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第3章 複雑な体質
第25話 濃厚な口付けを※
しおりを挟む※成人要素あり
◇◇◇
一瞬、間があった。
我に返った私は、突拍子もない彼の言葉に慌てふためく。
「いや、あのでもほら。昨日もキスしたし。猫の時だって実はキスしちゃったりしてて……」
「軽いのしかしてねーだろ。何を今更怖気づいてんだよ」
「怖気づいてなんか……」
私は必死で陽太さんから顔を背けていた。改めてキス宣言をされるのはかなり恥ずかしい。そりゃ猫の時に私は感情に身を任せて積極的にキスをしたが、彼から来られるのはまた心境が違う。
陽太さんの吐息が耳にかかり、私の体が熱を帯びた。彼の胸板に手をあてて僅かに抵抗していると、陽太さんはパーカーのファスナーに手をかけて脱ぎ始める。
「な……何で脱ぐんですか!」
「嵩張るだろ。今俺暑いし」
「!?」
黒のロングTシャツになった陽太さんは、再び私に身を寄せてきた。ソファに座っている私と、床に膝を立て向かい合う陽太さん。普段は身長差があるからどうしても私が彼を見上がる形となるが、ソファに座っているため私は陽太さんと同じ目線となった。
「よ……陽太さ……ふ」
心の準備が整わないまま、唇を塞がれた。
(あ……)
一瞬で終わった昨日のキスとは異なり、陽太さんは唇を押し付けてくる。彼の顔が目の前にあり私は身を固くした。陽太さんが私の腕を掴み、顔の角度を変えて啄んでくる。
軽いリップ音がいやに耳に響き、私はゾクゾクと背筋が震えた。
「ふ……ん……」
甘い声が漏れると、陽太さんが唇から頬へ、頬から顎先へ、顎先から喉元へと徐々に移動していった。吸い付くように甘美な刺激を与えてくる彼。その優しい動きに、少しだけ体の力が抜ける。
首筋に顔を埋めたかと思うと、陽太さんが私のうなじを甘噛みした。
「ふやぁっ……」
また昨日のような高い声が上がった。自分の声とは思えないほどの甘い音に羞恥が込み上げる。
「首……弱くなったな」
ボソッとそう囁かれたかと思うと、陽太さんは私の後ろ髪をかき分け、そこをペロッと舐めてきた。
「あ……んん……っ」
「お前、ここ怪我してねえ? カサブタになってるんだけど」
「あ……そこは……」
首筋の怪我は、野良猫に襲われた時のものだ。まさか交尾をされそうになっただなんて言えるわけもなく、私は咄嗟に誤魔化した。
「虫に刺されて掻きむしったら血が出たんです」
「……この季節に蚊がいると思ってんのか」
「最近の蚊は寒さに耐久性があるんですよ」
「完全な噛み痕になってんぞ」
「うぐ」
私の嘘は糸も簡単にバレた。陽太さんが目を細めて私を見据えてくる。心を見透かすような強い瞳に私は負けた。
「……猫になった時に川原で野良猫に噛まれて……」
「野良猫? 喧嘩でもしたのか」
「喧嘩っていうか……まあ喧嘩なんですけど……後ろから乗り上げられたというか……」
「乗り上げられた?」
「その……背後に回ってきたんですけど、私、鈍いから避けられなくて」
「まさか雄じゃねえだろうな」
「……雄猫でした」
「お前、襲われたってこと?」
最後の質問に私は素直に答えることができずに黙ってしまった。猫に交尾を迫られたなんて情けない話があるだろうか。私は身を小さくし、下に俯く。
それが肯定しているものだとすぐに感じたのか、陽太さんの表情が変わった。
陽太さんが私の腕を強く掴み、身体をソファに横たえられる。ギシッとソファが軋み、陽太さんが私の上に跨った。
「え……あの……」
「野良猫に交尾されたんだな」
「で、でも未遂ですよ。途中で人が来たからうまく逃げれて………」
「狙われたことに間違いねーんだろ」
陽太さんが私に覆いかぶさり、再び喉元に吸い付いた。
「ひゃうっ」
「猫になってもお前は無防備なんだよ。他の野郎にキスマーク付けられてんじゃねえ」
「んなっ! キスマークなんかじゃ……」
こんなのただの傷痕だ。否定をしようとする前に、陽太さんが私の体を僅かに横に向ける。猫から受けた傷口の周りを陽太さんが強く噛み付いた。
「んやあっ!」
痛みというよりも驚きの声が上がる。強すぎる衝撃に私の体が跳ねた。猫になってから、やけに首筋が敏感になった。全身の力が抜け抵抗がまったくできない。
「よ……陽太さ……」
震える声を出すと、陽太さんがチュッチュッと強く首筋を刺激した。新しく愛の証を残していると感じ、私はカアッと顔に熱が集中する。
「ダ……ダメです。そんなところに痕を付けたら人に見えちゃう」
「いいじゃん別に。お前が俺のものだってマーキングしておかねえと……気が済まない」
「ふ……ん……あ」
しつこいぐらい甘噛みをされた私はもう彼に身を預けることしかできなかった。今まで味わったことのないような刺激が全身に走り、身体が震える。首にキスを受けただけでこんなに悶えるなんて人間の時はなかった。
熱い舌で丹念に舐められ、私の息も乱れ始める。
「ふん……も……そこばっかやだ……」
「陽菜子」
グイッと肩を引かれ、私は仰向けにされる。覆い被さっている陽太さんと対面したかと思うと、再び唇が重なった。
驚いて僅かに開いていた口に、ぬるりと彼の舌が侵入してくる。舌を絡められ、吐息が混ざり合った。
「ん……ふん……んむ……」
「……ちゅ……ん」
陽太さんが体重をかけて私の唇に吸い付いてくる。私の頬を陽太さんが両手で挟み、互いの胸がくっついた。陽太さんに伝わるんじゃないかと思うほど、私の鼓動が太鼓のように鳴り出した。
呼吸が苦しくなるが、陽太さんががっしりと私の顔を抑えているから逃げることは困難。角度を変えながら、口付けは深くなっていくばかりだ。緩慢な感触にまた背筋がゾクゾクと粟立った。
「あ……う……ちゅ……」
まるで食べられているような気分だ。食らいつくように奪われた唇が徐々に熱を増していく。このままだと自分の舌が溶かされるんじゃないかと錯覚した。
陽太さんも段々息が荒くなってくる。私達の荒い息遣いがリビングに響いた。
「はあ……ん……ふ……」
陽太さんは私の頬から手を離し、するすると首筋や鎖骨を撫でた。それでもキスは止まらない。酸欠になってきた私の瞳に涙が滲んだ。
苦しいのに、気持ちいい。
訳のわからない感情が溢れ出し、私は陽太さんの手に自分の手を添えた。
「ふむ………ん」
体はもう痺れていた。尻尾が陽太さんの片足に絡み、耳が僅かに伏せる。服を通して陽太さんの体も熱を帯びてきたのを感じた。
唇の僅かな隙間から互いの唾液が零れる。そしてやっと陽太さんが顔を僅かに離した。やっと別れた舌と舌の先端から透明の糸が引くのを目にし、私はフルリと震える。
「は……は……ん」
「はあ……はあ……陽菜子……」
欲情の瞳を浮かべた陽太さんが私の濡れた唇を親指で撫でた。陽太さんがグリッと膝で私の下肢の間を押してくる。
「あっ……やあ!?」
「やばい。ちょっと……マジで止まんねえかも」
陽太さんは低く唸ると、トレーナーの上から私の胸を揉んできた。下着をつけていないせいか、服に擦れて敏感に反応してしまった。
「んやあっ!」
甘い声が上がり、ゾクリと痺れが走った。やわやわと緩慢な動きの愛撫を受け、私は思わず陽太さんの手を抑えるも、彼に対抗できるほどの力は出なかった。
「ふやあっ! 陽太さ……ああ!」
ふくらみの頂を指の腹で探り当てられ、私は顔をソファに擦りつける。敏感な場所を集中的に弄られ、喘ぎ声が我慢できなかった。
「んん……っ! ふっ! やあ……」
「はあ……は……気持ちいいか?」
陽太さんが顔を寄せ、私の耳に息を吹きかけた。そんな小さな刺激にも私はビクンッと体が跳ねる。
(何か、私今日おかしい……!)
いつも以上に陽太さんの愛撫に体が反応している気がする。声だって抑えが効かない。こんなのいつもの自分じゃない気がした。
キスだけで心も体もぐしゃぐしゃになっている。
陽太さんが胸を揉んでいた片手を私の足に移動させた。トレーナーの裾を捲り上げ、臍周囲を弄りはじめる。直接彼の体温を肌で感じ、私は下肢の間が疼いた。
「あ……ま、待って……私………んん!」
「陽菜子……」
陽太さんが私の履いていたトランクスの足の裾から手を差し入れようとしたその時。
熱気に包まれた部屋にインターホンが響き渡った。
ピンポーン ピンポーン ピンポーン
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