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紡ぎ歌
ある朝、夫に告げられた。
わたしと結婚した後も関係が続いていた恋人に
子どもが出来たと。
生まれて来る子どものためには両親がきちんと
揃っている方がいいだろ?と。
「だから別れてくれるよね?」
夫はさも当たり前のようにわたしに言った。
義両親も産まれてくる孫を楽しみにしているという。
そして既に夫の子を身籠った女性を実家に入れて、共に暮らしているのだというのだ。
そこまで進んでいるのなら、わざわざ聞く必要ないじゃない。
さっさと出て行けと言えばいいじゃない。
わたしは思いつく限りの罵詈雑言を並べ立て、その後トランク一つを持って家を出た。
夜になったら焼こうと思っていたパンの生地も、
繕いかけの夫の衣服も全て置いてけぼりにして、
わたしは家を飛び出した。
◇◇◇◇◇
どうしてわざわざ離縁された日の事を夢で見るのだろう。
考えたくもないのに。
思い出したくもないのに。
今日はパンを焼こうと思ったからだろうか。
あの日、寝かせたまま放置してきたパンの生地はどうなったんだろう。
ちゃんと焼いて貰えたのだろうか。
それともダメになって捨てられたんだろうか。
わたしみたいに。
そんな事を考えながらパンを捏ね、発酵させ、成形してオーブンに入れる。
丁度その時、わたしの雇い主でこの家の主であるジュード様が山から帰って来た。
ジュード様は元魔術騎士で、怪我のために騎士団を
退団後、魔石採りとして生計を立てているという。
魔物が死んだ後、肉体は朽ちてもある一定の条件が
揃えば魔力だけが消滅せずに結晶化して残るのだそうだ。
それを魔石と呼ぶ。
魔力の塊である魔石は利用価値が高く、高値で売れるのだ。
でも魔石は魔物が棲みついている場所でないと採れないため、採取は命懸けらしい。
そのため魔術が使えて剣の腕も立つ、
ジュード様のような人がそういう仕事に就く事が多い。
魔石採りは基本、魔物の山の側で暮らす。
わざわざ仕事場である魔物の生息地から離れて暮らすのは利便性が悪いからだそうだ。
その感覚だけでももやは常人ではないような……。
自宅の周囲、特に魔物の生息地側に結界を張り、
魔物の侵入を防いでいるという。
この家もジュード様の結界で守られているらしい。
なるほど、ホール家の家政婦を手配した老人が
ジュード様が昔は名を馳せた魔術騎士だったと言っていたが確かに凄いお人のようだ。
なのでわたしは魔物が近くに出ると聞いても少しも怖くなかった。
ジュード様が行ってはいけないという方向さえ行かなければ問題ないのだから。
家の中に漂う焼きたてのパンの香りを吸い込みながら、ジュード様が言う。
「旨そうな香りだ。この家で焼きたてのパンが食えるなんてな、未だに信じられないよ」
パンの香りだけでこんなにも喜んでくれるなんて、わたしは夢見が悪くても焼いて良かったと思った。
ふと、ジュード様の肩に綿毛のような植物が付着しているのに気付く。
これは……!
「これ!どこに生えていましたかっ?」
突然わたしが詰め寄ったので、ジュード様は驚いた顔をして少しわたしから距離を取った。
「魔物の山の近くに唸るほど自生している植物だが、知っているのか?」
「はい。わたしの故郷にもよく生えていて、
ウールポコと呼ばれる植物なんです。この綿毛のような繊維質の葉を乾燥させてから糸にして、生地を織ったり編み物にしたりするんです……懐かしい」
「へぇ……これで。キミはこの植物が沢山あれば
何か作れるのか?」
「ええ。結婚して王都に行くまでは、手仕事として毎日扱っていました」
「そうか……」
「あ、お腹が空きましたよね、直ぐに夕食にしますね」
つい懐かしくてその綿毛を見入ってしまっていた
わたしは我に返って慌てて夕食の配膳に取り掛かった。
今日の夕食はジュード様が釣って来てくれた川魚をムニエルにした。
ジュード様はいつもわたしの作る食事を美味しいと残さず食べてくれる。
そしておかわりまでしてくれるのが本当に嬉しい。
……別れた夫はわたしが作るものをよく田舎くさいと言っていたから。
食材は週に一度、ジュード様が馬で近くの街に行って買い出しをして来てくれる。
近くの…とはいっても馬で半日はかかるほど離れているけど。
わたしが馬に乗れたらジュード様の代わりに買い出しに行けるのに……馬の乗り方を教わろうかしら、と思ってジュード様に話すと、若い女性が一人で長距離を移動するのは危険だからダメだと許可してくれなかった。
「若いって……」
「俺にしてみれば充分若い」
ジュード様は25歳。
そんなに変わらないと思うんだけど。
家政婦ギルドで会った老人から少しだけ、雇い主の…ジュード様の経歴を知らされていた。
王都生まれの王都育ちで、
23歳まで王宮魔術騎士団の魔術騎士だった事。
隣国との小規模な衝突の際に部下を庇って負傷、
その後退団に至ると。
騎士団時代の先輩にリハビリも兼ねて魔石採りに誘われ、これがなかなか自分に向いてると思い、生業として選んだそうだ。
王都を離れる際に、自身も仕事を持っていた恋人と泣く泣く別れるも、お互いタイミングが合えばいつかは結婚しようと約束したらしい。
とても素敵な話だ。
いつかは結ばれるかもしれない相手がいるというのはとても幸せな事のような気がする。
少なくとも孤独は感じないと思う。
わたしにはもう……望めない事だけど。
離婚歴のある女が再婚するには、耐え難い条件を飲むしかない場合が多いから。
ワケあり女には厳しいのだ、この国は。
次の日、魔石の採取から戻って来たジュード様の両手には抱えきれないくらいの大量のウールポコがあった。
「これ……!こ、こんなに沢山……!」
「これだけあれば足りるか?」
「わざわざ取って来て下さったんですか?」
「今日はこれが自生している方向に行くつもりだったから、ついでに……な」
ついでの割には大量のウールポコ。
そして綿毛まみれになっているジュード様……。
きっと、彼はわざわざこの植物を採りに行ってくれたんだ。
わたしが懐かしがったから。
雇い主になんて事をさせてしまったのだと申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも、どうしても嬉しい気持ちが勝ってしまう。
ウールポコを貰えたから嬉しいのではない、
わたしのために採って来てくれた、その気持ちが嬉しいのだ。
伝えたい言葉は沢山あったのに結局わたしはこの言葉しか口に出来なかった。
「……ありがとうございます、とても…とても嬉しいです」
わたしは自然と笑みが溢れ、一束だけウールポコを胸に寄せる。
「そうか……それは良かった」
ジュード様が少し照れくさそうに言った。
見れば耳が少し赤いような気がした。
この人はどうしてこんなにも心が温かいのだろう。
この人といるとどうしてこんなにも心が温かくなれるのだろう。
この胸に去来する気持ちに、
わたしはあえて名前を付けないようにした。
夕食の後、わたしはさっそく薪ストーブの上にウールポコを吊り下げた。
ストーブの熱気ですぐにドライになるだろう。
次の日にはすっかり水分が飛び、
わたしはウールポコの綿毛から糸を紡ぎ始めた。
綿毛を揃え、それを撚り、糸にしてゆく。
それを家の周りで見つけた丁度いい枝に巻いてゆくのだ。
幼い頃からやっていた習慣のような手作業。
ここ数年は紡いでいなかったけど、手が、体が、心が覚えていた。
気付けばわたしは歌を口遊んでいた。
故郷に伝わる紡ぎ歌だ。
昔から、糸を紡ぐ時に歌っていた歌。
それをわたしは無意識に歌っていた。
「♪くるくる回るよ糸車、回る輪廻の糸車、紡ぐ命の撚り糸を吾子のために絡めてゆこう♪」
懐かしい紡ぎ歌を口遊みながら、夢中になって糸を紡いでゆく。
そうやって枝一本分を紡ぎ終えたところで、わたしははっと我に返った。
見ると、ジュード様がわたしの方をじっと見つめておられたのだ。
しまった……、つい癖で歌ってしまった……!
この家はわたしの家じゃないのに……
静かに読書をされていたジュード様のお邪魔になったに違いない。
わたしは慌ててジュード様に謝った。
「ご、ごめんなさいっ……お耳汚しでしたよね、
本当に……「今の歌は?」
わたしの言葉を遮るようにジュード様がわたしに問いかけた。
「え?あ、あの、わたしの故郷に伝わる紡ぎ歌です」
「紡ぎ歌……」
「はい。勝手に歌ってごめんなさい」
「なぜ謝る?とてもキレイな声で聞き惚れた。もう一度歌ってほしい」
「えぇっ?そ、そんなっ……人さまにお聞かせするようなものではっ」
「頼む、もう一度だけ」
「えーー……」
「頼む」
ジュード様があまりに真剣に頼んでくるので、わたしは根負けして恥ずかしながらも紡ぎ歌を歌った。
ジュード様は殊の外この歌をお気に召したらしい。
以降、糸を紡ぐ時は必ずこの歌を歌う事が雇用条件の一つに加えられた。
何もないど田舎の歌をこんなにも気に入ってくれるなんて。
人前で歌うのは恥ずかしいけど、
王都では田舎育ちを笑われる事が多かったわたしは本当に嬉しかったのだ。
彼の側ではとても楽に呼吸が出来る。
ジュード様の優しさが、温かさが、
わたしをわたしらしく居させてくれた。
そしていつしかわたしは
彼の事を、雇い主ではなく一人の男性として
思いを寄せるようになってしまっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
作者のひとり言
糸になる材料の植物の名前……
毛糸のような糸になるイメージだから
“ウール”が付く名前にしたいなと考えまして…
ウール、ウール…ウール…ポコ?
ウールポコ……でいいか☆と相成りました。
はい、読者さま皆さま、ご一緒に。
「なぁにぃ~!やっちまったなぁ!」
わたしと結婚した後も関係が続いていた恋人に
子どもが出来たと。
生まれて来る子どものためには両親がきちんと
揃っている方がいいだろ?と。
「だから別れてくれるよね?」
夫はさも当たり前のようにわたしに言った。
義両親も産まれてくる孫を楽しみにしているという。
そして既に夫の子を身籠った女性を実家に入れて、共に暮らしているのだというのだ。
そこまで進んでいるのなら、わざわざ聞く必要ないじゃない。
さっさと出て行けと言えばいいじゃない。
わたしは思いつく限りの罵詈雑言を並べ立て、その後トランク一つを持って家を出た。
夜になったら焼こうと思っていたパンの生地も、
繕いかけの夫の衣服も全て置いてけぼりにして、
わたしは家を飛び出した。
◇◇◇◇◇
どうしてわざわざ離縁された日の事を夢で見るのだろう。
考えたくもないのに。
思い出したくもないのに。
今日はパンを焼こうと思ったからだろうか。
あの日、寝かせたまま放置してきたパンの生地はどうなったんだろう。
ちゃんと焼いて貰えたのだろうか。
それともダメになって捨てられたんだろうか。
わたしみたいに。
そんな事を考えながらパンを捏ね、発酵させ、成形してオーブンに入れる。
丁度その時、わたしの雇い主でこの家の主であるジュード様が山から帰って来た。
ジュード様は元魔術騎士で、怪我のために騎士団を
退団後、魔石採りとして生計を立てているという。
魔物が死んだ後、肉体は朽ちてもある一定の条件が
揃えば魔力だけが消滅せずに結晶化して残るのだそうだ。
それを魔石と呼ぶ。
魔力の塊である魔石は利用価値が高く、高値で売れるのだ。
でも魔石は魔物が棲みついている場所でないと採れないため、採取は命懸けらしい。
そのため魔術が使えて剣の腕も立つ、
ジュード様のような人がそういう仕事に就く事が多い。
魔石採りは基本、魔物の山の側で暮らす。
わざわざ仕事場である魔物の生息地から離れて暮らすのは利便性が悪いからだそうだ。
その感覚だけでももやは常人ではないような……。
自宅の周囲、特に魔物の生息地側に結界を張り、
魔物の侵入を防いでいるという。
この家もジュード様の結界で守られているらしい。
なるほど、ホール家の家政婦を手配した老人が
ジュード様が昔は名を馳せた魔術騎士だったと言っていたが確かに凄いお人のようだ。
なのでわたしは魔物が近くに出ると聞いても少しも怖くなかった。
ジュード様が行ってはいけないという方向さえ行かなければ問題ないのだから。
家の中に漂う焼きたてのパンの香りを吸い込みながら、ジュード様が言う。
「旨そうな香りだ。この家で焼きたてのパンが食えるなんてな、未だに信じられないよ」
パンの香りだけでこんなにも喜んでくれるなんて、わたしは夢見が悪くても焼いて良かったと思った。
ふと、ジュード様の肩に綿毛のような植物が付着しているのに気付く。
これは……!
「これ!どこに生えていましたかっ?」
突然わたしが詰め寄ったので、ジュード様は驚いた顔をして少しわたしから距離を取った。
「魔物の山の近くに唸るほど自生している植物だが、知っているのか?」
「はい。わたしの故郷にもよく生えていて、
ウールポコと呼ばれる植物なんです。この綿毛のような繊維質の葉を乾燥させてから糸にして、生地を織ったり編み物にしたりするんです……懐かしい」
「へぇ……これで。キミはこの植物が沢山あれば
何か作れるのか?」
「ええ。結婚して王都に行くまでは、手仕事として毎日扱っていました」
「そうか……」
「あ、お腹が空きましたよね、直ぐに夕食にしますね」
つい懐かしくてその綿毛を見入ってしまっていた
わたしは我に返って慌てて夕食の配膳に取り掛かった。
今日の夕食はジュード様が釣って来てくれた川魚をムニエルにした。
ジュード様はいつもわたしの作る食事を美味しいと残さず食べてくれる。
そしておかわりまでしてくれるのが本当に嬉しい。
……別れた夫はわたしが作るものをよく田舎くさいと言っていたから。
食材は週に一度、ジュード様が馬で近くの街に行って買い出しをして来てくれる。
近くの…とはいっても馬で半日はかかるほど離れているけど。
わたしが馬に乗れたらジュード様の代わりに買い出しに行けるのに……馬の乗り方を教わろうかしら、と思ってジュード様に話すと、若い女性が一人で長距離を移動するのは危険だからダメだと許可してくれなかった。
「若いって……」
「俺にしてみれば充分若い」
ジュード様は25歳。
そんなに変わらないと思うんだけど。
家政婦ギルドで会った老人から少しだけ、雇い主の…ジュード様の経歴を知らされていた。
王都生まれの王都育ちで、
23歳まで王宮魔術騎士団の魔術騎士だった事。
隣国との小規模な衝突の際に部下を庇って負傷、
その後退団に至ると。
騎士団時代の先輩にリハビリも兼ねて魔石採りに誘われ、これがなかなか自分に向いてると思い、生業として選んだそうだ。
王都を離れる際に、自身も仕事を持っていた恋人と泣く泣く別れるも、お互いタイミングが合えばいつかは結婚しようと約束したらしい。
とても素敵な話だ。
いつかは結ばれるかもしれない相手がいるというのはとても幸せな事のような気がする。
少なくとも孤独は感じないと思う。
わたしにはもう……望めない事だけど。
離婚歴のある女が再婚するには、耐え難い条件を飲むしかない場合が多いから。
ワケあり女には厳しいのだ、この国は。
次の日、魔石の採取から戻って来たジュード様の両手には抱えきれないくらいの大量のウールポコがあった。
「これ……!こ、こんなに沢山……!」
「これだけあれば足りるか?」
「わざわざ取って来て下さったんですか?」
「今日はこれが自生している方向に行くつもりだったから、ついでに……な」
ついでの割には大量のウールポコ。
そして綿毛まみれになっているジュード様……。
きっと、彼はわざわざこの植物を採りに行ってくれたんだ。
わたしが懐かしがったから。
雇い主になんて事をさせてしまったのだと申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも、どうしても嬉しい気持ちが勝ってしまう。
ウールポコを貰えたから嬉しいのではない、
わたしのために採って来てくれた、その気持ちが嬉しいのだ。
伝えたい言葉は沢山あったのに結局わたしはこの言葉しか口に出来なかった。
「……ありがとうございます、とても…とても嬉しいです」
わたしは自然と笑みが溢れ、一束だけウールポコを胸に寄せる。
「そうか……それは良かった」
ジュード様が少し照れくさそうに言った。
見れば耳が少し赤いような気がした。
この人はどうしてこんなにも心が温かいのだろう。
この人といるとどうしてこんなにも心が温かくなれるのだろう。
この胸に去来する気持ちに、
わたしはあえて名前を付けないようにした。
夕食の後、わたしはさっそく薪ストーブの上にウールポコを吊り下げた。
ストーブの熱気ですぐにドライになるだろう。
次の日にはすっかり水分が飛び、
わたしはウールポコの綿毛から糸を紡ぎ始めた。
綿毛を揃え、それを撚り、糸にしてゆく。
それを家の周りで見つけた丁度いい枝に巻いてゆくのだ。
幼い頃からやっていた習慣のような手作業。
ここ数年は紡いでいなかったけど、手が、体が、心が覚えていた。
気付けばわたしは歌を口遊んでいた。
故郷に伝わる紡ぎ歌だ。
昔から、糸を紡ぐ時に歌っていた歌。
それをわたしは無意識に歌っていた。
「♪くるくる回るよ糸車、回る輪廻の糸車、紡ぐ命の撚り糸を吾子のために絡めてゆこう♪」
懐かしい紡ぎ歌を口遊みながら、夢中になって糸を紡いでゆく。
そうやって枝一本分を紡ぎ終えたところで、わたしははっと我に返った。
見ると、ジュード様がわたしの方をじっと見つめておられたのだ。
しまった……、つい癖で歌ってしまった……!
この家はわたしの家じゃないのに……
静かに読書をされていたジュード様のお邪魔になったに違いない。
わたしは慌ててジュード様に謝った。
「ご、ごめんなさいっ……お耳汚しでしたよね、
本当に……「今の歌は?」
わたしの言葉を遮るようにジュード様がわたしに問いかけた。
「え?あ、あの、わたしの故郷に伝わる紡ぎ歌です」
「紡ぎ歌……」
「はい。勝手に歌ってごめんなさい」
「なぜ謝る?とてもキレイな声で聞き惚れた。もう一度歌ってほしい」
「えぇっ?そ、そんなっ……人さまにお聞かせするようなものではっ」
「頼む、もう一度だけ」
「えーー……」
「頼む」
ジュード様があまりに真剣に頼んでくるので、わたしは根負けして恥ずかしながらも紡ぎ歌を歌った。
ジュード様は殊の外この歌をお気に召したらしい。
以降、糸を紡ぐ時は必ずこの歌を歌う事が雇用条件の一つに加えられた。
何もないど田舎の歌をこんなにも気に入ってくれるなんて。
人前で歌うのは恥ずかしいけど、
王都では田舎育ちを笑われる事が多かったわたしは本当に嬉しかったのだ。
彼の側ではとても楽に呼吸が出来る。
ジュード様の優しさが、温かさが、
わたしをわたしらしく居させてくれた。
そしていつしかわたしは
彼の事を、雇い主ではなく一人の男性として
思いを寄せるようになってしまっていた。
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作者のひとり言
糸になる材料の植物の名前……
毛糸のような糸になるイメージだから
“ウール”が付く名前にしたいなと考えまして…
ウール、ウール…ウール…ポコ?
ウールポコ……でいいか☆と相成りました。
はい、読者さま皆さま、ご一緒に。
「なぁにぃ~!やっちまったなぁ!」
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