5 / 13
幸せな気分
しおりを挟む
“シュリ……愛してる”
──フォル、フォル、私も……私も愛してる。
寂しかった……
“ごめんなシュリ、もう少しで帰れると思うから”
──お願い、ちゃんと私の元に帰ってきてね……
「奥様」
ヤスミンが居てくれるからよかったけど、やっぱりあなたがいないと寂しいわ。
「奥様!」
パンッ
「はっ……!」
ヤスミンに声を掛けられ、彼女が目の前で“パンッ”と手の平を叩いた音で私はハッと我に返った。
カフェオレのマグを持ったまま呆けていたらしい。
危ない危ない、マグが傾きかけていて熱いカフェオレを膝の上に溢してしまうところだったわ。
「おはようヤスミン、ぼーとしてしまっていてごめんなさい。おかげでヤケドしなくてすんだわ」
「おはようございます奥様。昨夜も遅くまでお仕事をなさっていたのですか?」
「昨日の夜はヤスミンに図書館で借りて来てもらった本に夢中になっていたの」
「それで夜更かしをされたんですね。いけませんよ、早寝早起きは健康の要です」
「ふふ、本当ね。気をつけるわ。……あら、なんだか部屋の中がいい香りするわね?これは……花の香りかしら?」
「え?そうですか?何か香ります?あ、こちらに伺う途中で花屋の前を通ったからその香りが移ったのかもしれませんね」
ヤスミンはそう言って明日のゴミの日のために部屋のゴミ箱のゴミを纏めてくれた。
今日はヤスミンがウチに来てくれる日。
ここに来る途中で食材の買い出しも頼んでおいた。
ゴミを纏め終わってから、その買ってきた食材を袋から出しながらヤスミンが言う。
「アパートの下の郵便受けを覗いてきましたけどね、やっぱり旦那様からのお手紙は入っていませんでした」
「そう……でもね、私の方から手紙を出してしようと思うの」
「奥様が遠征先の地方領にですか?」
「ええ。家族からの手紙は現地の騎士団に直接届くのでしょう?」
「さぁ……?騎士団のことはワタシにはわかりませんからねぇ」
「あ、そうよね。ヤスミンが詳しいのは故郷でもあるその地方領の事よね」
「はい。彼の土地の事ならなんでもお聞きくださいませ!」
「まぁ、頼もしいわね」
「さぁ!ヨシッシャ!今日も一日頑張りましょう!奥様はお仕事をなさっていてください。このヤスミンが来たからには家のことはすべてお任せを!」
「ふふ。やっぱりヤスミンは頼もしいわ」
フォルカーに会えないのは寂しくて辛いけれど、彼が私のためにと雇ってくれたヤスミンのおかげで笑顔でいられる。
さすがはフォルカーだわ、私のことをよくわかってくれている。
私は絵のお仕事の傍らで認た夫への手紙をヤスミンに渡した。
「帰りにポストに投函してもらえるかしら?」
「はい奥様。お易い御用です。旦那様に無事に届くように心を込めてポストに入れますよ」
「ありがとうヤスミン」
私も心を込めて夫に手紙を書いた。
体を壊していないか。
怪我をしていないか。
無茶をしてはいないか。
食事はちゃんと摂れているか。
夜は眠れているか。
そして、噂話は本当なのか。
心配な事、聞きたい事を全て、文字に置き換えて彼に伝えた。
どうかこの手紙が、私の想いが、彼に届きますように。
──フォル、フォル、私も……私も愛してる。
寂しかった……
“ごめんなシュリ、もう少しで帰れると思うから”
──お願い、ちゃんと私の元に帰ってきてね……
「奥様」
ヤスミンが居てくれるからよかったけど、やっぱりあなたがいないと寂しいわ。
「奥様!」
パンッ
「はっ……!」
ヤスミンに声を掛けられ、彼女が目の前で“パンッ”と手の平を叩いた音で私はハッと我に返った。
カフェオレのマグを持ったまま呆けていたらしい。
危ない危ない、マグが傾きかけていて熱いカフェオレを膝の上に溢してしまうところだったわ。
「おはようヤスミン、ぼーとしてしまっていてごめんなさい。おかげでヤケドしなくてすんだわ」
「おはようございます奥様。昨夜も遅くまでお仕事をなさっていたのですか?」
「昨日の夜はヤスミンに図書館で借りて来てもらった本に夢中になっていたの」
「それで夜更かしをされたんですね。いけませんよ、早寝早起きは健康の要です」
「ふふ、本当ね。気をつけるわ。……あら、なんだか部屋の中がいい香りするわね?これは……花の香りかしら?」
「え?そうですか?何か香ります?あ、こちらに伺う途中で花屋の前を通ったからその香りが移ったのかもしれませんね」
ヤスミンはそう言って明日のゴミの日のために部屋のゴミ箱のゴミを纏めてくれた。
今日はヤスミンがウチに来てくれる日。
ここに来る途中で食材の買い出しも頼んでおいた。
ゴミを纏め終わってから、その買ってきた食材を袋から出しながらヤスミンが言う。
「アパートの下の郵便受けを覗いてきましたけどね、やっぱり旦那様からのお手紙は入っていませんでした」
「そう……でもね、私の方から手紙を出してしようと思うの」
「奥様が遠征先の地方領にですか?」
「ええ。家族からの手紙は現地の騎士団に直接届くのでしょう?」
「さぁ……?騎士団のことはワタシにはわかりませんからねぇ」
「あ、そうよね。ヤスミンが詳しいのは故郷でもあるその地方領の事よね」
「はい。彼の土地の事ならなんでもお聞きくださいませ!」
「まぁ、頼もしいわね」
「さぁ!ヨシッシャ!今日も一日頑張りましょう!奥様はお仕事をなさっていてください。このヤスミンが来たからには家のことはすべてお任せを!」
「ふふ。やっぱりヤスミンは頼もしいわ」
フォルカーに会えないのは寂しくて辛いけれど、彼が私のためにと雇ってくれたヤスミンのおかげで笑顔でいられる。
さすがはフォルカーだわ、私のことをよくわかってくれている。
私は絵のお仕事の傍らで認た夫への手紙をヤスミンに渡した。
「帰りにポストに投函してもらえるかしら?」
「はい奥様。お易い御用です。旦那様に無事に届くように心を込めてポストに入れますよ」
「ありがとうヤスミン」
私も心を込めて夫に手紙を書いた。
体を壊していないか。
怪我をしていないか。
無茶をしてはいないか。
食事はちゃんと摂れているか。
夜は眠れているか。
そして、噂話は本当なのか。
心配な事、聞きたい事を全て、文字に置き換えて彼に伝えた。
どうかこの手紙が、私の想いが、彼に届きますように。
272
あなたにおすすめの小説
白い結婚はそちらが言い出したことですわ
来住野つかさ
恋愛
サリーは怒っていた。今日は幼馴染で喧嘩ばかりのスコットとの結婚式だったが、あろうことかパーティでスコットの友人たちが「白い結婚にするって言ってたよな?」「奥さんのこと色気ないとかさ」と騒ぎながら話している。スコットがその気なら喧嘩買うわよ! 白い結婚上等よ! 許せん! これから舌戦だ!!
訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
ただずっと側にいてほしかった
アズやっこ
恋愛
ただ貴方にずっと側にいてほしかった…。
伯爵令息の彼と婚約し婚姻した。
騎士だった彼は隣国へ戦に行った。戦が終わっても帰ってこない彼。誰も消息は知らないと言う。
彼の部隊は敵に囲まれ部下の騎士達を逃がす為に囮になったと言われた。
隣国の騎士に捕まり捕虜になったのか、それとも…。
怪我をしたから、記憶を無くしたから戻って来れない、それでも良い。
貴方が生きていてくれれば。
❈ 作者独自の世界観です。
婚約者に裏切られた女騎士は皇帝の側妃になれと命じられた
ミカン♬
恋愛
小国クライン国に帝国から<妖精姫>と名高いマリエッタ王女を側妃として差し出すよう命令が来た。
マリエッタ王女の侍女兼護衛のミーティアは嘆く王女の監視を命ぜられるが、ある日王女は失踪してしまった。
義兄と婚約者に裏切られたと知ったミーティアに「マリエッタとして帝国に嫁ぐように」と国王に命じられた。母を人質にされて仕方なく受け入れたミーティアを帝国のベルクール第二皇子が迎えに来た。
二人の出会いが帝国の運命を変えていく。
ふわっとした世界観です。サクッと終わります。他サイトにも投稿。完結後にリカルドとベルクールの閑話を入れました、宜しくお願いします。
2024/01/19
閑話リカルド少し加筆しました。
【完結】私よりも、病気(睡眠不足)になった幼馴染のことを大事にしている旦那が、嘘をついてまで居候させたいと言い出してきた件
よどら文鳥
恋愛
※あらすじにややネタバレ含みます
「ジューリア。そろそろ我が家にも執事が必要だと思うんだが」
旦那のダルムはそのように言っているが、本当の目的は執事を雇いたいわけではなかった。
彼の幼馴染のフェンフェンを家に招き入れたかっただけだったのだ。
しかし、ダルムのズル賢い喋りによって、『幼馴染は病気にかかってしまい助けてあげたい』という意味で捉えてしまう。
フェンフェンが家にやってきた時は確かに顔色が悪くてすぐにでも倒れそうな状態だった。
だが、彼女がこのような状況になってしまっていたのは理由があって……。
私は全てを知ったので、ダメな旦那とついに離婚をしたいと思うようになってしまった。
さて……誰に相談したら良いだろうか。
今夜で忘れる。
豆狸
恋愛
「……今夜で忘れます」
そう言って、私はジョアキン殿下を見つめました。
黄金の髪に緑色の瞳、鼻筋の通った端正な顔を持つ、我がソアレス王国の第二王子。大陸最大の図書館がそびえる学術都市として名高いソアレスの王都にある大学を卒業するまでは、侯爵令嬢の私の婚約者だった方です。
今はお互いに別の方と婚約しています。
「忘れると誓います。ですから、幼いころからの想いに決着をつけるため、どうか私にジョアキン殿下との一夜をくださいませ」
なろう様でも公開中です。
妻の私は旦那様の愛人の一人だった
アズやっこ
恋愛
政略結婚は家と家との繋がり、そこに愛は必要ない。
そんな事、分かっているわ。私も貴族、恋愛結婚ばかりじゃない事くらい分かってる…。
貴方は酷い人よ。
羊の皮を被った狼。優しい人だと、誠実な人だと、婚約中の貴方は例え政略でも私と向き合ってくれた。
私は生きる屍。
貴方は悪魔よ!
一人の女性を護る為だけに私と結婚したなんて…。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 設定ゆるいです。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる