勇者と七つの涙

雨木良

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『勇者の剣』奪還編

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「…なぁ、ロイ。お前は…。」
「そういえば、あなたの名前まだ聞いて無かったです。教えていただいてもいいですか?」

ロイは、グルトの話を遮るように聞いた。グルトは、ロイがわざと自分の質問を遮ったように感じたが、今は突っかかることは止めることにした。

「…そうだったな。俺はグルトだ。フォルジュ村から来た。」

「フォルジュ村…すみません、存じ上げない名前です。」

ロイはそう言うと立ち上がり、グルトに向かって深々と頭を下げた。

「グルトさん、命を助けていただきありがとうございました。リンゴまでご馳走になってしまい、このご恩は一生忘れません。」

急に改まった礼を言われ、グルトは照れくさそうに視線を逸らせた。

(そのリンゴは、群衆からかっぱらった金で買ったとは言えないな。)

グルトがそんな事を考え、改めて正面に視線を向けると、そこにロイの姿がなかった。慌てて、小屋内を見回すと、ロイが扉から外に出ていこうとしていた。グルトは慌てて、ロイの元へ駆け寄り、引き止めた。

「ちょ、ちょっと待て!何処に行く気だ!?」

グルトの質問に、ロイは真顔で淡々と答えた。

「何処って、ラマジ王国に決まってるじゃないですか。これ、届けないと。」

ロイは服の中から封筒を取り出し、グルトに見せた。それは、さっきロイが言っていたティグル王がラマジ王国のドミナ王に宛てた手紙だった。

「おま…え?まだ、これ届けるつもりか?」

グルトは驚愕の表情を浮かべて聞いた。

「勿論です。まだ王の命は達成できてませんから。勇者としては、任務はやり遂げます。…では、急ぎますので。」

ロイは、一礼して扉から出ていった。余りに淡々としていたため、グルトは呆気にとられてしまった。

「…ヤバい。まだあれを頂いてないな。」

グルトは、ロイを連れてきた本来の目的を思い出し、机に置いておいた袋を手に取り、急いでロイを追い掛けた。

「おーい!ロイ!」

背後からのグルトの声に気がついたロイは立ち止まり、振り返った。グルトは息を切らせながらロイに追い付いた。

「はぁ、はぁ、俺も行くよ。」

「…何故です?」

ロイは、睨み付けるような目付きでグルトに質問した。さっきまでとは、全く違うロイの雰囲気に、グルトは一瞬怯んだがロイを指差しながら答えた。

「お前…生きてたことが王にバレたらまた捕まるだろ。だいたい、勇者のくせに武器も持たずにどう戦うんだ?」

「武器も持たずに?何言ってるんです。武器ならここに…。」

ロイは腰に手を伸ばし、剣を掴む動作をしたが、上手く掴めず、もう一度同じ動作を繰り返した。その様子をグルトは不思議そうに眺めた。

もう一度掴み損ねたので、ロイは腰に視線を向けた。

「…え!?な、ない!?」

剣が無いことに漸く気が付いたロイは、慌てふためき、泣きそうな表情を浮かべ、グルトを見つめた。

「…え?何?」

グルトは嫌な予感がした。
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