勇者と七つの涙

雨木良

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『勇者の剣』奪還編

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階段を上がり二階へと辿り着いたロイたちは、とりあえずテヒニクの姿がないことを確認した。グルトは、セルヴォーの部屋の位置を確認するため、再び城内の地図を見ようと先ほど仕舞ったポケットを漁ったが、地図が入っていないことに気が付いた。

「…あれ?…え、あら…。」

慌てた様子で他のポケット等も漁ったが地図は見つからず、さっきのヨシミツたちとの戦いの際に落とした可能性に気が付いた。

しかし、今戻るとデストリュが氷付けから目覚める可能性もある故、簡単には戻れないことに悩んでいるグルト。

すると、ロイはグルトに一つの提案をした。

「グルト。いくら姿を消しててもヨシミツにバレるのは時間の問題だよ。セルヴォーの部屋が二階にあるのだけは分かってる。少しでも早く事を片付けるために、バラバラに探さない?」

さっきまで、テヒニクへの恐怖で支配されてたとは思えない、真っ直ぐなロイの声に、グルトは思わず頷いてしまった。

「あぁ、それはいい考えだ。だけど、お前…急にどうしたんだ?」

「僕だって、戦いの経験積んで、強い技をティアーズストーンから授かりたいんだ。それに、まぐれかもしれないけど、一度はテヒニクを気絶させられたんだから、もっと自分に自信を持とうと思ったんだ。僕は…勇者だった父の血を引いてるんだ、勇者の中の勇者にならないと。」

ロイは、グルトには見えてなかったが、微笑みながら答えた。

二人は、どちらかが先にセルヴォーの部屋に辿り着いた場合、その部屋で待つことを約束し、二手に別れた。

ロイは、上り切った階段から見て右手側を探すことになり、どこに潜んでいるか分からないテヒニクに注意を払いながら、廊下を進んだ。

廊下は、長いことに加え灯りも少なく、10メートル先は暗闇で全く様子が伺えなかった。ロイは、壁伝いにゆっくり進み、扉を見つける度に、そっと扉を開け、中の様子を伺った。

一つ目の扉は、掃除用具などを仕舞っている倉庫。二つ目の扉は、リネン室のようで、数人の使用人が洗濯をしていた。

そして、三つ目の扉に近付くにつれ、辺りにとてもいい匂いが充満し始めた。扉の上からは湯気が出ていくのが見え、これはきっと調理場だと思ったロイは、その扉を素通りしようとした。

「フフフフン~フフ~フフン~♪」

扉の前を通った際に、中から陽気な鼻唄が聞こえた。その声は可愛らしく、また美しいメロディだった。

「…この声…それに、この曲…。」

ロイは、何か引っ掛かるものがあり、確実にセルヴォーの部屋ではないにもかからわず、そっと扉を開けて、中を伺った。

すると、ロイは視界に飛び込んできた人物に、目を疑った。 

「…フルール。何で君が…。」

ロイは、思わず呟いてしまった。すると、鍋で煮込み料理を作っていたフルールは、鼻唄を止め、辺りを見回した。

「…誰?誰かいるの?」

ロイは、調理場にいるのがフルールだけだと確認すると、意を決して、中に入り、扉を閉めると、首に巻いていた布を外し、姿を現した。
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