【R18】師の教えと狼少年・生徒手帳残記 転生聖斗手帳懺記

仙 岳美

文字の大きさ
8 / 13

45 本当に欲しかったもの……ノ巻 生徒手帳残記10

しおりを挟む


 僕は、冬の海の波が引いては迫る砂浜を、ひとり眺めていた……


語り・元生徒
 北 拓也(きた たくや)
 
 友人、クラスメイト
  甲斐 力也(かい りきや)
  
 クラス委員長 
  仙身 一馬(せみ かずま)

 回想のみ、クラスメイト、写真部の部長
  目黒  礼(めぐろ れい)


 クラスメイトである友人と下校中、コンビニのイートインでカップラーメンを食べていたら、友人がおもむろに手のひらにおさまる程の薄い丸い缶を制服の胸ポケットから取り出す。
 「あっ!」
と僕は、声を洩らす。

友人はその缶の蓋を開け、その中のクリーム状の薬を手に塗り込む。
僕は、その友人の持つ、蓋にアライグマが描かれた、ハンドクリームの缶を知っていた。🦝

職員室の先生の机の上で見た事がある、 そしてこの辺では売ってはいなかった。
いわゆる先生が持ってた物だ。
「それ……」
「あ、こないだ帰りにタバコ吸ってたらさ、たまたま先生に出会しちゃってさ、その場で説教されてる時に、手の赤切れを掻いてたら、解放される時に先生がくれたんだよ」
「それで」
「それで? このハンドクリームは良く効くよ、帝国製の兵隊用かもな」
「……」
僕の手は潤っていて赤切れは、おこさない……ただ、心はカサカサだ。
その心を潤す為にも、ぜひ、先生のハンドクリーム欲しい、いや先生の私物が欲しい……
いやいや先生のから……だ……が欲しい、いや違った、心が欲しい……身体も。
そんなわけで友人が羨ましかった。
だからお願いした。
「ねー、薬無くなったら、その缶ちょうだい」
友人は目を丸くし。
「なんで?」
「聞くの野暮だよ」
「アライグマ好きなの?」
「ちげえよー」
それから数週間経ち、僕の下駄箱にその空缶が入っていた。
 『キター』と僕は喜んだ。
ただの丸い缶、でも宝物。
僕は素晴らしい友人に礼を言った。
「ありがとう」
「おっおお、ところでさ……」
と言ったところで友人は口をつぐんだ。
僕は気になり追及する。
「えっなに?」
「なんでも無いよ」
「僕と隠し事は無しで行こうって、誓ったよね」
「誓ったな、ただこれはセンシティブ内容だからな……」
センシティブ、そう聞いて僕の頭の中にエロの方程式が立った。
「そこまで言ったんだから、教えてよ」
「そうだな、うん、たしかに、実はな、一馬が持ってるんだよ」
「持ってる?」
「毛」
「毛?、先生の髪?」
「うん、それも下の方」
「えっええええー!」
僕はその場で握り拳を作り、空に向かって叫んだ……
それが事実なら僕にとっては、その毛の価値は※蘭奢待(ランジャタイ)以上の品物だ。
早速の翌日、僕は帰りに一馬を捕まえ、事の真相を追求した。
一馬はとりあえず惚けて、走り去ろうとした。
僕は思わずその背に向けて叫ぶ。
「待ってよー!」
一馬は止まり振り向く。
僕はすかさず天下の宝刀を抜く。
「先生に言うよ、一馬が先生のマン毛の鑑賞会を開いて、先生の事小馬鹿にしてたって」
僕のその言葉で一馬は口を割った。
「話し盛るなよ~、鑑賞会なんかしてないよ、少し自慢しただけだよ」
僕は意地悪に返す。
「僕は、そう言う、後は先生が判断するーうー、それってヤバいんじゃね」
「君は、キム……チンピラかい、わ、わかったよ、見せるだけだよ」
僕は頷く。
一馬は学章のワッペンが、上に縫い付けられた制服の胸ポケットから生徒手帳を取り出し、僕に最初のページを開いて見せた。
生徒手帳には、透明なビニールカバーがされている、そのカバーの下、即ち手帳との間にクネッたいわゆるヘアー質な茶色い毛が一本挟まれていた。
オマケにヘアーの下に先生の恐らく隠し撮りした写真も挟んでいた。
先生の顔の上に毛が!
『キター』
僕は、毛及び一馬のその変態的趣向に興奮した。
先生の香の匂いもする……
入手経路も聞いた……
生写真は、案の定、誰かのチクリで先生のパンチラを撮った事がバレてしまった事によりバラされた(廃部)写真部の生徒から買った物だった。
そして問題は毛の信憑性である……その経緯を聞いて、僕は紛れもなく毛が本物と確信した。《本編・序章・先生の巻※参照》

手帳を手に取ろうとすると、一馬は『もういいだろう、コレはむやみやたらに世に晒す物では無い、聖職者の生呪物だ』と言い、サッと手帳を仕舞ってしまった。
僕はダメ元で聞く。
「譲ってくれる事は、できるかな? なんなら万一で買ってもいい」

「万一かい、マン毛だけになんちゃって、うーん、でも駄目」

『そうか、そうだろうよ、と思った』

 それから卒業も迫り、僕は何か寂しくなり、一馬にもう一回頼んだ、すると毛は先生にバレて目の前で吹き捨てられたとの事だった。
僕はそう毛の顛末を聞き。
『無事と言うか、今よく生存しているな、一馬は神のご加護でもあるのか?』と思うと共に、僕は何か安心した。「それは残念な事としたね、実はさ、僕は先生の使ってたハンドクリームの缶持ってるんだよね」
と同情するフリをしつつ、自分の逸品の自慢をした。
それを聞くと、一馬はニコリとし「うん、残念だったけど、毛は本当に僕が欲しい物じゃないから、諦めついたよ」
と一馬は、生徒手帳を取り出し開くと、その先生の写真を見つめていた。
その目は、毛を持っていた時とは、別人の様に澄んでいた。
『本当に欲しい物じゃ無い……』
僕もそう言われ、そうは思ったけど、無理だから、せめてそれに近い物をと思うじゃないか、一馬は言うなれば、そのもっと近い究極の推しのアイテムを失ったに等しい、下手に自慢なんかするから、情報が漏れて先生にバレたんだと自分の方が優位に立てた気がした。
しかし、それから卒業し、風の噂で一馬は本物だった事を知る……
あの日、一馬の目が澄んだ目に変わっていた理由もわかった、そう、もうあの時には……事は決して、終わっていたんだ……。

 秋の夕日海岸に立ち、僕は、授業で先生に習った言葉を思い出し、缶を海に投げ、思いを終える事にした。

『覆水盆に返らず』


 
 缶は海の底で、そろそろ錆び錆びになっている事だろう……僕の心の様に……

[終]

お題・ハンドクリームに沿って筆。

2025.1.22

※蘭奢待(ランジャタイ)
 それは唯一無二の宝の香木、そのカケラは小さくても所有する者は、格式が上がる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ナースコール

wawabubu
大衆娯楽
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

処理中です...