勇者と七つの涙

雨木良

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『闇の世界』脱出編 ーオンブル国ー

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皆は自然と明かりを灯しているフルールの周りに集まった。

集まると皆周りを警戒し、武器を各々構えた。

「フルール。さっき君は、この生物のことに気が付いたような感じだったけど、詳しく知ってるの?」

ロイが視線を周囲に集中させながら聞いた。

「文献で読んだことがあるの。この生き物は、地中に身を潜めて、真上に来た獲物を捕らえるって。そして、獲物を誘き寄せる為に、幻を見させる魔法を使うって。」

「つまり、恐竜だのサーベルタイガーだのが、全てコイツに見させられた幻だったってわけか!んで、コイツの思うがまま、今胃袋にいるわけだ。」

グルトが苛つきながら言った。テヒニクも緊張した表情で、剣をギュッと握りしめていた。

「フルール。この後どうなるんだ?」

グルトの質問に、フルールは首を横に振った。

「…私もこの先はわからないわ。こんなに巨大な生物だとも知らなかった。人間四人が居てもこれだけ広さを感じる胃袋って…どんだけ巨大な生物なの…。」

「ねぇ…胃袋ってことは…これから私たち消化されるってこと?」

テヒニクは周囲を警戒しながら誰にでもなく疑問を口にした。

「んぁ?…ふぁ~あ、ん?ここは何処や?」

ロイの背中でゼロが目覚めた。

「ゼロ!今何かの生き物に捕まっちゃって、そいつの胃の中にいるみたいなんだ。地面が割れて、その亀裂から吸い込まれたんだよ。」

「…地面の亀裂…そいつぁ『待ち伏せ毛玉』やな。」

「待ち伏せ毛玉?弱そうな変な名前だな。」

グルトが鼻で笑いながら言った。ロイは、持っていた剣を鞘に納めて、背中の鞘からゼロを引き抜いた。

「グルト、こいつを舐めたらあかんで!待ち伏せ毛玉っちゅーのは、見た目が真ん丸の毛むくじゃらってだけで付けられた通称や!地中におるから、実際に姿を見た奴はほとんどおらんし、姿を見た奴がいたとしても、喰われて死んでまうっちゅー話や!わいも実際に見たのは初めてやで。えぇか、注意せんと何が起こるかわからへんでぇ。」

ゼロの説明に、皆に緊張が走った。四人は皆背中合わせになり、各々が別の方向に視線を向けて、警戒を続けた。

ビチャッ。

「ん?」

ロイが足元に異変を感じた。直ぐに下を向くと、さっきまで無かった透明な液体に靴が少し浸かっていた。

「わぁ!なんだ、この水!」

ロイの言葉に、皆が一斉に下を見た。その途端、一番軽微な靴を履いていたテヒニクが悲鳴を上げた。

「痛っ!熱い!何かに焼かれてるみたい!」

テヒニクは痛みで足をバタつかせるが、辺り一面に液体が広がっているため、逃げようがなかった。

「…胃酸か?」

ロイたちの靴も、シューッという音と煙を発しながら徐々に溶けてきているようだった。

「皆、私に掴まって!シャンジュモン!!」

テヒニクは切っ先を壁に向けて呪文を唱えた。すると、切っ先が一瞬で伸びて壁に深く突き刺さった。テヒニクは、刺さった剣の上に皆を飛び乗らせた。テヒニクの剣は四人が乗っても揺れることすらなく、安定していた。

「た、助かった。」

皆が安堵したのも束の間、床から染み出してきた液体は、徐々に量を増してきていた。あっという間に、さっきまでの場所に立っていたら、腰ほどの高さであろう水位となった。

「ねぇ、このままじゃ時間の問題なんじゃ…。」

フルールが青ざめた表情でロイに言った。ロイにも良い策が思い浮かばずに、ゼロの顔に視線を送った。

「…わいを期待されてもやなぁ。さっきも言うたとおり、コイツに遭遇したのは初めてやさかい。それに、今ナイスバデーの姉ちゃんが剣を刺しても何も感じてないたところを見ると、単純に攻撃してもあかん気がするなぁ。」

頼りにならないゼロの返答に、ロイの表情が曇った。

「ね、ねぇ、ヤバイよ、もうすぐここも水没するわよ!」

「ゼロォォ!何かないのか!?」

パニックになるテヒニクとグルト。

バシャンッ!! 

「え?」

その時、何かが上から胃液の海に落ちてきたのが見えた。

「何だ、何か落ちたよな?」

グルトが水面を目を凝らしてみるが、何も見えなかった。

「ねぇ、あれ!!」

フルールが何かに気が付いて指差した。三人が、視線をフルールの指差す方へ向けると、水面からサメのようなヒレが出ており、 こちらに向かってくるのが見えた。
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