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45 本当に欲しかったもの……ノ巻 生徒手帳残記10
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序
僕は、冬の海の波が引いては迫る砂浜を、ひとり眺めていた……
語り・元生徒
北 拓也(きた たくや)
友人、クラスメイト
甲斐 力也(かい りきや)
クラス委員長
仙身 一馬(せみ かずま)
回想のみ、クラスメイト、写真部の部長
目黒 礼(めぐろ れい)
クラスメイトである友人と下校中、コンビニのイートインでカップラーメンを食べていたら、友人がおもむろに手のひらにおさまる程の薄い丸い缶を制服の胸ポケットから取り出す。
「あっ!」
と僕は、声を洩らす。
友人はその缶の蓋を開け、その中のクリーム状の薬を手に塗り込む。
僕は、その友人の持つ、蓋にアライグマが描かれた、ハンドクリームの缶を知っていた。🦝
職員室の先生の机の上で見た事がある、 そしてこの辺では売ってはいなかった。
いわゆる先生が持ってた物だ。
「それ……」
「あ、こないだ帰りにタバコ吸ってたらさ、たまたま先生に出会しちゃってさ、その場で説教されてる時に、手の赤切れを掻いてたら、解放される時に先生がくれたんだよ」
「それで」
「それで? このハンドクリームは良く効くよ、帝国製の兵隊用かもな」
「……」
僕の手は潤っていて赤切れは、おこさない……ただ、心はカサカサだ。
その心を潤す為にも、ぜひ、先生のハンドクリーム欲しい、いや先生の私物が欲しい……
いやいや先生のから……だ……が欲しい、いや違った、心が欲しい……身体も。
そんなわけで友人が羨ましかった。
だからお願いした。
「ねー、薬無くなったら、その缶ちょうだい」
友人は目を丸くし。
「なんで?」
「聞くの野暮だよ」
「アライグマ好きなの?」
「ちげえよー」
それから数週間経ち、僕の下駄箱にその空缶が入っていた。
『キター』と僕は喜んだ。
ただの丸い缶、でも宝物。
僕は素晴らしい友人に礼を言った。
「ありがとう」
「おっおお、ところでさ……」
と言ったところで友人は口をつぐんだ。
僕は気になり追及する。
「えっなに?」
「なんでも無いよ」
「僕と隠し事は無しで行こうって、誓ったよね」
「誓ったな、ただこれはセンシティブ内容だからな……」
センシティブ、そう聞いて僕の頭の中にエロの方程式が立った。
「そこまで言ったんだから、教えてよ」
「そうだな、うん、たしかに、実はな、一馬が持ってるんだよ」
「持ってる?」
「毛」
「毛?、先生の髪?」
「うん、それも下の方」
「えっええええー!」
僕はその場で握り拳を作り、空に向かって叫んだ……
それが事実なら僕にとっては、その毛の価値は※蘭奢待(ランジャタイ)以上の品物だ。
早速の翌日、僕は帰りに一馬を捕まえ、事の真相を追求した。
一馬はとりあえず惚けて、走り去ろうとした。
僕は思わずその背に向けて叫ぶ。
「待ってよー!」
一馬は止まり振り向く。
僕はすかさず天下の宝刀を抜く。
「先生に言うよ、一馬が先生のマン毛の鑑賞会を開いて、先生の事小馬鹿にしてたって」
僕のその言葉で一馬は口を割った。
「話し盛るなよ~、鑑賞会なんかしてないよ、少し自慢しただけだよ」
僕は意地悪に返す。
「僕は、そう言う、後は先生が判断するーうー、それってヤバいんじゃね」
「君は、キム……チンピラかい、わ、わかったよ、見せるだけだよ」
僕は頷く。
一馬は学章のワッペンが、上に縫い付けられた制服の胸ポケットから生徒手帳を取り出し、僕に最初のページを開いて見せた。
生徒手帳には、透明なビニールカバーがされている、そのカバーの下、即ち手帳との間にクネッたいわゆるヘアー質な茶色い毛が一本挟まれていた。
オマケにヘアーの下に先生の恐らく隠し撮りした写真も挟んでいた。
先生の顔の上に毛が!
『キター』
僕は、毛及び一馬のその変態的趣向に興奮した。
先生の香の匂いもする……
入手経路も聞いた……
生写真は、案の定、誰かのチクリで先生のパンチラを撮った事がバレてしまった事によりバラされた(廃部)写真部の生徒から買った物だった。
そして問題は毛の信憑性である……その経緯を聞いて、僕は紛れもなく毛が本物と確信した。《本編・序章・先生の巻※参照》
手帳を手に取ろうとすると、一馬は『もういいだろう、コレはむやみやたらに世に晒す物では無い、聖職者の生呪物だ』と言い、サッと手帳を仕舞ってしまった。
僕はダメ元で聞く。
「譲ってくれる事は、できるかな? なんなら万一で買ってもいい」
「万一かい、マン毛だけになんちゃって、うーん、でも駄目」
『そうか、そうだろうよ、と思った』
それから卒業も迫り、僕は何か寂しくなり、一馬にもう一回頼んだ、すると毛は先生にバレて目の前で吹き捨てられたとの事だった。
僕はそう毛の顛末を聞き。
『無事と言うか、今よく生存しているな、一馬は神のご加護でもあるのか?』と思うと共に、僕は何か安心した。「それは残念な事としたね、実はさ、僕は先生の使ってたハンドクリームの缶持ってるんだよね」
と同情するフリをしつつ、自分の逸品の自慢をした。
それを聞くと、一馬はニコリとし「うん、残念だったけど、毛は本当に僕が欲しい物じゃないから、諦めついたよ」
と一馬は、生徒手帳を取り出し開くと、その先生の写真を見つめていた。
その目は、毛を持っていた時とは、別人の様に澄んでいた。
『本当に欲しい物じゃ無い……』
僕もそう言われ、そうは思ったけど、無理だから、せめてそれに近い物をと思うじゃないか、一馬は言うなれば、そのもっと近い究極の推しのアイテムを失ったに等しい、下手に自慢なんかするから、情報が漏れて先生にバレたんだと自分の方が優位に立てた気がした。
しかし、それから卒業し、風の噂で一馬は本物だった事を知る……
あの日、一馬の目が澄んだ目に変わっていた理由もわかった、そう、もうあの時には……事は決して、終わっていたんだ……。
秋の夕日海岸に立ち、僕は、授業で先生に習った言葉を思い出し、缶を海に投げ、思いを終える事にした。
『覆水盆に返らず』
幕
缶は海の底で、そろそろ錆び錆びになっている事だろう……僕の心の様に……
[終]
お題・ハンドクリームに沿って筆。
2025.1.22
※蘭奢待(ランジャタイ)
それは唯一無二の宝の香木、そのカケラは小さくても所有する者は、格式が上がる。
僕は、冬の海の波が引いては迫る砂浜を、ひとり眺めていた……
語り・元生徒
北 拓也(きた たくや)
友人、クラスメイト
甲斐 力也(かい りきや)
クラス委員長
仙身 一馬(せみ かずま)
回想のみ、クラスメイト、写真部の部長
目黒 礼(めぐろ れい)
クラスメイトである友人と下校中、コンビニのイートインでカップラーメンを食べていたら、友人がおもむろに手のひらにおさまる程の薄い丸い缶を制服の胸ポケットから取り出す。
「あっ!」
と僕は、声を洩らす。
友人はその缶の蓋を開け、その中のクリーム状の薬を手に塗り込む。
僕は、その友人の持つ、蓋にアライグマが描かれた、ハンドクリームの缶を知っていた。🦝
職員室の先生の机の上で見た事がある、 そしてこの辺では売ってはいなかった。
いわゆる先生が持ってた物だ。
「それ……」
「あ、こないだ帰りにタバコ吸ってたらさ、たまたま先生に出会しちゃってさ、その場で説教されてる時に、手の赤切れを掻いてたら、解放される時に先生がくれたんだよ」
「それで」
「それで? このハンドクリームは良く効くよ、帝国製の兵隊用かもな」
「……」
僕の手は潤っていて赤切れは、おこさない……ただ、心はカサカサだ。
その心を潤す為にも、ぜひ、先生のハンドクリーム欲しい、いや先生の私物が欲しい……
いやいや先生のから……だ……が欲しい、いや違った、心が欲しい……身体も。
そんなわけで友人が羨ましかった。
だからお願いした。
「ねー、薬無くなったら、その缶ちょうだい」
友人は目を丸くし。
「なんで?」
「聞くの野暮だよ」
「アライグマ好きなの?」
「ちげえよー」
それから数週間経ち、僕の下駄箱にその空缶が入っていた。
『キター』と僕は喜んだ。
ただの丸い缶、でも宝物。
僕は素晴らしい友人に礼を言った。
「ありがとう」
「おっおお、ところでさ……」
と言ったところで友人は口をつぐんだ。
僕は気になり追及する。
「えっなに?」
「なんでも無いよ」
「僕と隠し事は無しで行こうって、誓ったよね」
「誓ったな、ただこれはセンシティブ内容だからな……」
センシティブ、そう聞いて僕の頭の中にエロの方程式が立った。
「そこまで言ったんだから、教えてよ」
「そうだな、うん、たしかに、実はな、一馬が持ってるんだよ」
「持ってる?」
「毛」
「毛?、先生の髪?」
「うん、それも下の方」
「えっええええー!」
僕はその場で握り拳を作り、空に向かって叫んだ……
それが事実なら僕にとっては、その毛の価値は※蘭奢待(ランジャタイ)以上の品物だ。
早速の翌日、僕は帰りに一馬を捕まえ、事の真相を追求した。
一馬はとりあえず惚けて、走り去ろうとした。
僕は思わずその背に向けて叫ぶ。
「待ってよー!」
一馬は止まり振り向く。
僕はすかさず天下の宝刀を抜く。
「先生に言うよ、一馬が先生のマン毛の鑑賞会を開いて、先生の事小馬鹿にしてたって」
僕のその言葉で一馬は口を割った。
「話し盛るなよ~、鑑賞会なんかしてないよ、少し自慢しただけだよ」
僕は意地悪に返す。
「僕は、そう言う、後は先生が判断するーうー、それってヤバいんじゃね」
「君は、キム……チンピラかい、わ、わかったよ、見せるだけだよ」
僕は頷く。
一馬は学章のワッペンが、上に縫い付けられた制服の胸ポケットから生徒手帳を取り出し、僕に最初のページを開いて見せた。
生徒手帳には、透明なビニールカバーがされている、そのカバーの下、即ち手帳との間にクネッたいわゆるヘアー質な茶色い毛が一本挟まれていた。
オマケにヘアーの下に先生の恐らく隠し撮りした写真も挟んでいた。
先生の顔の上に毛が!
『キター』
僕は、毛及び一馬のその変態的趣向に興奮した。
先生の香の匂いもする……
入手経路も聞いた……
生写真は、案の定、誰かのチクリで先生のパンチラを撮った事がバレてしまった事によりバラされた(廃部)写真部の生徒から買った物だった。
そして問題は毛の信憑性である……その経緯を聞いて、僕は紛れもなく毛が本物と確信した。《本編・序章・先生の巻※参照》
手帳を手に取ろうとすると、一馬は『もういいだろう、コレはむやみやたらに世に晒す物では無い、聖職者の生呪物だ』と言い、サッと手帳を仕舞ってしまった。
僕はダメ元で聞く。
「譲ってくれる事は、できるかな? なんなら万一で買ってもいい」
「万一かい、マン毛だけになんちゃって、うーん、でも駄目」
『そうか、そうだろうよ、と思った』
それから卒業も迫り、僕は何か寂しくなり、一馬にもう一回頼んだ、すると毛は先生にバレて目の前で吹き捨てられたとの事だった。
僕はそう毛の顛末を聞き。
『無事と言うか、今よく生存しているな、一馬は神のご加護でもあるのか?』と思うと共に、僕は何か安心した。「それは残念な事としたね、実はさ、僕は先生の使ってたハンドクリームの缶持ってるんだよね」
と同情するフリをしつつ、自分の逸品の自慢をした。
それを聞くと、一馬はニコリとし「うん、残念だったけど、毛は本当に僕が欲しい物じゃないから、諦めついたよ」
と一馬は、生徒手帳を取り出し開くと、その先生の写真を見つめていた。
その目は、毛を持っていた時とは、別人の様に澄んでいた。
『本当に欲しい物じゃ無い……』
僕もそう言われ、そうは思ったけど、無理だから、せめてそれに近い物をと思うじゃないか、一馬は言うなれば、そのもっと近い究極の推しのアイテムを失ったに等しい、下手に自慢なんかするから、情報が漏れて先生にバレたんだと自分の方が優位に立てた気がした。
しかし、それから卒業し、風の噂で一馬は本物だった事を知る……
あの日、一馬の目が澄んだ目に変わっていた理由もわかった、そう、もうあの時には……事は決して、終わっていたんだ……。
秋の夕日海岸に立ち、僕は、授業で先生に習った言葉を思い出し、缶を海に投げ、思いを終える事にした。
『覆水盆に返らず』
幕
缶は海の底で、そろそろ錆び錆びになっている事だろう……僕の心の様に……
[終]
お題・ハンドクリームに沿って筆。
2025.1.22
※蘭奢待(ランジャタイ)
それは唯一無二の宝の香木、そのカケラは小さくても所有する者は、格式が上がる。
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