でもあるわたしを差し置いて勝手な事は言わないでくださいまし!」
「たかが公爵家の娘が王族に楯突こうというのっ?わたくしの父親は国王ですのよ!」
「わたしは前国王の姪で、前々国王の孫ですわよっ!そして前前前国王の曾孫ですわっ!」
シルヴィーがその小柄な体からは想像もつかない声でいい放った。
若干論点がズレつつあるが、アンリエッタを守ろうと必死なのだ。
些細な事で傷付いている場合ではない。
この優しく可愛い友人を盾とするなどとあまりにも情けない話ではないかとアンリエッタは思った。
そしてすっ…と居住まいを正し、アンリエッタは王女に告げた。
「王女殿下が仰りたい事はわかります。だけど今現在、オリオル国王の妃は私です。私は妃としてこの王宮内の秩序を正しく保ち、陛下の身辺に気を配る務めがあるのです。その上で、きちんとした場を然るべき時に設けますので陛下との面会は今暫く待ち頂けるよう申し上げているのです」
アンリエッタはそう言って頭を下げた。
そして話を続ける。
「王女殿下だって、生涯を共にするかもしれないお方と、おざなりに面会するのは嫌でしょう?決められた日に、とびっきりのお洒落をして、エゼキエル陛下にお会いしたいのではありませんか?」
そう言われ、王女は考えた。
ーー確かに今日のドレスよりも、とっておきのドレスを着た自分を夫となる人に見て貰いたいわ。有名なドレスメーカーで作らせたとっておきのドレス。あれがいいわね。
「……ふむ……」
しかしこのまま引き下がるのは、まるで言いくるめられたようで気に入らない。
自分が妃だと我がもの顔をする目の前の女に分を弁えさせてやりたいと王女は思った。
そして居丈高に顎を突き出してアンリエッタに言い放つ。
「ふん、偉そうに。誰に対して意見しているつもりなの?第一妃などと聞こえいいけれど、所詮はただの側妃ではないの。しかもお飾りの側妃なんて聞いて呆れますわ。自分の立場を弁えたらどうなの?」
「貴女という人はっ……!」
「もう許せませんわっ!」
アンリエッタへの辛辣な物言いに、ユリアナとシルヴィーが怒りのあまりに震え出したその時、
一瞬で場を凍らせるような冷たい声が響いた。
「お飾りの側妃とは誰の事だ」
ーーえ?
勿論、アンリエッタにはその声の主が誰なのかすぐに分かった。
だがその温度を感じさせない冷たい声が本当に彼のものなのか俄には信じられない。
普段の彼からは想像もつかないような鋭利で硬質的な声。
目の前のヴィルジニー王女は突然現れたその人物を唖然とした顔で見つめている。
アンリエッタはゆっくりと声が聞こえた方へと振り返った。
「エル……」
するとやはりそこには先程の夜着とガウン姿とは打って変わって、
きちんとした王族の身形を整えたエゼキエルが立っていた。
冷たい、明らかに怒りを含んだ瞳で、
彼はアンリエッタ達を見据えていた。
目覚めて直ぐにアンリエッタの元へと転移して来たというエゼキエルに驚きつつも、とにかく意識を取り戻してくれた喜びの方が勝ったアンリエッタはわんわん泣いてしまった。
そんなアンリエッタを抱きしめながらエゼキエルは言う。
「アンリ。キミにどうしても伝えたい事があるんだ……」
「……伝えたい事……?」
エゼキエルの言葉にアンリエッタは顔を上げて彼の顔を見た。
が、結局、その時にエゼキエルが何を告げたかったのかアンリエッタは知る事は出来なかった。
突然昏睡から目覚めたと思ったら何処かへと消えたエゼキエルと、
王女たちをギャラリーへと案内していた筈のアンリエッタの姿が忽然と消え、王宮が大騒ぎとなったからである。
エゼキエルがアンリエッタを捕まえた後転移した場所は彼女の自室で、侍女のマヤにより二人揃って発見、エゼキエルは体の状態を詳しく診察される為に直ぐに寝室へと連行されたからであった。
アンリエッタは当然エゼキエルの側で様子を見ていたいとは思ったが、エゼキエルが回復して寝室から出たという話をどこからか聞きつけた王女が騒ぎ出した為に、そちらの対応に追われる事となった。
「エゼキエル様がお元気になられたのなら、すぐにでも会わせて頂戴!」
「申し訳ありませんヴィルジニー王女殿下、必ず面会の席を設けますので今少しだけお待ちくださいませ」
エゼキエルに会わせろと詰め寄る王女をアンリエッタが宥めると、
ヴィルジニー王女はもう我慢ならぬといった様子でアンリエッタを詰り出した。
「いい加減にしてっ!貴女っ、わたくしにエゼキエル様を奪われるのが怖くて邪魔したいだけでしょう!お生憎さまね!そんな事をしても、わたくしとエゼキエル様の婚姻は生まれた時から決まっていた事なのよっ!!勝手に横入りをしておいて邪魔をしないでっ!!」
「っ……!」
それを言われ、アンリエッタは何も言えなくなってしまった。
確かに前国王が急逝しなければ、彼女が然るべきタイミングでエゼキエルの元に嫁ぐ事になっていた筈なのだから。
「アンリエッタ様……」
ユリアナがアンリエッタを気遣い、心配そうに見つめている。
その隣でシルヴィーが王女に向かって言った。
「時が経てば情勢が変わるのと同じように、人と人との繋がりも変わるものですわ!そして今はもう、陛下の正妃候補者は貴女お一人ではありませんのよっ!この国の筆頭公爵家の娘であり、王家の傍流でもあるわたしを差し置いて勝手な事は言わないでくださいまし!」
「たかが公爵家の娘が王族に楯突こうというのっ?わたくしの父親は国王ですのよ!」
「わたしは前国王の姪で、前々国王の孫ですわよっ!そして前前前国王の曾孫ですわっ!」
シルヴィーがその小柄な体からは想像もつかない声でいい放った。
若干論点がズレつつあるが、アンリエッタを守ろうと必死なのだ。
些細な事で傷付いている場合ではない。
この優しく可愛い友人を盾とするなどとあまりにも情けない話ではないかとアンリエッタは思った。
そしてすっ…と居住まいを正し、アンリエッタは王女に告げた。
「王女殿下が仰りたい事はわかります。だけど今現在、オリオル国王の妃は私です。私は妃としてこの王宮内の秩序を正しく保ち、陛下の身辺に気を配る務めがあるのです。その上で、きちんとした場を然るべき時に設けますので陛下との面会は今暫く待ち頂けるよう申し上げているのです」
アンリエッタはそう言って頭を下げた。
そして話を続ける。
「王女殿下だって、生涯を共にするかもしれないお方と、おざなりに面会するのは嫌でしょう?決められた日に、とびっきりのお洒落をして、エゼキエル陛下にお会いしたいのではありませんか?」
そう言われ、王女は考えた。
ーー確かに今日のドレスよりも、とっておきのドレスを着た自分を夫となる人に見て貰いたいわ。有名なドレスメーカーで作らせたとっておきのドレス。あれがいいわね。
「……ふむ……」
しかしこのまま引き下がるのは、まるで言いくるめられたようで気に入らない。
自分が妃だと我がもの顔をする目の前の女に分を弁えさせてやりたいと王女は思った。
そして居丈高に顎を突き出してアンリエッタに言い放つ。
「ふん、偉そうに。誰に対して意見しているつもりなの?第一妃などと聞こえいいけれど、所詮はただの側妃ではないの。しかもお飾りの側妃なんて聞いて呆れますわ。自分の立場を弁えたらどうなの?」
「貴女という人はっ……!」
「もう許せませんわっ!」
アンリエッタへの辛辣な物言いに、ユリアナとシルヴィーが怒りのあまりに震え出したその時、
一瞬で場を凍らせるような冷たい声が響いた。
「お飾りの側妃とは誰の事だ」
ーーえ?
勿論、アンリエッタにはその声の主が誰なのかすぐに分かった。
だがその温度を感じさせない冷たい声が本当に彼のものなのか俄には信じられない。
普段の彼からは想像もつかないような鋭利で硬質的な声。
目の前のヴィルジニー王女は突然現れたその人物を唖然とした顔で見つめている。
アンリエッタはゆっくりと声が聞こえた方へと振り返った。
「エル……」
するとやはりそこには先程の夜着とガウン姿とは打って変わって、
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