【R18】師の教えと狼少年・生徒手帳残記 転生聖斗手帳懺記

仙 岳美

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38 あ……ノ巻 生徒手帳残記3

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 僕は震える手で、あ、と一文字打ち、先生にメールーを送信する。


登場人物
 語り
  亜空 忍(あくう しのぶ)

  先生(担任の先生)


その日は突然訪れたんだ……

「夜来、風雨の声、花落つること知る多少」

梅雨で夜の様に暗い教室。
その授業の最中、何かが変だと思った……ザワザワ……その感じは、とてもいやな感じ、辺りを見渡す、喑明が逆な事以外は、いつもの教室の風景……ただその時は、何か違った、何か気持ち悪い、そして不安に成り思わず席から立ち上がるとクラっとした……
そして僕は、また教室を見渡す。
なんか、なんか違う……
そう思った。
そんな僕に目を丸くした先生が声をかける。その顔は何か恐怖を感じ青白く影が差している感じで、それは初めて見る先生の顔だった。

「シッ、忍くん、どうしたの、ト、トレイ……かな」

「うっう」

僕は、ただうめき、教室から飛び出し、廊下を走り、階段降り、下駄箱から靴を履き替えず、上履きのまま校庭に出る、背の校舎のベランダから皆んなが出て来て、僕の方を向き騒いでいる事を察した。
《あいつ、どうしたんだよ》
《狂ったのか》
そんな声が聞こえて来る。
僕は、そのまま、霧雨の中を歩き、家へ帰った……

ジリリリーン!

当然にその夜、家に先生から電話があり、僕は、しばらく学校を休む事になった。

それから僕は少し引きこもり、梅雨が明けた頃に散歩くらいはできる様になった、そして散歩が日課になった。
そんな散歩が日々の、ある日の日曜、そびえ立ち上がる入道雲がその先に見える、ひと気の無い、シーンとした住宅街の道で、偶然に先生と出会でくわす、先生は僕に気づくと、微笑み、話しかけてくれた。
僕は先生も、こんな顔ができるんだと思った。
「体調は、どうかな」
「はい、薬で落ち着いてます」
「学校には来れそうなのかな」
「……」
正直、行きたい気持ちあるけど、自分に異変が起きた、あの教室へ戻る事がとても怖かった、そんな気持ちで何も言えなかった、そんな僕に先生は言う。
「来るだけ来て、無理ならその日はすぐに帰る感じでもいいと思うよ」
と先生は近くのジュースの自販機にお金を入れて、僕に「好きなの」
とすすめてきた。
僕は、最初はサイダーと思ったけど、今の自分には、刺激の少ないミネナルウォーターの方が良いと思い、そのボタンを押した。
僕に合したのか、先生も、ただの水を買う。
ボトルの封を切ると、前に立つ先生の髪が舞い上がる、先の辻から風が強く吹きつける、風は僕にも当たる、でもその風は、先生を介す事で、その質は中和され、少し優しくなっている様に感じた……。

先生は風で乱れた髪を整えながら口の中に入ってしまった髪先を抜くと、一口水を飲み僕に少し照れる様な表情を見せると、
「ヤラシイ風ね、でも今日は、お天気いいね」
と眩しそうな顔し、手をおでこに当て日差しを覆い。
「日陰の方へ避難しようか」
と壁際の日陰に移り、僕に手招きする。
その手招きの仕草に僕は、良い意味で少し動揺し、水を一口飲み一息つくと、その日陰に入る。
その日陰の中で先生は、僕にある提案をする。
壁の根元からは、一輪の花が咲いていた……。






その文字は、僕が帰りたい時に先生に送るメールの一文字。その一文字だけで僕はとりあえずは、不安から逃げる事ができた。夜に先生は必ず返事をくれた、その事に僕は長く癒され救われていった。

[終]


あとがき
 この巻も一旦没にし、掘り起こし加筆した作品です。短編ですが当時色々調べて書いたつもりです。そして、この手の内容は深く多くは触れずに、心に寄り添う様に書く、それが私が感じ、辿り着いた書き方だったのです。2025.3.14

引用

「夜来風雨の声 花落つること知る多少」は、唐の詩人・孟浩然の漢詩「春暁(しゅんぎょう)」の一節です。
訳・意図なく不意に起きてしまった事の後には、一輪の花の事を想い、心に余裕を持たせてみる。
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