52 / 78
『闇の世界』脱出編 ーオンブル国ー
51
しおりを挟む
ロイたちはポワッソン族に連れられ、真上に見える人影に向かって上昇し続けた。真上から降り注ぐ血の雨を拭いながら、徐々に近づく人影に、ロイたちは固唾を呑んだ。
「…ロイ。この血はテヒニク…なのか?」
グルトの問い掛けにロイは何も答えなかった。
なおも上昇を続け、人影がいよいよ誰がか判別できる距離まで来ると、ポワッソン族の一人が声を上げた。
「お、おい!あれゴーン様だよな!?血だらけじゃねぇか…?」
「馬鹿!ありゃあの女の返り血…ん?」
そのポワッソン族の横を何かが落下していった。そして、それと同時に大量の血液の雨が降り注いだ。
「うわっ、また血か!?なぁロイ!テヒニクは大丈夫そうなのか?俺の位置からじゃ、いまいちよく見れなくてよ。」
グルトの問い掛けに、ロイは少し間を空けて答えた。
「…あぁ、テヒニクは無事だよ。」
「…凄い、テヒニクさん。」
テヒニクの様子が見れたロイとフルールは、その現場を見て驚いた。
血だらけのフルールの目の前には、同じく血だらけだが、右の手足を切り落とされたゴーンが瀕死の状態で宙に浮いていた。
さっき落下していった物体は、ゴーンの手足だったのだ。
「…はぁ…はぁ…、て…てめぇ、どうやって剣を…。はぁはぁ…油断した…くそっ…。」
虫の息のゴーンがテヒニクを睨み付けながら呟いた。
確かにテヒニクは、自分の剣はシャンジュモンで変化させ、足場として利用している。だが、全く同じ剣がテヒニクの手にも握られていた。
ゴーンの質問に、テヒニクは剣に付いた血を振るって払い、鞘に仕舞うと、剣の柄を優しく撫でながら答えた。
「私の剣はね…私が造ったのよ。名前は『モワメーム』…『自分』っていう意味よ。私はモワメームに、様々な力を与えたの。変化や瞬間移動…そして分身。」
「…分身…馬鹿な…ふざけ…てる。」
「テヒニク!!」
ロイたちはテヒニクとゴーンの場所に辿り着いた。すると、ボスの瀕死の状態に、ポワッソン族の面々は慌てふためき、ロイたちを解放し、ゴーンの元に集まり出した。
その隙にテヒニクが足場を伸ばし、ロイたちを拾い上げた。
「ロイ、グルト、フルール…無事で良かった。」
フルールがテヒニクに抱きついた。
「フルール、ダメよ、私血だらけだから。」
「無事で良かったって…それはこっちのセリフですよ!」
「…フルール…。」
テヒニクはニコリと微笑み、フルールの頭を優しく撫でた。ロイは、テヒニクの全身に付いている血液が、ゴーンのものだと理解し、安堵の表情を浮かべた。
「テヒニクもそんな女らしい良い顔出来るんだな?」
グルトがニヤリと微笑み、冷やかしを入れると、テヒニクはキッとグルトを睨み付けた。
「ゴーン様!?やめてください!!…ギャアアアアア!」
突然のポワッソン族の悲鳴に、四人に緊張が走り、皆それぞれが武器を手に取り、ポワッソン族の塊に向かって構えた。
「ボ、ボス?俺も…勘弁してくれ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ま、待ってくれ。ギャアアアアア!」
「ちょっと…うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「…ロイ、今あいつらはどういう状況なんだ?」
「…分からない…分からないけど、何だかヤバイ気がする…。」
ロイたちからは、ポワッソン族の数が多く、その塊の中心から悲鳴のような多数の声が聞こえてはくるが、様子を伺うことが出来なかった。
「ヒャハハハハハ!」
すると、突然ロイが構えているゼロが高笑いをし始めた。
「…ゼロ?」
「ハハハハハハ…あ、あぁすまんすまん。きっとありゃポワッソン族の禁じ手やな。」
「ゼロ、禁じ手って?」
フルールが恐る恐る聞いた。
「…簡単に言えば”共喰い“や!」
「「「「え!?」」」」
四人は一斉にポワッソン族の塊に視線を向けた。
「ポワッソン族の共喰いは恐ろしいんや!腹を満たすためのものなんかやない、食った奴からパワーを奪い、自分を強くする、それがポワッソン族の共喰いなんや!」
「…何だって…。」
ドーーーーンッ!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
すると、物凄い地響きとともに、ポワッソン族の塊が一斉に四方に飛び散った。
「…女は殺す。もう生け捕りなんて関係ねぇわ。皆殺しだぁーー!!」
飛び散った塊の中心から、剣を構えたゴーン“らしき者”が物凄いスピードでロイたちの元に迫ってきた。
「…ロイ。この血はテヒニク…なのか?」
グルトの問い掛けにロイは何も答えなかった。
なおも上昇を続け、人影がいよいよ誰がか判別できる距離まで来ると、ポワッソン族の一人が声を上げた。
「お、おい!あれゴーン様だよな!?血だらけじゃねぇか…?」
「馬鹿!ありゃあの女の返り血…ん?」
そのポワッソン族の横を何かが落下していった。そして、それと同時に大量の血液の雨が降り注いだ。
「うわっ、また血か!?なぁロイ!テヒニクは大丈夫そうなのか?俺の位置からじゃ、いまいちよく見れなくてよ。」
グルトの問い掛けに、ロイは少し間を空けて答えた。
「…あぁ、テヒニクは無事だよ。」
「…凄い、テヒニクさん。」
テヒニクの様子が見れたロイとフルールは、その現場を見て驚いた。
血だらけのフルールの目の前には、同じく血だらけだが、右の手足を切り落とされたゴーンが瀕死の状態で宙に浮いていた。
さっき落下していった物体は、ゴーンの手足だったのだ。
「…はぁ…はぁ…、て…てめぇ、どうやって剣を…。はぁはぁ…油断した…くそっ…。」
虫の息のゴーンがテヒニクを睨み付けながら呟いた。
確かにテヒニクは、自分の剣はシャンジュモンで変化させ、足場として利用している。だが、全く同じ剣がテヒニクの手にも握られていた。
ゴーンの質問に、テヒニクは剣に付いた血を振るって払い、鞘に仕舞うと、剣の柄を優しく撫でながら答えた。
「私の剣はね…私が造ったのよ。名前は『モワメーム』…『自分』っていう意味よ。私はモワメームに、様々な力を与えたの。変化や瞬間移動…そして分身。」
「…分身…馬鹿な…ふざけ…てる。」
「テヒニク!!」
ロイたちはテヒニクとゴーンの場所に辿り着いた。すると、ボスの瀕死の状態に、ポワッソン族の面々は慌てふためき、ロイたちを解放し、ゴーンの元に集まり出した。
その隙にテヒニクが足場を伸ばし、ロイたちを拾い上げた。
「ロイ、グルト、フルール…無事で良かった。」
フルールがテヒニクに抱きついた。
「フルール、ダメよ、私血だらけだから。」
「無事で良かったって…それはこっちのセリフですよ!」
「…フルール…。」
テヒニクはニコリと微笑み、フルールの頭を優しく撫でた。ロイは、テヒニクの全身に付いている血液が、ゴーンのものだと理解し、安堵の表情を浮かべた。
「テヒニクもそんな女らしい良い顔出来るんだな?」
グルトがニヤリと微笑み、冷やかしを入れると、テヒニクはキッとグルトを睨み付けた。
「ゴーン様!?やめてください!!…ギャアアアアア!」
突然のポワッソン族の悲鳴に、四人に緊張が走り、皆それぞれが武器を手に取り、ポワッソン族の塊に向かって構えた。
「ボ、ボス?俺も…勘弁してくれ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ま、待ってくれ。ギャアアアアア!」
「ちょっと…うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「…ロイ、今あいつらはどういう状況なんだ?」
「…分からない…分からないけど、何だかヤバイ気がする…。」
ロイたちからは、ポワッソン族の数が多く、その塊の中心から悲鳴のような多数の声が聞こえてはくるが、様子を伺うことが出来なかった。
「ヒャハハハハハ!」
すると、突然ロイが構えているゼロが高笑いをし始めた。
「…ゼロ?」
「ハハハハハハ…あ、あぁすまんすまん。きっとありゃポワッソン族の禁じ手やな。」
「ゼロ、禁じ手って?」
フルールが恐る恐る聞いた。
「…簡単に言えば”共喰い“や!」
「「「「え!?」」」」
四人は一斉にポワッソン族の塊に視線を向けた。
「ポワッソン族の共喰いは恐ろしいんや!腹を満たすためのものなんかやない、食った奴からパワーを奪い、自分を強くする、それがポワッソン族の共喰いなんや!」
「…何だって…。」
ドーーーーンッ!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
すると、物凄い地響きとともに、ポワッソン族の塊が一斉に四方に飛び散った。
「…女は殺す。もう生け捕りなんて関係ねぇわ。皆殺しだぁーー!!」
飛び散った塊の中心から、剣を構えたゴーン“らしき者”が物凄いスピードでロイたちの元に迫ってきた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる