【R18】蝉と少女

仙 岳美

文字の大きさ
上 下
38 / 44

38【完結】《円盤と少年》[下]

しおりを挟む
【上】からの続き

38《円盤と少年》【下】
 
 僕いや俺はあれから10年後20歳に成り帝国の軍隊に入隊した、更に5年後に全ての内戦は収まり、全人類、独裁者、テロリストまでもお互いに手を取りあい、一時的にではあるが協力し合う人類になった、そして帝国軍の名は地球軍に変わった、ある理由のために……それから半年後地球は太陽系圏外から侵攻して来た未知の異星人と戦争状態に成っていた。
異星軍は天の川銀河に地球政府が築いた要塞小惑星の防衛ライン、更に同じく地球政府が要塞化した月の防衛ラインを立て続けに短期間で突破し地球に侵略降下してきた。

人類は異星人の惑星が何処すらも解らない科学力だったため一方的に攻撃されてる状態が永く続き時間と共に兵力、生産力、防衛力は衰えて行き戦況は明確に終末の劣勢に成りつつあった。
異星人が宇宙から降下して来て最初に始めた事は地球各所に降下部隊が一時的に編成の為に留まる陣営設営だった。
その異星人の陣は俺が所属している地球防衛軍神奈川鎌倉支部の防衛担当エリアにも築陣され、その場所はかつては人気観光地であった、海岸から少し離れた江ノ島と言われる小島だった。

その頃、俺は26歳で軍の中尉の身分だった、今いる所は故郷の島からだいぶ離れた本州の帝都の南部に辺る鶴岡八幡宮と言われる大昔は首都だった所に設営させれた軍の支部陣営だ。
八幡宮の周囲は山に囲まれており今でもいにしえと変わらず天然の要害としての機能は生きている。
支部の命令で江ノ島敵陣営に強襲攻撃を仕掛けるべく、俺は朝方、中隊(60人)を率いて陣営から出陣した!
江ノ島は八幡宮から南下して海に突き当たったら右折し海岸沿いを行くルートが道も整備され進軍はしやすいが反面、上空から丸見えで空から未知の航空兵器に攻撃される可能性が高いため海岸沿いのルートは避け、海岸に平行して伸びる市街地と山道が混ざり込んだ迷路の様な入り組んだルートを進軍した……

地球軍は既に上空権は失っている……

市街地の住人は第一防衛ラインに指定されたこの地域からは避難してしまい静かだった、意外にも何事も無く市街地は抜ける事ができた、目の前の視界が開けて砂浜と海が見えて来た、その先には江ノ島も見えた。

本格的に砂浜に全軍で出る前に副官の矢見葉少尉に臨時に指示権を譲り、俺は古力伍長と10人の兵を連れて偵察に出た……ここ迄、無傷で来れたのに少しホットしつつ気を引き締め直した時、突如、数メートル先の目線より少し高めの空間が裂けて10人位の異様な異星人の小隊が現れ砂浜に降り立った! 我々を待ち伏せしてた伏兵だと思われる、先頭の1人だけマントを羽織った兵士が目に着いた、そいつが隊長格と思われる、その兵士は俺達を見てニヤリとした!
その兵士は身体が細く、くびれラインが有り我々の言う所、性別は女性に当たる様に思われた、その女兵士の歪な3本指の手にはフリスビーらしき物が握られていた。
フザケてるのかと一瞬思ったがそれは恐ろし兵器だった事をこの後すぐ知ることになる!

直ぐ我々は俺を中央にした円陣に成り前には背中に背負える折り畳み防弾シールドを2枚地に設置し、俺は小声で指示した、
「全員あの白マントの奴を狙え、伍長は戦闘が始まったら少尉の元に走れ、マントを仕留めたら盾を前に俺と黒羽上等兵を先頭にした2列峰矢の陣に変更全員突撃、白兵戦に持ち込む、以上」
(奴らは剣技の腕は低いと聞いている俺は銃器でやり合うより接近戦に持ち込んだ方が被害は少ないと判断した)

無線は盗聴されてしまう状態だった為この頃をもう作戦には使ってなかった現場の指揮官の采配が全てだった……

俺が彼女に向けて「全員撃って!」と号令をし引き金を引いたと同時に彼女の手から放たれ投げられたフリスビーは、俺を含め我々の撃った銃弾を吸い付けながら、閃光を放ち我々の方に飛んで来た! それは10メートル手前くらいの距離で一旦空中に停止し複数に分裂し、弧を描きながら我々を取り囲む様に近づき、我々をミキサーの中の果実の様に切り裂いた!
俺には偶然、即死的致命傷は当たらなかったが身体中を深く切られ、その場に激痛の余り倒れた。近づいて来た女兵士は倒れている俺を凶悪な顔で見下ろした!
俺は死を覚悟したが女は
肩に付けた翻訳機と思われるマイクで話しかけて来た!
「あら、元気だった……って言うのもアレかしら……」

その声に俺も思い出した……

そして彼女は急に優しい顔になった……

俺は答えた
「元気とは言えんな見ての通り君のお陰様で死にそうだよ、ヤルなら一気に頼む」
と言いながら恐ろし敵に成って目の前に現れた彼女を道連れにしないといけないと思いポケットの中の手榴弾のピンを抜こうとしたが彼女に睨まれたら手が石の様に動かなくなった、こ、これは?
「やはり地球人ね……私は貴方が敵と知っても殺さないわ」と
彼女は跪き二の腕辺りのポケットから取り出した薬の様な物を口移して飲まして来た彼女の唾液と一緒に甘辛い物が胃の中に流れた感じがしたら直ぐに身体の痛みが引き流血も止まった……
俺のポケットから取り出された手榴弾は彼女の手の中で潰された、その彼女の手はバリアーらしき球体に包み込まれていた。
異星人とは生身の身体の防御力は同じでも兵器の次元が違う……
……この時、地球は滅ぶと確信しし同時に神判を認めた。

彼女は俺の頬に手を当てて
「ゴメンね、生きててくれて良かったわ、もう大丈夫よ、後でお茶しましょ」
と笑みと涙を溢した。
その顔は美しかった……
そして
俺は彼女に抱き抱え上げられて敵の宇宙船内の手術室みたいな所に運ばれた
「あなたの戦いはもう終わりよ、終わるまで寝ててね」
と彼女はマントをひるがえし小走りで戦場に戻って行った、異星人の医者らしき者が俺の顔を覗き込んでいた、そして首の辺りがチクリとしたら眠気に襲われて寝てしまった……

目を覚ましたら彼女は俺のベッドの横の椅子に腰掛けて俺の手を握っていてくれた様だ……
手を見たら俺の指は3本だった……
身体も彼女と同じ、
宇宙仕様に改造されていた……
生まれ変わった気がした……
そして太陽系から遠く外れた彼女の家がある宇宙コロニーで地球人唯一の生き残りの俺は父さんと学校の先生だった母さんの事をたまぁに思いだしながら、日々の日記を書き、ひっそりと彼女と暮らしている、両親は今回の戦争で亡くなった訳では無いのでそこは心は穏やかでいられた、また、この惑星にも蝉がいるみたいでその鳴き声を聴くと故郷を思い出す事ができ、良い心の癒しと成ってくれている……
戦友達の事は忘れはしないが考え無い事にした、それしか良い手段が思いつかなかった……

《追記》
 地球に攻め込んだ理由を最近、彼女が話してくれた、当時地球に蔓延した致死率の高い悪性ウイルスを急速除去する為に地球人をある程度の数の間引きが必要だったと言う、どうやら異星人は地球人の遠い先祖でまた監視者でもあり、地球人を絶滅から守る為にやむ得なく行った戦争だったと教えてくれた、薬品による治療も検討されたが様々な理由で今回の始末になったと言われた。
これは余談になるが彼らは過去に地球に衝突する可能がある隕石も数回取り除いた事もあるそうだ。当然その事は地球側には知らされてはいない。
更に現在地球人は数は減ったが絶滅せずに生きているとも教えてくれた……ひょっとしたら地球に残してきた妹、戦友、親戚達が無事なんじゃないかと希望が持てた事は幸せだった。

……話は此処まで、昔に書いた日記を元にした物語じゃ。

【蝉の少女】兼【師の教えと狼少年】(終末録)
語り兼書き手・仙身翔馬(せみ・しょうま)
ーーー地球からだいぶ離れた辺境惑星の
小さい教会に残された古日記より。 

【完結】※リンク作品・師の教えと狼少年〈外伝録〉no37


※付録 蝉と少女・師の教えと狼少年・人脈図

主人公 
 佐藤 章良(せみ あきら)後に仙身 彰良(せみ あきら)に改名。

王国関係
長女 仙身 和皇(かずこ)王国の女王
登場回・謁見の章

次女 仙身 霧香さん(きりか)王国の戦士
登場回・チュパカブラハンターの章・廃教会の章

三女 仙身 杏里(あんり)
※主人公と結婚する【蝉と少女】のヒロイン。
登場回・全般

島長 仙身 志摩長 (しまなが)王国の将軍
登場回・聖なる現実逃避の章


交友関係
鎌切 寂(きりかま じゃく)主人公の浮気相手。
登場回・着物の章  (蝉と少女)
    謎の女性の巻(師の教えと狼少年)

かすみちゃん(晩年の主人公が贔屓にしてたホステス)
登場回・かすみの章


家族関係・子供・孫
 仙身 一馬(かずま)主人公の長男、
【師の教えと狼少年】の主人公。

 仙身 秋葉(あきは)主人公の長女、
登場回無し回想のみ

 大神 雅子(おおがみ まさこ)
一馬と結婚する元担任の先生。
【師の教えと狼少年】のヒロイン。

 大神 麻美(あさみ)
雅子の妹、一馬とは同学年

 仙身 翔馬(しょうま)一馬の長男
登場回・円盤と少年

 仙身 雪 (ゆき)一馬の長女
登場回・錆び歯車と少女
しおりを挟む

処理中です...