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漫画の世界にようこそ
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中学生の拓海(たくみ)が学校から帰宅すると、家の玄関の前に一冊の漫画が無造作に置かれていた。
拓海は何気なく手に取ると、それは新品のように綺麗だった。表紙を見ると、可愛いらしい女の子の絵と『ハーレム物語』というタイトルがついていた。
全く聞いたことのない漫画で、作者名や出版社名は印刷されてないことを不思議に思ったが、表紙の絵のタッチが好みだった拓海は、とりあえず手に取ったまま家に入り、自分の部屋に鞄と一緒に放り投げると、約束していた友達の家に行くため、準備をして家を出た。
夜。
夕飯と風呂を終え、眠くなった拓海は自分の部屋に入ると、さっきの漫画を思い出し、ベッドでうつ伏せになりながら漫画を開いてみた。
拓海は、読み始めるとすぐにこの漫画の虜になった。
内容は主人公の男子中学生が、同級生の女の子たちの心を掴み、学校一のモテ男になっていく学園物語である。
自分と同い年の主人公、自分好みの絵、そしてちょっとしたお色気シーンと、拓海は止まることなく最後まで読み切った。
「ふぅ、続きが気になるなぁ。主人公羨ましいなぁ、俺も同じ体験してみてぇ。」
拓海が漫画を閉じながら独り言を言うと、漫画本が激しく発光した。
拓海は余りの眩しさに目を閉じた。
そして、再び目を開けると、見たことのない景色の場所にいた。
拓海は訳が分からず、これは夢だと思っても、一向に目が覚める気配がない。
よく見れば、さっきまでパジャマ姿だったのに、いつの間にか学生服を身にまとい、見知らぬ学校の正門にいた。
拓海は校門の柱に書かれた学校名を見てピンときた。
あの漫画と同じ学校だ。
そして今着ている制服と、その着方が、漫画の主人公の男の子そのものだと気が付いた。
拓海は不安な気持ちが一気になくなり、あの漫画の主人公と同じ経験ができるのではと、期待を膨らませていた。
その瞬間、チャイムが鳴り響き、誰もいない無音だった世界に、たくさんの人が現れた。
拓海は急なことで驚き、どうしたらよいのかわからず下を向いていると、背後から自分の名前を呼ぶ可愛いらしい声が聞こえた。
この展開は、あの漫画のヒロインの子が呼んでいるのかと鼻の下を伸ばしながら振り向くと、拓海はギョッとした。
確かに期待したとおりの、あの漫画のヒロインだったのだが、漫画の姿を現実の人間で再現すると、奇妙な生き物そのものだった。
まずは、驚くほど大きな瞳だ。普通の人間の五倍はあろうかという異常な大きさは、宇宙人を連想させ、また白目の部分がある分、宇宙人よりも気持ちが悪かった。
そして、異様に大きな頭に対して細すぎる首や手足は、操り人形を思わせる不気味さがあった。
漫画の絵ではあんなに可愛く感じたのに。
駆け寄ってくるヒロインに、拓海は恐怖を抱き、振り返って逃げ出した。
よく見ると、周りの生徒らも皆普通の人間の姿ではなかった。
確かに漫画の主人公と同じ世界を経験したいとは望んだが、こんな妖怪チックなヒロインを思い描いていたわけではないと、元の世界に戻りたい、夢なら覚めてくれと必死に願った。
すると、今度は目の前から別の女の子が拓海に向かって駆け寄ってきた。
拓海はゾッとした。
同じ展開の漫画のワンシーンを思い出したのだ。勿論、漫画の主人公がヒロインから逃げ出したのは別の理由だったが、状況は同じであり、別の女の子が正面からやってくるシチュエーションで、ハッキリした。
予想通り、その後も別の女の子が登場し、ハーレム状態となった拓海。ヒロインに捕まり、顔を近付けられるシーンでは、その気味の悪いアンバランスな顔立ちに、思わず悲鳴をあげた。
元の世界に戻りたい。
夢なら覚めてくれ。
その願いは虚しく、漫画のストーリーとおりに、何度見ても気味が悪く慣れることのない、女の子たちに言い寄られ続けた。
「拓海?…いないのかい?入るよ。」
母親が拓海の部屋に入ると、電気が点いているが拓海の姿が無い。
母親はそのまま部屋の中を見回すと、何故かベッドの上の漫画本が無性に気になり手に取った。
母親は何気なく漫画を開いた。
「…え!?たく…み…?」
そこには拓海そのものの顔立ちの中学生が主人公で描かれていた。
母親に悪寒が走ると同時に、その漫画本は母親の手から離れ、宙に浮くと不気味な笑い声を残して姿を消した。
ー その後、拓海が見つかることは無かった。
その漫画本が次に辿り着くのは、あなたの部屋かもしれません。
玄関に置いてある見覚えのない漫画本にはご注意を。
拓海は何気なく手に取ると、それは新品のように綺麗だった。表紙を見ると、可愛いらしい女の子の絵と『ハーレム物語』というタイトルがついていた。
全く聞いたことのない漫画で、作者名や出版社名は印刷されてないことを不思議に思ったが、表紙の絵のタッチが好みだった拓海は、とりあえず手に取ったまま家に入り、自分の部屋に鞄と一緒に放り投げると、約束していた友達の家に行くため、準備をして家を出た。
夜。
夕飯と風呂を終え、眠くなった拓海は自分の部屋に入ると、さっきの漫画を思い出し、ベッドでうつ伏せになりながら漫画を開いてみた。
拓海は、読み始めるとすぐにこの漫画の虜になった。
内容は主人公の男子中学生が、同級生の女の子たちの心を掴み、学校一のモテ男になっていく学園物語である。
自分と同い年の主人公、自分好みの絵、そしてちょっとしたお色気シーンと、拓海は止まることなく最後まで読み切った。
「ふぅ、続きが気になるなぁ。主人公羨ましいなぁ、俺も同じ体験してみてぇ。」
拓海が漫画を閉じながら独り言を言うと、漫画本が激しく発光した。
拓海は余りの眩しさに目を閉じた。
そして、再び目を開けると、見たことのない景色の場所にいた。
拓海は訳が分からず、これは夢だと思っても、一向に目が覚める気配がない。
よく見れば、さっきまでパジャマ姿だったのに、いつの間にか学生服を身にまとい、見知らぬ学校の正門にいた。
拓海は校門の柱に書かれた学校名を見てピンときた。
あの漫画と同じ学校だ。
そして今着ている制服と、その着方が、漫画の主人公の男の子そのものだと気が付いた。
拓海は不安な気持ちが一気になくなり、あの漫画の主人公と同じ経験ができるのではと、期待を膨らませていた。
その瞬間、チャイムが鳴り響き、誰もいない無音だった世界に、たくさんの人が現れた。
拓海は急なことで驚き、どうしたらよいのかわからず下を向いていると、背後から自分の名前を呼ぶ可愛いらしい声が聞こえた。
この展開は、あの漫画のヒロインの子が呼んでいるのかと鼻の下を伸ばしながら振り向くと、拓海はギョッとした。
確かに期待したとおりの、あの漫画のヒロインだったのだが、漫画の姿を現実の人間で再現すると、奇妙な生き物そのものだった。
まずは、驚くほど大きな瞳だ。普通の人間の五倍はあろうかという異常な大きさは、宇宙人を連想させ、また白目の部分がある分、宇宙人よりも気持ちが悪かった。
そして、異様に大きな頭に対して細すぎる首や手足は、操り人形を思わせる不気味さがあった。
漫画の絵ではあんなに可愛く感じたのに。
駆け寄ってくるヒロインに、拓海は恐怖を抱き、振り返って逃げ出した。
よく見ると、周りの生徒らも皆普通の人間の姿ではなかった。
確かに漫画の主人公と同じ世界を経験したいとは望んだが、こんな妖怪チックなヒロインを思い描いていたわけではないと、元の世界に戻りたい、夢なら覚めてくれと必死に願った。
すると、今度は目の前から別の女の子が拓海に向かって駆け寄ってきた。
拓海はゾッとした。
同じ展開の漫画のワンシーンを思い出したのだ。勿論、漫画の主人公がヒロインから逃げ出したのは別の理由だったが、状況は同じであり、別の女の子が正面からやってくるシチュエーションで、ハッキリした。
予想通り、その後も別の女の子が登場し、ハーレム状態となった拓海。ヒロインに捕まり、顔を近付けられるシーンでは、その気味の悪いアンバランスな顔立ちに、思わず悲鳴をあげた。
元の世界に戻りたい。
夢なら覚めてくれ。
その願いは虚しく、漫画のストーリーとおりに、何度見ても気味が悪く慣れることのない、女の子たちに言い寄られ続けた。
「拓海?…いないのかい?入るよ。」
母親が拓海の部屋に入ると、電気が点いているが拓海の姿が無い。
母親はそのまま部屋の中を見回すと、何故かベッドの上の漫画本が無性に気になり手に取った。
母親は何気なく漫画を開いた。
「…え!?たく…み…?」
そこには拓海そのものの顔立ちの中学生が主人公で描かれていた。
母親に悪寒が走ると同時に、その漫画本は母親の手から離れ、宙に浮くと不気味な笑い声を残して姿を消した。
ー その後、拓海が見つかることは無かった。
その漫画本が次に辿り着くのは、あなたの部屋かもしれません。
玄関に置いてある見覚えのない漫画本にはご注意を。
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