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プリンメンタルは伊達じゃない
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“話しておきたいことがある”
彼氏(だったような気がする)のルーターからそう言われ、キャスリンは悶々としていた。
一体何を話しておきたいことがあるのいうのか。
───決まってるわ!交際はなかったことに……と言われるのよっ……!
妖精に恋をして、王女様の側にずっといたいと言われるのよっ……!
本当ならキャスリンはこんな卑屈な考えをする子ではない。
だけど留学から帰り、マルティナ王女の世話役に指名されてからというもの、ルーターは常に王女の側にいる。
キャスリンから見ても二人は本当にお似合いで、学内でもルーターと王女が想い合っているという噂はもはや事実として囁かれている。
そんな様を見ているから、たまに時間を作って会いに来てくれても何か良くない話しがあるのではないかと思ってしまうのだ。
それならそうとさっさと顔を付き合わせて、死刑宣告を受けてスッキリとフラレればいいとも思うのだが、いかんせんプリンメンタルのキャスリン。
それによる心の衝撃に立ち向かう勇気がまだ持てないのである。
───もう少し、もう少しだけ時間をちょうだい……!そうしたらきっと、ルーターの恋を祝福して応援出来るようになると思うから……!
幼馴染として、きっと大好きな彼の幸せを願えるようになると思うから。
そのしっかりハッキリとした顔立ちとは裏腹に、
傷付きやくす繊細な心を持つキャスリンはそうやって逃げを打つことで自分の心を守っているのであった。
と、いうわけでキャスリンは時間を作って欲しいと言われても、ルーターとの接触を避けまくっていた。
登校時間を早めたり、逆に遅刻ギリギリの時間まで寮から出なかったり。
昼食は事前に頼んでおけば寮母さんが作ってくれるので、それを持って学内の人気のないところでこっそりと食べて決して食堂には寄り付かないようにした。
(食堂のテラス席がいつもマルティナ王女とルーターやその他の男子生徒のランチの定位置だ)
後は移動教室や図書室などでルーターと鉢合わせをしないよう心掛けたのである。
それは意外と簡単な事だ。
マルティナ王女は目立つので、彼女が動くと大概周りの気配でそれを察知できる。
必ず王女の側にいるルーターを避けて行動するなど簡単な事であった。
が、しかしとうとうルーターの方が強行に出た。
魔道具技術の授業が終わり移動している時に強引に拉致られたのだ。
周りの生徒に怪しまれないようにキャスリンが急に具合が悪くなったという態を装い、医務室に連れて行くと言ってその場から連れ去ろうとする。
一緒に移動していたエレナが止めに入ろうとしてくれたが、彼女の方はそれを婚約者のシヴァルに阻止されていた。
そして有無を言わせないルーターの圧力に負け、まんまとキャスリンは誰もいない備品室に連れて来られたのであった。
「……話があると言ったよな?どうして俺を避ける?」
少し苛立ったような、それでいてどこか焦っているようなルーターのもの言いにキャスリンは何と答えていいのか困惑してしまう。
「だって……」
「俺たちの事での大切な話なんだ。聞いてくれないと今後の事に差し支えてしまうし、心配で役目に就けない」
───やっぱり!
キャスリンはルーターの言葉から、自分が恐れていたことがやはり現実なのだと悟った。
俺たちの事とはこの彼氏彼女の関係のこと。
今後の行動とはマルティナ王女との関係のことだ。
非常な現実を受け入れたくなくてキャスリンはぎゅっと目をつぶる。
──いやだ。ずっと、ずっと好きだったんだもの。それを勇気を出して告白してそれを受け入れて貰えて……本当に本当に嬉しかったのに……。
それがまだ交際らしい事が何も始まらないまま終わるなんて……。
悲し過ぎてその現実にとてもじゃないが立ち向かえる気がしない。
───今はまだ無理!!絶対無理!!ここでルーターにフラレたら死んでしまえる自信がある!!
キャスリンはそっと制服のスカートのボケットに手を入れる。
そして護身用に父親から渡されていたとある魔道具をその手に握る。
発動条件は魔力を流し込みその場所に行きたいと強く願うこと。
キャスリンはその場所を頭に思い浮かべた。
ルーターがキャスリンに話しかけてくる。
「キャス。今、俺が置かれているこの状況だが、俺の心は……「イヤっ!聞きたくないっ!!」
キャスリンはルーターの言葉を遮ってそう叫んでいた。
マルティナ王女に心を移したなんて、彼の口から聞きたくはなかった。
「キャス……?」
「ごめんなさいルーターっ……でもまだその言葉を受け入れる事が私には出来ないのっ、もう少し、もう少しだけ時間をちょうだい……」
「え?キャス、それはどういう……?っ、キャスっ!?」
魔道具が発動した気配を感知したのだろう、ルーターが慌てた様子でキャスリンに手を伸ばそうとした。
「ごめん、ごめんなさい……」
キャスリンはその言葉を残し、転移魔道具で転移してその場から逃げた。
魔法学校入学時に、何か危険な目に巻き込まれた時にこれを使って逃げなさいと、まだ転移魔法が使えないキャスリンに父親が渡してくれたのだ。
それを使い、キャスリンはルーターの前から、現実から逃げ出したのだ。
逃げても意味はない。と、誰もが思うだろう。
しかしそんな事はない!逃げこそ最大の防御である!
と大声で声で叫べるほど、キャスリンのプリンメンタルは伊達ではない。
「キャ、キャス………」
後には呆然と立ち尽くすルーターだけが残された。
彼氏(だったような気がする)のルーターからそう言われ、キャスリンは悶々としていた。
一体何を話しておきたいことがあるのいうのか。
───決まってるわ!交際はなかったことに……と言われるのよっ……!
妖精に恋をして、王女様の側にずっといたいと言われるのよっ……!
本当ならキャスリンはこんな卑屈な考えをする子ではない。
だけど留学から帰り、マルティナ王女の世話役に指名されてからというもの、ルーターは常に王女の側にいる。
キャスリンから見ても二人は本当にお似合いで、学内でもルーターと王女が想い合っているという噂はもはや事実として囁かれている。
そんな様を見ているから、たまに時間を作って会いに来てくれても何か良くない話しがあるのではないかと思ってしまうのだ。
それならそうとさっさと顔を付き合わせて、死刑宣告を受けてスッキリとフラレればいいとも思うのだが、いかんせんプリンメンタルのキャスリン。
それによる心の衝撃に立ち向かう勇気がまだ持てないのである。
───もう少し、もう少しだけ時間をちょうだい……!そうしたらきっと、ルーターの恋を祝福して応援出来るようになると思うから……!
幼馴染として、きっと大好きな彼の幸せを願えるようになると思うから。
そのしっかりハッキリとした顔立ちとは裏腹に、
傷付きやくす繊細な心を持つキャスリンはそうやって逃げを打つことで自分の心を守っているのであった。
と、いうわけでキャスリンは時間を作って欲しいと言われても、ルーターとの接触を避けまくっていた。
登校時間を早めたり、逆に遅刻ギリギリの時間まで寮から出なかったり。
昼食は事前に頼んでおけば寮母さんが作ってくれるので、それを持って学内の人気のないところでこっそりと食べて決して食堂には寄り付かないようにした。
(食堂のテラス席がいつもマルティナ王女とルーターやその他の男子生徒のランチの定位置だ)
後は移動教室や図書室などでルーターと鉢合わせをしないよう心掛けたのである。
それは意外と簡単な事だ。
マルティナ王女は目立つので、彼女が動くと大概周りの気配でそれを察知できる。
必ず王女の側にいるルーターを避けて行動するなど簡単な事であった。
が、しかしとうとうルーターの方が強行に出た。
魔道具技術の授業が終わり移動している時に強引に拉致られたのだ。
周りの生徒に怪しまれないようにキャスリンが急に具合が悪くなったという態を装い、医務室に連れて行くと言ってその場から連れ去ろうとする。
一緒に移動していたエレナが止めに入ろうとしてくれたが、彼女の方はそれを婚約者のシヴァルに阻止されていた。
そして有無を言わせないルーターの圧力に負け、まんまとキャスリンは誰もいない備品室に連れて来られたのであった。
「……話があると言ったよな?どうして俺を避ける?」
少し苛立ったような、それでいてどこか焦っているようなルーターのもの言いにキャスリンは何と答えていいのか困惑してしまう。
「だって……」
「俺たちの事での大切な話なんだ。聞いてくれないと今後の事に差し支えてしまうし、心配で役目に就けない」
───やっぱり!
キャスリンはルーターの言葉から、自分が恐れていたことがやはり現実なのだと悟った。
俺たちの事とはこの彼氏彼女の関係のこと。
今後の行動とはマルティナ王女との関係のことだ。
非常な現実を受け入れたくなくてキャスリンはぎゅっと目をつぶる。
──いやだ。ずっと、ずっと好きだったんだもの。それを勇気を出して告白してそれを受け入れて貰えて……本当に本当に嬉しかったのに……。
それがまだ交際らしい事が何も始まらないまま終わるなんて……。
悲し過ぎてその現実にとてもじゃないが立ち向かえる気がしない。
───今はまだ無理!!絶対無理!!ここでルーターにフラレたら死んでしまえる自信がある!!
キャスリンはそっと制服のスカートのボケットに手を入れる。
そして護身用に父親から渡されていたとある魔道具をその手に握る。
発動条件は魔力を流し込みその場所に行きたいと強く願うこと。
キャスリンはその場所を頭に思い浮かべた。
ルーターがキャスリンに話しかけてくる。
「キャス。今、俺が置かれているこの状況だが、俺の心は……「イヤっ!聞きたくないっ!!」
キャスリンはルーターの言葉を遮ってそう叫んでいた。
マルティナ王女に心を移したなんて、彼の口から聞きたくはなかった。
「キャス……?」
「ごめんなさいルーターっ……でもまだその言葉を受け入れる事が私には出来ないのっ、もう少し、もう少しだけ時間をちょうだい……」
「え?キャス、それはどういう……?っ、キャスっ!?」
魔道具が発動した気配を感知したのだろう、ルーターが慌てた様子でキャスリンに手を伸ばそうとした。
「ごめん、ごめんなさい……」
キャスリンはその言葉を残し、転移魔道具で転移してその場から逃げた。
魔法学校入学時に、何か危険な目に巻き込まれた時にこれを使って逃げなさいと、まだ転移魔法が使えないキャスリンに父親が渡してくれたのだ。
それを使い、キャスリンはルーターの前から、現実から逃げ出したのだ。
逃げても意味はない。と、誰もが思うだろう。
しかしそんな事はない!逃げこそ最大の防御である!
と大声で声で叫べるほど、キャスリンのプリンメンタルは伊達ではない。
「キャ、キャス………」
後には呆然と立ち尽くすルーターだけが残された。
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