【R18】師の教えと狼少年・生徒手帳残記 転生聖斗手帳懺記

仙 岳美

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49 生と師と……ノ巻 転生聖斗手帳懺記(上)

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AI校正26..2.8


前書き
 [36その後……ノ巻]その後の物語三部作であります。

* * *


 そこは光の空なノスタルジア世界、遠き尊くどこか気の弱い祈りを感じとる度に、その雲海のほとりに立ち、雲の隙間から天膜を通し、下界の様子を見ては、目をつむり首を横に振るを繰り返す、そして遂に、いたたまれずに切なさが臨海に到達し涙が決壊し溢れ、決断し、爪先を封じられた額の第三の目の瞼にあて、スッーと横に引く、すると瞼は開きひとすじの光線を発し、その光線の照射を受けた天膜は裂け、穴が開き、下界へ向け白き神風が吹き抜ける、続けてかざしたその細い指先に、肩に留まるしもべの白き鳩は移り、その嘴(クチバシ)にタンポポの綿毛が付くその茎を噛ませ、片足には、一度は切れてしまった運命の赤い糸を、想いを込め固く結び、かかげた手を少し下げ、前へ跳ねると、鳩は羽ばたき、雲海の穴に向かって降下滑空していった……

* * *

 相も変わらずに貘(バク)の幼生は、暗い部屋の隅で鼻提灯を作りスヤスヤとしているんだ……。
よく見ると色々な、合の子な生き物が居る、でも全て幼生で、寝ている……。

……。


「制服支給されたんだ、見てくれよ」

「黒くてデザインも、どことなく帝国の兵隊さんに寄せてるね」

「うん、ところで似合ってるかな?」

「うーん、微妙」

「えっ!」

「嘘よ、中々いいわよ、身長もやっと私を少し超えたしね、でも、前にも言ったけど兵隊さんのお仕事大丈夫なの?」

「先生に散々鍛えられてたから平気さ、それに警備兵だし、戦争ももう無さそうだし」

「そう、これからも守ってね」

「うん、まかしてよ」

……

そう言葉を交わした先生は、駆けつけた僕の目の前、白いベッドキャノピーの下に置かれ……寝かされていた……
 
 窓から月の光が入り、その先生の顔も唇も青く染めていた……
 
 僕は、先生の背に片手を入れて起こすも首はもたげてしまった、だからもう片手で首も押さえ先生を抱きしめ、誓いの指輪が光るも、下に垂れてしまう先生の手を見つめ続け、思う……何も守れなかった、そして死を甘く見ていた、舐めていたから、場合によっては人を殺める仕事を選んだんだ、僕が腰にぶら下げているサーベルも拳銃も、その着ている黒い兵服も、使命も、全てが悲劇が始まるトリガーだ、その兵服の漆黒色も、未来を予測していた様に感じてしまう……
目も口も薄く開き、それは少し微笑んでいる様にも見える、先生の頬に、僕の涙が落ち、流れる。
いつもその場面で目を覚ます……


語り
 仙身 一馬(せみ かずま)
  職業・一般警備兵・体調不良により休職中。

 たまたま空に一羽のカモメを見かけ、素晴らしい瞬間を思い出し、それを追いかけ、虚ろ気に変わった世界を彷徨う様な散歩中に見つけた三階建てのやや斜めに傾いた鳩小屋
その鳩小屋に僕は一つの手紙を携え、再び訪れた。
 その鳩小屋の一階の奥には、昇降機と、深緑色の保護カバーが少しめくれた、所々錆びが目立つ小型の農業機械がひっそりと、それは眠りにつく様に置かれていた。
昇降機のフレームには、《荷物専用!搭乗厳禁!》と描かれたシールが貼ってあった。でも乗る以前にもう動力の電気は通じていなかった。
上の階に行くには、天井の角に人がひとり通れるくらいの四角い穴が開けてあり、その穴にかけられた一本の長いハシゴが一階から三階まで繋ぐ仕事を担っていた。
 僕は、そのハシゴを登っていると、最近体調がすぐれないせいかすぐに息が切れ、突如世に現れた、それは人々を分断する呪いの枷の様なマスクを外しハシゴの下に捨てた、するとすえた空気の匂いを感じた、その匂いは体育館の倉庫の懐かしい匂いに似ていた、そしてデジャブを感じた……それは昔、高校生の頃、体育館倉庫の片付け中に、担任の先生が上に立つ、グラグラ不安定な半壊れの脚立を下から僕が押さえていた記憶と重なった……僕は「先生」と呟く。
その二階…三階…もう鳩は一羽もいなかった。
そこに長い間、鳩は戻っていない様だった……
その床には、綿埃と化した無数の羽根と餌だけが蒔かれ散乱していた。
僕はその光景に溜め息を吐き、息を吸い込むと咳き込み、その拍子に動悸を起こし、その場にしゃがみ込み、ワイシャツの胸ポケットから、とうに本来の役目を終えた古びた生徒手帳を取り出し、表紙の裏に挟んだ先生の写真を胸に当てがいながら握りしめ祈る……
 
 少しして、動悸が治り、呼吸も整うと、ギュイーンと鳴る耳鳴りと手帳を持つ手に暖かい陽射しを感じ、手帳が光り輝いている錯覚をする。するとクックと、僕の目の前に一羽の白い鳩が降り立った。
口にはタンポポの綿毛玉が付いた茎を咥えている。
僕は来てくれた唯一無二のその最後の鳩に話しかける。
「手紙を託したいんだ」
その鳩はジーと僕を見ている。
その足には、手紙を入れる管は付いていなかった。
口にも、タンポポを咥えてしまっている。
タンポポの綿毛玉は吹けば飛ぶ、僕はそういう意味と取り「そうか迎えに来てくれたのかな?」
僕がそう呟くと、鳩はその問いの答えの様に飛び立つ、僕はすぐにその後を追い、鳩の出入り窓から顔を出し、見上げると太陽の丸い輪郭と鳩が重なり、それは翼が生えた天使に見え、僕が手を伸ばすと、手に確かに人の温もりに近い暖かさを感じた。
その先の大空は雲一つなく、中央は黒くトンネルの様に抜けていた、僕を誘うかの様に……そう思った時、僕の名を呼ぶ声が聞こえた。
 見ると、下の草原に麻美が僕の事を心配そうに見上げていた……
誰に呼ばれたのか……
いや何故呼んだんだ……
僕は再び先生を選ぶ事にした……
僕の想いには、もう生と師……死の隔たりもない……いつまで一緒さ、僕は先生に着いてくだけなんだ……
……でもその日はあと少しのところで後ろから首に手が回ってしまった……
前みたいに振り払う力は僕に残ってなかった。
僕は麻美を背に、後ろに転がり倒れ、目の前に、それは墜落した堕天使の羽の様に鳩の羽が舞う。
そして頭の中に麻美の声が木霊する。

「今日はもう帰ろう!ねえってばー!私達のこんな終わり方やだーよー!神様、時間を戻して!無理ならせめて区切って切り分けてー!私は認めないわ、こんな結末なんか、私が変えてみせるわ!」

『……麻美また邪魔するのか、さては、またついて来たな、昔からそうだよな、僕の後を、もういい加減にしてくれ……この世はもう僕にとって、留まっても、もう意味もない枝なんだよ! 先生もなに、僕を麻美に押しつけてんだよ、言ったじゃないか、一緒に行こうって、あれは嘘だったのかよ……冗談じゃないよ……先生……』

拝啓
 先生……ジーザス……

[続]


※伝書鳩(軍用鳩)
 昔、鳩の帰巣本能を利用し、鳩の足に取り付けた筒の中に手紙を入れ、長距離区間の情報のやり取りがされていた。有線・無線通信技術の発展により、その役目は終えていった。
基本は、様々な理由で鳩が辿り着けない事を想定し、同じ内容の手紙を複数の鳩に託し飛ばす。
その中の万分の一羽の中に時空の隔たりを超える事ができる鳩が存在したとしたら……

※千手花(天国たんぽぽ)
 たんぽぽは、花が咲き終えると茎は一旦倒れ再び果実綿毛を付け花が咲いていた時より高く立ち上がる事から新生復活の意味を持つ。また原料とし、ノンカフェインの優しく癒されるコーヒーを作り出す事ができる。
特に天国のたんぽぽ、その綿毛の種子一つ一つが分け隔て無く全ての死者の、その傷める心の身代わりとなり安らぎを与える事から千手観音に例えられ千手花・千手華草とも言われている。花言葉は神託。

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