悪の組織で好きに生きています

よりおん

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悪魔に魅せられた男2

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 寒い。目を開く。
 知らない天井、窓のないコンクリートうちっぱなしの部屋。ここはテロ組織「空亡」の施設らしい。
 「らしい」というのも公園での邂逅のあと悪魔についていった筈だが歩いてるうちに意識が不明瞭になっていき、目が覚めたらこの部屋にいたのだ。だからこの施設が住んでいた街からどれ程の距離離れているかもわからなければそもそも日本なのかどうかも怪しい。
 だが、ここは恐るべき悪魔たちの拠点であるということだけは事実だろう。
 そのうちここに誰かが来るだろう、そしてきっとその時に俺の人生は誰もが予想もしなかった方向に進むだろう。
 それは恐ろしく、そして……面白い。

「お目覚めのようですね、骨壺収斗様」
「では私についてきてください。覚様がお待ちです」

 音もなく部屋に現れたのは無表情の真っ白な女。しかもとても小さい。膝ぐらいの身長しかないのだ。だが子供ではない。大人をそのまま小さくしたような姿をしていた。
 言葉を交わす余地もなくすたすたと歩いていく。声をかけても何の反応も示さない。
(というか歩くの早いな)
 普通の速度で歩いているはずなのに膝下の身長しかない女は同じ速度で歩いている。
 足の回転が速いとかではない。よくよく見ると足が地面についてからも前に動いている。詰まりスケートのように地面を滑走しているのだ。
 日常でフィギアスケートやっているのかこの女。いやフィギアスケートというよりもエアホッケーのパックに近いのだろうか、もしかして後ろから押したら高速で滑っていくのか。それは……面白いな。
 後ろでニヤニヤしながら考え事をしていると女の足が止まる。
 気が付けば大きな鉄の扉の前に立っていた。

「ここから先は骨壺様お一人でお進みください。くれぐれも失礼の無いように」

 少し苛立たしげな口調の女に見送られて地面を擦りながら閉まっていく鉄扉の先に進んでいく。
 この施設で目覚めたときから努めて気にしないようにしてきた背筋の凍るような「寒気」に近づいている。
 疲れてなどいない、だが呼吸が苦しくなる。本能が行くべきではないと根元的恐怖を抱いているのだ。
 道が開ける。そこは大きな広間。いや天井がないから中庭と言った方がいいのだろう。圧迫かんのある建物だ。実際には見たことはないがコロッセオに近い雰囲気がある。
 そして空だ。ここに至るまでにただの一つも窓がなく見ることのできなかった空。あるべきはずの青空や夜空、何一つ見えなかった。そこにはなにもなかった。空とは宇宙である。その宇宙が途切れている。確信した、理屈なんてものはない。太陽も月も星も雲も何も、何もない。

「それ以上見ていると呑まれてしまうよ」

 ハッとして声の主に顔を向けるとそこには美しき悪魔がいた。神に作られた完璧な造形。昨日見たあの美少年だ。
 そして奥に別の人間が二人。一人は直立、もう一人はなぜかうずくまっている。
 二人とも着ているものはスーツだ。直立している男は見るからに仕立てのよいスーツと顔を完全に覆う仮面をつけている。
 うずくまっている男は少しよれたブランドもののスーツ、禿げた頭、腕にはそこそこの値段のする時計、そして胸には娘から貰ったといっていたネクタイピン、ネクタイの柄は黄色。
 そして恐らく白いカッターシャツは解れて破けている。首には手の後がくっきり残っている筈だ。
 なぜここに、なぜ、なぜと疑問、恐怖。

「さっさと始めてしまおう」

 仮面の男がそう言った。
 始める、始めるとは一体何を。
 声がでない。震えが止まらない。

「さあ、いくといい」

 身体が勝手に動き出す。コンクリートではない灰のような地面を踏みしめて倒れた男を挟んで仮面の男の向かえで止まる。
 仮面の男が何事か呟くと倒れた男の下に丸い円が出現し、男が地面に吸い込まれていく。
 円から滲み出た黒い液体は男を貪り食うように侵食し地面の中に消えていく。
完全に消えた後に残った円から肉のほとんどついていない骨の浮き出たか細い腕が伸びてくる。
 右腕、左腕、頭、胴体、そして足は無い。
 全て肉のついていない骨の浮き出た体をしていて頭部に至っては瞳もなく骸骨そのものだ。
 人間ではない。いや、生命ではない。こんな冒涜的な存在は自然に存在はしない。
足を捕まれる。肉の無い筈なのにとてつもない力だ。骸骨は力任せに足を引っ張り円の穴の中に帰ろうとしている。
 抵抗しなくては。だが身体が動かない。穴に引きずり込まれる。
……
……
…………。
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花雨
2021.08.14 花雨

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