【R18】師の教えと狼少年・生徒手帳残記 転生聖斗手帳懺記

仙 岳美

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41 突っ走った私……ノ巻 生徒手帳残記6

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 イブ前夜、デパート入り口吹き抜けに置かれた巨大なツリー
その前で、飾り付け完了時刻よリ、ややお遅れている事に、担当の私は、イラつき、クリスマスツリーの飾り付けの為だけに雇ったバイトの人達に叱咤していると、どこからか《女王様かよ》と小言が耳に入り、ふと『いけない』と思い、ポケットからハンカチを取り出す。
そしてそのハンカチを見て、フゥッーと息を吐き。
「少し休憩ー」と指示を出し、その場に片膝を着く体勢でしゃがみ込み、外した眼鏡をジャケットの胸ポケットに差し入れ、両目元を利き手の人差し指と親指で指圧していると、左肩に何かを押し付けられる感触が走る。『なに!?』と振り向くと先輩の主任が、私の頬に缶コーヒーを押し付け、「応援に来たぞ」と。
「すみません、そして熱いです」
「はっははは、心配してたけど、もう八割は終わってんな、大丈夫、大丈夫だ」
そう言われた瞬間、ブワッと学生の頃の記憶が蘇った。


語り
 高島 真矢(たかしま まや)


 学園年末の催し物、クリスマス会の開催日が近づき。
教卓の横に立つ先生は言う。
「一応聞いとくけどー 幹事やりたい人いるー」
シーン
「じゃー 恨みっこ無しのクジねー」
と先生が言ったところで私は手を挙げ、幹事を引き受けた。
その理由は、簡単だった、私は子供の時から人見知りの引っ込み思案で中学から高校に上がったら自分を変える為に、学級委員長をやるつもりだった、なのに、気づいたらもう副と共に男子に決まっていた。
それもヨタヨタと頼りない一馬に……
その事に不満が積もっていた。
そして私はテキパキとその用意を、ひとりで進めた。
補佐役の副委員長は、ほぼ口もきかない放置プレイにした。
ツリーの飾り付け、料理の配膳から会計まで完璧だった。
そう完璧のつもりだった。
それは違っていた、私は重大なミスをひとつしてしまった。
そう最後のメインイベントのプレゼントと交換、その各自千円以下の物で用意するプレゼントをすっかり忘れていた、家に忘れて来たとかじゃなくて、買う事自体をポッカリとその事だけ穴が開いた様に忘れてしまっていた。
それを会の途中に何気無く開いたスケジュール表を見て気づいた、その時、クリスマス会を抜けて街迄買いに行く事を考えた、でもそれは時刻的に、それ以前に、その年はクリスマスらしく大雪が降り、教室から見えるグランドには、雪が積もりつつある絶望的光景が目に映っていた。そして幹事が会を抜けるわけにはいかない。此処迄ほぼワンマンで突っ走って来た自分に私は後悔をした。
そう相談できる相手もいない。
そんな中、冷静に対処方を考える……
そこで幹事は先生と同じでプレゼント交換には参加しないという理由を後付けをしようと考える……でも直ぐに、その付け焼き刃は無理な事に気づいた、会の参加人数は二十人、私が欠けたら十九人、即ちそれは、プレゼント交換ができない人をひとり作ってしまう……
『ああーイエス様どうかお導きを……』
と天を仰いでも何も奇跡は起きない……
時間は刻一刻と迫っている。
私は、現実を感じ吐き気をもよおし、トイレで吐く……でも何も変わらない。
鏡を見て『私は失敗した』そう思った……その時、肩に誰かが手を置く感触が! 私は『神様?』と思い、振り向くと担任だった。
「高島さん、どうかしたの? 大丈夫?」
「……いえ、大丈夫ですよ」
「そう……後はプレゼント交換だけね」
「はい……」
そう私がうつむくと先生は、
「来なさい」
と私の手を取り、引っ張る。

職員室……
パッチっとスイッチが鳴り、暗い職員室に灯りが灯る。
 先生は引き出しを開いて、中から黄色と赤い化粧紙にそれぞれ包装され、その上にリボンが着いた二つの平たい小箱を取り出して、その一つを私に渡してくれた。
「これ使いなさい」
「先生なんで」
「あなたの表情の変わり様を見てれば、わかるわよ」
「先生は、私が失敗すると思ってたの?」
「うーん、正直ありえるかなとは、思ってたわ」
「……」
「ほら、意地張ってる場合じゃないでしょ、大丈夫、大丈夫」
私は、『それしかない』と思い、そのプレゼントを受け取り、もう一つのプレゼントが気になり、ついでに聞く。
「先生それは?」
「あ、これ予備かな~」
「予備?」
そう私が言うと、後ろから。
「先生~」
と困った口調な男子の声が聞こえた。
その声には聞き覚えがあった。
振り向くと学級委員長の一馬だった。
口元にタルタルソースを付け、眉間に皺を寄せ、前に組んだ両手をモジモジさせている。
「先生、僕プレゼント持って来るの忘れた、ど、どうしよう~」
先生が尋ねる。
「家には、あるのかな?」
「買ってない~」

 先生は、私の唖然とした顔を見て吹き出す、私も人の事は言えないけど、つられて吹き出す、その時なにか心がスッキリし大海原に出られた様な気がした。

 その後、ジャンケンで負けた人が名前を書いた紙をクジ箱に入れ、勝った人が、その紙を引いていく方法でプレゼント交換が始まる。
此処でちょっとした奇跡がおこる、私が引いた紙には、一馬の名前が……私は先生の用意してくれたプレゼントでもあるハンカチを受け取る。
当然、一馬も私と交換する形で先生のハンカチを受け取る。

後日、お金を持ち、先生にお礼を言い行くと、「お金はいいわよ、それはとっといて、幹事さんへのお礼です♩……あと付け加えておくと、テストの見直しは、時間いっぱいやりなさい、そのくらいかな~」

「……」

「後、何かあるかしら?」

「ええ、一つ」

私は後々になって、放置プレイした副委員長に悪い事をしたと後悔し、その事を相談する。

「それは先生も二之丸君から相談されたわ……先生が全部やりたい様にさせなさいと指示を出したので、気にしないで大丈夫です」

私は深く頭を下げ職員室を後にする。

それから数日後、一馬と何気無く、その三人だけの秘密にした私の失敗談の話しになると、一馬は「プレゼント代浮いちゃったからさ、それで漫画の本買えたよ、得したな、高島さん何買ったの? へっへへ」と笑っていた。
「……」
その時、私は一馬を先生が何故、学級委員長にしたのかわかった気がし納得した……『単純にこの子は、ほっとけ無いと先生は思ったのだろう……多分』



 ……今でも気が焦ったり、落ち込む事があると、そのハンカチを手に取り、目を瞑り頬に当てがう……すると、その白く無地で無駄に飾りっ気の無いユニセックスなハンカチは空想世界で帆に成り、昼間は海へ、夜は宇宙へと、淀んだ心をリセットする旅へと飛び立たせて来れる。
それは、そっと寄り添い、私の気持ちを、緩かに鎮め続けてくれてる様な気がいつもしてならない。

[終]

24.12.22 
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