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委員会活動で
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登下校を共にしているメグルカとレイターだが、ランチタイムはそれぞれクラスの友人と一緒に食べている。
メグルカは親友のフィリアや仲の良いクラスメイトと持参したお弁当を裏庭の芝生や中庭のベンチなどで食べているが、レイターやその友人の男子生徒たちは学校のカフェテリアで昼食を摂っているのだ。
十代の、ましてや魔力を有する男子のお弁当なんてバケツ一杯作ったとしても足りない場合が多々ある。
そのためレイターの母親が早々にお弁当を作るのを諦めてカフェテリアでガッツリ食べなさいという言葉とお金を渡したのだそうだ。
レイターも彼の友人の男子生徒たちも皆、トレイに乗り切れないほどの食事を……下手したらそれ以上の量をいつも食べている。
先日レイターの母親に、
「メグちゃん……結婚したら、あの子をお腹いっぱいにさせる為に一日中キッチンで料理を作らなければいけないかも……ご、ごめんね……」
と謝られたが騎士である父も大食漢で慣れているので気にはならない。
それにメグルカには魔術がある。
調理の補助は魔術を使えばそんなに苦にならないはずだ。
それに、結婚したらレイターに美味しいものを沢山食べさせてあげたくてメグルカは料理の勉強もしているのだ。
それを思う存分活かせるのは嬉しいことだ。
友人たちとランチを済ませ、そんな事を考えながら教室に戻る途中で、メグルカは自習室の前を通った。
自習室の扉は少しだけ開いていて、通り過ぎる時に一瞬だけ中が見えた。
ランチタイムの人気のない自習室に男子生徒が一人と女子生徒が一人、向かい合って立っている。
通り過ぎる瞬間の、ほんの僅かな時間だったけれど、メグルカには中に居るのがレイターである事がすぐにわかった。
きっとまた、待ち伏せを受けて告白されているのだろう。
メグルカは話し掛けてくるフィリアと会話をしながら、その場を通り過ぎて行った。
◇
「あの……辛くないんですか?」
「え?」
ある日、委員会活動で図書の整理をしている時に一年生の女子生徒にそう言われた。
魔法学校の委員会活動は義務制で、皆必ず何かしらの委員の仕事をしている。
ちなみにレイターは魔法生物飼育委員で、メグルカは図書委員だ。
委員会活動は基本縦割りで一年生も三年生も分け隔てなく委員の役割を請け負う。
メグルカは今日は一年生Bクラスの女子と組んで図書整理を行っていた。
その女子生徒がメグルカにそう言ったのだ。
メグルカは相手の言葉の意図するところが分からず、率直に訊ねてみる。
「辛いって、私が……?どういう意味かしら?」
女子生徒は小さくコクンと頷いた。
小柄で童顔なタイプの彼女がそれをすると何だか幼い少女のように見える。
「あんなにモテる婚約者を持って……誇らしい反面、常に浮気を心配して心が休まらないんじゃないかなって思って……」
「それで辛くないのかって?」
一年女子はまたコクンと頷いた。
少しビクビクしながら、遠慮がちにしながらも言いたい事はしっかりと言うタイプのようだ。
「私なら耐えられないなぁって……モテなくても余計な心配しないで済む人がいいなぁって……婚約を見直す事って出来ないんですか?」
「……なに?それって、暗に婚約解消を勧めているの?」
オドオドしながらも不躾なもの言いをする一年女子に、メグルカはハッキリとした口調で訊ねる。
すると相手は首を振りながら取り繕うように答えた。
「ち、違います……!私はただ、先輩が気の毒に見えてっ……」
気の毒とはどういう意味だろう。
棚からぼたもち婚約とか言われているから?
それが哀れに見えるとか?
まぁ自分の立場がこの一年女子にどう見えていようがそんな事はどうでもいいと、メグルカが適当に話を切り上げようと思ったその時、図書室にレイターが入室してきた。
「メグ、委員の仕事は終わった?」
放課後の委員会活動が終わりの時間を迎え、メグルカの事を迎えに来たのだ。
メグルカがもう終わるところだと返事をしようとしたその時、一年女子が勢いよくメグルカの側から離れてレイターに駆け寄った。
「あのっ……!す、すみません!助けてください!わ、私っ……スミス先輩を怒らせちゃったみたいで、先輩にキツい事言われてしまったんですっ……!」
…………はい?
メグルカは一年女子が何を言っているのかワケが分からず、小首を傾げた。
メグルカは親友のフィリアや仲の良いクラスメイトと持参したお弁当を裏庭の芝生や中庭のベンチなどで食べているが、レイターやその友人の男子生徒たちは学校のカフェテリアで昼食を摂っているのだ。
十代の、ましてや魔力を有する男子のお弁当なんてバケツ一杯作ったとしても足りない場合が多々ある。
そのためレイターの母親が早々にお弁当を作るのを諦めてカフェテリアでガッツリ食べなさいという言葉とお金を渡したのだそうだ。
レイターも彼の友人の男子生徒たちも皆、トレイに乗り切れないほどの食事を……下手したらそれ以上の量をいつも食べている。
先日レイターの母親に、
「メグちゃん……結婚したら、あの子をお腹いっぱいにさせる為に一日中キッチンで料理を作らなければいけないかも……ご、ごめんね……」
と謝られたが騎士である父も大食漢で慣れているので気にはならない。
それにメグルカには魔術がある。
調理の補助は魔術を使えばそんなに苦にならないはずだ。
それに、結婚したらレイターに美味しいものを沢山食べさせてあげたくてメグルカは料理の勉強もしているのだ。
それを思う存分活かせるのは嬉しいことだ。
友人たちとランチを済ませ、そんな事を考えながら教室に戻る途中で、メグルカは自習室の前を通った。
自習室の扉は少しだけ開いていて、通り過ぎる時に一瞬だけ中が見えた。
ランチタイムの人気のない自習室に男子生徒が一人と女子生徒が一人、向かい合って立っている。
通り過ぎる瞬間の、ほんの僅かな時間だったけれど、メグルカには中に居るのがレイターである事がすぐにわかった。
きっとまた、待ち伏せを受けて告白されているのだろう。
メグルカは話し掛けてくるフィリアと会話をしながら、その場を通り過ぎて行った。
◇
「あの……辛くないんですか?」
「え?」
ある日、委員会活動で図書の整理をしている時に一年生の女子生徒にそう言われた。
魔法学校の委員会活動は義務制で、皆必ず何かしらの委員の仕事をしている。
ちなみにレイターは魔法生物飼育委員で、メグルカは図書委員だ。
委員会活動は基本縦割りで一年生も三年生も分け隔てなく委員の役割を請け負う。
メグルカは今日は一年生Bクラスの女子と組んで図書整理を行っていた。
その女子生徒がメグルカにそう言ったのだ。
メグルカは相手の言葉の意図するところが分からず、率直に訊ねてみる。
「辛いって、私が……?どういう意味かしら?」
女子生徒は小さくコクンと頷いた。
小柄で童顔なタイプの彼女がそれをすると何だか幼い少女のように見える。
「あんなにモテる婚約者を持って……誇らしい反面、常に浮気を心配して心が休まらないんじゃないかなって思って……」
「それで辛くないのかって?」
一年女子はまたコクンと頷いた。
少しビクビクしながら、遠慮がちにしながらも言いたい事はしっかりと言うタイプのようだ。
「私なら耐えられないなぁって……モテなくても余計な心配しないで済む人がいいなぁって……婚約を見直す事って出来ないんですか?」
「……なに?それって、暗に婚約解消を勧めているの?」
オドオドしながらも不躾なもの言いをする一年女子に、メグルカはハッキリとした口調で訊ねる。
すると相手は首を振りながら取り繕うように答えた。
「ち、違います……!私はただ、先輩が気の毒に見えてっ……」
気の毒とはどういう意味だろう。
棚からぼたもち婚約とか言われているから?
それが哀れに見えるとか?
まぁ自分の立場がこの一年女子にどう見えていようがそんな事はどうでもいいと、メグルカが適当に話を切り上げようと思ったその時、図書室にレイターが入室してきた。
「メグ、委員の仕事は終わった?」
放課後の委員会活動が終わりの時間を迎え、メグルカの事を迎えに来たのだ。
メグルカがもう終わるところだと返事をしようとしたその時、一年女子が勢いよくメグルカの側から離れてレイターに駆け寄った。
「あのっ……!す、すみません!助けてください!わ、私っ……スミス先輩を怒らせちゃったみたいで、先輩にキツい事言われてしまったんですっ……!」
…………はい?
メグルカは一年女子が何を言っているのかワケが分からず、小首を傾げた。
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