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あの後の事〜求婚〜
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今朝更新した分のサブタイトル、一つ間違えてつけちゃっておりました。
正しくは今回のお話のタイトルです。
シレっと修正しておきましたが、
お気付きの方…ごめんなしゃい(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)ボケマクリ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハルジオに誘われて病院の外へ散歩に出たミルル。
不自由な足を引き摺りながらも、頬にあたる風が心地よくて気持ちが浮き立つ。
まだまだどこまでも歩いて行きたい気分だったが、足はそろそろ限界のようだった。
するとハルジオは、
「ミルルに教えたい場所があるんだ。まだもう少し先だから、俺が連れて行ってもいい?」と訊いてきた。
教えたい場所とはどんな所だろう。
もちろん行ってみたいと思うミルルだが、はて?連れて行くとは?と笑みを浮かべたまま考えていたら、肯定と捉えられたのかふいに足下が宙に浮いた。
「きゃっ?」
驚いて思わず何かにしがみ付く。
だけどしがみ付いた先にハルジオの顔が間近にあって、これまたミルルは驚いた。
それもそのはず、ハルジオはミルルを横抱きに抱き上げたのだから。
「ハル先輩っ?」
「しっかり捕まってて。杖も持っててね」
そう言ってハルジオは軽い足取りで歩いて行く。
尋常じゃなく近い距離にドキドキが止まらない。
以前酔っ払って負ぶって貰った記憶はあるが今は素面だし、向かい合ってのこの至近距離はヤバいと思った。
ミルルは自分人生上最速で動いているであろう心臓の音がハルジオに聞こえないかと心配になった。
少し歩いて、ハルジオはミルルを池の畔にある東屋のベンチに下ろしてくれた。
鬱蒼とした木々に囲まれ、まるで個室のような雰囲気の東屋。
落ち着いて本を読むのにいい場所だなとミルルは思った。
池から少し水気を含んだ爽やかな風も吹いてくる。
小鳥の囀りも耳に心地よく、ミルルは別世界に来たような気分になった。
「素敵な所ですねハル先輩、連れてきてくれてありがとうございます」
素直な気持ちでお礼を言うと、ハルジオは優しい笑みを浮かべた。
「どういたしまして。一世一代の告白をするのに、病室のベッドの上じゃあ嫌だなと思ったんだ」
「一世一代の告白?」
あら何かしら?と思ったミルルだが、瞬時に嫌な予感がして慌ててハルジオの手を取った。
「っハル先輩っ!思い留まってくださいっ」
「えっ?思い留まらなくてはいけないのっ?」
ミルルの言葉を別の意味で捉えたのか、大きく目を見開いたハルジオを無視してミルルは一気に言い募った。
「ハル先輩が責任を取って魔法省を辞める必要なんてありませんっ、責任があるというのならわたしにだってあります。バディは運命共同体です、それならわたしも一緒に辞めますからっ」
ハルジオは目をぱちくりさせてミルルを見ていた。
「ハル先輩は何も悪くない、最初からそう言っているでしょう?周りの人が言う責任とやらなんて、無視してください」
「ミルル……」
「ハル先輩お願い、辞めないで……」
辞めたら、もう一緒にいられなくなる。
職場の先輩後輩、仕事仲間、なんでもいい。
ハルジオの側にいられるならどんな形でも構わない。
ミルルはそう思った。
ハルジオの大きな手を握っていたミルルの手が今度は逆に包み込まれた。
「ハル先輩?」
「ミルル、俺は魔法省は辞めないよ。辞めただけで責任を取れたと思うなんて、烏滸がましいからね」
「ホント?」
「うん。本当だ。ミルル、責任云々はちょっと置いといて、俺の話を聞いて欲しいんだけど、いい?」
辞めるつもりはないとハルジオから聞き、
ミルルは安堵しながら答えた。
自然と笑みが溢れる。
「はい。お聞きします」
「ミルル……」
ハルジオのさらさらな前髪が風に揺れている。
その下の深緑の双眸がミルルを真剣に捕らえていた。
ハルジオの手に僅かだが力が篭る。
それでも初めて包み込まれたその手の温かさに、ミルルは心地よさを感じた。
ーーずっとこのまま握っていて欲しい
それは叶わぬとわかっていても、そう願わずにはいられなかった。
「ミルル。キミは俺にとって魔法省の理念の下で共に働く仲間で、信頼出来るバディで、可愛い後輩だ。だけど俺はもうそれだけの関係ではイヤなんだ。これからもキミの側にいるために、もっと相応しい存在になりたいんだ」
「相応しい存在……?」
ミルルはハルジオの瞳から目を逸らす事が出来なかった。
深い泉の底を覗くような、食い入るようにその瞳を見入ってしまう。
ハルジオの瞳に自分が映っている事に、どうしようもない喜びを感じる。
「俺は…キミより五つも年上だからオッサンで恋愛対象外なのは分かってる…でも結婚相手としてなら、五つくらい年が離れてる方が何かと上手くいくと思うんだ。俺はもちろんキミを大切にするし、幸せにすると誓う。これからまだまだリハビリを頑張るミルルを公私共に支えたいと思ってる。その立場を他の男に譲りたくないし、譲る気もない。だけどミルルの許しもなしにそれはやはり出来ないから……」
「ハル…先輩……?」
「だからミルル、俺と結婚して欲しい。ミルルのこれからの人生に、誰よりも近くで寄り添える権利が俺は欲しい。ミルル、俺はキミが可愛くてたまらないんだ……!」
ハルジオはそう言って、そっとミルルを抱き寄せた。
ミルルの背中に添えられた手が小さく震えているのを感じる。
ミルルには今、自分の身に起こっている事が信じられなかった。
ーー今…ケッコンって、先輩が言ったような気がするんだけど……
ケッコンってアレ、なんだか“結婚”と響きが似ているわ。
でもハル先輩が言うケッコンが“結婚”ではないと思うし……
だけど待って、
五つ年上の方が結婚相手としては良いだとか、
誰より近くで寄り添える権利が欲しいとか、
わたしが可愛くてたまらないとか、
どう考えても“結婚”の方を連想させる言葉よね……
まるで……プロポーズみたいな……
それにこうやって抱きしめられているって……
えっ?抱きしめっ……!?
ここへきて漸く自分がハルジオの腕の中にいる事を自覚するミルル。
「ハ、ハル先輩っ……もしかして今、わたしにプロポーズして、くれ、ました……?」
ハルジオの腕の中で小さく身動ぎしながらミルルが言った。
ハルジオはさらに力を入れて腕の中のミルルを閉じ込めて言った。
「そうだよミルル。大好きだ、どうか俺と結婚して欲しい」
正しくは今回のお話のタイトルです。
シレっと修正しておきましたが、
お気付きの方…ごめんなしゃい(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)ボケマクリ
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ハルジオに誘われて病院の外へ散歩に出たミルル。
不自由な足を引き摺りながらも、頬にあたる風が心地よくて気持ちが浮き立つ。
まだまだどこまでも歩いて行きたい気分だったが、足はそろそろ限界のようだった。
するとハルジオは、
「ミルルに教えたい場所があるんだ。まだもう少し先だから、俺が連れて行ってもいい?」と訊いてきた。
教えたい場所とはどんな所だろう。
もちろん行ってみたいと思うミルルだが、はて?連れて行くとは?と笑みを浮かべたまま考えていたら、肯定と捉えられたのかふいに足下が宙に浮いた。
「きゃっ?」
驚いて思わず何かにしがみ付く。
だけどしがみ付いた先にハルジオの顔が間近にあって、これまたミルルは驚いた。
それもそのはず、ハルジオはミルルを横抱きに抱き上げたのだから。
「ハル先輩っ?」
「しっかり捕まってて。杖も持っててね」
そう言ってハルジオは軽い足取りで歩いて行く。
尋常じゃなく近い距離にドキドキが止まらない。
以前酔っ払って負ぶって貰った記憶はあるが今は素面だし、向かい合ってのこの至近距離はヤバいと思った。
ミルルは自分人生上最速で動いているであろう心臓の音がハルジオに聞こえないかと心配になった。
少し歩いて、ハルジオはミルルを池の畔にある東屋のベンチに下ろしてくれた。
鬱蒼とした木々に囲まれ、まるで個室のような雰囲気の東屋。
落ち着いて本を読むのにいい場所だなとミルルは思った。
池から少し水気を含んだ爽やかな風も吹いてくる。
小鳥の囀りも耳に心地よく、ミルルは別世界に来たような気分になった。
「素敵な所ですねハル先輩、連れてきてくれてありがとうございます」
素直な気持ちでお礼を言うと、ハルジオは優しい笑みを浮かべた。
「どういたしまして。一世一代の告白をするのに、病室のベッドの上じゃあ嫌だなと思ったんだ」
「一世一代の告白?」
あら何かしら?と思ったミルルだが、瞬時に嫌な予感がして慌ててハルジオの手を取った。
「っハル先輩っ!思い留まってくださいっ」
「えっ?思い留まらなくてはいけないのっ?」
ミルルの言葉を別の意味で捉えたのか、大きく目を見開いたハルジオを無視してミルルは一気に言い募った。
「ハル先輩が責任を取って魔法省を辞める必要なんてありませんっ、責任があるというのならわたしにだってあります。バディは運命共同体です、それならわたしも一緒に辞めますからっ」
ハルジオは目をぱちくりさせてミルルを見ていた。
「ハル先輩は何も悪くない、最初からそう言っているでしょう?周りの人が言う責任とやらなんて、無視してください」
「ミルル……」
「ハル先輩お願い、辞めないで……」
辞めたら、もう一緒にいられなくなる。
職場の先輩後輩、仕事仲間、なんでもいい。
ハルジオの側にいられるならどんな形でも構わない。
ミルルはそう思った。
ハルジオの大きな手を握っていたミルルの手が今度は逆に包み込まれた。
「ハル先輩?」
「ミルル、俺は魔法省は辞めないよ。辞めただけで責任を取れたと思うなんて、烏滸がましいからね」
「ホント?」
「うん。本当だ。ミルル、責任云々はちょっと置いといて、俺の話を聞いて欲しいんだけど、いい?」
辞めるつもりはないとハルジオから聞き、
ミルルは安堵しながら答えた。
自然と笑みが溢れる。
「はい。お聞きします」
「ミルル……」
ハルジオのさらさらな前髪が風に揺れている。
その下の深緑の双眸がミルルを真剣に捕らえていた。
ハルジオの手に僅かだが力が篭る。
それでも初めて包み込まれたその手の温かさに、ミルルは心地よさを感じた。
ーーずっとこのまま握っていて欲しい
それは叶わぬとわかっていても、そう願わずにはいられなかった。
「ミルル。キミは俺にとって魔法省の理念の下で共に働く仲間で、信頼出来るバディで、可愛い後輩だ。だけど俺はもうそれだけの関係ではイヤなんだ。これからもキミの側にいるために、もっと相応しい存在になりたいんだ」
「相応しい存在……?」
ミルルはハルジオの瞳から目を逸らす事が出来なかった。
深い泉の底を覗くような、食い入るようにその瞳を見入ってしまう。
ハルジオの瞳に自分が映っている事に、どうしようもない喜びを感じる。
「俺は…キミより五つも年上だからオッサンで恋愛対象外なのは分かってる…でも結婚相手としてなら、五つくらい年が離れてる方が何かと上手くいくと思うんだ。俺はもちろんキミを大切にするし、幸せにすると誓う。これからまだまだリハビリを頑張るミルルを公私共に支えたいと思ってる。その立場を他の男に譲りたくないし、譲る気もない。だけどミルルの許しもなしにそれはやはり出来ないから……」
「ハル…先輩……?」
「だからミルル、俺と結婚して欲しい。ミルルのこれからの人生に、誰よりも近くで寄り添える権利が俺は欲しい。ミルル、俺はキミが可愛くてたまらないんだ……!」
ハルジオはそう言って、そっとミルルを抱き寄せた。
ミルルの背中に添えられた手が小さく震えているのを感じる。
ミルルには今、自分の身に起こっている事が信じられなかった。
ーー今…ケッコンって、先輩が言ったような気がするんだけど……
ケッコンってアレ、なんだか“結婚”と響きが似ているわ。
でもハル先輩が言うケッコンが“結婚”ではないと思うし……
だけど待って、
五つ年上の方が結婚相手としては良いだとか、
誰より近くで寄り添える権利が欲しいとか、
わたしが可愛くてたまらないとか、
どう考えても“結婚”の方を連想させる言葉よね……
まるで……プロポーズみたいな……
それにこうやって抱きしめられているって……
えっ?抱きしめっ……!?
ここへきて漸く自分がハルジオの腕の中にいる事を自覚するミルル。
「ハ、ハル先輩っ……もしかして今、わたしにプロポーズして、くれ、ました……?」
ハルジオの腕の中で小さく身動ぎしながらミルルが言った。
ハルジオはさらに力を入れて腕の中のミルルを閉じ込めて言った。
「そうだよミルル。大好きだ、どうか俺と結婚して欲しい」
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