異世界でスポーツ科学の達人〜パフォーマンス向上と怪我予防の冒険者ギルド日記

あさあき

文字の大きさ
18 / 51
速く走りたい!足が遅い魔法使い

股関節の伸展位でのハムストリング固定力(2)

しおりを挟む
専門用語連発で意味不明なフジカルにエリカがツッコミを入れるのが恒例になりつつある。

「残念ながら、何を言っているのか、さっぱりわかりません。。。」
「そもそも、ポステリア筋群って何ですか?ハムストリングって何ですか?股関節って何ですか?伸展位も意味がわかりません。。。」

心なしか質問を受けて嬉しそうなフジカル。

「じゃあ、ひとつずつ行こうか。」

「ポステリアという単語は、後部という意味があるんだ。ポステリア筋群と言ったら、愛すべき身体の背面にある筋肉たちという意味だ!」

意味を聞くと、特に難しくないが、ポステリア筋群と表現されると難しく聞こえるのが不思議だ。わざわざ、そんな難しい専門用語を使わなくても良いじゃないか、そう思いながらエリカがさらにツッコミを入れる。

「無理に難しく言わずに、身体の後側にある筋肉、でいいじゃないですか。。。」

さらなるツッコミを受け、嬉しそうに続けるフジカル。

「そういう考え方もあるな!その考え方も面白い!おーけー、おーけー!」

そして、さらに説明を始めた。

「次は、ハムストリングだが、要は太ももの裏側にある3つの筋肉をまとめてハムストリングと呼ぶんだ!」
「大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋の3つだ!これは試験にも良く出るから覚えよう!」

またまたツッコミを入れるエリカ。

「何の試験ですか。。。そんな試験はこの世界にはありません。。。」

さらなるツッコミは気にせず、フジカルは続ける。

「股関節は、足の付け根部分の関節のことだ!」
「そして、伸展位というのは伸ばした状態のことだ!股関節の伸展位だと、足が身体よりも後ろに来ているときが伸展位だ!足を前に持ち上げている状態だと屈曲位と言うぞ!良い子のみんなも覚えよう!」

そろそろ少しあきれてきたエリカ。

「そのテンションは、どこから来るのでしょうか。。。」

そんなエリカをよそに、フジカルはハイテンションで続ける。

「股関節の伸展位での固定力の話に戻るが、"走る"というのは両足が地面から離れる瞬間があり、片足ずつ地面に接地するという行為だ」
「逆に、"歩く"という行為は、常にどちらかの足が地面についている」
「走るという行為において、両足が地面から離れて片足がついた後に、その足に体重を乗せてからまた両足が地面から離れるという瞬間があるが、地面に足をついてその足に乗り込むときにハムストリングの固定力が弱くて膝が伸び過ぎてしまうと、臀筋の伸展力を水平成分に出しにくくなってしまうんだ」
「結果として、膝が上に伸びてしまって、本来であれば膝をある程度固定して水平成分への力発揮をするために、前に倒れ込む形で重力を活用したいのに、膝を伸ばして身体を垂直に持ち上げるだけになってしまって、水平成分の力にならないんだ」

とりあえず、いまいちわからなかったが、話が進みそうだったのでエリカとエマは気にせず聞き続けた。

「ということで、ノルハムをできるようになることを目標にがんばろう!」
「今回は、ノルハムをテストとして使ったけど、ノルハムは強化のためのエキササイズとして使うことも可能だ!」

と言いながら、フジカルの手に突然、紙に印刷された論文が登場した。
論文を掲げながら、フジカルは続けた。

「そして、2017年の論文[AlAttar2017]ではトレーニングとして続けることで、ハムストリングの肉離れ予防にもなると示唆されている」

肉離れ、これもひとつの大きなテーマだ。それについては、また、おいおい、別の機会に詳しく触れていこうとフジカルは考えた。

「いまよりも速く走れるようになったうえで、走ることによる自損事故も防げるので、適切なトレーニングをすることは凄くメリットが大きいんだぞ!」

この世界では、おそらく、ハムストリングの肉離れを戦闘中に起こしてしまっている冒険者も多いに違いない、そんなことも少し考えていたフジカルであった。ただ、いまトレーニングを行っているエマは、過去にハムストリングの肉離れを起こしているわけではないので、この瞬間に深く掘り下げても仕方がない、そう思いながら、それ以上は肉離れについてその場では触れなかった。

「さて、次は走りを改善するための取り組みに入ろうか!」


======
参考文献
======

[AlAttar2017]
Al Attar, W. S. A., Soomro, N., Sinclair, P. J., Pappas, E., & Sanders, R. H. (2017). Effect of injury prevention programs that include the Nordic hamstring exercise on hamstring injury rates in soccer players: a systematic review and meta-analysis. Sports Medicine, 47, 907-916.
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...