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よろしくってなに?
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結婚したばかりの夫、フォルカーが遠征先で出会った女性とよろしくやっているらしい……という噂をヤスミンが同郷の友人たちがいるという地方領主のタウンハウスで仕入れてきた。
ヤスミンはこの噂話を私に聞かせようかどう迷ったらしいけど、結局は全く知らない誰かから聞かされるくらいならと私のためを思って話してくれたらしい。
「でもヤスミン、“よろしく”って何をよろしくやっているというのかしら?」
私が不思議に思ってヤスミンにそう訊ねると、彼女は「えっ」と大きく目を見開いて私を見た。
「奥様……?よろしく、というのはその……まぁ暗喩の一種のようなもので、その裏に隠された意味をやんわりとオブラートに包むような言い方でしてね……というか本当に意味が分からないんですか?」
「?ええ、夫が何か頼み事をしているのかしら?それでよろしく?」
「……奥様は、画家でいらっしゃいますものね。クリエイティブな芸術家の方は世情と言いましょうか一般的な常識と少しズレがあると聞き及んだ事がございます。それでしたら仕方ないですよね」
「画家だなんてそんな大それたものじゃないわ。ただ、女性向けの雑誌や小説に挿絵を描いているイラストレーターというものよ。ましてや芸術家だなんて……恥ずかしくなっちゃうわ」
そう。私はフリーでイラストレーターの仕事をしている。
幼い頃から絵を描くのが大好きで、引き取ってくれた小父さまが私の絵の才能を見出し、伸ばそうと絵の勉強をさせてくれた。
おかげで成人する前からちょこちょこ絵のお仕事が貰えるようになり、自宅で出来る仕事であることからも結婚後も続けているのだ。
今は子供向けの小冊子の表紙の依頼を受け、素敵なイラストに仕上げようと自分なりに頑張っている最中だ。
私は昔から一つのもの事に取り掛かるとそれが終わるまでは机にかじり付きになり、
今はヤスミンが手伝ってくれるのをいい事にほとんど引きこもり状態になっている。
もともと出不精で家に居るのが大好きな私にとってはとても有り難い環境なのだ。
ヤスミンは毎日ではなく一日おきに、地方領主のタウンハウスの使用人部屋から我が家に通ってくれている。
その途中で買い物を頼んだり郵便局へ行って貰ったりしているので私はますます家に引きこもりになった。
絵の構図に迷ったり、絵の具の色選びに迷ったりした時は気分転換にお散歩に出るけれど、フォルカーが居ないと滅多に外に出なくなってしまった。
フォルカーは私を買い物や散歩や外食にと理由を付けて外に連れ出してくれていたから。
「歩いて足を動かさないと足がどんどん短くなっていってしまうぞ」
と軽口を言って。
そんな事を考える私に、ヤスミンが難しい顔をして説明してくれた。
「奥様、“よろしく”というのは、この場合は旦那様が他の女性とイチャイチャしているという意味になります」
「イチャイチャ……誰が?」
「ですから旦那様と、その遠征先で知り合ったとかいう女がですよ」
「フォルが他の女性とイチャイチャ?」
「はい……クッ…噂ではそう囁かれていますイマイマシイッ」
「ふふ、ヤスミンはお話の間にちょくちょく本音を入れてくるわね。それも小声の裏声で。ふふふ……面白いわ」
「奥様、ワタシの話し方を面白がっている場合ではございませんよっ?旦那様が浮気をしているという由々しき事態なのですよっ」
「フォルが……浮気ねぇ……」
「うっ……ユルセマセンッ」
「でも、なんだか変な気分なのよね……」
夫の浮気の噂が流れていると聞かされても、私はいまいちピンとこないのであった。
ヤスミンはこの噂話を私に聞かせようかどう迷ったらしいけど、結局は全く知らない誰かから聞かされるくらいならと私のためを思って話してくれたらしい。
「でもヤスミン、“よろしく”って何をよろしくやっているというのかしら?」
私が不思議に思ってヤスミンにそう訊ねると、彼女は「えっ」と大きく目を見開いて私を見た。
「奥様……?よろしく、というのはその……まぁ暗喩の一種のようなもので、その裏に隠された意味をやんわりとオブラートに包むような言い方でしてね……というか本当に意味が分からないんですか?」
「?ええ、夫が何か頼み事をしているのかしら?それでよろしく?」
「……奥様は、画家でいらっしゃいますものね。クリエイティブな芸術家の方は世情と言いましょうか一般的な常識と少しズレがあると聞き及んだ事がございます。それでしたら仕方ないですよね」
「画家だなんてそんな大それたものじゃないわ。ただ、女性向けの雑誌や小説に挿絵を描いているイラストレーターというものよ。ましてや芸術家だなんて……恥ずかしくなっちゃうわ」
そう。私はフリーでイラストレーターの仕事をしている。
幼い頃から絵を描くのが大好きで、引き取ってくれた小父さまが私の絵の才能を見出し、伸ばそうと絵の勉強をさせてくれた。
おかげで成人する前からちょこちょこ絵のお仕事が貰えるようになり、自宅で出来る仕事であることからも結婚後も続けているのだ。
今は子供向けの小冊子の表紙の依頼を受け、素敵なイラストに仕上げようと自分なりに頑張っている最中だ。
私は昔から一つのもの事に取り掛かるとそれが終わるまでは机にかじり付きになり、
今はヤスミンが手伝ってくれるのをいい事にほとんど引きこもり状態になっている。
もともと出不精で家に居るのが大好きな私にとってはとても有り難い環境なのだ。
ヤスミンは毎日ではなく一日おきに、地方領主のタウンハウスの使用人部屋から我が家に通ってくれている。
その途中で買い物を頼んだり郵便局へ行って貰ったりしているので私はますます家に引きこもりになった。
絵の構図に迷ったり、絵の具の色選びに迷ったりした時は気分転換にお散歩に出るけれど、フォルカーが居ないと滅多に外に出なくなってしまった。
フォルカーは私を買い物や散歩や外食にと理由を付けて外に連れ出してくれていたから。
「歩いて足を動かさないと足がどんどん短くなっていってしまうぞ」
と軽口を言って。
そんな事を考える私に、ヤスミンが難しい顔をして説明してくれた。
「奥様、“よろしく”というのは、この場合は旦那様が他の女性とイチャイチャしているという意味になります」
「イチャイチャ……誰が?」
「ですから旦那様と、その遠征先で知り合ったとかいう女がですよ」
「フォルが他の女性とイチャイチャ?」
「はい……クッ…噂ではそう囁かれていますイマイマシイッ」
「ふふ、ヤスミンはお話の間にちょくちょく本音を入れてくるわね。それも小声の裏声で。ふふふ……面白いわ」
「奥様、ワタシの話し方を面白がっている場合ではございませんよっ?旦那様が浮気をしているという由々しき事態なのですよっ」
「フォルが……浮気ねぇ……」
「うっ……ユルセマセンッ」
「でも、なんだか変な気分なのよね……」
夫の浮気の噂が流れていると聞かされても、私はいまいちピンとこないのであった。
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