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第十三話 神風
しおりを挟む今日からは昨日のような事にはならないようにしていこう。
そう決意をして寝袋から起き上がった。
すると腹に重みがあることに気が付いた。
まさかと思いその重みを取り出すとそこには丸くなった小さな子猿がいた。
か、可愛い。
やっぱり今日は止めようかな。
おっとこんな簡単に決意が揺らぐなんて魔法でもくらってしまったのだろうか。
一度も魔法見てないけど。
というかそれよりもなんだかこいつでかくなってないか?
前は確か四十センチとかそこらだったのに今見てみると六十、いや七十はあるだろう。
成長期か?
いやいやいくら魔物だからって一晩で倍近く大きくなるなんて身体を作る材料がまず足りないだろう。
あ、いやもしも魔物の身体を魔素が成長させるものなのだったら納得出来るかもしれない。
何故なら昨日調子にのって魔石を食わせまくってしまったから。
調子にのってボス猿の魔石まで食わせたのが悪かったかな。
そしてそれが原因でポーション用の魔石が無くなってしまったので今日はそれも採りに行かないといけない。
この森は弱いやつは弱いが楽勝なのは今のところ芋虫と一匹程度の猿だけなので油断出来ないというのに何をやってしまったんだ俺は。
まあ猿が可愛かったからいいんだけどね!
そして猿と共にご飯を食べてから準備をして森の中にポーションの材料と魔石集めのために入っていった。
ポーション材料をあらかた集めて残りは魔石だけと言うところで俺はやけに鳥が騒がしい事に気が付いた。
何だろうと思い空を見上げるとそこにいたのは五十羽ほどの鳥の群れ。
しかしよくみる鳥の群れではないことに気がつく。
いつも飛んでいる鳥は白かピンクという分かりやすい色をいているが、今飛んでいるのはそのどちらでもない。
黒い鳥だ。
それにただ黒いのではなく鳥の進行方向側、つまりは頭の方に白と茶色の混ざった色の何かが付いているのがわかる。
そしてそれはきっと角なのだろうか。
一撃もらうと即死の角持ちの鳥が五十羽。
それにやつらは完全にこちらを狙ってきている。
その証拠に俺を中心に鳥が飛び回っていてタイミングを見計らっている。
そして全ての鳥がはかったように一斉にこちらに向かって飛んできた。
いや、これは飛んできたと言うよりも落ちてきたというほうが正しいだろう。
何故ならハヤブサのように急降下してきたのだから。
そして尋常じゃないスピードでこちらに飛んでくる。
これに当たるのは冗談抜きに身体が蜂の巣になってしまうとその場から一気に走り出す。
後ろから木に鳥が突き刺さり貫通する音が聞こえてきたがそれに構わず走る。
すると前方からこちらに向かって急降下してくる鳥がいることに気が付いて、転ぶようにそれの下を行き避ける。
その時に頭にかすったような気もしたがそれすらも気にせずに走る。
しばらくすると音が止み、鳥が全て上空に戻っていった。
これで帰ってくれるのならどれだけいいことか。
しかしそんな望みは到底聞き入れて貰えず更に突き刺そうとこちらに急降下してくる。
一匹だけならまだしもここまで数がいるともうどうしようもない。
一匹対処する間に他の鳥に蜂の巣にされてしまう。
一体どうしたものかと逃げていると崖の壁まで追い詰められてしまう。
いつの間にか洞窟の方まで戻ってきていたようだった。
そして鳥たちがまたもや刺し殺そうとこちらに急降下を仕掛けてくる。
それを今度は別方向に回避していく。
すると後ろからなにか肉が潰れる音が聞こえてきた。
思わず振り返るとそこには壁一面に赤い花が咲き乱れていた。
そう木なら簡単に貫くようでも岩壁を貫く事は出来ないようで壁にぶつかり血肉を撒き散らす。
後続の鳥もスピードを殺すことが出来ないのか続いてぶつかっていく。
その姿はすこし芸術的にも見えた。
立ち止まってそう考えていると残っている鳥たちがこちらに向かって急降下してくる。
それに慌てて逃げていく。
少し逃げ回っている間に肉の潰れる音は止み、足を止めて振り返るとそこにはもはや岩壁の見えない程大量の鳥が潰れて真っ赤に染まった肉壁がそこには存在していた。
といううか、これの角と魔石の回収って俺一人でやるの?
そう考えて完全萎えてしまったが、また魔石を集めにいくのもめんどくさいしそもそも角は強いから集めた方がいいので仕方なく集めることにした。
そしてこの作業に二時間かかり、洞窟に帰った瞬間に意識を手放して朝まで眠った。
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