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後日談
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あれから半年が過ぎた。
少し騒がしくなった周囲だが、一ヶ月もすれば他の事へと興味が移ったらしく、落ち着いてきている。
アリア自身、もう半年もすれば学園を卒業することになる。
マリファには乞われてマナーや所作のポイントなどを伝授することになり、
マナー講師のエマからも褒められるほどの上達ぶりだったそうな。
おかげでマリファの友人たちにも講師の真似事をする羽目にもなった。
アリアには再び婚約の話が持ち上がることはなかったが、
父親は悪かったと思っているのか、
跡継ぎの弟はいるものの、
もし結婚できなければ、アリアに領地の一部を領主代理として治めさせるとの話ができた。
なので、少しずつではあるもののアリアも弟と一緒に父親の仕事を手伝うことにした。
一応の保険であるものの、現実になってから何も知らないでは済まされない。
ただ、アリアとしては父親の仕事の方が楽しいと思うようになってきていた。
弟も姉の方が適性があると思っているのか、
「もう、領主代理が決定でいいんじゃない?
結婚するときは姉様が婿を取ればいいかもね」
などとアリアに言ってきている。
「あなたが跡継ぎでしょう?」
と返すと、
「その場合は僕が婿に行くから。
でもまぁ、どこでどんな出会いがあるかわからないからね。
僕にも姉様にもね。
だから、別に僕はどちらでもいいんだよ」
と、あっさりしたものだった。
元々、弟は研究なんかの方が合うようで、領主の仕事もできなくはないが、
あまり進んでやる形ではない。
そんな弟を見て軽く嘆いている両親を宥める役に回ることは、
ちょっとだけ苦痛に感じるアリアだった。
「なんだか、大変な事かと思っていたけど、
過ぎてしまえばどうということはないものなのね」
「あら、どうかなさいまして?」
おっとりと返ってきた友人からの返事に苦笑する。
「ここ半年ほどを振り返っていましたの」
「まぁ、アリア様の場合は婚約破棄、というよりは解消、といった方がいいのではないですか?」
「そうかもしれませんわね」
「私の場合は・・・・ね」
「フレア様の場合は、結構すごかったですものね・・・」
一年前に婚約破棄があった同じ伯爵家の友人フレアの所はすごくゴタゴタしていた。
しかし、近頃婚約が発表され、学園を卒業する半年後には結婚が決まったところだ。
「でも、あの方が悔やむほど今は幸せですわ、私」
今は花が開くようなきれいな笑顔を見せている。
婚約発表の際、元婚約者が地団駄を踏んでいるのをアリアも目撃した。
いいザマだ、と思ったのは友人も一緒だったらしい。
「私も、フレア様と同じようになりたいですわ」
「アリア様も毎日が充実しているように見えましてよ」
「家族はもう私は結婚することがないようなことを想定しているようですの。
失礼だと思いませんか?」
怒った表情をするアリアに、フレアがコロコロと笑う。
「婚約をしている時よりも生き生きしているではありませんか。
ご家族様もその姿をご覧になっていては、
無理に結婚を勧めることもできないのではないですか?
元婚約者の新しい婚約者には軽く講師のようになってますし。
一つ下の学年の者たちの一部からは女神と言われているようですよ?」
「そのように大層なことはしておりませんのに・・・」
「まぁ、いいではありませんか。
どのような形であれ、幸せを感じられるような環境であればそれで」
「まぁ、そうですわね」
フレアとアリアは顔を見合わせて笑う。
穏やかな時間が過ぎていく。
少し騒がしくなった周囲だが、一ヶ月もすれば他の事へと興味が移ったらしく、落ち着いてきている。
アリア自身、もう半年もすれば学園を卒業することになる。
マリファには乞われてマナーや所作のポイントなどを伝授することになり、
マナー講師のエマからも褒められるほどの上達ぶりだったそうな。
おかげでマリファの友人たちにも講師の真似事をする羽目にもなった。
アリアには再び婚約の話が持ち上がることはなかったが、
父親は悪かったと思っているのか、
跡継ぎの弟はいるものの、
もし結婚できなければ、アリアに領地の一部を領主代理として治めさせるとの話ができた。
なので、少しずつではあるもののアリアも弟と一緒に父親の仕事を手伝うことにした。
一応の保険であるものの、現実になってから何も知らないでは済まされない。
ただ、アリアとしては父親の仕事の方が楽しいと思うようになってきていた。
弟も姉の方が適性があると思っているのか、
「もう、領主代理が決定でいいんじゃない?
結婚するときは姉様が婿を取ればいいかもね」
などとアリアに言ってきている。
「あなたが跡継ぎでしょう?」
と返すと、
「その場合は僕が婿に行くから。
でもまぁ、どこでどんな出会いがあるかわからないからね。
僕にも姉様にもね。
だから、別に僕はどちらでもいいんだよ」
と、あっさりしたものだった。
元々、弟は研究なんかの方が合うようで、領主の仕事もできなくはないが、
あまり進んでやる形ではない。
そんな弟を見て軽く嘆いている両親を宥める役に回ることは、
ちょっとだけ苦痛に感じるアリアだった。
「なんだか、大変な事かと思っていたけど、
過ぎてしまえばどうということはないものなのね」
「あら、どうかなさいまして?」
おっとりと返ってきた友人からの返事に苦笑する。
「ここ半年ほどを振り返っていましたの」
「まぁ、アリア様の場合は婚約破棄、というよりは解消、といった方がいいのではないですか?」
「そうかもしれませんわね」
「私の場合は・・・・ね」
「フレア様の場合は、結構すごかったですものね・・・」
一年前に婚約破棄があった同じ伯爵家の友人フレアの所はすごくゴタゴタしていた。
しかし、近頃婚約が発表され、学園を卒業する半年後には結婚が決まったところだ。
「でも、あの方が悔やむほど今は幸せですわ、私」
今は花が開くようなきれいな笑顔を見せている。
婚約発表の際、元婚約者が地団駄を踏んでいるのをアリアも目撃した。
いいザマだ、と思ったのは友人も一緒だったらしい。
「私も、フレア様と同じようになりたいですわ」
「アリア様も毎日が充実しているように見えましてよ」
「家族はもう私は結婚することがないようなことを想定しているようですの。
失礼だと思いませんか?」
怒った表情をするアリアに、フレアがコロコロと笑う。
「婚約をしている時よりも生き生きしているではありませんか。
ご家族様もその姿をご覧になっていては、
無理に結婚を勧めることもできないのではないですか?
元婚約者の新しい婚約者には軽く講師のようになってますし。
一つ下の学年の者たちの一部からは女神と言われているようですよ?」
「そのように大層なことはしておりませんのに・・・」
「まぁ、いいではありませんか。
どのような形であれ、幸せを感じられるような環境であればそれで」
「まぁ、そうですわね」
フレアとアリアは顔を見合わせて笑う。
穏やかな時間が過ぎていく。
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