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地均(なら)し
「こっちの部屋をチェルに使って貰うよ。枕カバーもシーツも掛け布団も全部おニュウだよ☆ねね、可愛いでしょ?女の子だから優しいピンクで揃えたんだよ☆」
「じゃあこのままベッドに運びます」
意識を手放したチェルカを横抱きにしたまま、ロアがそう答えた。
「チェルが起きたら美味しいものいっぱい食べさせてあげるんだ☆」
「お願いします。たっぷりと甘やかしてやってください」
「うん任せといて♪ロアは……ほどほどにね☆冷静に対処するんだよ?」
「俺は至って冷静です」
「ウソウソ☆あぁ怖い、精霊たちが“ロア激おこ”って言って笑ってるよ☆」
「……行ってきます」
「はいはーい☆いってらっしゃい!」
そうしてロアはチェルカをイグリードに預け、待機して貰っていた王太子の元へと戻った。
王太子アルマールと顔を合わせると彼にすぐに訊ねられた。
「大切な人はちゃんと保護できました?」
「はい。安全な所へ預けて来ました。お時間をいただき感謝します」
今年十六歳になるアルマール。
亡くなった王妃譲りだというアメジストの瞳は彼の為人を表すかのように澄み渡り輝いている。
アルマールが落ち着いた様子でロアに訊ねた。
「王宮内はどんな感じでしたか?」
「ざっと見渡しただけですが、かなり酷い状態ですね。禍々しい魔力が充満していましたよ」
「かなりの者が精神汚染されていると判断した方がいいようですね」
「そうですね。軽度の者から重度の者まで。状況はかなり厳しいと思います。殿下が王宮に入った途端に第二王女に洗脳された者が身柄を拘束しようと仕掛けてくるでしょうね。多勢に無勢でこちらは不利な状態です」
「そのわりには軽く話されますね」
「“感染者”の仕分けを私に任せていただけるのなら、とりあえず鬱陶しい外野は眠らせますが」
「魅了に支配されている者全員を?」
「はい」
いともあっさりとした口調で答えるロアに王太子アルマールは目を瞠る。
「し、仕分けとは何を分けるのかは私にはわかりませんが、ガードナー特級魔術師が良いのであればお任せします。……あの、一体どこまで助力願えるのか確認しておいても……?」
アルマールがロアの様子を窺うように訊いてきた。
ロアはまた何でもないことのように答える。
「禁術に関することは全て。あとそれと私の大切な人を傷付けた奴らへの報復は必ずさせていただきます。恐らく役職に就く要人の席が何席か空くはずですからその後の人事や後始末はお任せしますよ。それはもちろん、玉座も含めて」
ロアの言葉にアルマールは思わずごくんと唾をのむ。
ロアは国王をもこの件において責を負うべきだと考えている事がわかったからだ。
そしてその空席となった玉座を埋めるのは王太子である自分なのだ。
まだ先と思っていた即位に、年若い王太子は緊張の色を濃くした。
それを見透かすようにロアが告げる。
「腹を括ってください。ご父君の為政者として過ちが此度の事を招いた一端でもあるのです。国と民のために、殿下が立て直しをされないと」
国王が正しい為政者であったのなら、娘を溺愛するただの父親としてではなく、君主として王女をきちんと律し導いていたであろう。
ラビニア王女を散々甘やかし、娘の望むままにしてきたツケがまわったのだ。
アルマールは真っ直ぐにロアを見て頷いた。
その覚悟がどれほどのものなのかはわからないが、王族として王太子として責任を果たそうとする姿勢があるならまずはそれでいい。
ロアはそう思い、アルマールに告げる。
「じゃあ行きましょうか。俺は再び王宮に足を踏み入れたらすぐに術により邪魔な有象無象を鎮めます。殿下はその後から入って来てください」
「しょ、承知した」
アルマールはロアの指示に従い、従者たちにもそれを伝えた。
ロアからの合図が入り次第、随行した他の魔術師たちが護衛騎士と共にアルマールを連れて転移する運びとなった。
そしてロアは再び、一人王宮に転移する。
中央棟の屋上から遠く眼下に広がる王宮敷地内を一望した。
すぅ……と呼吸と整え一瞬で魔力を高める。
足元に出現させた魔法陣を一気に王宮敷地内全土まで展開させた。
隅々にまで陣が行き届いたのを確認すると、ロアは冷たい眼差しでつぶやいた。
「五月蝿いハエ共は寝てろ」
その途端に王宮敷地内に居た、魅了の影響下にある者がバタリバタリと意識を失い倒れてゆく。
皆、一様に瞬時に意識を刈られ、人形のようにその場に崩れ落ちた。
まだ魅了にかけられていない者は無事なので、突然周りの人間が次々と倒れているのを見てかなり驚いている。
だがクロビスや王女の周りの取り巻きたち、そしてチェルカに害意を持つ者たちは意識を失うことなくその状況を見て慄く。
ロアはその様子を精霊たちを通して知り、そしてもう一度王宮全土を見渡してこう言った。
「仕分け終了。さぁ、じゃあ始めようか」
「じゃあこのままベッドに運びます」
意識を手放したチェルカを横抱きにしたまま、ロアがそう答えた。
「チェルが起きたら美味しいものいっぱい食べさせてあげるんだ☆」
「お願いします。たっぷりと甘やかしてやってください」
「うん任せといて♪ロアは……ほどほどにね☆冷静に対処するんだよ?」
「俺は至って冷静です」
「ウソウソ☆あぁ怖い、精霊たちが“ロア激おこ”って言って笑ってるよ☆」
「……行ってきます」
「はいはーい☆いってらっしゃい!」
そうしてロアはチェルカをイグリードに預け、待機して貰っていた王太子の元へと戻った。
王太子アルマールと顔を合わせると彼にすぐに訊ねられた。
「大切な人はちゃんと保護できました?」
「はい。安全な所へ預けて来ました。お時間をいただき感謝します」
今年十六歳になるアルマール。
亡くなった王妃譲りだというアメジストの瞳は彼の為人を表すかのように澄み渡り輝いている。
アルマールが落ち着いた様子でロアに訊ねた。
「王宮内はどんな感じでしたか?」
「ざっと見渡しただけですが、かなり酷い状態ですね。禍々しい魔力が充満していましたよ」
「かなりの者が精神汚染されていると判断した方がいいようですね」
「そうですね。軽度の者から重度の者まで。状況はかなり厳しいと思います。殿下が王宮に入った途端に第二王女に洗脳された者が身柄を拘束しようと仕掛けてくるでしょうね。多勢に無勢でこちらは不利な状態です」
「そのわりには軽く話されますね」
「“感染者”の仕分けを私に任せていただけるのなら、とりあえず鬱陶しい外野は眠らせますが」
「魅了に支配されている者全員を?」
「はい」
いともあっさりとした口調で答えるロアに王太子アルマールは目を瞠る。
「し、仕分けとは何を分けるのかは私にはわかりませんが、ガードナー特級魔術師が良いのであればお任せします。……あの、一体どこまで助力願えるのか確認しておいても……?」
アルマールがロアの様子を窺うように訊いてきた。
ロアはまた何でもないことのように答える。
「禁術に関することは全て。あとそれと私の大切な人を傷付けた奴らへの報復は必ずさせていただきます。恐らく役職に就く要人の席が何席か空くはずですからその後の人事や後始末はお任せしますよ。それはもちろん、玉座も含めて」
ロアの言葉にアルマールは思わずごくんと唾をのむ。
ロアは国王をもこの件において責を負うべきだと考えている事がわかったからだ。
そしてその空席となった玉座を埋めるのは王太子である自分なのだ。
まだ先と思っていた即位に、年若い王太子は緊張の色を濃くした。
それを見透かすようにロアが告げる。
「腹を括ってください。ご父君の為政者として過ちが此度の事を招いた一端でもあるのです。国と民のために、殿下が立て直しをされないと」
国王が正しい為政者であったのなら、娘を溺愛するただの父親としてではなく、君主として王女をきちんと律し導いていたであろう。
ラビニア王女を散々甘やかし、娘の望むままにしてきたツケがまわったのだ。
アルマールは真っ直ぐにロアを見て頷いた。
その覚悟がどれほどのものなのかはわからないが、王族として王太子として責任を果たそうとする姿勢があるならまずはそれでいい。
ロアはそう思い、アルマールに告げる。
「じゃあ行きましょうか。俺は再び王宮に足を踏み入れたらすぐに術により邪魔な有象無象を鎮めます。殿下はその後から入って来てください」
「しょ、承知した」
アルマールはロアの指示に従い、従者たちにもそれを伝えた。
ロアからの合図が入り次第、随行した他の魔術師たちが護衛騎士と共にアルマールを連れて転移する運びとなった。
そしてロアは再び、一人王宮に転移する。
中央棟の屋上から遠く眼下に広がる王宮敷地内を一望した。
すぅ……と呼吸と整え一瞬で魔力を高める。
足元に出現させた魔法陣を一気に王宮敷地内全土まで展開させた。
隅々にまで陣が行き届いたのを確認すると、ロアは冷たい眼差しでつぶやいた。
「五月蝿いハエ共は寝てろ」
その途端に王宮敷地内に居た、魅了の影響下にある者がバタリバタリと意識を失い倒れてゆく。
皆、一様に瞬時に意識を刈られ、人形のようにその場に崩れ落ちた。
まだ魅了にかけられていない者は無事なので、突然周りの人間が次々と倒れているのを見てかなり驚いている。
だがクロビスや王女の周りの取り巻きたち、そしてチェルカに害意を持つ者たちは意識を失うことなくその状況を見て慄く。
ロアはその様子を精霊たちを通して知り、そしてもう一度王宮全土を見渡してこう言った。
「仕分け終了。さぁ、じゃあ始めようか」
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