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旦那サマはモチを焼かれて喜んだ
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その夜、ジラルドは両手にガラクタ……いや、迷宮から持ち帰ったという土産を抱えてメルシェの家にやって来た。
要望通りにトマトシチューを食べさせてやる。
魔術師も消費する魔力を補うためか、
騎士に負けじ劣らじよく食べる。
ジラルドは鍋いっぱいに作ったトマトシチューを
一人でペロリと平らげた。
「やっぱりメルが作ったメシが一番旨い」なんて事を言われて、迂闊にも思わずキュンとした事をメルシェは闇に葬るつもりだ。
食事の後はメルシェへの土産の品の披露となり、
ジラルドが得意げにどう見てもガラクタにしか見えない物の説明をしてくれる。
やれこれは何千年前に死んだ魔物の魔力が結晶化した魔石だとか、
これは倒した魔物の角だとか、
迷宮の最下層で見つけた白くて丸い石ころだとか。
その度に
「この魔石、色も形も皮を剥く前の小芋みたいだろ?見つけた時に思わずメルだ!って思ったんだ」とか、
「この角、メルの髪色にそっくりだろ?
こんな角を生やして激おこのメルが頭に浮かんで思わず笑っちゃったんだ」とか、
「この石、皮を剥いた小芋みたいだろ?白くてツルツルですべすべしてて、これは裸のメルだなと思ってずっとポケットに入れて持ち歩いてたんだ」とか言うのだ。
ーーこいつ……わたしの事ばっかり考えていたんじゃないの。
と、一瞬トゥンクとキタが、
その後の「これをオカズに一回抜いた☆」という話を聞いてわたしのトキメキを返せと殴ってやった。
おのれ変態め……やはり出禁にしてくれようか。
そう思ったついでに丁度良かったので、メルシェはこの家に来る時のルールを取り決めようとジラルドに提案した。
「ルール?なんでそんなもの決めるんだ?」
「今のわたしとあなたとの関係は非常に微妙なものなのよ?しばらく向き合うにしても、ちゃんと線引きしておかないと、別れる時に面倒くさい事になるじゃない」
「なんで別れる前提なんだよ」
「だってわたし、世界で一番っ愛人を持つ男を軽蔑してるし、ましてや自分が愛人をもたれる妻になるつもりもないもの」
メルシェのその言葉を聞き、ジラルドは心底不思議そうな顔で尋ねてきた。
「愛人?どーして愛人?俺が愛人を作ると思ってんの?」
メルシェはジト目でジラルドを見やる。
「……あなたがわたしと離婚しないと言い張るなら、彼女の存在は愛人そのものじゃない」
「彼女?誰?ソレ?」
こいつ、惚けるのか?
「遠く離れたジラルド=アズマの噂は、
何故かよ~くわたしの耳に届いたのよ。わたしって地獄耳だったみたい」
「噂?噂って何?」
「………あなたとレディ・クレメイソンがバディ以上のいい関係だとか、王都にいる妻よりも強い絆で結ばれているとか、あなたがレディ・クレメイソンにぞっこんだとか」
「?イスラと俺が?
俺がイスラにぞっこんだって?」
ジラルドはその意味を理解しているのだろうか。
まるで小宇宙を旅しているかのような顔をしている。
「ジラルド、あなた、今の話をちゃんと理解してる?」
メルシェが問うと、ジラルドは可動域ギリギリまで首を傾げた。
「……わからん。イスラはバディというイキモノであってそれ以外の何者でもない」
「ふん。口先だけではなんとも言えるわよ」
そう。いくら本人がこう言ったって、
メルシェは何度も目撃しているのだ。
王宮内でいつもイスラ=クレメイソンを腕に絡ませている姿を。
他に仲間がいる時も、二人で王宮内を移動する時も。
だからいくらジラルドが別れたくないと言っても、メルシェだけを大切に思っているような素振りを見せても信じられないでいるのだ。
両親のようには絶対になりたくない。
自分の人生においてそれが至上命題だ。
メルシェは努めて事務的に、
ジラルドにこの家に来るにあたってのルールを告げた。
まず一つに勝手に家に入らない事。
勝手に人のベッドに入らない事。
メルシェの私物には触れない事。
そしてメルシェにも指一本触れない事。
戸籍上は夫婦だが、離婚保留中の夫婦なんて夫婦であって夫婦ではない。
お互いの為にも適切な距離を保たねば。
「このルールを守れないようなら即刻離婚だからね」
「そ、そんな……触れちゃダメなんて……
やっと蜜月をしっぽり取り戻せると思ったのに……」
「てめぇ、今すぐ追い出してやろうか」
「メ゛ルゥゥっ~~!」
「すぐに泣きつこうとするなっこの不誠実男がっ、
何がやっと蜜月をよ。それならなんで2年間も音信不通だったのよ!」
「だって最初の一年間はずっーと食糧とか現地調達しながら迷宮に潜ってたし、その後は皆んなは出たり入ったりしてたけど、俺は殆ど地上に出なかったし……」
「なんで地上に出なかったのよ?」
「すんごい珍しい古代の術式が書き残された壁画があってさ!!それの解読に全てを費やしてた☆」
「………マジか」
そうだ、この男はこういう男だと、最初に室長に聞かされていたんだった。
変人級の魔術オタク。
新しい魔術や未知の魔術に触れると寝食を忘れて没頭するらしいのだ。
「そして更なる珍しい魔術を求めてウロウロしている内に最下層まで辿り着き、いつの間にか攻略しちゃってたんだよ」
「呆れた。攻略不可と謳われた迷宮に失礼過ぎるでしょ」
その中でレディ・クレメイソンとの絆を深めたわけね……
ムカつく。
その夜はジラルドに家を追い出されたら騎士団の硬いベンチで寝るしかないと泣き落としをされ、仕方がないので隣の部屋に布団を敷いてやった。
そしてトイレ以外は部屋から出る事を固く禁じ、
メルシェは寝室にきっちりと鍵を掛けて、眠りについたのだった。
が、やはり起きたら同じベッドでジラルドにしがみ付かれていた……。
ホントにこの男は……
「ゴルァッ!!」
「痛っ!?」
◇◇◇◇◇
ランチ休憩の時に、メルシェは王宮近くの馴染みの魔道具ショップへと足を運んだ。
店の者に
「魔術師の侵入を防ぐ、鉄壁のシールドを張れる魔道具はありますか?」と尋ねると、店の者は数個の魔道具を棚から出して薦めてくれた。
「玄関などの扉や窓からの侵入を防ぐ魔道具と、転移魔法を妨害する魔道具と、家全体に結界を張れる魔道具があります。でもやはり対魔術師用とあって、少々値がはる物ばかりですよ?」
「でも有る事は有るんですね~」
メルシェが関心して言う。
家全体に結界を張る魔道具は無理だけど、転移魔法を防ぐ魔道具は一つあれば今後も安心して一人暮らしが出来るのではないだろうか。
メルシェは黙って考えを巡らせていた。
そんなメルシェに魔道具屋の店主が補足をする。
「でもこれらの魔道具が全ての魔術師に有効とはいえません。魔術師のレベルにもよりますが……失礼ですが、あなたが侵入を防ぎたいと思っている相手の魔術師の階級は?」
「……特級魔術S「あ、無理ですね、伝説レベルの魔道具でもいない限り絶対に防げません」
と言い終わる前に答えられてしまった。
そして
「そんなのを相手にするのは危険過ぎます。王宮の魔術師団にご相談されては如何でしょう?」
と本気で心配されてしまった。
その王宮魔術師団の筆頭魔術師をなんとかしたいんですけどね……とは言えない。
しょんぼりしながら店を出て王宮まで戻ろうとするメルシェの目に、その件の筆頭魔術師の姿が飛び込んで来た。
通りの向こう側、同じく王宮へ向かう道を歩いている。
……腕にイスラ=クレメイソンを絡ませながら。
メルシェは思わずジト目の半目になって見つめた。
ーーやっぱり、あの不誠実男がっ……!
抑えきれない殺意が向こうに伝わったのだろ、メルシェに気付いたジラルドが途端に嬉しそうな顔をして手を振ってくる。
反対側の腕に纏わりついていたイスラもメルシェに気付き、勝ち誇ったような挑発的な笑顔を向けて来た。
そしてわざとジラルドの腕にその豊満な胸を押し付けている。
メルシェはニッコリと極上の笑顔を貼り付け、
そしてビシィッと中指を立ててやった。
我ながらキレっキレの動きだ。
ジラルドとイスラが面食らった顔をしているのが可笑しくて、メルシェは満足して笑顔のままスタスタと王宮へと戻る。
スラングティーチャーロム(食堂のおじさん)よ、
悪い言葉と一緒に良いボディランゲージを教えてくれてありがとう♡
かなり下品だけど少し溜飲が下がったわ♪
とメルシェはお気に入りのパンプスで颯爽と歩いて行った。
一方、何故メルシェが怒ったのか理解出来ないジラルド。
傾げた首が戻る事なく考え続けている。
その様子を見かねたジュスタンが声を掛けてきた。
「さっきからどうしたんだよ、首が気持ち悪いくらいに傾いでるし、ずっーと押し黙ったままで不気味だぞ。何かあったのか?」
「さっき道で俺の小芋ちゃんに会ったんだが、何故か怒られた。顔は笑っていたのに殺意がヤバいんだ、でもなんで怒ってんのか皆目見当もつかない……はっ、やっぱり毎回腰にしがみついて寝るのを怒ってるのかな?」
「……お前そんな事してんのかよ。道で会ったって?」
「うん」
ジラルドがそう返事をすると、ジュスタンは何かに思い当たったようだ。
「あ、あー……その時、イスラも一緒にいたか?」
「仕事だからな」
「いつもみたいな感じで歩いてた?」
「?うん」
「それだな。どうせイスラと腕を組んで歩いてたんだろ?」
「?いつも歩く時はイスラがそうして来るからな?男女のバディはそうするもんだとイスラが言ってたぞ。えすこーとって言うんだろ?」
ジラルドが答えると、ジュスタンはジラルドの肩にポンと自身の手を乗せた。
「それはイスラが自分の都合がいいように言ってるだけだ。いいかよく聞けジラルド=アズマ、普通は恋人でも婚約者でも夫婦でもない男女が腕を組んで歩くなんて事はしない。それをするという事は、周りに自分達が特別な関係だと知らしめているようなものだ」
「え゛、そうなのっ?」
「……今まではお前がそれでいいならと思ってたから敢えて何も言わなかったが、嫁さんに本気で捨てられたくないならもう二度と他の女には触れさせない方がいい。勿論、お前が触れるのもダメだ」
「そうだったのか……」
「ジラルド、逆に考えみろ?メルシェさんがお前以外の男と腕を組んで歩いてたらどう思う?」
「は?なんだそりゃ、絶対に許さないぞ」
「それだよ。今お前に湧き上がった感情が、メルシェさんの気持ちだ。わかったか?」
「わかった……!もの凄くわかった!」
「そりゃあ何より。でもお前にこんな日が来るなんてな。今まで魔術しか興味がなかったお前が妻の機嫌一つに思い悩む日がくるなんて……」
ジュスタンが感無量……と言わんばかりの表情を浮かべたその時、
「二人ともどうしたの?」と、
イスラ=クレメイソンが例の如くジラルドの腕に纏わりついて来た。
腕を絡ましてくるイスラを、
ジラルドとジュスタンがじっ…と見た。
「な、何よ?」
いつも違う様子に、イスラが少し狼狽える。
ジラルドはふっ…と悟りを開いたかのような笑みを浮かべ、自身の腕に絡み付いていたイスラの手を外した。
そして何故か自慢げな表情でこう告げる。
「すまんなイスラ。いくらバディがこうするものだとしても、もう俺には不必要には触れないでくれ。俺の体は全て、妻のものだからな……」
さっきまで腕を絡めても何も言わず好きにさせていたジラルドの発言に、イスラは目を剥いた。
「どうしたのよ急にっ……」
ジラルドは尚も恍惚とした表情を浮かべながら言う。
「ふ……俺の体に違う女が触れるのを妻が嫌がるんだ……俺は妻の嫌がる事はしたくはない。
そうか……嫌だったのか……もしかしてヤキモチってヤツか?小芋ちゃんめぇ可愛いな、くそぅ犯したい」
「ちょっ、ジラルドさん、不穏な発言が聞こえましたが?」
ジュスタンのツッコミに、ジラルドはハッとして我に返る。
「そうだな、焦ってはいかん。もう二晩も欲望に耐えたんだ……俺は出来る、我慢出来る、俺はやれば出来る子なんだ……」
ブツブツとひとり言を言うジラルドにイスラは詰め寄った。
「さっきのあの女の態度が急に変わった原因ねっ?
あんなの気にする事ないわよ、あなたとわたし、ずっと上手くやって来たじゃない」
しかしそのイスラの言葉に答えたのはジラルドではなくジュスタンだった。
「イスラ、もういい加減にしとけ。お前の行動はどうもバディのそれからは逸脱してるぞ。夫婦の間に波風を立てるような言動は慎むべきだ」
「ジュスタンは黙ってて。どう考えたってあんな女より私の方がジラルドに相応しいんだもの」
「お前、どうかしてるぞ」
強く諌められ、イスラは唇を噛んだ。
ーーあの女の所為だ。あの女のっ……!
でもイスラは絶対にジラルドを諦めたくはなかった。
外見も能力も、まぁ性格はちょっとアレだけど、それを上回る価値がこの男にはある。
大陸屈指の特級魔術師であり、
この国の王宮筆頭魔術師。
貴族令嬢であり、一級魔術師としてもトップレベルの自分の横に並ぶ人間として、ジラルド=アズマは理想的だった。
あんな女に負けるもんか……!
誰がなんと言おうがやめるつもりはないとイスラはジラルドへ向けて手を伸ばした……が、そこにはもうジラルドの姿はなかった。
「アレっ!?ねぇちょっと、ジラルドはっ?」
イスラが尋ねると、ジュスタンは額を軽く押さえながら答えた。
「やっぱり我慢出来んっ!といって転移して行った。多分、メルシェさんのところだろう」
それを聞き、イスラはヒステリックに叫んだ。
「もうっ!ジラルド!!」
ジュスタンはため息を吐く。
ーーメルシェさんも気の毒に……普通の人なのにとんでもない奴に見染められて……
と心の中で合掌するジュスタンであった。
そしてジュスタンの予想通り、
ジラルドが転移した先はメルシェの元だった。
先ほどの道で見た光景がまだ記憶に生々しいメルシェは突然現れたジラルドを睨みつけた。
「……何よ、なんか用?」
だけどそんなメルシェの刺々しい様子も、今はジラルドを更に喜ばせるだけだった。
だってメルシェが自分にヤキモチを焼いてくれているとわかったから。
「ふ、そうか……ヤキモチか。そんなもの都市伝説だと思っていたんだけどな。モチを焼いて貰ったからには全力で食べてやらねばなるまい」
と、先程から悦に浸った様子でわけのわからない事をブツブツと呟いていた。
今はジラルドの顔を見たくない気分のメルシェは、にべもなく突き放す。
「用がないならそこを退いてくれる?わたし、今日はおトキさんとムギ様の魔力念写舞台映像に行くんだから」
「え?出かけるのか?聞いてないぞ」
「なんでわざわざあなたに告げなきゃいけないのよ。退いて、開演時間に遅れちゃう」
「何時に帰ってくるんだ?」
「かなり遅くなるから今日は家に来ないでね」
メルシェがつれない様子で言うと、ジラルドはカッと目を見開いて叫んだ。
「夜遅くまで出歩くなんて危ないだろっ!!襲われて犯されたらどーするんだっ!!」
「うるさいっ!!王宮内で変な事言わないでよっ!!」
業務を終え、帰宅しようとする王宮勤めの者が多く行き交う中でのこの発言、本気でやめてほしい。
しかしジラルドは尚も言い募った。
「ダメだダメだダメだっ!!外には野獣がいっぱいいるんだぞっ!!」
「あなたが家に居る方がよっぽど危険よっ!」
「俺とそのムギ様とかいう奴とどっちが大切だと言うんだっ!?」
「え?ムギ様に決まってるでしょ」
「え゛?」
ヒートアップするかと思われた二人の会話が、メルシェのひと言で途端に静まり返る。
思いがけない答えに言葉を失うジラルドをメルシェは一瞥してからこう告げた。
「じゃあね、ジラルド=アズマ。
今日は騎士団の硬~いベンチで寝るといいわ」
そう言い残し、メルシェはさっさと行ってしまった。
後には“推し”という名のライバルの登場に唖然として立ち竦む筆頭魔術師だけが残された。
メルシェは歩きながらまたまた大きなため息を吐く。
ーーあぁ…これでまた明日から王宮内でどんな噂が囁かれる事か……
要望通りにトマトシチューを食べさせてやる。
魔術師も消費する魔力を補うためか、
騎士に負けじ劣らじよく食べる。
ジラルドは鍋いっぱいに作ったトマトシチューを
一人でペロリと平らげた。
「やっぱりメルが作ったメシが一番旨い」なんて事を言われて、迂闊にも思わずキュンとした事をメルシェは闇に葬るつもりだ。
食事の後はメルシェへの土産の品の披露となり、
ジラルドが得意げにどう見てもガラクタにしか見えない物の説明をしてくれる。
やれこれは何千年前に死んだ魔物の魔力が結晶化した魔石だとか、
これは倒した魔物の角だとか、
迷宮の最下層で見つけた白くて丸い石ころだとか。
その度に
「この魔石、色も形も皮を剥く前の小芋みたいだろ?見つけた時に思わずメルだ!って思ったんだ」とか、
「この角、メルの髪色にそっくりだろ?
こんな角を生やして激おこのメルが頭に浮かんで思わず笑っちゃったんだ」とか、
「この石、皮を剥いた小芋みたいだろ?白くてツルツルですべすべしてて、これは裸のメルだなと思ってずっとポケットに入れて持ち歩いてたんだ」とか言うのだ。
ーーこいつ……わたしの事ばっかり考えていたんじゃないの。
と、一瞬トゥンクとキタが、
その後の「これをオカズに一回抜いた☆」という話を聞いてわたしのトキメキを返せと殴ってやった。
おのれ変態め……やはり出禁にしてくれようか。
そう思ったついでに丁度良かったので、メルシェはこの家に来る時のルールを取り決めようとジラルドに提案した。
「ルール?なんでそんなもの決めるんだ?」
「今のわたしとあなたとの関係は非常に微妙なものなのよ?しばらく向き合うにしても、ちゃんと線引きしておかないと、別れる時に面倒くさい事になるじゃない」
「なんで別れる前提なんだよ」
「だってわたし、世界で一番っ愛人を持つ男を軽蔑してるし、ましてや自分が愛人をもたれる妻になるつもりもないもの」
メルシェのその言葉を聞き、ジラルドは心底不思議そうな顔で尋ねてきた。
「愛人?どーして愛人?俺が愛人を作ると思ってんの?」
メルシェはジト目でジラルドを見やる。
「……あなたがわたしと離婚しないと言い張るなら、彼女の存在は愛人そのものじゃない」
「彼女?誰?ソレ?」
こいつ、惚けるのか?
「遠く離れたジラルド=アズマの噂は、
何故かよ~くわたしの耳に届いたのよ。わたしって地獄耳だったみたい」
「噂?噂って何?」
「………あなたとレディ・クレメイソンがバディ以上のいい関係だとか、王都にいる妻よりも強い絆で結ばれているとか、あなたがレディ・クレメイソンにぞっこんだとか」
「?イスラと俺が?
俺がイスラにぞっこんだって?」
ジラルドはその意味を理解しているのだろうか。
まるで小宇宙を旅しているかのような顔をしている。
「ジラルド、あなた、今の話をちゃんと理解してる?」
メルシェが問うと、ジラルドは可動域ギリギリまで首を傾げた。
「……わからん。イスラはバディというイキモノであってそれ以外の何者でもない」
「ふん。口先だけではなんとも言えるわよ」
そう。いくら本人がこう言ったって、
メルシェは何度も目撃しているのだ。
王宮内でいつもイスラ=クレメイソンを腕に絡ませている姿を。
他に仲間がいる時も、二人で王宮内を移動する時も。
だからいくらジラルドが別れたくないと言っても、メルシェだけを大切に思っているような素振りを見せても信じられないでいるのだ。
両親のようには絶対になりたくない。
自分の人生においてそれが至上命題だ。
メルシェは努めて事務的に、
ジラルドにこの家に来るにあたってのルールを告げた。
まず一つに勝手に家に入らない事。
勝手に人のベッドに入らない事。
メルシェの私物には触れない事。
そしてメルシェにも指一本触れない事。
戸籍上は夫婦だが、離婚保留中の夫婦なんて夫婦であって夫婦ではない。
お互いの為にも適切な距離を保たねば。
「このルールを守れないようなら即刻離婚だからね」
「そ、そんな……触れちゃダメなんて……
やっと蜜月をしっぽり取り戻せると思ったのに……」
「てめぇ、今すぐ追い出してやろうか」
「メ゛ルゥゥっ~~!」
「すぐに泣きつこうとするなっこの不誠実男がっ、
何がやっと蜜月をよ。それならなんで2年間も音信不通だったのよ!」
「だって最初の一年間はずっーと食糧とか現地調達しながら迷宮に潜ってたし、その後は皆んなは出たり入ったりしてたけど、俺は殆ど地上に出なかったし……」
「なんで地上に出なかったのよ?」
「すんごい珍しい古代の術式が書き残された壁画があってさ!!それの解読に全てを費やしてた☆」
「………マジか」
そうだ、この男はこういう男だと、最初に室長に聞かされていたんだった。
変人級の魔術オタク。
新しい魔術や未知の魔術に触れると寝食を忘れて没頭するらしいのだ。
「そして更なる珍しい魔術を求めてウロウロしている内に最下層まで辿り着き、いつの間にか攻略しちゃってたんだよ」
「呆れた。攻略不可と謳われた迷宮に失礼過ぎるでしょ」
その中でレディ・クレメイソンとの絆を深めたわけね……
ムカつく。
その夜はジラルドに家を追い出されたら騎士団の硬いベンチで寝るしかないと泣き落としをされ、仕方がないので隣の部屋に布団を敷いてやった。
そしてトイレ以外は部屋から出る事を固く禁じ、
メルシェは寝室にきっちりと鍵を掛けて、眠りについたのだった。
が、やはり起きたら同じベッドでジラルドにしがみ付かれていた……。
ホントにこの男は……
「ゴルァッ!!」
「痛っ!?」
◇◇◇◇◇
ランチ休憩の時に、メルシェは王宮近くの馴染みの魔道具ショップへと足を運んだ。
店の者に
「魔術師の侵入を防ぐ、鉄壁のシールドを張れる魔道具はありますか?」と尋ねると、店の者は数個の魔道具を棚から出して薦めてくれた。
「玄関などの扉や窓からの侵入を防ぐ魔道具と、転移魔法を妨害する魔道具と、家全体に結界を張れる魔道具があります。でもやはり対魔術師用とあって、少々値がはる物ばかりですよ?」
「でも有る事は有るんですね~」
メルシェが関心して言う。
家全体に結界を張る魔道具は無理だけど、転移魔法を防ぐ魔道具は一つあれば今後も安心して一人暮らしが出来るのではないだろうか。
メルシェは黙って考えを巡らせていた。
そんなメルシェに魔道具屋の店主が補足をする。
「でもこれらの魔道具が全ての魔術師に有効とはいえません。魔術師のレベルにもよりますが……失礼ですが、あなたが侵入を防ぎたいと思っている相手の魔術師の階級は?」
「……特級魔術S「あ、無理ですね、伝説レベルの魔道具でもいない限り絶対に防げません」
と言い終わる前に答えられてしまった。
そして
「そんなのを相手にするのは危険過ぎます。王宮の魔術師団にご相談されては如何でしょう?」
と本気で心配されてしまった。
その王宮魔術師団の筆頭魔術師をなんとかしたいんですけどね……とは言えない。
しょんぼりしながら店を出て王宮まで戻ろうとするメルシェの目に、その件の筆頭魔術師の姿が飛び込んで来た。
通りの向こう側、同じく王宮へ向かう道を歩いている。
……腕にイスラ=クレメイソンを絡ませながら。
メルシェは思わずジト目の半目になって見つめた。
ーーやっぱり、あの不誠実男がっ……!
抑えきれない殺意が向こうに伝わったのだろ、メルシェに気付いたジラルドが途端に嬉しそうな顔をして手を振ってくる。
反対側の腕に纏わりついていたイスラもメルシェに気付き、勝ち誇ったような挑発的な笑顔を向けて来た。
そしてわざとジラルドの腕にその豊満な胸を押し付けている。
メルシェはニッコリと極上の笑顔を貼り付け、
そしてビシィッと中指を立ててやった。
我ながらキレっキレの動きだ。
ジラルドとイスラが面食らった顔をしているのが可笑しくて、メルシェは満足して笑顔のままスタスタと王宮へと戻る。
スラングティーチャーロム(食堂のおじさん)よ、
悪い言葉と一緒に良いボディランゲージを教えてくれてありがとう♡
かなり下品だけど少し溜飲が下がったわ♪
とメルシェはお気に入りのパンプスで颯爽と歩いて行った。
一方、何故メルシェが怒ったのか理解出来ないジラルド。
傾げた首が戻る事なく考え続けている。
その様子を見かねたジュスタンが声を掛けてきた。
「さっきからどうしたんだよ、首が気持ち悪いくらいに傾いでるし、ずっーと押し黙ったままで不気味だぞ。何かあったのか?」
「さっき道で俺の小芋ちゃんに会ったんだが、何故か怒られた。顔は笑っていたのに殺意がヤバいんだ、でもなんで怒ってんのか皆目見当もつかない……はっ、やっぱり毎回腰にしがみついて寝るのを怒ってるのかな?」
「……お前そんな事してんのかよ。道で会ったって?」
「うん」
ジラルドがそう返事をすると、ジュスタンは何かに思い当たったようだ。
「あ、あー……その時、イスラも一緒にいたか?」
「仕事だからな」
「いつもみたいな感じで歩いてた?」
「?うん」
「それだな。どうせイスラと腕を組んで歩いてたんだろ?」
「?いつも歩く時はイスラがそうして来るからな?男女のバディはそうするもんだとイスラが言ってたぞ。えすこーとって言うんだろ?」
ジラルドが答えると、ジュスタンはジラルドの肩にポンと自身の手を乗せた。
「それはイスラが自分の都合がいいように言ってるだけだ。いいかよく聞けジラルド=アズマ、普通は恋人でも婚約者でも夫婦でもない男女が腕を組んで歩くなんて事はしない。それをするという事は、周りに自分達が特別な関係だと知らしめているようなものだ」
「え゛、そうなのっ?」
「……今まではお前がそれでいいならと思ってたから敢えて何も言わなかったが、嫁さんに本気で捨てられたくないならもう二度と他の女には触れさせない方がいい。勿論、お前が触れるのもダメだ」
「そうだったのか……」
「ジラルド、逆に考えみろ?メルシェさんがお前以外の男と腕を組んで歩いてたらどう思う?」
「は?なんだそりゃ、絶対に許さないぞ」
「それだよ。今お前に湧き上がった感情が、メルシェさんの気持ちだ。わかったか?」
「わかった……!もの凄くわかった!」
「そりゃあ何より。でもお前にこんな日が来るなんてな。今まで魔術しか興味がなかったお前が妻の機嫌一つに思い悩む日がくるなんて……」
ジュスタンが感無量……と言わんばかりの表情を浮かべたその時、
「二人ともどうしたの?」と、
イスラ=クレメイソンが例の如くジラルドの腕に纏わりついて来た。
腕を絡ましてくるイスラを、
ジラルドとジュスタンがじっ…と見た。
「な、何よ?」
いつも違う様子に、イスラが少し狼狽える。
ジラルドはふっ…と悟りを開いたかのような笑みを浮かべ、自身の腕に絡み付いていたイスラの手を外した。
そして何故か自慢げな表情でこう告げる。
「すまんなイスラ。いくらバディがこうするものだとしても、もう俺には不必要には触れないでくれ。俺の体は全て、妻のものだからな……」
さっきまで腕を絡めても何も言わず好きにさせていたジラルドの発言に、イスラは目を剥いた。
「どうしたのよ急にっ……」
ジラルドは尚も恍惚とした表情を浮かべながら言う。
「ふ……俺の体に違う女が触れるのを妻が嫌がるんだ……俺は妻の嫌がる事はしたくはない。
そうか……嫌だったのか……もしかしてヤキモチってヤツか?小芋ちゃんめぇ可愛いな、くそぅ犯したい」
「ちょっ、ジラルドさん、不穏な発言が聞こえましたが?」
ジュスタンのツッコミに、ジラルドはハッとして我に返る。
「そうだな、焦ってはいかん。もう二晩も欲望に耐えたんだ……俺は出来る、我慢出来る、俺はやれば出来る子なんだ……」
ブツブツとひとり言を言うジラルドにイスラは詰め寄った。
「さっきのあの女の態度が急に変わった原因ねっ?
あんなの気にする事ないわよ、あなたとわたし、ずっと上手くやって来たじゃない」
しかしそのイスラの言葉に答えたのはジラルドではなくジュスタンだった。
「イスラ、もういい加減にしとけ。お前の行動はどうもバディのそれからは逸脱してるぞ。夫婦の間に波風を立てるような言動は慎むべきだ」
「ジュスタンは黙ってて。どう考えたってあんな女より私の方がジラルドに相応しいんだもの」
「お前、どうかしてるぞ」
強く諌められ、イスラは唇を噛んだ。
ーーあの女の所為だ。あの女のっ……!
でもイスラは絶対にジラルドを諦めたくはなかった。
外見も能力も、まぁ性格はちょっとアレだけど、それを上回る価値がこの男にはある。
大陸屈指の特級魔術師であり、
この国の王宮筆頭魔術師。
貴族令嬢であり、一級魔術師としてもトップレベルの自分の横に並ぶ人間として、ジラルド=アズマは理想的だった。
あんな女に負けるもんか……!
誰がなんと言おうがやめるつもりはないとイスラはジラルドへ向けて手を伸ばした……が、そこにはもうジラルドの姿はなかった。
「アレっ!?ねぇちょっと、ジラルドはっ?」
イスラが尋ねると、ジュスタンは額を軽く押さえながら答えた。
「やっぱり我慢出来んっ!といって転移して行った。多分、メルシェさんのところだろう」
それを聞き、イスラはヒステリックに叫んだ。
「もうっ!ジラルド!!」
ジュスタンはため息を吐く。
ーーメルシェさんも気の毒に……普通の人なのにとんでもない奴に見染められて……
と心の中で合掌するジュスタンであった。
そしてジュスタンの予想通り、
ジラルドが転移した先はメルシェの元だった。
先ほどの道で見た光景がまだ記憶に生々しいメルシェは突然現れたジラルドを睨みつけた。
「……何よ、なんか用?」
だけどそんなメルシェの刺々しい様子も、今はジラルドを更に喜ばせるだけだった。
だってメルシェが自分にヤキモチを焼いてくれているとわかったから。
「ふ、そうか……ヤキモチか。そんなもの都市伝説だと思っていたんだけどな。モチを焼いて貰ったからには全力で食べてやらねばなるまい」
と、先程から悦に浸った様子でわけのわからない事をブツブツと呟いていた。
今はジラルドの顔を見たくない気分のメルシェは、にべもなく突き放す。
「用がないならそこを退いてくれる?わたし、今日はおトキさんとムギ様の魔力念写舞台映像に行くんだから」
「え?出かけるのか?聞いてないぞ」
「なんでわざわざあなたに告げなきゃいけないのよ。退いて、開演時間に遅れちゃう」
「何時に帰ってくるんだ?」
「かなり遅くなるから今日は家に来ないでね」
メルシェがつれない様子で言うと、ジラルドはカッと目を見開いて叫んだ。
「夜遅くまで出歩くなんて危ないだろっ!!襲われて犯されたらどーするんだっ!!」
「うるさいっ!!王宮内で変な事言わないでよっ!!」
業務を終え、帰宅しようとする王宮勤めの者が多く行き交う中でのこの発言、本気でやめてほしい。
しかしジラルドは尚も言い募った。
「ダメだダメだダメだっ!!外には野獣がいっぱいいるんだぞっ!!」
「あなたが家に居る方がよっぽど危険よっ!」
「俺とそのムギ様とかいう奴とどっちが大切だと言うんだっ!?」
「え?ムギ様に決まってるでしょ」
「え゛?」
ヒートアップするかと思われた二人の会話が、メルシェのひと言で途端に静まり返る。
思いがけない答えに言葉を失うジラルドをメルシェは一瞥してからこう告げた。
「じゃあね、ジラルド=アズマ。
今日は騎士団の硬~いベンチで寝るといいわ」
そう言い残し、メルシェはさっさと行ってしまった。
後には“推し”という名のライバルの登場に唖然として立ち竦む筆頭魔術師だけが残された。
メルシェは歩きながらまたまた大きなため息を吐く。
ーーあぁ…これでまた明日から王宮内でどんな噂が囁かれる事か……
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