【完結】 夫はどうやら、遠征先でよろしくやっているようです。よろしくってなんですか?

キムラましゅろう

文字の大きさ
2 / 13

よろしくってなに?

しおりを挟む
結婚したばかりの夫、フォルカーが遠征先で出会った女性とやっているらしい……という噂をヤスミンが同郷の友人たちがいるという地方領主のタウンハウスで仕入れてきた。

ヤスミンはこの噂話を私に聞かせようかどう迷ったらしいけど、結局は全く知らない誰かから聞かされるくらいならと私のためを思って話してくれたらしい。

「でもヤスミン、“よろしく”って何をよろしくやっているというのかしら?」

私が不思議に思ってヤスミンにそう訊ねると、彼女は「えっ」と大きく目を見開いて私を見た。

「奥様……?よろしく、というのはその……まぁ暗喩の一種のようなもので、その裏に隠された意味をやんわりとオブラートに包むような言い方でしてね……というか本当に意味が分からないんですか?」

「?ええ、夫が何か頼み事をしているのかしら?それでよろしく?」

「……奥様は、画家でいらっしゃいますものね。クリエイティブな芸術家の方は世情と言いましょうか一般的な常識と少しズレがあると聞き及んだ事がございます。それでしたら仕方ないですよね」

「画家だなんてそんな大それたものじゃないわ。ただ、女性向けの雑誌や小説に挿絵を描いているイラストレーターというものよ。ましてや芸術家だなんて……恥ずかしくなっちゃうわ」

そう。私はフリーでイラストレーターの仕事をしている。

幼い頃から絵を描くのが大好きで、引き取ってくれた小父さまが私の絵の才能を見出し、伸ばそうと絵の勉強をさせてくれた。

おかげで成人する前からちょこちょこ絵のお仕事が貰えるようになり、自宅で出来る仕事であることからも結婚後も続けているのだ。

今は子供向けの小冊子の表紙の依頼を受け、素敵なイラストに仕上げようと自分なりに頑張っている最中だ。

私は昔から一つのもの事に取り掛かるとそれが終わるまでは机にかじり付きになり、
今はヤスミンが手伝ってくれるのをいい事にほとんど引きこもり状態になっている。

もともと出不精で家に居るのが大好きな私にとってはとても有り難い環境なのだ。

ヤスミンは毎日ではなく一日おきに、地方領主のタウンハウスの使用人部屋から我が家に通ってくれている。
その途中で買い物を頼んだり郵便局へ行って貰ったりしているので私はますます家に引きこもりになった。

絵の構図に迷ったり、絵の具の色選びに迷ったりした時は気分転換にお散歩に出るけれど、フォルカーが居ないと滅多に外に出なくなってしまった。

フォルカーは私を買い物や散歩や外食にと理由を付けて外に連れ出してくれていたから。

「歩いて足を動かさないと足がどんどん短くなっていってしまうぞ」
と軽口を言って。

そんな事を考える私に、ヤスミンが難しい顔をして説明してくれた。

「奥様、“よろしく”というのは、この場合は旦那様が他の女性とイチャイチャしているという意味になります」

「イチャイチャ……誰が?」

「ですから旦那様と、その遠征先で知り合ったとかいう女がですよ」

「フォルが他の女性とイチャイチャ?」

「はい……クッ…噂ではそう囁かれていますイマイマシイッ」

「ふふ、ヤスミンはお話の間にちょくちょく本音を入れてくるわね。それも小声の裏声で。ふふふ……面白いわ」

「奥様、ワタシの話し方を面白がっている場合ではございませんよっ?旦那様が浮気をしているという由々しき事態なのですよっ」

「フォルが……浮気ねぇ……」

「うっ……ユルセマセンッ」

「でも、なんだか変な気分なのよね……」

夫の浮気の噂が流れていると聞かされても、私はいまいちピンとこないのであった。
しおりを挟む
感想 228

あなたにおすすめの小説

【完結】私よりも、病気(睡眠不足)になった幼馴染のことを大事にしている旦那が、嘘をついてまで居候させたいと言い出してきた件

よどら文鳥
恋愛
※あらすじにややネタバレ含みます 「ジューリア。そろそろ我が家にも執事が必要だと思うんだが」 旦那のダルムはそのように言っているが、本当の目的は執事を雇いたいわけではなかった。 彼の幼馴染のフェンフェンを家に招き入れたかっただけだったのだ。 しかし、ダルムのズル賢い喋りによって、『幼馴染は病気にかかってしまい助けてあげたい』という意味で捉えてしまう。 フェンフェンが家にやってきた時は確かに顔色が悪くてすぐにでも倒れそうな状態だった。 だが、彼女がこのような状況になってしまっていたのは理由があって……。 私は全てを知ったので、ダメな旦那とついに離婚をしたいと思うようになってしまった。 さて……誰に相談したら良いだろうか。

ただずっと側にいてほしかった

アズやっこ
恋愛
ただ貴方にずっと側にいてほしかった…。 伯爵令息の彼と婚約し婚姻した。 騎士だった彼は隣国へ戦に行った。戦が終わっても帰ってこない彼。誰も消息は知らないと言う。 彼の部隊は敵に囲まれ部下の騎士達を逃がす為に囮になったと言われた。 隣国の騎士に捕まり捕虜になったのか、それとも…。 怪我をしたから、記憶を無くしたから戻って来れない、それでも良い。 貴方が生きていてくれれば。 ❈ 作者独自の世界観です。

今夜で忘れる。

豆狸
恋愛
「……今夜で忘れます」 そう言って、私はジョアキン殿下を見つめました。 黄金の髪に緑色の瞳、鼻筋の通った端正な顔を持つ、我がソアレス王国の第二王子。大陸最大の図書館がそびえる学術都市として名高いソアレスの王都にある大学を卒業するまでは、侯爵令嬢の私の婚約者だった方です。 今はお互いに別の方と婚約しています。 「忘れると誓います。ですから、幼いころからの想いに決着をつけるため、どうか私にジョアキン殿下との一夜をくださいませ」 なろう様でも公開中です。

妻の私は旦那様の愛人の一人だった

アズやっこ
恋愛
政略結婚は家と家との繋がり、そこに愛は必要ない。 そんな事、分かっているわ。私も貴族、恋愛結婚ばかりじゃない事くらい分かってる…。 貴方は酷い人よ。 羊の皮を被った狼。優しい人だと、誠実な人だと、婚約中の貴方は例え政略でも私と向き合ってくれた。 私は生きる屍。 貴方は悪魔よ! 一人の女性を護る為だけに私と結婚したなんて…。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定ゆるいです。

婚約者に裏切られた女騎士は皇帝の側妃になれと命じられた

ミカン♬
恋愛
小国クライン国に帝国から<妖精姫>と名高いマリエッタ王女を側妃として差し出すよう命令が来た。 マリエッタ王女の侍女兼護衛のミーティアは嘆く王女の監視を命ぜられるが、ある日王女は失踪してしまった。 義兄と婚約者に裏切られたと知ったミーティアに「マリエッタとして帝国に嫁ぐように」と国王に命じられた。母を人質にされて仕方なく受け入れたミーティアを帝国のベルクール第二皇子が迎えに来た。 二人の出会いが帝国の運命を変えていく。 ふわっとした世界観です。サクッと終わります。他サイトにも投稿。完結後にリカルドとベルクールの閑話を入れました、宜しくお願いします。 2024/01/19 閑話リカルド少し加筆しました。

半日だけの…。貴方が私を忘れても

アズやっこ
恋愛
貴方が私を忘れても私が貴方の分まで覚えてる。 今の貴方が私を愛していなくても、 騎士ではなくても、 足が動かなくて車椅子生活になっても、 騎士だった貴方の姿を、 優しい貴方を、 私を愛してくれた事を、 例え貴方が記憶を失っても私だけは覚えてる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるゆる設定です。  ❈ 男性は記憶がなくなり忘れます。  ❈ 車椅子生活です。

私と結婚したいなら、側室を迎えて下さい!

Kouei
恋愛
ルキシロン王国 アルディアス・エルサトーレ・ルキシロン王太子とメリンダ・シュプリーティス公爵令嬢との成婚式まで一か月足らずとなった。 そんな時、メリンダが原因不明の高熱で昏睡状態に陥る。 病状が落ち着き目を覚ましたメリンダは、婚約者であるアルディアスを全身で拒んだ。 そして結婚に関して、ある条件を出した。 『第一に私たちは白い結婚である事、第二に側室を迎える事』 愛し合っていたはずなのに、なぜそんな条件を言い出したのか分からないアルディアスは ただただ戸惑うばかり。 二人は無事、成婚式を迎える事ができるのだろうか…? ※性描写はありませんが、それを思わせる表現があります。  苦手な方はご注意下さい。 ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ

猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。 当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。 それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。 そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。 美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。 「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」 『・・・・オメエの嫁だよ』 執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?

処理中です...