R18・未知の彼女

仙 岳美

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07 未知の登山と俺

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※AI校正


07 未知の登山と俺

回想
鄧艾 士載(とうがい しさい)三国志時代末期の魏国の政治家・軍略家、若い時から地形などを眺めては陣を張る場所などシミュレーションしていた軍事オタク、豚足が大好き。

 
 俺は週末の晴れた日、普段は山登りをしない初心者でも比較的気軽に日帰りで登れるとされている、住まいから近隣にある低山を登山経験者の彼女と登っていた、そしてその爽やかな空模様とは裏腹に気持ちはどんよりと曇り空の様に沈んでいた。
登り始めの最初の比較的緩い坂道を数分上がっただけで息が切れ始め現在は坂道の途中で立ち止まり両手を両膝に付き、額から汗を流し、地面を見つめながら息を切らし途方に暮れている。
ハッキリ言って現在、俺は酸欠状態で、ぶっ倒れそうである……先程、急に吐き気をもよおし途中に水分補給の為に飲んだ、スポーツ飲料も山道脇の茂みに全部吐いてしまった、胃も精神的にダメージを受けているみたいだった。
人間は普段運動もせずにエンジンに頼りきった生活を送るとここまで、体力が落ちるものかと痛感した。
一緒に登り始めた彼女はドンドン先に行ってしまう……(おにょれ)
そもそも俺はなんで? こんな山伏の修行みたいな事をやってるんだ? とさえ思えてきた(本来の修行はもっとドギツイと思うけど)
あの……《紅葉の季節です!》とか放送していたテレビ番組がそもそもイケナイ!
綺麗な映像を見せられたら
人間その気になっちゃうもんなー……
とは言え今は目の前に見える紅葉は確かに綺麗だから嘘ではないが……ただそれを楽しんでいる心のゆとりは今の俺には無い! このまま登り続け、普段甘やかし切った心臓に負荷をかけ続けたら、その怠け心臓が止まって死ぬかもしれない! 『そんな大袈裟な』と思うでしょ、嘘だと思うなら君も一回登って見るといいよ、本当にそう感じるから……まあ若いうちはまずは本当に止まる事はないと思うけど……
少し話はズレるがオナニーは心臓に負担をかけると聞いてたから日頃から俺は彼女の目をかい潜りお気に入りのDVDでオナニーをして心臓に負荷をかけ鍛えていたつもりだったがこのざまだ、おそらくオナニーと登山では心臓の負荷のかかる部分が違うのだろうな、詳しくわからんが実感した。

なにともあれ彼女は先で待っている、今回もいつもの緊急離脱呪文の様に唱えている『もう帰りたい』と伝えたいが彼女は俺を見捨てて先に行ってしまっている。(多分俺がそう言い出す事を読まれている)なのでまずはサドな彼女に追いつかなければいけない、勝手に帰ったら……それはできない、何故なら勝手に帰ったら彼女は俺が横道に外れて迷っていると思ってしまうだろう、そして彼女は俺を探す、道に迷う、即ち彼女も危険にさらす事になる!
頼りのスマホも山の中では圏外だ! 泣けてくる……
久しぶりに小学生の時から信仰している女神リーブラに祈ってみる……何も奇跡が起きない!
どうも女神様は所詮は女なのか?
俺に彼女ができてから助けてくれない。冷たい! やらしてくれもしないくせにー。(小学生の時は冗談なしで祈ると自然にピンチからは脱する事ができた不思議だ。知られてない子供のみが持つ特殊な能力なのかもしれない)
と、こんな事を考えてるうちにも彼女はドンドンと先に行ってしまう。
たまらず声を荒げた。
「おーいひとりでドンドン行かないでよー迷子になるー」
《しばらくは一本道だから迷わないわよー 分岐で待ってるからー ゆっくりでいいよー》
(冷たい)
とりあえず今は進む以外に道はない。登山経験者の彼女が登山口で俺に伝授した奥義(アドバイス)によると早く登ろうとし、大股で上がると身体の軸が前屈みになり平坦な所を歩くより肺や心臓などの内臓に負荷がかかり、身体に酸素が巡りにくく成りすぐに登る事がキツくなって来るとの事だった、ので、対処法として身体の軸を空に向けて真っ直ぐに保ちつつ足踏みしてる様に登ると良いと言う(最初は舐めて大股で上がっていたら、言うとおり、すぐに息が切れ始めた)
この登り方だと、たしかに楽に感じる。登り方も真っ正面から坂の傾斜の圧を受け入れないで小股で斜めにジグザグな感じに身体にかかる傾斜の圧をかわしつつ登ると良いらしい(確かに楽に感じる、山道でなくてもこのテクニックは市街地の坂でも使えそうだ)
※このテクニックは登山入門系の本では必ずと言って良いほど紹介されている。

十五分後……
なんとか坂を登りきった。
彼女は当たり前だが待っていてくれた。
「大丈夫かな?」
「うんダメかも」
「ここからしばらく平坦な道だから疲れは少ないと思うよ」
「その先は?」
「岩がゴツゴツ突き出た急な上がり坂で小説で言うと、いよいよ序章は終り、本編ですと言う感じになるかな」
「……」(今までのキツさがただの序章だと! この先は俺を殺すメニューが揃っている様だ、いよいよ殺される……)
「とりあえず、そこまで行ってから君の進退は考えよう、ここから紅葉(コウヨウ)越しに眺める山の景色も良いしさ、せっかくだから見ていった方がいいよ」
俺もここで帰るのは流石に情けないと思い首を縦に振った。
少し休んでから、町を横に広く見晴らしながら木の根っこが至る所に地面から飛び出ている、紅茶色の紅葉のトンネルに囲まれた様な幻想的な平坦道を彼女の背を見ながらついて行く……
「ねえ、疲れないの?」
「うーん疲れるけど私は大丈夫かな~うまくは説明できないけど」
彼女は身体の軸自体が強い気がする、反面、俺はブレブレのフニャフニャだ、疲れるとすぐに目眩を起こす。
彼女と俺の違いはそこなんだろう……

少しして、さっき言ってた急な登り坂の入り口に着いた、そこまで平坦道の終わりでもある。見上げてみたら坂と言うよりそれは崖の石を強引に削り足場である階段をはめ込んだ感じだった。階段の両脇には手の高さに太いロープが張られているロープを掴みながら登るのだろう…
「もう昼だわ、ご飯にしましょ」
と彼女は道の脇に座り込みリュックからコンビニのおにぎりが数個入ったビニール袋と唐揚げが詰め込まれたタッパーをとり出した
「君はシャケと牛しぐれが好みだったかな?」
「うん」
俺はおにぎりと唐揚げを爪楊枝でつまみながら彼女に、
「悪いけど今日はここ迄でいいかな」
と告げたら、
「うん、そうしよう。山は逃げないし、いつでも来れるから、またくれば良いよ」
とその日は清く引き返した。
そして翌週また前回引き返した所まで来ている。
今度は前回の失敗を踏まえ彼女の山登りのテクニックであるチョコチョコ登りを最初から実行し驚いた事にあまり気力も体力も消耗する事なくここ迄来れた。
やはり出だしと経験者の言う事は大事である。
で、いよいよこれからメインのこの崖を登る。

十分後…
やはりキツイ。すぐに太もも、スネ横筋に疲労を感じ足を上げる事が苦痛になってきた、それは限界を超えたスクワットをやっている様だった、再び気持ちが沈み心が折れ始める……イカンと思い、俺は自己のメンタルコントロールの為、妄想を始める……
……今回も三国志の話を出すが天然の要害絶壁に首都が守られた難攻不落の蜀国の首都・成都を危険な崖を登り攻め落とした鄧艾と言う名の武将の気分を思い出し、その気分に浸ってみた、俺はこうして好きな歴史上の人物と自分を重ねて合わせて物事を頑張るのである。そうする事で、なにやら力が湧いて来る。
そしてここまで来たらもう戻る事は、もったいないと感じる様になっていた、足を一歩前に出すたびに確実に頂上には近づいてると思うと迷いは無くなる。
複雑な競争社会で生きてる自分やその他の人にも登山は新鮮単純明快に思える。
誰でも足を確実に一歩ずつ前に出しさえすれば誰に邪魔されず競う事も無く山頂に到着し勝者になる事ができるのだ。

途中にしぶとく着いてくる俺の方を振り返り、彼女は見つめてきた……
「ん、どうした?」
「今日は頑張るわね」
と微笑みかけて来た、俺は何か性格の彼女を思い出しニヤリとした
「普段もそのくらい夜に粘り強いとわたし満足できるんだけどな~」
「山に登ってると足腰強くなってその期待にそのうち応えられる気がする」
「ふふふ期待しないで待ってるわよ、その日が来るの」
「ヒーヒー言わしたる」
「そう、頑張って是非そう鳴かせてほしいわ私」
その時、《ホーホッケキョー》とウグイスの鳴き声が聞こえた…
彼女はその鳴き声を真似して
「ほーほっけっきょー」
ウグイスがその彼女の鳴き声を返すようにまた同じように鳴いた。
彼女は耳に手を当てて。
「ふむふむ君には無理だってさ」
「なにおー焼き鳥にして食べてやる」
とそんな会話していたらいつの間にか少し広い平坦な場所に到着した。
「ここまで来れば後は頂上まで五分くらいかな、よく頑張りました」
俺はそう聞いてホッとした
「あー疲れたよ」
「私も久しぶりだったから少し疲れたわ」
「そう見えなかったけど」
「リーダーの私が疲れた顔してたら君は余計に不安になるでしょポーカーフェイスよ」
「なんでそんな強いの?」
「君が弱いからよ」
「そんなに弱い俺?」
「すぐに諦めるよね」
「でも今回は登りきったよ」
「うん、えらいえらい」
その時、前回に何故、俺はこんな事をしているのか?と疑問に感じたが、その意味が分かった様な気がした。恐らくこの達成感を味わい自信に繋げる為に人は山に登るのだろうと感じた。そして人によっては、この達成感が病みつきになってしまった人はハマるのだろう。俺も体力的・精神的に今は自信を感じる……セラピー効果もある様に思われる……普段は何かと上に見える彼女と今日は同等な気分でもいる。
そして程なくして頂上に着いた。

頂上・十二時三十分

空から眺めた風景は当然ながら爽快だった。
サウナから出てきた感じに心持ちが似ている……
少しして息が落ち着いたら頂上に設置してある、木製のベンチとテーブルで彼女と向かい合い昼食を食べる。前回は下で食べたが今回は頂上で食べれた事にざまぁ飯うまに感じ(誰に?)、その味もいつも食べているオニギリより格別に美味く感じた。
「あ、そうだこれあげると」
と彼女はリュックの中を探って取り出した、ある物を俺に手渡してきた。
それは燻し銀仕上げの山の形を形取ったブローチだった。
「コレは?」
「登山バッジよ、前に買ったの記念にあげる」
「標高1252m大山って書いてあるね、この山は大山なの?」
「ここは見城っていう山、昔この辺りにお城があってそのお城の周辺の状態を上から見守る場所だったみたいよ。正確には山じゃないのかな?」
「そうなんだ、今度はこの大山を登りたいな」
彼女は指を指して、
「ほら、あそこに見えるのが丹沢大山」
と教えてくれた。その山は今日の見城よりさらに高かった……
やはり何かその時、俺が登るのはこの見城くらいで良いかな~とか思ってしまった。
俺はしばらく、いや、ずっと彼女を超えないで、その尻を見ながら追っかけてるのがちょうどよいのかもしれないと感じた。
……少し、いや、男としてはだいぶ情けない話かもしれないけど俺は彼女という見城に見守られる城でありたい……
いつも上に見ている雲は今日は下に浮かんでいた、今はそれで満足だった。

[続]
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