=短編集=

仙 岳美

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岩魚

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=異罠=
 秋の紅葉の渓谷で1人男がイワナを釣っている

毎年シーズン中、この渓谷に通い20年は釣りをしている。

私は紅葉が観ながらする秋の釣りが好きだ、私には10年くらい前に試行錯誤し開発した、秘密の餌があるから、人より多く魚を釣る事ができる。
作り方は秘密だ。

紅葉を観ながら釣りをし、釣れたイワナを川辺で焼いて食うのだ、男としての狩猟本能も満たされ快感を感じる、日々のストレスも解消できるのである。
今日は初めて紫色のイワナが釣れた珍しい?焼いたら苦々しい酸味のある怪しい臭いがしたがナレてきたら良い臭いの様な気がしてきた……食べてみたら苦手味(にがみ)が強いがそれがまた美味かった。

残った頭と骨は穴を掘り埋める魚が地に戻り木の
栄養に成り
紅葉と成り
私しを毎年楽しませてくれる。

夕方になったので帰るため渓谷を降る

しかし降っても降っても村に戻る本道に辿り着けない?
はて?
そのうち夜になった。
疲れで眠く成ってきた。

目を覚ました、周辺は暗い……日はくれた様だ……私がイワナを焼くために用意したと思われる焚き火の後が目の前にあった……うつ伏せのまま身体が痺れ身動きが取れなくなった、そのうち口から泡が垂れてきた……
何か楽しい気分に成ってきた。

「イワナのイイワナなんちゃってハッハハハハハヒー」

釣り人は熊の糞に成り
木の栄養に成った。【終】

=行方不明者(釣り人)調査報告書=(作者訳)
 
 後日、行方不明の釣り人の調査に乗り出した谷田部一等巡査が渓谷の茂みの中で行方不明者の名が彫られた木の餌箱を発見した。
残り餌から紫色のキノコが生えていた。
餌の成分分析をしたところ釣り人は毒キノコを餌に混ぜ使用している事が判明した。
此処から仮説ではあるが、行方不明の釣り人がこの餌を長年使用した事によりこの渓谷に生息する魚が何世代にも渡って、この餌を食べ、内蔵に毒が蓄積された結末、毒魚が発生したと思われる。
また釣り人はその毒魚を食べたと思われる。
その仮説に行き着いた確証は焚き火の後が現場に残されていたからである。

最終的に導き出された結論は釣り人はその魚毒を食べて毒により渓谷で倒れ、死に、遺体は熊に食べられた〆

=昭和再調査補填=

 調査で毒魚は釣れる事は無かった。 
再調査で当時、他にこの渓谷で釣りをしていて行方不明なった釣り人はいないため、仮説で処理された未解決事故ではあるとされた。

=解説=
 
 大自然の罠、魚は食べた物によっては毒を身に宿す。

異質=人と違う様または物事。
大昔の釣り人の失敗、人と違う餌を使う事から発生した異質な罠。
異罠(イワナ)の名の由来。(諸説あります)

現代でも魚の餌にキノコを使うのはタブーとされているのは
この時の仮想事故が[なごり]なのかもしれない。
余談ではあるが今もこの渓谷は[岩魚落ち渓谷](又はタライゴヤサワ)と言われている。
また過去に怪奇伝説[岩魚の怪]の発生現場とも噂された。【完】

=岩魚の怪=

 ある男3人が渓谷で岩魚を取るために漁の準備をしていた。
この男達が今からやろうとしてる漁法は上流から炭を流し、酸欠で浮いてきた魚を採る効率の良い漁である。
その時、何処からか大柄な僧が現れこう言った
「やめなされ、やめなされ」
3人の男は僧に促され漁は辞めて僧と一緒に昼を食べながら僧の有り難い講義を聞いた。
僧が帰った後やはり漁をやる事にした、普通の岩魚の3倍は大きさがある岩魚が取れた、腑を取り出すため腹を裂いたら中から米粒が沢山出てきた。【終】

※内容はフィックションです。
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