【完結】私の婚約者は、いつも誰かの想い人

キムラましゅろう

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公女様はレイターをお気に召したようです

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様子が変わったヴァレリー・ジョンストンに呆気に取られている内に予鈴が鳴って慌てて教室に入ったメグルカ。

公女の視察三日目。
予定通りなら今日は三年生の授業や学校生活をご覧になられるはず。

三年生は全部で五クラス。
メグルカが在籍するBクラスにどのタイミングで見学に来られるのか、それは担任の教員にもわからないらしい。
なんでも今はDクラスの朝礼に参加されているのだとか。

視察初日から一年生、二年生の授業や活動風景を熱心に見学されているというアレイラ公女。
様々な質問をレイターや生徒会長にして、魔術魔法の勉強を熱心に学ぶ生徒たちに関心を寄せているそうだ。

それだけでモルモア公国が本気で魔法学校の設立を目指しているのが窺える。

と、同時に公女本人の様子からも、その心情が窺えるのが……

どうやらアレイラ公女がいたくレイター・エルンストをお気に召した、という事なのだそうだ。

初日に魔法学校を訪れた際に出迎えたレイターを見て、アレイラ公女はしばらく頬を赤らめて呆然と彼を見上げていたそうだ。
(公女はメグルカやレイターより二歳年上だが、童顔で小柄なので一見少女のように見える)

そして在学生代表として生徒会長をサポートしながら無駄のない案内を的確に行う、レイターのその優秀さを更に気に入ったという。

公女は視察二日目からしきりに、
「卒業後は我が国に来て学校設立に尽力して欲しいわ」とレイターに懇願しているらしい。

それに対しレイターが何と答えているのかは想像に容易いが、そんな話がすでに色んな生徒の口の端に上がるところを見ると、公女は大っぴらにレイターを口説いているのだろう。

しかしそれとは別として、アレイラ公女は本当に熱心に視察に取り組んでいるようだ。

魔法学校の運営による収益にモルモア公国は財政立て直しの活路を見出していると聞く。
そんな国を挙げてのプロジェクトに公女として様々なノウハウを会得し、自国へ持ち帰ろうとしているのだ。

授業の間の休み時間。
教室移動のためにメグルカが校内を歩いていると、掲示板を眺めてレイターや生徒会長に質問をしている公女の姿を見た。

何やら熱心に質問をし、レイターもそれに真剣に答えている。
公女はしばし思案する様子を見せると側にいた侍従に指示をしてメモを取らせている。
時折談笑も交わるらしく、和やかな雰囲気でレイターも公女も笑い合っていた。

メグルカはそれを離れた所からじっと見つめ、そして静かにその場を去った。




ランチタイムを経ての午後一番の授業。
Bクラスは体育だった。

魔法学校の体育はもちろんただ体を動かすだけの授業ではない。
魔術を用いたり魔力コントロールをしながら、球技やマラソンなどの運動をするのだ。

今日の女子の授業は魔力で浮遊させたボールを手に触れることなくペアを組んだ相手と投げ合うという内容だった。

メグルカはフィリアとペアを組み、じゃんけんで負けたメグルカがボールに魔力を込めて浮遊させる。
そしてキャッチボールを始めようかとしたその時、ふいに体育教師が生徒たちに告げた。

「皆さん、モルモア公女様の見学が入りますよ」

それを聞き、Bクラスの面々が控えめながらも騒然となる。

視線を巡らせると授業が行われている鍛錬場に入ってくるアレイラ公女とレイターたちの姿が見えた。

すでに授業が始まっていることもあり、教師も生徒たちも公女に向かって一礼のみを行い、授業が再開された。

メグルカはフィリアに声をかけてボールを彼女に向けて投げる。
投げると言ってもキャッチボールの最中はボールに触れていけないルールとなっているので魔力をコントロールして、相手に向かって放つのだ。

対するフィリアもメグルカが放ったボールを難なく魔力を用いてキャッチし、次はメグルカに向けて放つ。

そうやってメグルカや女子生徒たちは魔力キャッチボールを続けた。

その様子を公女様御一行は体育教師の説明を受けながら眺めている。
公女は興味深そうに話を聞きながら授業風景に見入っていた。

アレイラ公女御一行(レイター含む)は総勢七名。
公女、案内役のレイターと生徒会長(女子生徒)、公女の専属侍従と侍女が一名ずつ、そして護衛騎士二名で構成されている。

公国の公女ともなると本当はもっと多くのお付の者が同行するばすなのだが、あまり大人数になって学校側に迷惑がかかってはいけないという公女の配慮で、他の者は公女が滞在するホテルに残しているのだという。

アレイラ公女とはそういった気遣いの出来る人なのだそうだ。
だがわりと合理的で好き嫌いがハッキリした性格なのだとも聞く。

いずれにせよレイターにとって今まで周囲には居なかったタイプの女性であると思う。
きっと間近で接して、そんな公女を新鮮に思っているのかもしれない。

そんな考えが頭をぎり、メグルカはつい余所見をするように視線を並び立つレイターと公女の方へと向けてしまった。
と、同時にフィリアや数名の女子の声が耳に届く。

「ボールのコントロールが外れてしまったわっ……!」

「キャーーッ!!」

「メグルカっ!危ないっ!!」

近くでペアを組んでいた女子生徒が放ったボールが制御を失いメグルカの方へと飛んできたのだ。

余所見をしていたためにメグルカの反応が遅れてしまう。

防御しようにも迎え撃つにも、ボールはすでにメグルカの眼前に迫っていた。

「っ……!」










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