147 / 161
ミニ番外編
三年後 ポレットの愛し子
しおりを挟む
ルシアンが北の地へ武者修行に出て早や三年が経過したアデリオール王国は、慶事に沸いていた。
王太子第一王子妃ポレットが第一子を無事に出産したと報じられ、国を挙げての祝賀ムードとなったのだ。
婚姻から三年。
ようやく齎された喜びに、国民の誰もが慶祝の意を表した。
しかもその第一子が男児と聞き、将来の国王の母となったポレット妃の功績を皆が称えたのである。
男児と判明した瞬間から王位継承権第三位を約束された吾子に、父親であるデイヴィッドはシルヴェストと名付けた。
第一子シルヴェスト懐妊をするまで二年。
婚姻当時、デイヴィッド殿下の寵愛を一身に受けるポレット妃の懐妊はあっという間だろうと誰もが予測していた。
しかし半年が経っても一年が経っても懐妊の兆しは見られず、婚姻から一年半後にはとうとう、デイヴィッドに側妃を迎えるように進言する者が出始めた。
それを聞いたデイヴィッドは、鼻で笑って一蹴する。
そして、
「私も妃も婚姻前にきちんとブライダルチェックは受けている。当然だ、世継ぎの誕生は我々の義務なのだから。そのブライダルチェックで双方とも問題なしと診断されているのに、たかだか一年半でとやかく言われるのは我慢ならん。良い機会なので伝えておこう。たとえ我らに子が授からなくても我が妃はポレットのみ。側妃など要らぬ。我が王家には傍流があり、そこには優秀な令息が沢山いる。そのうちの誰かを養子に据えればよいだけのことだ。君主として最も必要なのは血筋だけではなく、秀でた才覚である」
と、長々と声高らかに宣言したらしい。
この言を是としない一部の上位貴族……は大抵が己が家門の娘を側妃に据えたいと目論む者達だが、その者たちが今度はデイヴィッドではなく父親であるクリフォードや国王シルヴァンにターゲットを変えて進言をした。
が、二人は口を揃えて、
「デイヴィッドがそう決めたのであればそれで良し。私も(余も)ポレたん…コホン、ポレット妃以外の妃は王家に必要ないと考えている。……というか其方達、正気か?ワイズ一門を敵に回すつもりなのか?社会的にも物理的に潰されて、この国に居場所が無くなっても知らんぞ?」
と言ったのであった。
側妃の身内、上手くいけば将来の国王の外戚になれるやもと野望を抱いていた者は、そこで漸く自身が危うく棺桶に片足を突っ込んでいることに気付く。
このままポレット妃を蔑ろにするような発言や行動をすれば必ずワイズ一門からの報復を受ける。
それだけは絶対に避けたい貴族達の口からは二度と、デイヴィッドに側妃をという言葉が登ることはなかった。
だがポレット自身は違う。
もし自分が原因で子ができないのであれば、その時は国の行く末のために側妃を迎えるようにデイヴィッドに進言しなくてはと心に決めていたのだ。
そして場合によっては身を引く覚悟もしていた。
だが、そんなポレットの心中を理解していた両家の母たち(ハノンと王太子妃)も口を揃えて、
「あなたの気持ちはわかるけどよした方がいいわ。というか諦めなさい。デイヴィッド(殿下)がポレット以外の女性を受け入れるわけはないし、ポレットを手放すことなど絶対に有り得ないわ」
と言ったのであった。
それを言われたポレット自身も母たちの言に納得出来るような出来ないような……。
一体どうすればデイヴィッドのためになるのか。それを思いあぐねている間に、すんなりと懐妊したのであった。
ポレットが子を身篭ったと知ったとき、デイヴィッドは静かに涙を流し、心からの感謝をポレットに伝えたという。
ワイズの男たちも片方の瞳からは歓喜の涙、もう片方の瞳からは哀愁の涙を流したという事実は、ワイズの女たちの手により永遠に闇に葬られた。
そうして十月十日。
特筆する問題もなくポレットは安産の末にシルヴェストを出産したのである。
我が子を抱くポレットは、かつてのハノンそのものであったというのは、初孫の誕生を受け烈火のごとく駆けつけたフェリックスの談である。
「シル……可愛い私の大切なシル。どうか二人のおじい様(フェリックスとクリフォード)のように丈夫で逞しく、そして賢く育ってね」
ポレットはそう言って、愛しい我が子の頬に優しく口付けたのであった。
王太子第一王子妃ポレットが第一子を無事に出産したと報じられ、国を挙げての祝賀ムードとなったのだ。
婚姻から三年。
ようやく齎された喜びに、国民の誰もが慶祝の意を表した。
しかもその第一子が男児と聞き、将来の国王の母となったポレット妃の功績を皆が称えたのである。
男児と判明した瞬間から王位継承権第三位を約束された吾子に、父親であるデイヴィッドはシルヴェストと名付けた。
第一子シルヴェスト懐妊をするまで二年。
婚姻当時、デイヴィッド殿下の寵愛を一身に受けるポレット妃の懐妊はあっという間だろうと誰もが予測していた。
しかし半年が経っても一年が経っても懐妊の兆しは見られず、婚姻から一年半後にはとうとう、デイヴィッドに側妃を迎えるように進言する者が出始めた。
それを聞いたデイヴィッドは、鼻で笑って一蹴する。
そして、
「私も妃も婚姻前にきちんとブライダルチェックは受けている。当然だ、世継ぎの誕生は我々の義務なのだから。そのブライダルチェックで双方とも問題なしと診断されているのに、たかだか一年半でとやかく言われるのは我慢ならん。良い機会なので伝えておこう。たとえ我らに子が授からなくても我が妃はポレットのみ。側妃など要らぬ。我が王家には傍流があり、そこには優秀な令息が沢山いる。そのうちの誰かを養子に据えればよいだけのことだ。君主として最も必要なのは血筋だけではなく、秀でた才覚である」
と、長々と声高らかに宣言したらしい。
この言を是としない一部の上位貴族……は大抵が己が家門の娘を側妃に据えたいと目論む者達だが、その者たちが今度はデイヴィッドではなく父親であるクリフォードや国王シルヴァンにターゲットを変えて進言をした。
が、二人は口を揃えて、
「デイヴィッドがそう決めたのであればそれで良し。私も(余も)ポレたん…コホン、ポレット妃以外の妃は王家に必要ないと考えている。……というか其方達、正気か?ワイズ一門を敵に回すつもりなのか?社会的にも物理的に潰されて、この国に居場所が無くなっても知らんぞ?」
と言ったのであった。
側妃の身内、上手くいけば将来の国王の外戚になれるやもと野望を抱いていた者は、そこで漸く自身が危うく棺桶に片足を突っ込んでいることに気付く。
このままポレット妃を蔑ろにするような発言や行動をすれば必ずワイズ一門からの報復を受ける。
それだけは絶対に避けたい貴族達の口からは二度と、デイヴィッドに側妃をという言葉が登ることはなかった。
だがポレット自身は違う。
もし自分が原因で子ができないのであれば、その時は国の行く末のために側妃を迎えるようにデイヴィッドに進言しなくてはと心に決めていたのだ。
そして場合によっては身を引く覚悟もしていた。
だが、そんなポレットの心中を理解していた両家の母たち(ハノンと王太子妃)も口を揃えて、
「あなたの気持ちはわかるけどよした方がいいわ。というか諦めなさい。デイヴィッド(殿下)がポレット以外の女性を受け入れるわけはないし、ポレットを手放すことなど絶対に有り得ないわ」
と言ったのであった。
それを言われたポレット自身も母たちの言に納得出来るような出来ないような……。
一体どうすればデイヴィッドのためになるのか。それを思いあぐねている間に、すんなりと懐妊したのであった。
ポレットが子を身篭ったと知ったとき、デイヴィッドは静かに涙を流し、心からの感謝をポレットに伝えたという。
ワイズの男たちも片方の瞳からは歓喜の涙、もう片方の瞳からは哀愁の涙を流したという事実は、ワイズの女たちの手により永遠に闇に葬られた。
そうして十月十日。
特筆する問題もなくポレットは安産の末にシルヴェストを出産したのである。
我が子を抱くポレットは、かつてのハノンそのものであったというのは、初孫の誕生を受け烈火のごとく駆けつけたフェリックスの談である。
「シル……可愛い私の大切なシル。どうか二人のおじい様(フェリックスとクリフォード)のように丈夫で逞しく、そして賢く育ってね」
ポレットはそう言って、愛しい我が子の頬に優しく口付けたのであった。
2,162
あなたにおすすめの小説
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?
狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」
「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」
「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」
「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」
「だから、お前の夫が俺だって──」
少しずつ日差しが強くなっている頃。
昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。
……誰コイツ。
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
(完結)あなたの愛は諦めました (全5話)
青空一夏
恋愛
私はライラ・エト伯爵夫人と呼ばれるようになって3年経つ。子供は女の子が一人いる。子育てをナニーに任せっきりにする貴族も多いけれど、私は違う。はじめての子育ては夫と協力してしたかった。けれど、夫のエト伯爵は私の相談には全く乗ってくれない。彼は他人の相談に乗るので忙しいからよ。
これは自分の家庭を顧みず、他人にいい顔だけをしようとする男の末路を描いた作品です。
ショートショートの予定。
ゆるふわ設定。ご都合主義です。タグが増えるかもしれません。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
婚約者に妹を紹介したら、美人な妹の方と婚約したかったと言われたので、譲ってあげることにいたしました
奏音 美都
恋愛
「こちら、妹のマリアンヌですわ」
妹を紹介した途端、私のご婚約者であるジェイコブ様の顔つきが変わったのを感じました。
「マリアンヌですわ。どうぞよろしくお願いいたします、お義兄様」
「ど、どうも……」
ジェイコブ様が瞳を大きくし、マリアンヌに見惚れています。ジェイコブ様が私をチラッと見て、おっしゃいました。
「リリーにこんな美しい妹がいたなんて、知らなかったよ。婚約するなら妹君の方としたかったなぁ、なんて……」
「分かりましたわ」
こうして私のご婚約者は、妹のご婚約者となったのでした。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。