ある日、悪役令嬢の一人だと言われました

キムラましゅろう

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ある日、執務室で

「殿下、ドウィッチ嬢の魔力の特定結果が出たとお聞きしたのですが」

ある日、第二王子ルドヴィックから知らせを受けたエクトルが王宮にある彼の執務室を急ぎ訪れた。

「ああ。ようやく判明したよ」

「それで結果は?」

「もうすぐ執務室ここに魔術師協会の者が報告書を携えて説明に来てくれる。お前も共に話を聞くがいい」

「……俺だけですか?コラールやイヴァンは」

「リュミナを見て貰っている」

「なるほど。あの二人はドウィッチ嬢と仲が良いですからね」

「コラールはリュミナが末の妹によく似ているから親しみやすいと言っていたぞ」

「あぁ、言っていましたね」



そうしてややあってルドヴィックの執務室に魔術師協会から派遣された魔術師が到着した。

その魔術師から聞いたリュミナの魔力についての報告や見解を、エクトルとルドヴィックは驚きつつも最後まで冷静に耳を傾けた。

聞かされた内容を要約してエクトルが魔術師に確認する。

「それでは、リュミナ・ドウィッチ嬢の魔力属性は未知なるもの、というわけではないのですね?寧ろ属性は“光”で、特筆すべきは他者の魔力を増幅させる能力であると」

「はい。だけど彼女自身が意図して魔力を高められるわけではありません」

魔術師の返答にルドヴィックが怪訝な顔をする。

「どういうことだ?」

ドウィッチ嬢被験者の体質や魔力の特徴を調べてゆく上である特定の能力を持つ人間の過去の文献やデータと合致しました」

「その特定の能力とは?」

「身ごもった子どもの、父親から受け継いだ魔力を増幅させる力です。古代ではこの能力を持つ女性を聖母神と崇め、多くの夫を添わせ、多くの高魔力保持者を増産したそうです」

「な、何?増産……?え?な、何だって?」

想像以上に珍しいリュミナの能力を理解し難いルドヴィックが素っ頓狂な声を出す。
エクトルが端的にそれらを纏め、魔術師に訊いた。

「つまりは、妊娠させた相手の魔力を強化させた子どもを産む事が出来る、それがドウィッチ嬢の能力だというのですね?」

「はい。数百年に一度生まれるかどうかの特殊な能力者です」

「そ、それはとても稀有な能力だと思うが、一歩間違えれば危険極まりない能力でもあるという事か……」

ルドヴィックのその言葉に魔術師は鷹揚に頷く。

「左様にございます。闇属性や精神作用に特化した能力者を大量に輩出する事が可能となりますので、悪用される危険性があります」

「逆に返せば良質な高魔力保持者を多く産出し、将来の国益に繋げる事も出来るわけだ」

「はい。ですので、被験者の情報はこれまで以上に厳重な機密扱いをせねばならないと存じます」

エクトルが何やら思案して魔術師に訊ねる。

「結婚する相手の条件は何かあるのか?」

「いいえとくには。魔力の無い人間の子を産むことも可能と思われます。宝の持ち腐れとなりますが……」

「悪用されない為にも彼女の婚姻は国の管理下とせねばならぬな」

「あぁでも、夫となる人間が高魔力保持者なら、被験者との魔力の相性はあるかもしれませんね。何せ腹の中で魔力を増幅させるのですから、相性が合わなければ母体に支障をきたすやもしれません」

魔術師がそう言うとエクトルは「なるほど」と言って頷いた。



魔術師が退室して執務室に二人だけとなり、エクトルはルドヴィックに言った。

「とんでもない結果が出ましたね」

「そうだな……下手をすればリュミナは子を産むだけの道具にされかねんな。倫理的にそれはよろしくないだろう」

「しかしこの結果はもちろん陛下や王太子殿下にも上がり、ドウィッチ嬢の処遇は国が決める事になります。彼女の場合、両親は詐欺紛いの横領で服役中ですし」

「……父上はリュミナの能力を捨ておかないはずだ。将来、国を支える優秀な人材の誕生を望まれるだろう」

「もしドウィッチ嬢がそれを拒んだら?」

「命令を下して強制的に結婚と出産をさせる……という事はなさらないだろうが、どちらにせよリュミナが一生国の監視下に置かれるのは間違いないな。可哀想だが持って生まれた能力のために彼女に自由はない」

「夫となる人間も国が選ぶ事になりますね。大昔の国家に存在した一妻多夫制が選択されるかもしれません。少しでも多くの能力者を誕生させるために」

「おそらくな……」

「………殿下と俺もその候補者に入れられる可能性がありますね」

エクトルのその言葉にルドヴィックが目をむく。

「まさかっ、我々には婚約者がいるのだぞっ?」

「だけど殿下も俺も古の血エンシェントブラッドを受け継ぐ家系の魔力保持者です。しかもドウィッチ嬢とは学友関係にある。手っ取り早く宛てがわれる可能性は高いかと」

「……合理性を優先させる父上の事だ。大いに有り得るな……しかし私はベス以外を娶るつもりはない。側妃も要らぬ」

「俺もですよ。幼い頃から、プリムローズだけを想ってきました。あと数年でようやく婚姻できるというのに失うつもりはありません」

「しかしどうすればよいのだっ……お前はともかく私は王子としての立場上、婚姻は国益を伴うのが条件となるっ……」

ルドヴィックが苦渋に満ちた顔でそう告げる。
それに対し、エクトルは声のトーンを落として答えた。

「考えたのですが、我々の魔力がドウィッチ嬢の魔力と相性が合わなければ良いのではないでしょうか。先程も魔術師が言っていたでしょう?魔力の相性があると」

「た、確かに言っていたが……そんな事が可能なのか?」

「幸い、ここにドウィッチ嬢の魔力について詳細に書かれた書類があります。それを基に一時的に魔力の性質を変える魔法薬を手に入れるのです。しばらくはそれを服用して、ドウィッチ嬢の今後が定まるまでやり過ごすしかないでしょうね」

「コラールとイヴァンはどうする?」

「彼らにも話し、自分で決めて貰いましょう……イヴァンのヤツはドウィッチ嬢の夫になりたいと言いそうですが……」

「やはりアイツはリュミナに惚れたか……」


そんな感じでコソコソと今後の対策を二人で練っていたその時、執務室に火急の知らせという書状が届けられた。

その書状に目を通したルドヴィックが驚愕する。

「な、なんだとっ!?」

ルドヴィックのその様子に嫌な予感がしたエクトルが彼に訊ねた。

「……殿下、何かあったのですか……?その知らせは学院から……?」

書状に裏面に箔押しされた貴族院学院の院章を見るにそれが学院からだとわかる。
怪訝な顔をするエクトルにルドヴィックが言う。


「エリザベスやプリムローズ嬢たちが、学院に退学届を提出したそうだ。理由は国外に移住するとの事だとっ……」

「………ち、」

それを聞いた瞬間、エクトルは舌打ちして執務室を飛び出した。






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腹黒執着男の本領発揮となるか……?


原作を知るエリザベスはリュミナの能力も知っていました。
あえてプリムローズたちに聞かせるつもりはなかったようです。
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