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第4節 神という存在
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畑からの衝撃の言葉に溝口は、もう一度長尾の事件の資料を見返した。
「…確かに亡くなった長尾智美と母親は二人家族で、母親の方には離婚歴があります。もう20年以上前の話ですが。」
池畑は少し考えたような表情をしてから畑に聞いた。
「信憑性は?」
畑は即答はできずに、少し黙ってから答えた。
「…正直半々です。だから、今回の記事には一切合切その事は書いていません。…でも彼女は嘘をついているようには見えなかった。彼女は気になることを言っていました。母親が桐生朱美からの手紙を隠しており、それを見た彼女が生き別れの姉が桐生朱美だと分かった、って。私が聞きたかったのはその手紙の存在なんですが、警察では見つけてないですか?」
溝口は資料をまた見直した。
「…資料を見る限り報告はないようですね。」
池畑は溝口から資料を受け取り、自分の目でも見直した。
「確かに記載はねぇな。これ、群馬県警に借りた物だ。あいつら抜き取ったんじゃねぇか。…今の日本の警察は桐生朱美の名前を広げたくはないだろ。死刑でさっくり終わらせて、呪いは完全に消え去りました、めでたしめでたしで終わらせたいはずだ。…ま、警察の俺が言う台詞じゃないが。…畑さん、後で群馬県警の知り合いにこっそり聞いてみますよ。この資料もそいつから、こっそりデータで貰ったやつを印刷したもんなんで。」
「ありがとうございます。それと、これ…。」
畑はスマートフォンの画面を池畑たちに見せた。昨日、粟田に教えて貰った長尾智美が呪いの紙を販売していたことが書き込まれている゛呪いの伝播゛という掲示板だ。
「この掲示板には、長尾智美が呪いの紙を販売していたことが書き込まれています。少なくとも半年前には販売していたようです。もし、その紙を購入した人がいるなら、桐生朱美と長尾智美意外にも呪いを使うことができる人間が世の中にいることになります。」
溝口は、先程畑が机に置いた週刊誌の内容をさらっと読んでおり、その中には、足立が畑に行った呪いの紙を使用した実験談も載っていることに気付いた。
「呪いの紙って、ここに書かれてるやつっすよね?池畑さん、これ瀬古さんに教えて貰ったやつのことですよ。」
溝口はその記事を指差しながら池畑に見せた。
「あぁ、そうみたいだな。ということは、既に世の中に出回っている可能性が高いな。とりあえずこの掲示板調べて購入した者がいたら特定を急ぐしかないな。」
「そうですね。あと気になったんですけど、群馬県警の資料には、長尾智美については呪いの゛の゛の字も書かれてませんね。部屋の写真もありますけど、可愛い女の子らしい部屋ですし。ほら。」
溝口はそう言うと机に部屋の写真のページを置いて見せた。その写真を見て正人は何か違和感を覚えた。
「…あ、そうだ。実はこの長尾智美さん、妻の妹の知り合いだったんですよ。妹の話ですと、あるアーティストが好きで、ライブ会場で会うライブ仲間だったみたいなんです。昨日の夜に妻の妹に少し詳しく聞いてみたんですけど、“ミスト”ってバンドで、グッズもライブ仲間でいつも沢山買っていたみたいなんですよ。でも、今この写真見ると、全然バンドのグッズとかポスターみたいなのは見受けられませんね。」
畑もその話を聞いて、自分が取材に行った日のことを思い出し、記憶の中で部屋を観察してみた。
「…自分、取材で部屋に上がりましたけど、確かにミストっていうバンドのグッズは一つもなかったですよ。本当に女の子らしい部屋というか、ぬいぐるみとかそんなもんくらいで。」
池畑は確かに不思議だなと思いつつも、他の可能性も考えてみた。
「…もしかしたら、実家に置いてたんですかね。とりあえずこれも合わせて後程知り合いに聞いてみます。あとは何かありますか?」
畑は小さく頷いたが、中々話そうとしなかった。正人が心配して肩をポンと叩くと、下を向いていた畑は顔を上げて話し始めた。
「…池畑さん、私は長尾智美の死に自分が絡んでいるのではと思っています。タイミングがたまたま私と会った直後だっただけかもしれないですが、私が取材に行かなければ彼女は死ななかったんじゃないかと考えてしまうんです。
私は彼女の死の真実が知りたい。その真実には、手紙と桐生朱美も絡んでいるように思えるんです。でも、メディアでは一切報道されなくて…このまま母親の無理心中で終わらせてほしくは…。」
「畑さん。」
畑の暴走気味な言葉を池畑が止めた。
「捜査は警察の仕事です。あなたから頂いた情報は無下にはしません。必ず群馬県警にも伝え、我々もできる限り捜査に絡みます。桐生朱美が絡むような話ならこの話は群馬のみじゃなく日本全域に及ぶ話に発展するでしょう。でも、捜査した結果、やはり無理心中という結論で終わるかもしれません。その場合は潔くご納得頂きたい。」
「わかってます。本当にありがとうございます。」
畑は立ち上がって頭を下げた。
「じゃあ今日はこれで。また進展がありましたら連絡しますから。」
池畑も場を締めて立ち上がると、正人が小言で池畑に話し掛けた。
「あの池畑さん。千里の件で二人で話したいことがあるんですが、この後のご都合はいかがですか?」
「この場だと難しい話ですか?」
「…そうですね、少し。」
正人の複雑な表情で、池畑は状況を察して仕事が終わり次第、夜に会って話を聞く約束をした。
その後、溝口が二人を署の出口まで案内し、村上と畑は一礼してから、それぞれ帰路についた。
「…確かに亡くなった長尾智美と母親は二人家族で、母親の方には離婚歴があります。もう20年以上前の話ですが。」
池畑は少し考えたような表情をしてから畑に聞いた。
「信憑性は?」
畑は即答はできずに、少し黙ってから答えた。
「…正直半々です。だから、今回の記事には一切合切その事は書いていません。…でも彼女は嘘をついているようには見えなかった。彼女は気になることを言っていました。母親が桐生朱美からの手紙を隠しており、それを見た彼女が生き別れの姉が桐生朱美だと分かった、って。私が聞きたかったのはその手紙の存在なんですが、警察では見つけてないですか?」
溝口は資料をまた見直した。
「…資料を見る限り報告はないようですね。」
池畑は溝口から資料を受け取り、自分の目でも見直した。
「確かに記載はねぇな。これ、群馬県警に借りた物だ。あいつら抜き取ったんじゃねぇか。…今の日本の警察は桐生朱美の名前を広げたくはないだろ。死刑でさっくり終わらせて、呪いは完全に消え去りました、めでたしめでたしで終わらせたいはずだ。…ま、警察の俺が言う台詞じゃないが。…畑さん、後で群馬県警の知り合いにこっそり聞いてみますよ。この資料もそいつから、こっそりデータで貰ったやつを印刷したもんなんで。」
「ありがとうございます。それと、これ…。」
畑はスマートフォンの画面を池畑たちに見せた。昨日、粟田に教えて貰った長尾智美が呪いの紙を販売していたことが書き込まれている゛呪いの伝播゛という掲示板だ。
「この掲示板には、長尾智美が呪いの紙を販売していたことが書き込まれています。少なくとも半年前には販売していたようです。もし、その紙を購入した人がいるなら、桐生朱美と長尾智美意外にも呪いを使うことができる人間が世の中にいることになります。」
溝口は、先程畑が机に置いた週刊誌の内容をさらっと読んでおり、その中には、足立が畑に行った呪いの紙を使用した実験談も載っていることに気付いた。
「呪いの紙って、ここに書かれてるやつっすよね?池畑さん、これ瀬古さんに教えて貰ったやつのことですよ。」
溝口はその記事を指差しながら池畑に見せた。
「あぁ、そうみたいだな。ということは、既に世の中に出回っている可能性が高いな。とりあえずこの掲示板調べて購入した者がいたら特定を急ぐしかないな。」
「そうですね。あと気になったんですけど、群馬県警の資料には、長尾智美については呪いの゛の゛の字も書かれてませんね。部屋の写真もありますけど、可愛い女の子らしい部屋ですし。ほら。」
溝口はそう言うと机に部屋の写真のページを置いて見せた。その写真を見て正人は何か違和感を覚えた。
「…あ、そうだ。実はこの長尾智美さん、妻の妹の知り合いだったんですよ。妹の話ですと、あるアーティストが好きで、ライブ会場で会うライブ仲間だったみたいなんです。昨日の夜に妻の妹に少し詳しく聞いてみたんですけど、“ミスト”ってバンドで、グッズもライブ仲間でいつも沢山買っていたみたいなんですよ。でも、今この写真見ると、全然バンドのグッズとかポスターみたいなのは見受けられませんね。」
畑もその話を聞いて、自分が取材に行った日のことを思い出し、記憶の中で部屋を観察してみた。
「…自分、取材で部屋に上がりましたけど、確かにミストっていうバンドのグッズは一つもなかったですよ。本当に女の子らしい部屋というか、ぬいぐるみとかそんなもんくらいで。」
池畑は確かに不思議だなと思いつつも、他の可能性も考えてみた。
「…もしかしたら、実家に置いてたんですかね。とりあえずこれも合わせて後程知り合いに聞いてみます。あとは何かありますか?」
畑は小さく頷いたが、中々話そうとしなかった。正人が心配して肩をポンと叩くと、下を向いていた畑は顔を上げて話し始めた。
「…池畑さん、私は長尾智美の死に自分が絡んでいるのではと思っています。タイミングがたまたま私と会った直後だっただけかもしれないですが、私が取材に行かなければ彼女は死ななかったんじゃないかと考えてしまうんです。
私は彼女の死の真実が知りたい。その真実には、手紙と桐生朱美も絡んでいるように思えるんです。でも、メディアでは一切報道されなくて…このまま母親の無理心中で終わらせてほしくは…。」
「畑さん。」
畑の暴走気味な言葉を池畑が止めた。
「捜査は警察の仕事です。あなたから頂いた情報は無下にはしません。必ず群馬県警にも伝え、我々もできる限り捜査に絡みます。桐生朱美が絡むような話ならこの話は群馬のみじゃなく日本全域に及ぶ話に発展するでしょう。でも、捜査した結果、やはり無理心中という結論で終わるかもしれません。その場合は潔くご納得頂きたい。」
「わかってます。本当にありがとうございます。」
畑は立ち上がって頭を下げた。
「じゃあ今日はこれで。また進展がありましたら連絡しますから。」
池畑も場を締めて立ち上がると、正人が小言で池畑に話し掛けた。
「あの池畑さん。千里の件で二人で話したいことがあるんですが、この後のご都合はいかがですか?」
「この場だと難しい話ですか?」
「…そうですね、少し。」
正人の複雑な表情で、池畑は状況を察して仕事が終わり次第、夜に会って話を聞く約束をした。
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