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ルーターの本音。そしてエレナの、
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「ルーターっ!?何をしているのっ!?」
突然自分の側から離れて他の女子生徒を抱きしめるルーターを見て、マルティナ王女は驚愕に満ちた声を発した。
周りの皆も吃 驚の表情でキャスリンとルーターを瞠目している。
それはそうだろう。
今この瞬間まで、ルーター=ビギンズはマルティナ王女と恋仲だと思われていたのだから。
それが突然、泣いているキャスリンを悲しげにそして愛おしげに抱きしめるルーターを見て、皆は只々驚くばかりであった。
「うっ……ひっく、うっく……」
ルーターの腕の中で小さく震えて泣くキャスリンを、エレナはやれやれと優しげな眼差しで見つめていた。
一方のマルティナは目の前で起きている光景が受け入れられないのか信じられないのか、かなり混乱した様子でルーターに言った。
「ル、ルーターっ!こちらに戻りなさいっ!わたくしの側にっ!」
対してルーターは冷静、というよりはかなり冷ややかな態度でマルティナに返す。
「……なぜです?」
「な、なぜって、貴方はわたくしのものでしょうっ!?」
「いつ私が殿下のものになったのです?私はただのお世話役ですよ。まぁそれも今を持ちまして辞めさせて頂きますが」
「そんなの許さないわっ!どうしたのルーター……?いつもわたくしの側に居てくれたじゃない、その女と付き合っていると留学中に情報を手に入れていたけれど、わたくしが魔法学校に来てからはその女を放置してわたくしを選んだじゃない」
「はて、異な事を仰る。私は貴女を選んだ覚えはないですし、彼女を放置した覚えもありません。ただ、彼女には逃げられまくっておりましたが……」
最後の方の言葉は力ない様子でルーターがそう言った。
それらの会話を聞き、いつの間にか泣き止んでいたキャスリンが目をぱちくりとさせている。
それを見たルーターが優しく微笑みかける。
「キャス、今まで本当にごめんな。校長よりももっと上にいる怖い人からマルティナ王女を見張るように命令されていたんだ」
「え?命令?こ、怖い人……?」
なんとも恐ろしいその単語にキャスリンが目を丸くすると、教室の入り口から馴染みのある声が聞こえた。
「誰が怖い人だって?それに命令じゃないぞ、指示したんだ」
ルーターはその声の主に言葉を返す。
「貴方のような立場の方からの指示は命令と同義ですよ」
「相変わらず屁理屈が上手い」
そうルーターと軽口を叩き合い教室に入って来たのは、クラスメイトで友人のシヴァル=アデールであった。
「シヴァル……?」
まるで既知の間柄のように気安い二人の会話にキャスリンはポカンとした表情を浮かべている。
しかし明らかに泣いた後の目を見て、シヴァルは申し訳なさそうにキャスリンに言う。
「泣くほど辛い思いをさせてすまなかった。外交上そして世論上、下手は打てなかったんだ。邪魔者を平和的に排除するためには諸々の手立てと状況が必要だったんだよ」
「邪魔者を……排除?」
「これから説明するよ」
ルーターがキャスリンに言った。
今まで誰も見たことがないような温かくて優しい笑顔にその場にいた皆が度肝を抜かれていた。
あの、ポーカーフェイスのルーター=ビギンズが聖職者のような優しげな微笑みをっ……!?
ルーターは無口であまり表情筋を使わないと思っていたマルティナもかなり驚いている様子だった。
それらの反応を他所に、エレナがツンとしてシヴァルに言う。
「今朝は随分と遅い登校ね」
「そうか?始業ベルはまだ鳴ってないぞ」
「貴方のおかげで面倒な王女に絡まれてしまって、いい迷惑だわ」
「悪かったって。でもキミならこんな程度の低い王女の一人や二人、軽く蹴散らせるだろう」
「私はここに同年代との交流に来ているのよ?それなのになぜここでも外交関係や世情を気にしなくてはいけないのかしら」
「それが俺たちの運命だからさ」
「もう!知らないっ」
ああ言えばこう言うシヴァルに腹を立てたエレナがそっぽを向く。
シヴァルは慌ててエレナの手を取り、宥めるように指先にキスを落とした。
「機嫌を直して、俺のお姫様」
「そんな事で絆されたりはしないわよ」
エレナがジト目で睨めつけるとシヴァルは肩を竦めて微笑んだ。
そのやり取りを唖然として見ていたマルティナだが、やがてこうしてはいられないといった態でシヴァルに擦り寄った。
「シヴァル~、ねぇ聞いて?その方ったら酷いのよ?王女であるわたくしを馬鹿にした発言ばかりをするの……!どうせシヴァルの前では淑女ぶっているのでしょう?でもその女、とんでもない性悪だわ。不敬罪で今すぐハイラント騎士団に引渡して?」
お得意の首を傾げて斜め下からの上目遣い、マルティナは自身の魅力を充分に引き出した妖精スマイルでシヴァルにオネダリをした。
それを見下ろすシヴァルがマルティナに応える。
「あぁ、ハイラント騎士団になら既に連絡済みだ」
「まぁ!さすがはシヴァルだわ!ルーターは訳の分からない事を言ってわたくしを困らせるの。やはりわたくしには貴方だけね……!」
自分のためにシヴァルが動いたのだと思い、マルティナは感激して目を潤ませる。
「わたくし、貴方とルーターを自国に連れて戻るつもりでしたけど、もう貴方一人で充分だわ」
嬉しそうにそう告げるマルティナを、シヴァルは冷ややかな目で見る。
その時、先程まで調子よくキャスリンとエレナを断罪していた男子生徒が喜色満面で声を上げた。
「本当だ!ハイラント騎士団が校庭にっ……!二十名ほどの小班だが、女二人拘束するには充分だなっ!」
「おぉ……!さすがは聞きしに勝るハイラント騎士団!」
マルティナの取り巻きたちが俄に活気づく。
それを見て、シヴァルが特進クラスのマルティナの取り巻きたちに告げた。
「あぁ喜んでいるところすまないが、彼らはエレナを捕らえに来たのではない」
「………へ?」
「は?」
「え……?」
男子生徒たちがキョトンとしている中、シヴァルはマルティナに言う。
「ハイラント騎士団の者たちにエレナを捕らえるように命じても無駄だぞ?彼らはエレナを守る立場にある者たちだから」
「は?な、何を言っているの?」
「今学校に到着した騎士たちは王家専属の近衛騎士だちだ。そして彼らはエレナに忠誠を誓っている」
そのシヴァルの言葉を聞き、皆が一斉にエレナを見た。
彼女は凛とした佇まいでそこに立ち、皆の視線を受けるも特段気にした様子もなかった。
シヴァルはエレナの隣に立ち、彼女の手を取り腰を抱いた。
「高位貴族とではなく一般的な平民たちと接したいとの彼女の強い希望で身分を偽って入学していが、このまま隠し通すのは難しくなってしまった」
「エレナ……?」
キャスリンが不思議そうにエレナを見て彼女の名を呼ぶ。
それが聞こえたエレナは少し困った顔をしてキャスリンに微笑んだ。
それはいつも見ている笑顔と変わらないはずなのに、どこか遠くに感じて……。
シヴァルが皆に向け、声高らかに告げる。
「彼女はこのハイラント王国第二王女、ハイラント=オ=ミル=エメレイン王女殿下だ」
「……え?………え、ええ~っ!?」
驚きのあまり、思わず発したキャスリンの大きな声が教室に響き渡った。
───────────────────────
朝の始業ベルがなかなか鳴らない……
これぞご都合主義!!(*`ω´*)ドヤッ
突然自分の側から離れて他の女子生徒を抱きしめるルーターを見て、マルティナ王女は驚愕に満ちた声を発した。
周りの皆も吃 驚の表情でキャスリンとルーターを瞠目している。
それはそうだろう。
今この瞬間まで、ルーター=ビギンズはマルティナ王女と恋仲だと思われていたのだから。
それが突然、泣いているキャスリンを悲しげにそして愛おしげに抱きしめるルーターを見て、皆は只々驚くばかりであった。
「うっ……ひっく、うっく……」
ルーターの腕の中で小さく震えて泣くキャスリンを、エレナはやれやれと優しげな眼差しで見つめていた。
一方のマルティナは目の前で起きている光景が受け入れられないのか信じられないのか、かなり混乱した様子でルーターに言った。
「ル、ルーターっ!こちらに戻りなさいっ!わたくしの側にっ!」
対してルーターは冷静、というよりはかなり冷ややかな態度でマルティナに返す。
「……なぜです?」
「な、なぜって、貴方はわたくしのものでしょうっ!?」
「いつ私が殿下のものになったのです?私はただのお世話役ですよ。まぁそれも今を持ちまして辞めさせて頂きますが」
「そんなの許さないわっ!どうしたのルーター……?いつもわたくしの側に居てくれたじゃない、その女と付き合っていると留学中に情報を手に入れていたけれど、わたくしが魔法学校に来てからはその女を放置してわたくしを選んだじゃない」
「はて、異な事を仰る。私は貴女を選んだ覚えはないですし、彼女を放置した覚えもありません。ただ、彼女には逃げられまくっておりましたが……」
最後の方の言葉は力ない様子でルーターがそう言った。
それらの会話を聞き、いつの間にか泣き止んでいたキャスリンが目をぱちくりとさせている。
それを見たルーターが優しく微笑みかける。
「キャス、今まで本当にごめんな。校長よりももっと上にいる怖い人からマルティナ王女を見張るように命令されていたんだ」
「え?命令?こ、怖い人……?」
なんとも恐ろしいその単語にキャスリンが目を丸くすると、教室の入り口から馴染みのある声が聞こえた。
「誰が怖い人だって?それに命令じゃないぞ、指示したんだ」
ルーターはその声の主に言葉を返す。
「貴方のような立場の方からの指示は命令と同義ですよ」
「相変わらず屁理屈が上手い」
そうルーターと軽口を叩き合い教室に入って来たのは、クラスメイトで友人のシヴァル=アデールであった。
「シヴァル……?」
まるで既知の間柄のように気安い二人の会話にキャスリンはポカンとした表情を浮かべている。
しかし明らかに泣いた後の目を見て、シヴァルは申し訳なさそうにキャスリンに言う。
「泣くほど辛い思いをさせてすまなかった。外交上そして世論上、下手は打てなかったんだ。邪魔者を平和的に排除するためには諸々の手立てと状況が必要だったんだよ」
「邪魔者を……排除?」
「これから説明するよ」
ルーターがキャスリンに言った。
今まで誰も見たことがないような温かくて優しい笑顔にその場にいた皆が度肝を抜かれていた。
あの、ポーカーフェイスのルーター=ビギンズが聖職者のような優しげな微笑みをっ……!?
ルーターは無口であまり表情筋を使わないと思っていたマルティナもかなり驚いている様子だった。
それらの反応を他所に、エレナがツンとしてシヴァルに言う。
「今朝は随分と遅い登校ね」
「そうか?始業ベルはまだ鳴ってないぞ」
「貴方のおかげで面倒な王女に絡まれてしまって、いい迷惑だわ」
「悪かったって。でもキミならこんな程度の低い王女の一人や二人、軽く蹴散らせるだろう」
「私はここに同年代との交流に来ているのよ?それなのになぜここでも外交関係や世情を気にしなくてはいけないのかしら」
「それが俺たちの運命だからさ」
「もう!知らないっ」
ああ言えばこう言うシヴァルに腹を立てたエレナがそっぽを向く。
シヴァルは慌ててエレナの手を取り、宥めるように指先にキスを落とした。
「機嫌を直して、俺のお姫様」
「そんな事で絆されたりはしないわよ」
エレナがジト目で睨めつけるとシヴァルは肩を竦めて微笑んだ。
そのやり取りを唖然として見ていたマルティナだが、やがてこうしてはいられないといった態でシヴァルに擦り寄った。
「シヴァル~、ねぇ聞いて?その方ったら酷いのよ?王女であるわたくしを馬鹿にした発言ばかりをするの……!どうせシヴァルの前では淑女ぶっているのでしょう?でもその女、とんでもない性悪だわ。不敬罪で今すぐハイラント騎士団に引渡して?」
お得意の首を傾げて斜め下からの上目遣い、マルティナは自身の魅力を充分に引き出した妖精スマイルでシヴァルにオネダリをした。
それを見下ろすシヴァルがマルティナに応える。
「あぁ、ハイラント騎士団になら既に連絡済みだ」
「まぁ!さすがはシヴァルだわ!ルーターは訳の分からない事を言ってわたくしを困らせるの。やはりわたくしには貴方だけね……!」
自分のためにシヴァルが動いたのだと思い、マルティナは感激して目を潤ませる。
「わたくし、貴方とルーターを自国に連れて戻るつもりでしたけど、もう貴方一人で充分だわ」
嬉しそうにそう告げるマルティナを、シヴァルは冷ややかな目で見る。
その時、先程まで調子よくキャスリンとエレナを断罪していた男子生徒が喜色満面で声を上げた。
「本当だ!ハイラント騎士団が校庭にっ……!二十名ほどの小班だが、女二人拘束するには充分だなっ!」
「おぉ……!さすがは聞きしに勝るハイラント騎士団!」
マルティナの取り巻きたちが俄に活気づく。
それを見て、シヴァルが特進クラスのマルティナの取り巻きたちに告げた。
「あぁ喜んでいるところすまないが、彼らはエレナを捕らえに来たのではない」
「………へ?」
「は?」
「え……?」
男子生徒たちがキョトンとしている中、シヴァルはマルティナに言う。
「ハイラント騎士団の者たちにエレナを捕らえるように命じても無駄だぞ?彼らはエレナを守る立場にある者たちだから」
「は?な、何を言っているの?」
「今学校に到着した騎士たちは王家専属の近衛騎士だちだ。そして彼らはエレナに忠誠を誓っている」
そのシヴァルの言葉を聞き、皆が一斉にエレナを見た。
彼女は凛とした佇まいでそこに立ち、皆の視線を受けるも特段気にした様子もなかった。
シヴァルはエレナの隣に立ち、彼女の手を取り腰を抱いた。
「高位貴族とではなく一般的な平民たちと接したいとの彼女の強い希望で身分を偽って入学していが、このまま隠し通すのは難しくなってしまった」
「エレナ……?」
キャスリンが不思議そうにエレナを見て彼女の名を呼ぶ。
それが聞こえたエレナは少し困った顔をしてキャスリンに微笑んだ。
それはいつも見ている笑顔と変わらないはずなのに、どこか遠くに感じて……。
シヴァルが皆に向け、声高らかに告げる。
「彼女はこのハイラント王国第二王女、ハイラント=オ=ミル=エメレイン王女殿下だ」
「……え?………え、ええ~っ!?」
驚きのあまり、思わず発したキャスリンの大きな声が教室に響き渡った。
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朝の始業ベルがなかなか鳴らない……
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