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さわこさんと、農場 その1
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その後ショッピングモールをバテアさんと少し見て回った私達は、善治郎さんに挨拶をしてからバテアさんの世界へと帰って参りました。
お店に戻ると、狩りから戻ったリンシンさんがお戻りだったのですが、一緒にエミリアがいました。
リンシンさんのお昼に、と思って準備しておいた握り飯のお弁当を2人で食べながら待っていてくれたようなのですが、
「マーベラス! さすがさわこね……お姉ちゃんのお米をこんなに美味しくしちゃうなんて……」
そんなことを口にしながら、握り飯を一心不乱に食べているところでした。
エミリアとは週に一度アミリア米を運んできてもらう約束になっていまして、今日はその日ではないのですが、
「ザッツライ! さわこのお店が普段どんな感じで営業してるのか見に来てあげたのよ」
エミリアはそう言ってにっこり微笑みました……ですが、
「バイザウェイ、なんで今日は午前中閉めてたのよ? 私、お店が潰れたのかと思って焦ったわ」
エミリアはそう言いながら不思議そうな顔をしていました。
リンシンさんによりますと、
「私が、狩りから戻ったら……お店の前で『リアリィ!? 潰れた!? ありえないし!』って、大騒ぎしてた……」
と、まぁ、そのような事になっていたそうです。
ひょっとしたらですが……エミリアは、居酒屋さわこさんが、バテアさんのお店と一緒に営業していると思い込んでいたのかもしれませんね。
「居酒屋さわこさんは、こちらのバテアさんの魔法道具のお店を間借りさせていただいて営業しているんです。ですので、魔法道具のお店が閉店してから開店するのですが、今日は仕入れの都合で魔法道具のお店をお休みしていただいたんです」
「へぇ、そうだったのね。アイシー、理解したわ。次からは間違えないから!」
エミリアさんはそう言いながら、手にしている握り飯を見つめています。
「……ちょっといいかしら」
「はい?」
「お店がまだやってないってことは……このニギリメシのお代わりをイートしたいっていっても……無理ってことなのかしら?」
エミリアは、おずおずとした感じで私へ視線を向けています。
あぁ、そういうことですか。
私は、エミリアににっこり微笑み返しました。
「お米ならすぐ炊くことが出来ますのですぐにお代わりを準備しますね」
「り、リアリィ! なんて今日は素敵な日なの!」
私の言葉を聞いたエミリアは満面の笑顔を浮かべながら両手を胸の前で組み合わせ、祈りを捧げるような仕草をしていきました。
私は、夜、すぐ炊き始めることが出来るようにと、土鍋に水とともにいれて1時間少々経った状態で魔法袋に保存しておいた土鍋を取り出し、早速炊き上げていきました。
お店の中に、お米の炊けていくいい匂いが立ちこめていきます。
エミリアは、カウンターの席から身を乗り出すと、その匂いを思いっきり吸い込んでいきました。
「これよこれ! お米の炊ける時のこの匂いが最高なのよね! マーベラス!」
エミリアは、頬を赤くしながら歓声をあげていました。
一応成人しているそうですが、私より一回り以上若い上に、かなり小柄で幼い顔立ちのエミリアのそんな仕草は、とても可愛い印象です。
私は、そんなエミリアの仕草に癒やされながらお米を炊きつつ、おかずの料理も進めていきました。
せっかくの時間ですからね。
皆さんとお話しながら、夜の仕込みもしておこおうと思った次第です。
あ、そうそう、その前に……
「バテアさん、さわこの森にまた行きたいのですが……」
私は、バテアさんにそう言いました。
「それは良いけど……何? クッカドウゥドルを回収にいくの?」
バテアさんがそう言うと、リンシンさんが元気に立ち上がりました。
「さわこ、私行くよ! 何羽?……」
「あ、いえ……今日の分はもう仕込み終わっていますので、追加は大丈夫です。それよりも、これを植える畑を作ろうかと思いまして……」
私は、そう言いながらカウンターの上に、紙袋をいくつか並べていきました。
これ、先ほど私の世界で買ってきた野菜の種なんです。
クッカドウゥドルの放牧用のスペースが出来たわけですけど、そこではクッカドウゥドルを広大なスペースを使用して放牧しているのですが、それでもあの世界には未使用のスペースがいくらでもあるのです。
「そこに、この種を植えて、野菜を育ててみようかな……と思っているんですよ」
「へぇ……これ、さわこの世界の野菜なのね……聞いたことのない名前ばかりねぇ」
バテアさんはそう言いながら種の袋を手に取って、それを不思議そうに眺めていらっしゃいました。
この種、バテアさんと一緒に行ったショッピングモールのスーパーコーナーで購入したのですが、その際のバテアさんは、アイスやスナック菓子のコーナーに夢中でしたので、あまり印象に残っていなかったようですね。
……しかし、バテアさんってば……私の世界に行く度に、私の世界の食べ物を開拓なさっている感じですね。
いままでは、異世界にいかれてもあまり現地の方とは接触なさっていなかったバテアさん。
「だってしょうがないじゃない。その世界の人がさ、異世界から来たアタシに対してどんな対応するかなんてわかんないし、面倒なことに巻き込まれたくないしね」
バテアさんは、そう言いながら私を見つめておられました。
「……まぁ、さわこのようなめんどくさい人なら、むしろ大歓迎なんだけどね」
そう言ってクスクス笑うバテアさんに、私は苦笑を返すことしか出来ませんでした。
そんな会話を交えながら、私達が種の袋を見ていると……そこにエミリアが顔を寄せてきました。
「ホワット……これ何? 野菜なの?」
「えぇ、私のいた世か……あ、いえ、国の野菜の種なんです」
私がそう言うと、エミリアは、バテアさんが手になさっている種の袋をジッと見つめ続けています。
「何? これに興味があるの?」
「イエス!」
バテアさんの言葉に即答するエミリア。
そこでバテアさんは、種の袋をエミリアに手渡しました。
「さわこ、なんかお酒ちょうだい。種の袋、しばらく返してもらえそうにないしさ」
バテアさんは、そう言いながらその顔に悪戯っぽい笑みを浮かべています。
エミリアをお酒を飲む口実に利用したのは明らかです。
……ですが、エミリアはバテアさんの言葉が耳に入らないほど、その種の袋に集中しています。
確かに、少し時間がかかりそうですね。
そこで私は、日本酒を並べている棚へと向き直りました。
今、バテアさんが口になさっているのは、個人的に購入なさったポテトチップスです。
そこで私が準備したのが純米吟醸の淡緑(うすみどり)でした。
このお酒、最初は少し酸味を感じて、油っこくなっている口の中をキリッと引き締めてくれます。
そして、フルーティな甘みが口の中に広がりながら口の中の味覚を一変させてくれます。
それでいて、過度に主張することなく、口の中をまるで綺麗に洗い流しながら喉を落ちていく……そんな爽快なお酒です。
ポテトチップスと一緒に口に含むと、そのハーモニーを楽しむ事が出来ること請け合いなんです。
私がそのお酒をお注ぎすると、バテアさんは嬉しそうに微笑みながらそれを口に運んでいきました。
リンシンさんも、飲みたそうになさっていたので一杯お注ぎしました。
リンシンさんは、いつものようにまず自分の前にグラスを置いてそれを嬉しそうに眺めています。
まず、色を楽しまれる、そんな感じですね。
「……綺麗……」
リンシンさんは、うっとりしたような表情をその顔に浮かべています。
その横では、バテアさんが早くも3杯目を飲みながら、同時に2袋目のポテトチップスを開けようとしておられます。
「まったく、そんなにのんびりしてたらアタシがそれも飲んじゃうわよ……っしかしまぁ、このポテトチップスとあうわね、このお酒。もちろんこれだけで飲んでも美味しいけどさ」
バテアさんはそう言いながらグラスを傾けておられます。
その時、予想外の出来事が発生したのです。
それまで、野菜の種をじっと見つめていたエミリアが……リンシンさんが眺めているグラスを掴んだかと思うと、そのまま一気に飲み干してしまったのです。
エミリアは、野菜の種にいまだに集中していて、無意識のうちに近くにあった飲み物を飲んでしまった……そんな雰囲気です。
ですが、さぁ飲むぞ!と思われていたリンシンさんは、まるでムンクの叫びのようなポーズをしながら、空になったグラスを見つめておいでです……
そんな中、おもむろに私へ視線を向けたエミリアが言いました。
「さわこ、この野菜の種の栽培……ぜひ、私とアミリア姉さんも参加させてもらいたいんだけど……」
ーつづく
お店に戻ると、狩りから戻ったリンシンさんがお戻りだったのですが、一緒にエミリアがいました。
リンシンさんのお昼に、と思って準備しておいた握り飯のお弁当を2人で食べながら待っていてくれたようなのですが、
「マーベラス! さすがさわこね……お姉ちゃんのお米をこんなに美味しくしちゃうなんて……」
そんなことを口にしながら、握り飯を一心不乱に食べているところでした。
エミリアとは週に一度アミリア米を運んできてもらう約束になっていまして、今日はその日ではないのですが、
「ザッツライ! さわこのお店が普段どんな感じで営業してるのか見に来てあげたのよ」
エミリアはそう言ってにっこり微笑みました……ですが、
「バイザウェイ、なんで今日は午前中閉めてたのよ? 私、お店が潰れたのかと思って焦ったわ」
エミリアはそう言いながら不思議そうな顔をしていました。
リンシンさんによりますと、
「私が、狩りから戻ったら……お店の前で『リアリィ!? 潰れた!? ありえないし!』って、大騒ぎしてた……」
と、まぁ、そのような事になっていたそうです。
ひょっとしたらですが……エミリアは、居酒屋さわこさんが、バテアさんのお店と一緒に営業していると思い込んでいたのかもしれませんね。
「居酒屋さわこさんは、こちらのバテアさんの魔法道具のお店を間借りさせていただいて営業しているんです。ですので、魔法道具のお店が閉店してから開店するのですが、今日は仕入れの都合で魔法道具のお店をお休みしていただいたんです」
「へぇ、そうだったのね。アイシー、理解したわ。次からは間違えないから!」
エミリアさんはそう言いながら、手にしている握り飯を見つめています。
「……ちょっといいかしら」
「はい?」
「お店がまだやってないってことは……このニギリメシのお代わりをイートしたいっていっても……無理ってことなのかしら?」
エミリアは、おずおずとした感じで私へ視線を向けています。
あぁ、そういうことですか。
私は、エミリアににっこり微笑み返しました。
「お米ならすぐ炊くことが出来ますのですぐにお代わりを準備しますね」
「り、リアリィ! なんて今日は素敵な日なの!」
私の言葉を聞いたエミリアは満面の笑顔を浮かべながら両手を胸の前で組み合わせ、祈りを捧げるような仕草をしていきました。
私は、夜、すぐ炊き始めることが出来るようにと、土鍋に水とともにいれて1時間少々経った状態で魔法袋に保存しておいた土鍋を取り出し、早速炊き上げていきました。
お店の中に、お米の炊けていくいい匂いが立ちこめていきます。
エミリアは、カウンターの席から身を乗り出すと、その匂いを思いっきり吸い込んでいきました。
「これよこれ! お米の炊ける時のこの匂いが最高なのよね! マーベラス!」
エミリアは、頬を赤くしながら歓声をあげていました。
一応成人しているそうですが、私より一回り以上若い上に、かなり小柄で幼い顔立ちのエミリアのそんな仕草は、とても可愛い印象です。
私は、そんなエミリアの仕草に癒やされながらお米を炊きつつ、おかずの料理も進めていきました。
せっかくの時間ですからね。
皆さんとお話しながら、夜の仕込みもしておこおうと思った次第です。
あ、そうそう、その前に……
「バテアさん、さわこの森にまた行きたいのですが……」
私は、バテアさんにそう言いました。
「それは良いけど……何? クッカドウゥドルを回収にいくの?」
バテアさんがそう言うと、リンシンさんが元気に立ち上がりました。
「さわこ、私行くよ! 何羽?……」
「あ、いえ……今日の分はもう仕込み終わっていますので、追加は大丈夫です。それよりも、これを植える畑を作ろうかと思いまして……」
私は、そう言いながらカウンターの上に、紙袋をいくつか並べていきました。
これ、先ほど私の世界で買ってきた野菜の種なんです。
クッカドウゥドルの放牧用のスペースが出来たわけですけど、そこではクッカドウゥドルを広大なスペースを使用して放牧しているのですが、それでもあの世界には未使用のスペースがいくらでもあるのです。
「そこに、この種を植えて、野菜を育ててみようかな……と思っているんですよ」
「へぇ……これ、さわこの世界の野菜なのね……聞いたことのない名前ばかりねぇ」
バテアさんはそう言いながら種の袋を手に取って、それを不思議そうに眺めていらっしゃいました。
この種、バテアさんと一緒に行ったショッピングモールのスーパーコーナーで購入したのですが、その際のバテアさんは、アイスやスナック菓子のコーナーに夢中でしたので、あまり印象に残っていなかったようですね。
……しかし、バテアさんってば……私の世界に行く度に、私の世界の食べ物を開拓なさっている感じですね。
いままでは、異世界にいかれてもあまり現地の方とは接触なさっていなかったバテアさん。
「だってしょうがないじゃない。その世界の人がさ、異世界から来たアタシに対してどんな対応するかなんてわかんないし、面倒なことに巻き込まれたくないしね」
バテアさんは、そう言いながら私を見つめておられました。
「……まぁ、さわこのようなめんどくさい人なら、むしろ大歓迎なんだけどね」
そう言ってクスクス笑うバテアさんに、私は苦笑を返すことしか出来ませんでした。
そんな会話を交えながら、私達が種の袋を見ていると……そこにエミリアが顔を寄せてきました。
「ホワット……これ何? 野菜なの?」
「えぇ、私のいた世か……あ、いえ、国の野菜の種なんです」
私がそう言うと、エミリアは、バテアさんが手になさっている種の袋をジッと見つめ続けています。
「何? これに興味があるの?」
「イエス!」
バテアさんの言葉に即答するエミリア。
そこでバテアさんは、種の袋をエミリアに手渡しました。
「さわこ、なんかお酒ちょうだい。種の袋、しばらく返してもらえそうにないしさ」
バテアさんは、そう言いながらその顔に悪戯っぽい笑みを浮かべています。
エミリアをお酒を飲む口実に利用したのは明らかです。
……ですが、エミリアはバテアさんの言葉が耳に入らないほど、その種の袋に集中しています。
確かに、少し時間がかかりそうですね。
そこで私は、日本酒を並べている棚へと向き直りました。
今、バテアさんが口になさっているのは、個人的に購入なさったポテトチップスです。
そこで私が準備したのが純米吟醸の淡緑(うすみどり)でした。
このお酒、最初は少し酸味を感じて、油っこくなっている口の中をキリッと引き締めてくれます。
そして、フルーティな甘みが口の中に広がりながら口の中の味覚を一変させてくれます。
それでいて、過度に主張することなく、口の中をまるで綺麗に洗い流しながら喉を落ちていく……そんな爽快なお酒です。
ポテトチップスと一緒に口に含むと、そのハーモニーを楽しむ事が出来ること請け合いなんです。
私がそのお酒をお注ぎすると、バテアさんは嬉しそうに微笑みながらそれを口に運んでいきました。
リンシンさんも、飲みたそうになさっていたので一杯お注ぎしました。
リンシンさんは、いつものようにまず自分の前にグラスを置いてそれを嬉しそうに眺めています。
まず、色を楽しまれる、そんな感じですね。
「……綺麗……」
リンシンさんは、うっとりしたような表情をその顔に浮かべています。
その横では、バテアさんが早くも3杯目を飲みながら、同時に2袋目のポテトチップスを開けようとしておられます。
「まったく、そんなにのんびりしてたらアタシがそれも飲んじゃうわよ……っしかしまぁ、このポテトチップスとあうわね、このお酒。もちろんこれだけで飲んでも美味しいけどさ」
バテアさんはそう言いながらグラスを傾けておられます。
その時、予想外の出来事が発生したのです。
それまで、野菜の種をじっと見つめていたエミリアが……リンシンさんが眺めているグラスを掴んだかと思うと、そのまま一気に飲み干してしまったのです。
エミリアは、野菜の種にいまだに集中していて、無意識のうちに近くにあった飲み物を飲んでしまった……そんな雰囲気です。
ですが、さぁ飲むぞ!と思われていたリンシンさんは、まるでムンクの叫びのようなポーズをしながら、空になったグラスを見つめておいでです……
そんな中、おもむろに私へ視線を向けたエミリアが言いました。
「さわこ、この野菜の種の栽培……ぜひ、私とアミリア姉さんも参加させてもらいたいんだけど……」
ーつづく
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