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さわこさんと、農場 その4
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結局この日、アミリアさんはひとしきり種を確認した後、完全に寝落ちなさってしまいました。
エミリアは
「ノープロブレム、引きずって帰るから」
そう言ったのですが、小柄なエミリアではそうもいきません。
結局この日、アミリアとエミリアには泊まっていってもらうことにしました。
バテアさんは、
「ま、賑やかなのは嫌いじゃないしね」
そう言ってクスクス笑っておられたのですが、いつもの薄手のベビードール風の寝間着に着替えられるとエミリアが
「あんびりばぼー!? し、し、し、信じられない! そ、そんな破廉恥な寝間着で寝るなんててて」
と、真っ赤になった顔を両手で覆っていました。
私は最近すっかり慣れてしまっていましたけど……本来、この反応が正しいのかもしれませんね……
寝室は、ベッドの脇にリンシンさんのお布団を敷いた状態で一杯ですので、アミリアさんとエミリアの寝床用にハンモックを吊すことになりました。
吊すといいましても、バテアさんが右手の人差し指をついっと一振りするだけで私達の頭上にハンモックが設置されてしまうのですから、なんともすごいとしかいいようがありません。
ベッドの脇に脚立のようなはしごを起きまして、アミリアさんとエミリアの乗降用にしてあります。
とはいいいましても、アミリアさんはすでに泥酔なさって熟睡中です。
ここはリンシンさんがアミリアさんを背負ってハンモックの上に上がられたのですが、
「えへへ~だっこ~」
完全に寝ぼけておられるアミリアさんがですね、リンシンさんに抱きついたまま離れなくなってしまったんです。
しかも、急に抱きつかれたものですから、びっくりなさったリンシンさんはハンモックの中に倒れ混んでしまわれまして。
「……動けない……かも?……」
そう言いながら苦笑なさっています。
「……どうしましょう、バテアさん」
「そうねぇ……まぁ、アミリアも気持ちよさそうにしてるし、リンシンもたまにはそこで寝るのもいいんじゃない?」
「……ん、わかった……」
と、まぁ、そんな会話の結果、
私とバテアさんが2人でベッドで、
リンシンさんとアミリアさんが頭上のハンモックで、
エミリアが、いつもはリンシンさんが寝ているベッド横の布団で
それぞれ眠ることになりました。
◇◇
その夜中のことでした。
私は体が揺れた気がして目を覚ましました。
すると、私の横、ベッドの横にエミリアが立っていました。
私のシャツを寝間着代わりにだぼっと来ているエミリアは、
「あの……ソーリーさわこ、寝ていたのに悪いだけど……」
そう言いながら、モジモジしています。
……あぁ、これは、あれですね……
「……あの、わ、悪いけど、ちょっとおトイレ……ついてきてくれない? プリーズ……」
エミリアはそう言いながら頬を真っ赤にしていました。
「えぇ、大丈夫ですよ」
私は、にっこり微笑んでベッドから起き上がり、エミリアをトイレに案内していきました。
で、トイレに連れて行ったあとも、
「さわこ、そこにいる?」
「さわこ、ちゃんと居てよ」
と、何度も何度もエミリアに確認され続けました。
ふふ……成人しているとはいえ、とても小柄な体でいつも頑張られているエミリアの、いつもと違う一面を見れたものですから、私は思わず微笑んでしまいました。
……ですが
笑えたのは、ここまででした。
一緒に手をつないで寝室に戻った私とエミリアは、それぞれ寝床に戻ったのですが……
「う~ん……」
「あはぁ……もう一杯~……」
私の頭上のハンモックで寝ているリンシンさんとアミリアさんがですね、寝言を言いながら何度も何度も寝返りを打ち始めたんです。
その度に、ハンモックがギシギシすごい音を立てていまして……その真下に寝ている私は、寝るどころの騒ぎではなくなってしまいました。
◇◇
翌朝……やや寝不足気味ですが、いつもの時間に目を覚ました私は、まだ眠っておられるみなさんを起こさないように気をつけながらベッドを抜け出すと、台所に移動して朝食を作りました。
バテア家の定番になっています
ご飯
お味噌汁
卵焼き
焼き物
漬物
この5品です。
お味噌汁の具材は、今日は厚揚げと大根です。
焼き物は鮭にしました。
漬物は、白菜です。もちろん私が漬けた物ですよ。
お味噌汁の匂いが台所からリビングを通って寝室へと漂い始めた頃合いで、まずリンシンさんが起きられます。
ドンガラガッシャ~ン
「はい!?」
そのタイミングで、寝室からすごい音がいたしました。
私がお玉片手に駆けつけますと、ハンモックから落下したリンシンさんとアミリアさんが、ベッドの上のバテアさんの上に折り重なっています。
ベッド下で寝ていたエミリアも、半身を起こして目を丸くしています。
どうやら目を覚ましたリンシンさんが、布団で寝ていると勘違いして起き上がったもんですからハンモックの上でバランスを崩してしまい、アミリアさんごと落下してしまったようなのです。
「……り、リンシン……お、重いってば」
「ご、ごめん……」
そんな会話を交わしながら、バテアさんとリンシンさんはどうにか立ち上がっていたのですが……そんな中、アミリアさんだけはいまだに寝息をたてておられます。
その様子を見つめていたエミリアが
「……すいません、アミリア姉さんは、一度熟睡してしまうと何があっても起きないものですから……Oh……」
そう言いながら額を押さえていました。
◇◇
その後、しばらくしてようやく目を覚ましたアミリアさんも交えてみんなで朝食をいただきました。
「エミリアのご飯も美味しいけど、さわこのご飯も美味しいわねぇ」
アミリアさんは嬉しそうにそう言ってくださったのですが、その横でエミリアは
「……アミリア姉さん、正直に言っていいのよ。さわこのご飯の方が美味しいって……」
そう言いながら苦笑していました。
それは怒っているというよりも、私の料理を褒めてくださっている感じです。
「さわこ、今度料理も教えてくれない? お姉ちゃんに美味しい物を食べさせてあげたいの。プリーズ」
エミリアは私にそう言いました。
「えぇ、私でよろしければ喜んで」
私は、そんなエミリアに笑顔で返事をいたしました。
◇◇
その後、いつものように罠の確認と狩りに向かったリンシンさん以外の、私、バテアさん、アミリアさん、エミリアの4人で、さわこの森へ向かいました。
バテアさんの展開なさった転移ドアをくぐっていったのですが、
「へぇ……転移魔法なんだ……初めて見たわ」
アミリアさんは、その魔法を珍しそうに見つめておられました。
そして、さわこの森に到着すると
「わぁ……すっごいわね、ここ……」
周囲を見回しながら、アミリアさんは目を丸くなさっていました。
私達の真正面にはクッカドウゥドルを放牧している放牧場があります。
リンシンさんが打ち込んでくださった杭にそって、バテアさんの防御壁魔法が展開されていますので、クッカドウゥドルが杭の外に逃げ出すことはありません。
「へぇ……あのクッカドウゥドルを自然に近い状態で放牧してるのね……それがあの焼き鳥の材料になってるのか」
アミリアさんはそう言いながら、うんうんと頷いています。
次いで、アミリアさんは近くの地面に這いつくばり、土を手に取って何やら確認され始めました。
時折、その土を口に含んだりもされています。
「……ふ~ん……土質は良好、養分もふんだんに含んでいる……ただ微生物は存在しない、と……」
しばらく、ブツブツいいながらあれこれ確認作業を続けておられたアミリアさんなのですが……いきなりガバッと立ち上がられますと、
「決めたわ! 私ここで研究する! ここに引っ越すわ」
いきなりそう言われました。
「この土地、土質は最上質、しかも人の手が入っていないから研究にももってこいよ! うん、最高! 最高の土地よ、ここ」
アミリアさんはそう言いながら、何度も頷いておられます。
「え?」
「はい?」
「ホワット!?」
私・バテアさん・エミリアの3人はそのお言葉を聞きながら思わず目が点になってしまいました。
そんな私達の前で、アミリアさんは腰に漬けておられます魔法袋から何かを取り出されました。
それをみたエミリアが目を丸くしています。
「お姉ちゃん、ハウスを持ってきたの?」
「え?」
ハウス……家、ってことですよね?……え? それを持ってきた???
私が目を点にしていますと、その前でアミリアさんは、取り出した何かを地面の上に置かれまして、
「はい、みんな下がって下がって~」
そう言いながら私達を下がらせていきます。
バテアさんだけは、何が起きるのかご理解なさっているようで、クスクス笑っておられます。
エミリアも「また勝手に……」と言いながらため息をついていますので、こちらもわかっているようですね。
……あれ? じゃあ、これから何が起きるのかわかっていないのって、私だけですか?
私がそんな事を考えていると、
「はい、展開!」
アミリアさんはそう言って手に持っておられたボタンのような物を押されました。
すると……なんということでしょう……
その小さな箱みたいな物体がいきなり大きくなっていきまして……そこに木造二階建ての家が出現したんです。
その入り口には
『アミリア野菜植物研究所』
という看板が掲げられていました。
ーつづく
エミリアは
「ノープロブレム、引きずって帰るから」
そう言ったのですが、小柄なエミリアではそうもいきません。
結局この日、アミリアとエミリアには泊まっていってもらうことにしました。
バテアさんは、
「ま、賑やかなのは嫌いじゃないしね」
そう言ってクスクス笑っておられたのですが、いつもの薄手のベビードール風の寝間着に着替えられるとエミリアが
「あんびりばぼー!? し、し、し、信じられない! そ、そんな破廉恥な寝間着で寝るなんててて」
と、真っ赤になった顔を両手で覆っていました。
私は最近すっかり慣れてしまっていましたけど……本来、この反応が正しいのかもしれませんね……
寝室は、ベッドの脇にリンシンさんのお布団を敷いた状態で一杯ですので、アミリアさんとエミリアの寝床用にハンモックを吊すことになりました。
吊すといいましても、バテアさんが右手の人差し指をついっと一振りするだけで私達の頭上にハンモックが設置されてしまうのですから、なんともすごいとしかいいようがありません。
ベッドの脇に脚立のようなはしごを起きまして、アミリアさんとエミリアの乗降用にしてあります。
とはいいいましても、アミリアさんはすでに泥酔なさって熟睡中です。
ここはリンシンさんがアミリアさんを背負ってハンモックの上に上がられたのですが、
「えへへ~だっこ~」
完全に寝ぼけておられるアミリアさんがですね、リンシンさんに抱きついたまま離れなくなってしまったんです。
しかも、急に抱きつかれたものですから、びっくりなさったリンシンさんはハンモックの中に倒れ混んでしまわれまして。
「……動けない……かも?……」
そう言いながら苦笑なさっています。
「……どうしましょう、バテアさん」
「そうねぇ……まぁ、アミリアも気持ちよさそうにしてるし、リンシンもたまにはそこで寝るのもいいんじゃない?」
「……ん、わかった……」
と、まぁ、そんな会話の結果、
私とバテアさんが2人でベッドで、
リンシンさんとアミリアさんが頭上のハンモックで、
エミリアが、いつもはリンシンさんが寝ているベッド横の布団で
それぞれ眠ることになりました。
◇◇
その夜中のことでした。
私は体が揺れた気がして目を覚ましました。
すると、私の横、ベッドの横にエミリアが立っていました。
私のシャツを寝間着代わりにだぼっと来ているエミリアは、
「あの……ソーリーさわこ、寝ていたのに悪いだけど……」
そう言いながら、モジモジしています。
……あぁ、これは、あれですね……
「……あの、わ、悪いけど、ちょっとおトイレ……ついてきてくれない? プリーズ……」
エミリアはそう言いながら頬を真っ赤にしていました。
「えぇ、大丈夫ですよ」
私は、にっこり微笑んでベッドから起き上がり、エミリアをトイレに案内していきました。
で、トイレに連れて行ったあとも、
「さわこ、そこにいる?」
「さわこ、ちゃんと居てよ」
と、何度も何度もエミリアに確認され続けました。
ふふ……成人しているとはいえ、とても小柄な体でいつも頑張られているエミリアの、いつもと違う一面を見れたものですから、私は思わず微笑んでしまいました。
……ですが
笑えたのは、ここまででした。
一緒に手をつないで寝室に戻った私とエミリアは、それぞれ寝床に戻ったのですが……
「う~ん……」
「あはぁ……もう一杯~……」
私の頭上のハンモックで寝ているリンシンさんとアミリアさんがですね、寝言を言いながら何度も何度も寝返りを打ち始めたんです。
その度に、ハンモックがギシギシすごい音を立てていまして……その真下に寝ている私は、寝るどころの騒ぎではなくなってしまいました。
◇◇
翌朝……やや寝不足気味ですが、いつもの時間に目を覚ました私は、まだ眠っておられるみなさんを起こさないように気をつけながらベッドを抜け出すと、台所に移動して朝食を作りました。
バテア家の定番になっています
ご飯
お味噌汁
卵焼き
焼き物
漬物
この5品です。
お味噌汁の具材は、今日は厚揚げと大根です。
焼き物は鮭にしました。
漬物は、白菜です。もちろん私が漬けた物ですよ。
お味噌汁の匂いが台所からリビングを通って寝室へと漂い始めた頃合いで、まずリンシンさんが起きられます。
ドンガラガッシャ~ン
「はい!?」
そのタイミングで、寝室からすごい音がいたしました。
私がお玉片手に駆けつけますと、ハンモックから落下したリンシンさんとアミリアさんが、ベッドの上のバテアさんの上に折り重なっています。
ベッド下で寝ていたエミリアも、半身を起こして目を丸くしています。
どうやら目を覚ましたリンシンさんが、布団で寝ていると勘違いして起き上がったもんですからハンモックの上でバランスを崩してしまい、アミリアさんごと落下してしまったようなのです。
「……り、リンシン……お、重いってば」
「ご、ごめん……」
そんな会話を交わしながら、バテアさんとリンシンさんはどうにか立ち上がっていたのですが……そんな中、アミリアさんだけはいまだに寝息をたてておられます。
その様子を見つめていたエミリアが
「……すいません、アミリア姉さんは、一度熟睡してしまうと何があっても起きないものですから……Oh……」
そう言いながら額を押さえていました。
◇◇
その後、しばらくしてようやく目を覚ましたアミリアさんも交えてみんなで朝食をいただきました。
「エミリアのご飯も美味しいけど、さわこのご飯も美味しいわねぇ」
アミリアさんは嬉しそうにそう言ってくださったのですが、その横でエミリアは
「……アミリア姉さん、正直に言っていいのよ。さわこのご飯の方が美味しいって……」
そう言いながら苦笑していました。
それは怒っているというよりも、私の料理を褒めてくださっている感じです。
「さわこ、今度料理も教えてくれない? お姉ちゃんに美味しい物を食べさせてあげたいの。プリーズ」
エミリアは私にそう言いました。
「えぇ、私でよろしければ喜んで」
私は、そんなエミリアに笑顔で返事をいたしました。
◇◇
その後、いつものように罠の確認と狩りに向かったリンシンさん以外の、私、バテアさん、アミリアさん、エミリアの4人で、さわこの森へ向かいました。
バテアさんの展開なさった転移ドアをくぐっていったのですが、
「へぇ……転移魔法なんだ……初めて見たわ」
アミリアさんは、その魔法を珍しそうに見つめておられました。
そして、さわこの森に到着すると
「わぁ……すっごいわね、ここ……」
周囲を見回しながら、アミリアさんは目を丸くなさっていました。
私達の真正面にはクッカドウゥドルを放牧している放牧場があります。
リンシンさんが打ち込んでくださった杭にそって、バテアさんの防御壁魔法が展開されていますので、クッカドウゥドルが杭の外に逃げ出すことはありません。
「へぇ……あのクッカドウゥドルを自然に近い状態で放牧してるのね……それがあの焼き鳥の材料になってるのか」
アミリアさんはそう言いながら、うんうんと頷いています。
次いで、アミリアさんは近くの地面に這いつくばり、土を手に取って何やら確認され始めました。
時折、その土を口に含んだりもされています。
「……ふ~ん……土質は良好、養分もふんだんに含んでいる……ただ微生物は存在しない、と……」
しばらく、ブツブツいいながらあれこれ確認作業を続けておられたアミリアさんなのですが……いきなりガバッと立ち上がられますと、
「決めたわ! 私ここで研究する! ここに引っ越すわ」
いきなりそう言われました。
「この土地、土質は最上質、しかも人の手が入っていないから研究にももってこいよ! うん、最高! 最高の土地よ、ここ」
アミリアさんはそう言いながら、何度も頷いておられます。
「え?」
「はい?」
「ホワット!?」
私・バテアさん・エミリアの3人はそのお言葉を聞きながら思わず目が点になってしまいました。
そんな私達の前で、アミリアさんは腰に漬けておられます魔法袋から何かを取り出されました。
それをみたエミリアが目を丸くしています。
「お姉ちゃん、ハウスを持ってきたの?」
「え?」
ハウス……家、ってことですよね?……え? それを持ってきた???
私が目を点にしていますと、その前でアミリアさんは、取り出した何かを地面の上に置かれまして、
「はい、みんな下がって下がって~」
そう言いながら私達を下がらせていきます。
バテアさんだけは、何が起きるのかご理解なさっているようで、クスクス笑っておられます。
エミリアも「また勝手に……」と言いながらため息をついていますので、こちらもわかっているようですね。
……あれ? じゃあ、これから何が起きるのかわかっていないのって、私だけですか?
私がそんな事を考えていると、
「はい、展開!」
アミリアさんはそう言って手に持っておられたボタンのような物を押されました。
すると……なんということでしょう……
その小さな箱みたいな物体がいきなり大きくなっていきまして……そこに木造二階建ての家が出現したんです。
その入り口には
『アミリア野菜植物研究所』
という看板が掲げられていました。
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