魔女は婚約者の心変わりに気づかないフリをする

キムラましゅろう

文字の大きさ
1 / 14

プロローグ 密告という名の手紙

『あなたの婚約者、王宮で素敵な出会いを果たしたみたいですよ』


ある日、魔女のジュジュ(17)の元に届いた一通の手紙にこんな事が記されていた。


婚約者、というのは魔術師協会に定められた将来の伴侶となる予定のクラム=ハリソン(20)の事だろうか。


「素敵な出会い……?」

ジュジュは手紙にもう一度目を通す。
しかし何度読んでも同じ事が書かれていた。

王宮で素敵な出会い……


「誰と?」


多分これは女性の筆跡だ。
今までにもジュジュの元には婚約者クラムに懸想する女性から度々手紙が届いていた。

『クラム様を解放しなさい』とか

『魔術師協会に勝手に婚姻を決められてハリソン様がお可哀想だわ』とか

『古の魔女だかイニシャルの魔女(上手いこというな)だか知らないけど、王宮魔術騎士団のホープと呼ばれるハリソン卿と得体の知れない魔術師が釣り合う訳がないでしょう。身の程を知りなさい』とか。

そんな数々の“クラム=ハリソンと婚約を解消しろ”という手紙を受け取ってきたのだが、これは初めてのパターンだ。

ジュジュは首を傾げる。
自慢のふわサラのオレンジブラウンの髪が肩をすべる。

密告タレコミ……?」

何の密告?
これは……アンタの婚約者浮気してるぞw、的な密告?

「浮気、ねぇ……」

先週クラムに会った時、とくに変わった様子はなかった。

いつも通りジュジュの家に転移魔法でやって来て、先週頼んでおいた買い物を持参し、ジュジュの手には余る大工仕事や力仕事をやってくれる。

そしてジュジュの作る食事を全部平らげてたわいもない話をして(主に話すのはジュジュだが)夕方には帰って行くという……。

そんないつも通りのルーティンをこなしていたクラム。

そんな彼が浮気をしているとは俄には信じ難い。

「でも……」

手紙と共に添えられていた一枚の写真。

ジュジュはそれを手に取り見つめる。

そこにはクラムとピンクブロンドの髪の可愛らしい女性とが仲睦まじく腕を絡ましている姿が写しだされていた。

「うーーん……」

ジュジュは腕組みをして考える。

これは……確かめに行った方がいいのだろうか。

この写真、とくに魔術の干渉を受けた痕跡はない。
という事は偽造されたものではなく、その場にあった光景をありのままに魔道具カメラが写しだした一枚…という事になる。


「………確かめに行こう」


こうやって悶々鬱々とする日々を送るくらいならさっさと王都に行って確かめればいい。

王都までかなりの距離があるがこの古の森の魔力を借りれば一瞬で転移出来る。

「……帰りは……何地点か転移を繰り返せばいいか……よしっ」


そうと決まれば善は急げ。

ジュジュは二年ぶりに古の森から離れるべく仕度を始めた。

胸に一抹の不安を抱えながら………





───────────────────────



始まりましたよ新連載。
はじめましての方もそうでない方もお久しぶりの方もよろしくお願いします!


関連作品
『夫婦にまつわるすれ違い、または溺愛を描く短編集』
第35話・古の森の魔女の恋
第36話・古の森の魔女の恋~魔女が番う季節~



なんと、明日の朝にも更新があるそうな!?








感想 283

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

〖完結〗愛しているから、あなたを愛していないフリをします。

藍川みいな
恋愛
ずっと大好きだった幼なじみの侯爵令息、ウォルシュ様。そんなウォルシュ様から、結婚をして欲しいと言われました。 但し、条件付きで。 「子を産めれば誰でもよかったのだが、やっぱり俺の事を分かってくれている君に頼みたい。愛のない結婚をしてくれ。」 彼は、私の気持ちを知りません。もしも、私が彼を愛している事を知られてしまったら捨てられてしまう。 だから、私は全力であなたを愛していないフリをします。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全7話で完結になります。

【完結】私よりも、病気(睡眠不足)になった幼馴染のことを大事にしている旦那が、嘘をついてまで居候させたいと言い出してきた件

よどら文鳥
恋愛
※あらすじにややネタバレ含みます 「ジューリア。そろそろ我が家にも執事が必要だと思うんだが」 旦那のダルムはそのように言っているが、本当の目的は執事を雇いたいわけではなかった。 彼の幼馴染のフェンフェンを家に招き入れたかっただけだったのだ。 しかし、ダルムのズル賢い喋りによって、『幼馴染は病気にかかってしまい助けてあげたい』という意味で捉えてしまう。 フェンフェンが家にやってきた時は確かに顔色が悪くてすぐにでも倒れそうな状態だった。 だが、彼女がこのような状況になってしまっていたのは理由があって……。 私は全てを知ったので、ダメな旦那とついに離婚をしたいと思うようになってしまった。 さて……誰に相談したら良いだろうか。

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

【完結】そんなに好きなら、そっちへ行けば?

雨雲レーダー
恋愛
侯爵令嬢クラリスは、王太子ユリウスから一方的に婚約破棄を告げられる。 理由は、平民の美少女リナリアに心を奪われたから。 クラリスはただ微笑み、こう返す。 「そんなに好きなら、そっちへ行けば?」 そうして物語は終わる……はずだった。 けれど、ここからすべてが狂い始める。 *完結まで予約投稿済みです。 *1日3回更新(7時・12時・18時)

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。 なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと? 婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。 ※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。 ※ゆるふわ設定のご都合主義です。 ※元サヤはありません。