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いわくの客……
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※注 ややニヒルチックな内容。
語り・今川義雄
寿司屋の店主である私しは、店内の水槽に自ら釣り上げた、もう居ないカレイを重ね合わせ見ていた、そのカレイの表面には綺麗な蓮子の様な模様が浮かび、そのふくよかなやや青みかかった白いボディの流線フォルムも完璧だった。そのゆったりとし、何処が神々しいカレイを観ていると気持ちが安らぎ、眠くなり、全ての事がどうでも良くなる感覚にもなったりした。
だが最初に言った通り、そのやすらぎのカレイはもういない、何故なら当たり前の事であるが寿司として客に提供してしまったからである。
そうそれは、クドイ様だが当たり前の事である。
ただ少し納得できない点があるので、どうぞ、その話しを聞いてほしい……
その日は、台風が近付いてる事もあり、ネタの仕入れも少な目に調整した日だったその日の、オーダーストップ間際……
「ブツブツ……ぬ、お主な中々やるのう、その華麗な包丁捌き、カレイだけに、ぷっぷ…ブツブツ……」
とそんなひとり事が聞こえると、カランと店のスライドドアが開き、商店街では何かといわくつきな、首にハンド扇風機をぶら下げ、蜻蛉柄の浴衣に身を包む常連さんがひとり来店した。
その客はこちらの案内より早く「よっこいしょ」と掛け声と共に素早く入り口前のカウンターに座り、そして湯呑みがそのカウンターに着湯すると同時に「エンガワ!」と注文を繰り出して来た。
まあそれは良い、寿司屋はその気風なのか結構せっかちな客が多い(特にカウンターに座る客は)
ただ閉店間際な事もあり、エンガワは切れていた。
その時やな予感と言うか悪寒が走り……
「すみません、エンガワ終わっちゃいました、赤貝などどうでしょう」
私がそのやな予感をかわす様にそう言うと。
その客は腰の帯に刺したどこかで見た様な羽団扇で水槽を差し一言。
「あそこにいるじゃん」
『!』
その時、私は思い出した……数日前に他の客と、その珍しく綺麗な柄が出ているカレイに愛着湧いてしまった様な事を話していた時、カウンター席の一番端っこに座る、この目の前の常連さんの姿を、そして一瞬その目が光り、イクラが付着した口元が緩んだ事を……私は悟った……『狙ってきたな……』いつもサーモンとイクラしか食べないくせに……
今思えば、もう少しこのいわくな常連に注意するべきだったと後悔している……
思案し私は「すみません、あれは売り「公私混同」とその客は私しの口を遮る様に呟き、私の目をジーと見つめて来た。
公私混同……
その言葉で私は目を覚ました様な気もし……思い直した。
『客に見せてしまった物それは売り物、欲しいと言うのなら提供しなければならない』
そして私は、寿司屋とし、その本分をまっとうする為、そのカレイを泣く泣く潰した。
その客は私が握り、差し出したエンガワを、それは朝廷の宝物であるランジャタイを目にした信長の様に満足気に見て、またひとりごとを呟き出した。
「うむ、お主の忠節は誠にあっぱれ中世だけに……ぷっぷ……ブツブツ」
とエンガワを流れ作業の様にポイと口に入れた。
私は、悲しかったから、せめてもの抵抗として、その場で小声で歌った……
魚さえ
情移見れば
馬謖なり
そしてその客はエンガワは、一貫食べると満足した見たいで、その後は、いつも通り、サーモン三貫とイクラの軍艦巻三貫を平らげ、瓶ジュースを飲み飲み楊枝をシーシーしながら、「ご馳走様、プリンアラモある?」
「……すみません、ご用意してないです」
『そんなもんあるかー!』
「ふーん、回転寿司なら、あるのにね」
『なら回転行けよ、イクラとサーモンだけならそちの方が安いから』
「じゃあ、卵焼きー」
『……もう玄界灘』(訳、限界だ ※王道寿司屋ネタ)
その後……私の正統派江戸前寿司店はその客の要望に応え続け、入り口に駄菓子が並び、デザートには、プリンや果物ゼリーが加わり、やがてエビフライなどの揚げ物やカレー、お好み焼き、たこ焼き、あげくにパスタやラーメン迄も作る事になり、もうわけわからないカオスファンタステックな店に様変わりしてしまった……。
ただ、下降気味だった売り上げは、鰻上かりである。寿司屋なのに、いや、もう寿司屋じゃないのかもしれない。
ちなみにお土産に中華マンも置いている。
そして今日もカレイと入れ替わる様に店に入った、その元客と私は毎日刺激的な日々を少し疲れるが、どうにかこうにか頑張っている。
最後に……時折これであの癒しのカレイも居てくれれば言う事はないのだが、まあ、それは伏竜・鳳雛の様に天は二物を与えないと言う事なのか……[完]
題材・いわく
それを持つ者は、性質的に条件が整えば常に発動する体制である。対峙する時は、けして油断してはいけない、真剣勝負な心意気が必要である。
題材・餓鬼(餓鬼化)
それは飢えた鬼、とは言え、飽食な現時代その標的は食べ物意外に移りつつある、例えば魂とか……
語り・今川義雄
寿司屋の店主である私しは、店内の水槽に自ら釣り上げた、もう居ないカレイを重ね合わせ見ていた、そのカレイの表面には綺麗な蓮子の様な模様が浮かび、そのふくよかなやや青みかかった白いボディの流線フォルムも完璧だった。そのゆったりとし、何処が神々しいカレイを観ていると気持ちが安らぎ、眠くなり、全ての事がどうでも良くなる感覚にもなったりした。
だが最初に言った通り、そのやすらぎのカレイはもういない、何故なら当たり前の事であるが寿司として客に提供してしまったからである。
そうそれは、クドイ様だが当たり前の事である。
ただ少し納得できない点があるので、どうぞ、その話しを聞いてほしい……
その日は、台風が近付いてる事もあり、ネタの仕入れも少な目に調整した日だったその日の、オーダーストップ間際……
「ブツブツ……ぬ、お主な中々やるのう、その華麗な包丁捌き、カレイだけに、ぷっぷ…ブツブツ……」
とそんなひとり事が聞こえると、カランと店のスライドドアが開き、商店街では何かといわくつきな、首にハンド扇風機をぶら下げ、蜻蛉柄の浴衣に身を包む常連さんがひとり来店した。
その客はこちらの案内より早く「よっこいしょ」と掛け声と共に素早く入り口前のカウンターに座り、そして湯呑みがそのカウンターに着湯すると同時に「エンガワ!」と注文を繰り出して来た。
まあそれは良い、寿司屋はその気風なのか結構せっかちな客が多い(特にカウンターに座る客は)
ただ閉店間際な事もあり、エンガワは切れていた。
その時やな予感と言うか悪寒が走り……
「すみません、エンガワ終わっちゃいました、赤貝などどうでしょう」
私がそのやな予感をかわす様にそう言うと。
その客は腰の帯に刺したどこかで見た様な羽団扇で水槽を差し一言。
「あそこにいるじゃん」
『!』
その時、私は思い出した……数日前に他の客と、その珍しく綺麗な柄が出ているカレイに愛着湧いてしまった様な事を話していた時、カウンター席の一番端っこに座る、この目の前の常連さんの姿を、そして一瞬その目が光り、イクラが付着した口元が緩んだ事を……私は悟った……『狙ってきたな……』いつもサーモンとイクラしか食べないくせに……
今思えば、もう少しこのいわくな常連に注意するべきだったと後悔している……
思案し私は「すみません、あれは売り「公私混同」とその客は私しの口を遮る様に呟き、私の目をジーと見つめて来た。
公私混同……
その言葉で私は目を覚ました様な気もし……思い直した。
『客に見せてしまった物それは売り物、欲しいと言うのなら提供しなければならない』
そして私は、寿司屋とし、その本分をまっとうする為、そのカレイを泣く泣く潰した。
その客は私が握り、差し出したエンガワを、それは朝廷の宝物であるランジャタイを目にした信長の様に満足気に見て、またひとりごとを呟き出した。
「うむ、お主の忠節は誠にあっぱれ中世だけに……ぷっぷ……ブツブツ」
とエンガワを流れ作業の様にポイと口に入れた。
私は、悲しかったから、せめてもの抵抗として、その場で小声で歌った……
魚さえ
情移見れば
馬謖なり
そしてその客はエンガワは、一貫食べると満足した見たいで、その後は、いつも通り、サーモン三貫とイクラの軍艦巻三貫を平らげ、瓶ジュースを飲み飲み楊枝をシーシーしながら、「ご馳走様、プリンアラモある?」
「……すみません、ご用意してないです」
『そんなもんあるかー!』
「ふーん、回転寿司なら、あるのにね」
『なら回転行けよ、イクラとサーモンだけならそちの方が安いから』
「じゃあ、卵焼きー」
『……もう玄界灘』(訳、限界だ ※王道寿司屋ネタ)
その後……私の正統派江戸前寿司店はその客の要望に応え続け、入り口に駄菓子が並び、デザートには、プリンや果物ゼリーが加わり、やがてエビフライなどの揚げ物やカレー、お好み焼き、たこ焼き、あげくにパスタやラーメン迄も作る事になり、もうわけわからないカオスファンタステックな店に様変わりしてしまった……。
ただ、下降気味だった売り上げは、鰻上かりである。寿司屋なのに、いや、もう寿司屋じゃないのかもしれない。
ちなみにお土産に中華マンも置いている。
そして今日もカレイと入れ替わる様に店に入った、その元客と私は毎日刺激的な日々を少し疲れるが、どうにかこうにか頑張っている。
最後に……時折これであの癒しのカレイも居てくれれば言う事はないのだが、まあ、それは伏竜・鳳雛の様に天は二物を与えないと言う事なのか……[完]
題材・いわく
それを持つ者は、性質的に条件が整えば常に発動する体制である。対峙する時は、けして油断してはいけない、真剣勝負な心意気が必要である。
題材・餓鬼(餓鬼化)
それは飢えた鬼、とは言え、飽食な現時代その標的は食べ物意外に移りつつある、例えば魂とか……
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