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43 カイト……ノ巻 生徒手帳残記8
しおりを挟む序
「無茶だ、やめとけ」
皆んな口を揃えてそう言った。
でも僕は、
攻めは最大の防御……
疾風の如く誰よりも早く……
夕方まで校門前で先生を待ち。
僕は突き進んだ……
「あら、忘れ物?」
「好きです、僕と付き合ってください」
「本気なの?」
「はい」
先生は目を伏せみがちで口を開く。
「教師の理を外して、ごめんなさい」
「……」
皆んな励ましてくれた……
でも聞こえた感じた、皆んなの心中笑笑と笑み笑み視線が……
登場人物
語り
生徒
村上 藍将(むらかみ あいすけ)充電中の高二
担任
大神 雅子 (おおがみ まさこ)その担任教師
それからクリスマス、年越し蕎麦、年が開け、正月元旦と怒涛の幸せ前提押し付け行事が続く、それは、不幸者に取っては、例えると、痛い火縄銃三連砲火に違いない。
そしてそれを浴び続け、憔悴した僕の目の前のキッチンテーブルの上には、お節と言うなで装飾された、生贄の海老の目と鯛の目が垣間見える、漆黒の、その中が血の様に赤く、並べ置かれたお重箱と、焼き餅が入ったコレもまた赤い、赤漆のお碗の雑煮が用意されていた。
そして家族みんなが口を揃えて言う。
「明けまして、おめでとうございます」
僕も口を合わせる。
でも心中では、思う。
『こちとら、絶賛引きこもり中だ、ナニガメデタインダカ、その佃煮にも、メダカなのか』
と僕は半分不貞腐気味に無言で雑煮を食べ、お節はチャーシューだけ少し食べると、その場に陰気を放つお荷物の僕が居ては申し訳ない気持ちになり。
そして、まもなく尋ねて来ると思われる親戚一行とも顔を合わせたくない気持ちもあり、そのままの勢いで、久しぶりに外出する事にした。
(二)
と言っても当然ながら僕に行く当てもなく、とりあえず気の向くままに道をゆく。
天気は少し寒いがスッキリと晴れていて最先は良い様に感じた。
そして河原に出た。
その対岸の川中島(中州)には、城郭の様に造られた松の土手が横に伸び、その後ろにも遊郭楼が沿うようにその足を伸ばしていた。
遠くに国山も見え、その景色は浮世絵さながらだった。
そしてその土手の先端に立つ着物姿の一人の女性と目が合った様な気かし、僕はあわてて目を逸らす。
その理由は、僕にはまだ、関わってはいけない異世界の人に急に思えたからだ。
何もともあれ、久しぶりの外出で疲れたので、とりあえずは、その場にしゃがみ、その女性の視線をかわす様にして、川の水面を見つめていると、ふと、石田三成を思い出す。
最後は河原で斬首刑になった人だ。
でもそんな最後を遂げた人を今の僕は羨ましく感じる。
なぜなら、運命に抗う形でも、やりたい事やって死んだんだから。
僕に将来を見据えてやりたい事も無い……。
欲しい物も無い。
そんな僕の目の前に何処からか、欲しくもならない、形の悪い茄子も流れて来た。その表目には、世を睨んでいるかの様な目に見える傷も付いていた。
僕は思わず、その茄子からも目を逸らす。
茄子は、そのまま流れて行き、空からあわれた鷲に掴まれ、空へと旅立つ様に僕の前から消えていった……。
(三)
それからしばらくして、目の前を背に髪の様な苔を乗せた亀がゆっくりと横切っていた。
そのマイペースな姿にやっとなにか癒され、心に余裕が生まれ、手持ち無沙汰から朝に貰った、正確に言うと、雑煮の横に置いてあったお年玉の袋を取り出し開ける。
一枚、二枚、三枚。
三千円入っていた。
その金額は、つまらない僕の親らしい、ケチとも貰い過ぎとも言えない、いや、何も言わせない設定金額だ。
ついで言うと僕は十七だ、三千円で喜ぶ年じゃない、ナメテルノカ。
そんな無気力だった、僕にも実は最近、ある事をしたいと思う様にもなった。
それは、セックスだ。
三千円……遊郭で遊ぶには、全然足りない。
川中島に渡る船賃の行きだけで、終わりである。
なので雰囲気だけを味わいの遊郭路も歩けない、またその資格も無い。
でも今は、それでいい。
死ぬのは、セックスをしてからと考える事にし、日々生きている。
セックスしたら、また、生きるか死ぬかの選択を考えなくてはいけない。
今は、そんな理由を付け、精神のバランスと言うのか現状維持ができている。
そしてまた視線を感じた………
(四)
先生にふられた僕を、まだ笑っている奴がいるのか、そう思い、後左右振り見ても、誰もいない?
なら空かと、見上げると!
充血した大きな瞳が二つ!
「なんだあれは!?」
一瞬は、そう感じ、その正体に気づくと、その目は近付いて来る。
僕は慌てて立ち上がり、横に飛ぶ!
すぐに遠くから声が聞こえる。
「ごめーんーなさいー」
と目の前に現れたのは、なんと、担任の先生だった、その服装は正月だからなのか? 赤いセーター、下はデニムにウエスタン風ブーツ? そしてその口元は白いマフラーで覆っている。
歴史マニアな僕は、その口元の白いマフラーに、一瞬、大谷刑部を思い出す。
「当ったちゃたかな?、そしてお久しぶり」
「いえ、ただビックリしました、先生、それは凧ですか?」
「うん、実家の納屋で見つけたの」
「そして正月だからですか」
「うん」
しばらく間があり、先生は対岸の遊郭を見て、とんでもないことを言う。
「先生、まだ早いと思うな~」
「な!っ、そんなつもりで見てたんじゃないです!、お、お年玉三千円しかもらってないし」
「冗談よ」
と、その後、先生は細い事は聞いて来ず、再び少し遠くで凧を飛ばそうと懸命に走っている。
ただ風が止んでしまったので中々上がらない。
僕は暇なんで、それをいつまでも見ていると、先生は僕の方に再び寄ってくる。
そして言う。
「時間あるなら、凧持ってて」
と僕の返事も待たずに、凧を持たせ、紐を引っ張り走り出した。
僕は一緒に走る、走る、でも中々凧は上がらない。
それでも、そんな事を、数十分続けていると。
風が吹き、ついに凧が宙に浮き出し、僕はその手を離す。
先生は、そのチャンスを逃さないと言わんばかりに、そのまま芒薮の中に止まらず走って入って行ってしまった。
何かバシャバシャ音をさせている。
先生の突入にビックリしたのか薮の中から鶴と複数匹の鴨が飛び出し、凧の横を掠めて行く。
僕は、そんな先生を。
『人の事は言えないけど、結構無茶やる人なんだなと感じた、そしてその風になびく白マフラーを見て、敵陣に単騎突入する謙信公と先生が重なり、少し面白くも勇気を感じ受けた』
そして凧は空に舞い上がっていた……
△
・ ・
(五)
見上げた、凧は風に乗り、それは自由に空を泳いでいる様で、とても羨ましかった。
そしてまたひとりになり、寂しく感じた。
すると先生は三度僕に近付いて来て。
ニコリとし。
「君もやぁる?」
と僕に凧の糸を渡してくれた。
「いいですか?」
「いいよ、半分は君の力だから」
三度、見上げたその凧を見て、今度は、ひしぶりに人との共同作業をし、成功させた自分に清々しさを感じた。
先生は何も言わずに横で、僕が上げる凧を見上げてくれていた。
対岸の女性も僕の上げる凧を見上げている感じだった。
そしてまた目が合った気がし、手を振ろうとしたけど、横に先生がいるのでやめる事にした。
それは僕が学校と言う世界に復帰した年の、元旦の日の事だった。
幕
帰りに先生は「皆んなには絶対に内緒よ」っと言ってお年玉の袋を僕に渡してくれた。
家に帰り中を確認すると、三千円入っていた。
僕はその金額に思わずクスリとしてしまった。
親戚のおじさんとおばさんが置いていったお年玉は合わせて四千円。
僕は登校する前日に、それらのお年玉を全て使い、初めて額が万に到達する腕時計を買った。
何故そんな高い時計を買ったのか?
それは先生と凧上げをし共有した素晴らしい人生の時間を、宝玉として長く永遠に手元に残して置きたいと思ったからさ。
[終]
25.1.1筆
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