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ミニ番外編
学園祭にて③ あのチビゴリラは誰だ
わざわざここに書き記す必要もないが、
ルシアンはモテる。
父親譲りの見目の良さと母親譲りの聡明さ。
そしてワイズ侯爵の甥にして次期ワイズ伯爵という血筋。
魔力量も高く幼い頃から鍛錬を重ねてきた剣術武術の腕前は相当なものだ。
加えて座学の方の成績も優秀で、学年でも常にトップ5には入っている。
そんな現時点でも優良物件なルシアンを学園の女子生徒達が放っておくはずもなく……。
同学年はもちろん、七歳年上の高等部最上級生の女子学生にまで秋波を送られていた。
当然、まだ十三歳であるルシアンにとってそんなものは迷惑なだけである。
なのでルシアンは必要以上にあまり女子生徒とは関わらないようにしていた。
ほんの少し会話が続くと「ルシアン様とは気が合うの」となるし、学園の手伝いで何度か行動を共にすると「ルシアン様とお付き合い寸前なの」などいう訳のわからない解釈をされるからだ。
父であるフェリックスのようにバッサリと切り捨てる毅然とした態度を取れたらいいと思うのだが、優しいルシアンの性格上それは出来なかった。
そんなルシアンに母は言う。
「あら、お父さんは今でこそクレバスの騎士なんて呼ばれているけど、学生の時は猫を被って当たり障りなく楽しくやっていたのよ?まぁわたしは、それを冷ややかな目で見ていた方だけど……」
なんて、きっと父が聞いたら落ち込むだろうなとルシアンは思った。
とにかく人との関わり合いは適度に、そして距離を間違えずに……というのが齢十三にしてルシアンが身につけた処世術であったのだ。
そんなルシアンが唯一何も気負わずに接する事が出来る女の子、
それが従妹のミシェルであった。
気負わずに、というのはミシェルを意識していないからではない。
逆に従妹でありながら異性として好ましく思っているからこそ、距離感も何も気にせずに心の赴くまま素直に接したいと思うのだ。
ーーやっぱり……好き、なのかな?ミシェルの事を。
何せ相手は妹と同い年の少女だ。
ルシアンとて思春期に突入したばかり。
まだ自分の本当の心情を掴みかねているルシアンであった。
そんなミシェルと弟のファニアスを連れて学園祭を回っているルシアンに、当然周りの視線は集中していた。
主に女の子たちから……。
そしてその者たちが、ルシアンが連れている二人について様々な憶測を繰り広げていた。
妹!?……は、違うだろう。
では親戚?まさか婚約者っ!?
誰っ?何者!?なんなのあのチビゴリラは!?
と誰もが三人の事を、主にルシアンが連れている小柄な少女との関係性について注目していた。
だって、誰も見たことのないような柔らかな微笑みをルシアンが少女に向けているから。
表面的な笑みは誰もが見た事はある。
だけどあんな優しげな自然体のスマイルは、魔術学園の下位スクールである初等学校の同級生だった者すら見た事がなかったのだ。
そしてそんな現場に運悪くやって来てしまった一人の少年。
彼の名はノア=ジャクソン。
ジャクソン子爵家の嫡男で初等学校時代からルシアンの親友だ。
ノアなら何やら知っている筈と、彼は一斉に他の生徒たちに取り囲まれた。
「うわぁっ!?ちょっ…なんだよいきなりっ!!」
驚いたノアが抗議するも、ルシアンと一緒にいるのが誰なのか答えるまでは解放しないと言われ、ノアは渋々白状した。
元々別に口止めされているわけではないからだ。
もしルシアンに口止めされていたのなら、彼は絶対に教えなかっただろう。
「あの二人はロードリック辺境伯のご令嬢と嫡男だよ。そしてルシアン=ワイズの従妹弟たちだ」
ノアがそう言うと、それを聞いた皆が一様に安堵した。
「なぁんだ!ルシアン様のお従妹弟たちなのね!それならヤキモキする必要なんてないわね!」
「まぁ仮に?そうでなかったとしてもあんなチビゴリラ令嬢に負ける気はしないけれども!」
「それもそうね!」
「私たちのライバルでもなんでもないわ」
などと平気で失礼な事を曰う女子生徒達をノアは冷めた目で見つめた。
そんな事を嘲りながら言うような奴らを、あのルシアンが選ぶ筈がない。
“自分たちのライバル”と彼女たちは言うが、そもそも相手にされないのだからライバルになどなれる訳もないのに。
ノアはそんな事を思いながらもそれを教えてやる義理はないとその場をこっそりと立ち去った。
その時、歩きながら親友の顔を眺める。
ーー確かにあまり見ない表情だな。
ルシアンが本当に楽しそうにしている姿を見て、良かったなと思うノアであった。
「ミシェル、ファニアス、向こうのクラスの催しものを覗いてみる?」
ルシアンが二人に訊ねる。
「行く行く!」
「面白そうです」
ミシェルもファニアスが嬉しそうに頷いた。
学園祭はまだ始まったばかりである。
ルシアンはモテる。
父親譲りの見目の良さと母親譲りの聡明さ。
そしてワイズ侯爵の甥にして次期ワイズ伯爵という血筋。
魔力量も高く幼い頃から鍛錬を重ねてきた剣術武術の腕前は相当なものだ。
加えて座学の方の成績も優秀で、学年でも常にトップ5には入っている。
そんな現時点でも優良物件なルシアンを学園の女子生徒達が放っておくはずもなく……。
同学年はもちろん、七歳年上の高等部最上級生の女子学生にまで秋波を送られていた。
当然、まだ十三歳であるルシアンにとってそんなものは迷惑なだけである。
なのでルシアンは必要以上にあまり女子生徒とは関わらないようにしていた。
ほんの少し会話が続くと「ルシアン様とは気が合うの」となるし、学園の手伝いで何度か行動を共にすると「ルシアン様とお付き合い寸前なの」などいう訳のわからない解釈をされるからだ。
父であるフェリックスのようにバッサリと切り捨てる毅然とした態度を取れたらいいと思うのだが、優しいルシアンの性格上それは出来なかった。
そんなルシアンに母は言う。
「あら、お父さんは今でこそクレバスの騎士なんて呼ばれているけど、学生の時は猫を被って当たり障りなく楽しくやっていたのよ?まぁわたしは、それを冷ややかな目で見ていた方だけど……」
なんて、きっと父が聞いたら落ち込むだろうなとルシアンは思った。
とにかく人との関わり合いは適度に、そして距離を間違えずに……というのが齢十三にしてルシアンが身につけた処世術であったのだ。
そんなルシアンが唯一何も気負わずに接する事が出来る女の子、
それが従妹のミシェルであった。
気負わずに、というのはミシェルを意識していないからではない。
逆に従妹でありながら異性として好ましく思っているからこそ、距離感も何も気にせずに心の赴くまま素直に接したいと思うのだ。
ーーやっぱり……好き、なのかな?ミシェルの事を。
何せ相手は妹と同い年の少女だ。
ルシアンとて思春期に突入したばかり。
まだ自分の本当の心情を掴みかねているルシアンであった。
そんなミシェルと弟のファニアスを連れて学園祭を回っているルシアンに、当然周りの視線は集中していた。
主に女の子たちから……。
そしてその者たちが、ルシアンが連れている二人について様々な憶測を繰り広げていた。
妹!?……は、違うだろう。
では親戚?まさか婚約者っ!?
誰っ?何者!?なんなのあのチビゴリラは!?
と誰もが三人の事を、主にルシアンが連れている小柄な少女との関係性について注目していた。
だって、誰も見たことのないような柔らかな微笑みをルシアンが少女に向けているから。
表面的な笑みは誰もが見た事はある。
だけどあんな優しげな自然体のスマイルは、魔術学園の下位スクールである初等学校の同級生だった者すら見た事がなかったのだ。
そしてそんな現場に運悪くやって来てしまった一人の少年。
彼の名はノア=ジャクソン。
ジャクソン子爵家の嫡男で初等学校時代からルシアンの親友だ。
ノアなら何やら知っている筈と、彼は一斉に他の生徒たちに取り囲まれた。
「うわぁっ!?ちょっ…なんだよいきなりっ!!」
驚いたノアが抗議するも、ルシアンと一緒にいるのが誰なのか答えるまでは解放しないと言われ、ノアは渋々白状した。
元々別に口止めされているわけではないからだ。
もしルシアンに口止めされていたのなら、彼は絶対に教えなかっただろう。
「あの二人はロードリック辺境伯のご令嬢と嫡男だよ。そしてルシアン=ワイズの従妹弟たちだ」
ノアがそう言うと、それを聞いた皆が一様に安堵した。
「なぁんだ!ルシアン様のお従妹弟たちなのね!それならヤキモキする必要なんてないわね!」
「まぁ仮に?そうでなかったとしてもあんなチビゴリラ令嬢に負ける気はしないけれども!」
「それもそうね!」
「私たちのライバルでもなんでもないわ」
などと平気で失礼な事を曰う女子生徒達をノアは冷めた目で見つめた。
そんな事を嘲りながら言うような奴らを、あのルシアンが選ぶ筈がない。
“自分たちのライバル”と彼女たちは言うが、そもそも相手にされないのだからライバルになどなれる訳もないのに。
ノアはそんな事を思いながらもそれを教えてやる義理はないとその場をこっそりと立ち去った。
その時、歩きながら親友の顔を眺める。
ーー確かにあまり見ない表情だな。
ルシアンが本当に楽しそうにしている姿を見て、良かったなと思うノアであった。
「ミシェル、ファニアス、向こうのクラスの催しものを覗いてみる?」
ルシアンが二人に訊ねる。
「行く行く!」
「面白そうです」
ミシェルもファニアスが嬉しそうに頷いた。
学園祭はまだ始まったばかりである。
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