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第4章 離れて行く
第33話 素直な気持ち
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*
「風間。おい、風間」
「え?」
「信号が青になったぞ」
助手席に座っていた先輩に指摘をされ、俺は我に返る。交差点の信号が緑色に変わり、俺は慌ててアクセルを踏んだ。今は交通の見廻りをしている最中。完全に緩んでいた思考を切り替え、俺はパトカーの運転に再び集中する。
スピード違反や通行違反、無断駐車など、何かトラブルがないかと気を張ってはいるが、胸の内に広がる靄はまだ晴れなかった。
「今日はやけにぼーっとしてるな。大丈夫か?」
三つ年が離れている杉山先輩が真顔で俺に話しかけてきた。
「すみません。昨日あんまり眠れなかったもので……」
「運転中なんだから気を付けろよ。俺達が違反したら元も子もないんだからな」
「はい」
額を小突かれ、被っていた警察帽子がずれた。つばを持って帽子の位置を直し、再び視線を前に向ける。今日は平和だ。特に違反をするような輩を見かけることもなく、車通りが少ない車道を走り続ける。
「何か気にかかることでもあるんじゃないのか」
「え。何すか急に」
「お前が物思いにふける時は、大抵悩んでることが多いからな。彼女と喧嘩でもしたんだろう?」
図星を突かれ、俺はグッと握っていたハンドルに力を込める。冷静沈着で表情をあまり出さない先輩が珍しく吹いた。
「やっぱりな」
「……俺、そんなわかりやすいですか?」
「ああ。お前の気分の変動は一度や二度じゃないからな。ついこの間もイライラしてたかと思えば、急に上機嫌になって早く仕事を終わらせるようになったし、今日に至っては黙ったままむくれてる。本当に忙しい奴だな」
俺はすぐに言葉を返すことができなかった。確かに、一週間前にあいつと喧嘩した時から俺はずっと気分が上下していたと自覚はある。
心を見透かすような杉山先輩に、俺は僅かに怯んだ。
「喧嘩っていうか、今回は俺が一方的に泣かせたんですよ」
朝の陽菜子の怯えた表情を思い出し、俺は唇を結んだ。
一枚しかシャツを羽織っていない姿と、俺の元から離れるような発言をしたことが許せなくて、我慢に我慢を重ねた理性の糸が切れた。
―――『陽太さんが他の人を好きになって、その人と一緒になる姿を見るくらいなら……私、私……他の人のところに行きます!』
陽菜子が叫んだ思いに、今まで感じたことのない怒りと焦りが募った。
俺が他の女を好きになる? 俺が他の女と一緒になる? 何を言っているのか訳がわからなかった。そんなこと、本気で思ってるいるのかと。俺のことがそんなに信用ならないのかと。
そして何より、俺の不安を煽ったのは最後にあいつが出した名前だった。
『お前が彼女を泣かせるようなら――――桜宮さんは僕が貰うぞ』
蓮が真っすぐに俺へ放った言葉が甦り、俺の思考は独占欲に捕らわれた。和真や大和は陽菜子へ友好的に接しているが、蓮は違う。あいつは陽菜子を「女」として見ている。高校の頃から思いが変わっていない。
蓮の猫になっても構わないと発言され、俺は嫉妬に狂った。
(あいつの名前なんか出すな。俺以外の男を見るな。俺以外の男を求めるな。お前が好きになったのは、俺だろう。俺のこと以外考えるなよ)
そう強く念じながら、愛撫ではなく痛みを与えてしまった。忘れられないような刺激を刻まないと、あいつがいなくなるような気がしたから。
ぐちゃぐちゃにしたい。めちゃくちゃにしたい。俺のことしか考えられないようにしたい。抑えの効かない強い欲が込み上げたが、陽菜子の泣き声が耳に届き、途中で我に返った。
体を震わせて、俺から目を反らす陽菜子を見てすぐに冷静になった。泣きじゃくる姿は、本気で怖がっているもの。恐怖に竦み怯えているのだと気づき、後悔が込み上げる。
「嫌われて当然のことをした」
無意識に声が漏れた。
あの後どう声をかけていいのかわからなくて、そのままマンションから出てきてしまった。仕事に集中しようと意識はしているが、陽菜子を気にかけてしまい頭から離れない。
車内のアナログ時計が十五時を表示すると、先輩が静かに問いかけた。
「なあ風間。お前明日当直だったよな?」
突然の質問に俺は素直に答える。
「そうですよ」
「俺と勤務を交代してくれないか」
「え? 別にいいですけど、先輩明日休みのはずじゃ……」
「いいんだ別に。約束がキャンセルになったから、明日当直のほうが都合がいい」
俺は目を瞬いた。先輩に視線を向けると、窓際に頬杖をついて口元を緩めている。
「お前も、休みのほうが都合がいいだろ。部長からは俺から伝えておく」
「先輩……」
「今度、俺にもその子を紹介しろ」
女性警官から絶大な人気を誇る杉山先輩。顔だけじゃなく仕事だってこなせるし、男としても色々尊敬する面があるが、上下関係なく多くの人間から認められるのはたぶんこういうところだと思う。
さり気ない心遣いを受け、俺は素直に頭を下げた。
「ありがとうございます」
「あと焼肉奢れよ」
「了解っす」
条件は絶対に守ると俺は心に誓った。
明日は休みになった。久しぶりに朝から晩までずっと一緒にいられる。折角貰った貴重な時間を有効に使うことを考え、俺は少しだけ気分が晴れた。
*
「お疲れ様です!」
「おう、お疲れ」
仕事をいつもより早めに切り上げた俺は、廊下ですれ違う上司に挨拶を交わす。急いで男子更衣室へ向かいロッカーを開いて着替えをしていると、背後から首に腕を回された。
「かーざま!」
「うおっ。何だよ竹島」
振り返ると、同僚が満面の笑みで立っていた。
「おい、聞いたぞ。明日休みになったんだってな。今夜居酒屋に行くんだけど、一緒に行くか?」
「どうっすか風間先輩。たまにはいいでしょ」
竹島の横から、後輩の篠田が顔を出した。二人に誘いを受けるが、俺は構わず着替えを続ける。
「悪い。俺今日は用事があるんだ。お前等だけで楽しんで来いよ」
そう返すと、篠田が声を張った。
「えーまたっすか!? 風間先輩ってば最近付き合い悪いっすよ」
「マジで悪い。今度埋め合わせすっから」
迷彩柄のマウンテンパーカーを羽織り、俺はファスナーを首まで閉める。リュックを背負い、ロッカーの鍵を閉めると俺はすぐに更衣室から飛び出した。
「こら風間! 廊下は走るなと言っただろ!」
「すいません気を付けます!」
「じゃあ走るのをやめないか!」
上司に注意を受けたが、俺は少し足の速度を緩めるだけですぐに逃げる。あのハゲの説教は長い。今日だけは足止めを勘弁願いたい俺は、すれ違う人々をうまくすり抜け廊下を突っ切った。
警察署の職員玄関を抜け、俺は駐輪場に停めていたクロスバイクに跨った。辺りはすっかり暗くなっている。ペダルを思い切り踏みいつものように走り出せば、冷たい風が頬を撫でた。
シャアアアッとタイヤと地面が擦れる音が響く中、俺は慣れた道を自転車で駆け抜ける。車のライトや外灯に照らされる道路を横目に自分が住むマンションを目指した。
イルミネーションが光る街中まで来れば、手を繋いでいる恋人同士の姿を何人も見かける。
「ねえねえ、夕食どうする?」
「イタリアンのお店を予約しておいたよ」
「本当? やったあ!」
いちゃいちゃしている馬鹿ップルの会話が聞こえ、俺は目を細める。
「やーん。寒い」
「そんな寒い恰好をしてくるからだろ」
「こんなに冷えるなんて思わなかったんだもん」
「仕方ないな。ほら、手繋ぐぞ」
右を見ても左を見てもカップルばっか。甘い言葉がいやに聞こえてくる。こっちまで気恥ずかしくなってくると、信号が赤となり俺は片足をついて歩道の前で留まった。
そして、目の前から制服を着た高校生の男女が手を繋いでいるのを見つけた。俺達が通っていた曙学園の制服だと気づき、俺は思わず凝視する。
(懐かしいな……)
紺色のブレザーに青のチェック柄のズボンとスカート。自分達も着ていた高等部の制服の形態はまったく変わっていなかった。
懐かしさを噛みしめていると、ふと陽菜子と初めて会った入学式の記憶が過った。
『あなたなんか大っ嫌いです!!』
すべてが始まったあの日。
真っ赤に顔を染めて飛び出したあの言葉が、俺の気持ちを動かした。
***
「風間。おい、風間」
「え?」
「信号が青になったぞ」
助手席に座っていた先輩に指摘をされ、俺は我に返る。交差点の信号が緑色に変わり、俺は慌ててアクセルを踏んだ。今は交通の見廻りをしている最中。完全に緩んでいた思考を切り替え、俺はパトカーの運転に再び集中する。
スピード違反や通行違反、無断駐車など、何かトラブルがないかと気を張ってはいるが、胸の内に広がる靄はまだ晴れなかった。
「今日はやけにぼーっとしてるな。大丈夫か?」
三つ年が離れている杉山先輩が真顔で俺に話しかけてきた。
「すみません。昨日あんまり眠れなかったもので……」
「運転中なんだから気を付けろよ。俺達が違反したら元も子もないんだからな」
「はい」
額を小突かれ、被っていた警察帽子がずれた。つばを持って帽子の位置を直し、再び視線を前に向ける。今日は平和だ。特に違反をするような輩を見かけることもなく、車通りが少ない車道を走り続ける。
「何か気にかかることでもあるんじゃないのか」
「え。何すか急に」
「お前が物思いにふける時は、大抵悩んでることが多いからな。彼女と喧嘩でもしたんだろう?」
図星を突かれ、俺はグッと握っていたハンドルに力を込める。冷静沈着で表情をあまり出さない先輩が珍しく吹いた。
「やっぱりな」
「……俺、そんなわかりやすいですか?」
「ああ。お前の気分の変動は一度や二度じゃないからな。ついこの間もイライラしてたかと思えば、急に上機嫌になって早く仕事を終わらせるようになったし、今日に至っては黙ったままむくれてる。本当に忙しい奴だな」
俺はすぐに言葉を返すことができなかった。確かに、一週間前にあいつと喧嘩した時から俺はずっと気分が上下していたと自覚はある。
心を見透かすような杉山先輩に、俺は僅かに怯んだ。
「喧嘩っていうか、今回は俺が一方的に泣かせたんですよ」
朝の陽菜子の怯えた表情を思い出し、俺は唇を結んだ。
一枚しかシャツを羽織っていない姿と、俺の元から離れるような発言をしたことが許せなくて、我慢に我慢を重ねた理性の糸が切れた。
―――『陽太さんが他の人を好きになって、その人と一緒になる姿を見るくらいなら……私、私……他の人のところに行きます!』
陽菜子が叫んだ思いに、今まで感じたことのない怒りと焦りが募った。
俺が他の女を好きになる? 俺が他の女と一緒になる? 何を言っているのか訳がわからなかった。そんなこと、本気で思ってるいるのかと。俺のことがそんなに信用ならないのかと。
そして何より、俺の不安を煽ったのは最後にあいつが出した名前だった。
『お前が彼女を泣かせるようなら――――桜宮さんは僕が貰うぞ』
蓮が真っすぐに俺へ放った言葉が甦り、俺の思考は独占欲に捕らわれた。和真や大和は陽菜子へ友好的に接しているが、蓮は違う。あいつは陽菜子を「女」として見ている。高校の頃から思いが変わっていない。
蓮の猫になっても構わないと発言され、俺は嫉妬に狂った。
(あいつの名前なんか出すな。俺以外の男を見るな。俺以外の男を求めるな。お前が好きになったのは、俺だろう。俺のこと以外考えるなよ)
そう強く念じながら、愛撫ではなく痛みを与えてしまった。忘れられないような刺激を刻まないと、あいつがいなくなるような気がしたから。
ぐちゃぐちゃにしたい。めちゃくちゃにしたい。俺のことしか考えられないようにしたい。抑えの効かない強い欲が込み上げたが、陽菜子の泣き声が耳に届き、途中で我に返った。
体を震わせて、俺から目を反らす陽菜子を見てすぐに冷静になった。泣きじゃくる姿は、本気で怖がっているもの。恐怖に竦み怯えているのだと気づき、後悔が込み上げる。
「嫌われて当然のことをした」
無意識に声が漏れた。
あの後どう声をかけていいのかわからなくて、そのままマンションから出てきてしまった。仕事に集中しようと意識はしているが、陽菜子を気にかけてしまい頭から離れない。
車内のアナログ時計が十五時を表示すると、先輩が静かに問いかけた。
「なあ風間。お前明日当直だったよな?」
突然の質問に俺は素直に答える。
「そうですよ」
「俺と勤務を交代してくれないか」
「え? 別にいいですけど、先輩明日休みのはずじゃ……」
「いいんだ別に。約束がキャンセルになったから、明日当直のほうが都合がいい」
俺は目を瞬いた。先輩に視線を向けると、窓際に頬杖をついて口元を緩めている。
「お前も、休みのほうが都合がいいだろ。部長からは俺から伝えておく」
「先輩……」
「今度、俺にもその子を紹介しろ」
女性警官から絶大な人気を誇る杉山先輩。顔だけじゃなく仕事だってこなせるし、男としても色々尊敬する面があるが、上下関係なく多くの人間から認められるのはたぶんこういうところだと思う。
さり気ない心遣いを受け、俺は素直に頭を下げた。
「ありがとうございます」
「あと焼肉奢れよ」
「了解っす」
条件は絶対に守ると俺は心に誓った。
明日は休みになった。久しぶりに朝から晩までずっと一緒にいられる。折角貰った貴重な時間を有効に使うことを考え、俺は少しだけ気分が晴れた。
*
「お疲れ様です!」
「おう、お疲れ」
仕事をいつもより早めに切り上げた俺は、廊下ですれ違う上司に挨拶を交わす。急いで男子更衣室へ向かいロッカーを開いて着替えをしていると、背後から首に腕を回された。
「かーざま!」
「うおっ。何だよ竹島」
振り返ると、同僚が満面の笑みで立っていた。
「おい、聞いたぞ。明日休みになったんだってな。今夜居酒屋に行くんだけど、一緒に行くか?」
「どうっすか風間先輩。たまにはいいでしょ」
竹島の横から、後輩の篠田が顔を出した。二人に誘いを受けるが、俺は構わず着替えを続ける。
「悪い。俺今日は用事があるんだ。お前等だけで楽しんで来いよ」
そう返すと、篠田が声を張った。
「えーまたっすか!? 風間先輩ってば最近付き合い悪いっすよ」
「マジで悪い。今度埋め合わせすっから」
迷彩柄のマウンテンパーカーを羽織り、俺はファスナーを首まで閉める。リュックを背負い、ロッカーの鍵を閉めると俺はすぐに更衣室から飛び出した。
「こら風間! 廊下は走るなと言っただろ!」
「すいません気を付けます!」
「じゃあ走るのをやめないか!」
上司に注意を受けたが、俺は少し足の速度を緩めるだけですぐに逃げる。あのハゲの説教は長い。今日だけは足止めを勘弁願いたい俺は、すれ違う人々をうまくすり抜け廊下を突っ切った。
警察署の職員玄関を抜け、俺は駐輪場に停めていたクロスバイクに跨った。辺りはすっかり暗くなっている。ペダルを思い切り踏みいつものように走り出せば、冷たい風が頬を撫でた。
シャアアアッとタイヤと地面が擦れる音が響く中、俺は慣れた道を自転車で駆け抜ける。車のライトや外灯に照らされる道路を横目に自分が住むマンションを目指した。
イルミネーションが光る街中まで来れば、手を繋いでいる恋人同士の姿を何人も見かける。
「ねえねえ、夕食どうする?」
「イタリアンのお店を予約しておいたよ」
「本当? やったあ!」
いちゃいちゃしている馬鹿ップルの会話が聞こえ、俺は目を細める。
「やーん。寒い」
「そんな寒い恰好をしてくるからだろ」
「こんなに冷えるなんて思わなかったんだもん」
「仕方ないな。ほら、手繋ぐぞ」
右を見ても左を見てもカップルばっか。甘い言葉がいやに聞こえてくる。こっちまで気恥ずかしくなってくると、信号が赤となり俺は片足をついて歩道の前で留まった。
そして、目の前から制服を着た高校生の男女が手を繋いでいるのを見つけた。俺達が通っていた曙学園の制服だと気づき、俺は思わず凝視する。
(懐かしいな……)
紺色のブレザーに青のチェック柄のズボンとスカート。自分達も着ていた高等部の制服の形態はまったく変わっていなかった。
懐かしさを噛みしめていると、ふと陽菜子と初めて会った入学式の記憶が過った。
『あなたなんか大っ嫌いです!!』
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