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遠くへジャンプ!新人冒険者の薬草採取

SSC(Stretch Shortening Cycle)と腱の剛性

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「次は、軽めのプライオメトリクス的なトレーニングをしようか!」

プライオメトリクスもジャンプ能力を向上させるトレーニングのひとつとして一般的である。内容としては飛んだり跳ねたりといったエキササイズが多い。

「筋肉が引き伸ばされた状態から、一気に縮んだ状態へと変化させて、爆発的な動きを行うのがプライオメトリクスだ!」

筋肉が外的な力によって引き延ばされる状態がまずあり、そこから急激に筋肉を収縮させる動作を伴うエキササイズをプライオメトリクスと定義することが多い。1998年の書籍[Chu1998]では、"事前に筋肉を伸ばすことが伴い、SSC(Stretch Shortening Cycle)が実行される、素早く力強い動き"と定義している。

SSCの基本的なメカニズムは、筋紡錘(きんぼうすい / Muscle spindle)に速い伸長がかかると、それ以上伸ばされないように、筋肉が急激に収縮するというものだ。

要は、外部の力によって筋肉が引き延ばされつつ力発揮を行うエキセントリック収縮から、筋肉を縮めながら力発揮を行うコンセントリック収縮へと、素早く力強く一気に変化させるということだ。ジャンプやスキップなどの着地ときにエキセントリック収縮が発生する。

「プライオメトリクストレーニングを行う理由だが、ジャンプの能力に影響する要素として、結合組織の弾性力を使えるように筋の緊張を接地時に高めておくことができることと、力の伝達に関与する腱などの結合組織の硬さ、もしくは剛性がある。これらを高めることができるとされているのがプライオメトリクストレーニングだ!」

剛性はスティフネス(stiffness)と表現されることもある。2007年の論文[Burgess2007]では、腱の剛性とジャンプの高さと強い相関があるとしている。そのため、腱の剛性を高めることが期待できるトレーニングを行うことで、ジャンプの能力を高めたいというわけだ。

「要は、力を入れるタイミングと、アキレス腱などの腱の剛性を高めることをやりましょう、ということだ!」

「次もシンプルなエキササイズにするが、やるのは、片足ホップだ!」

そう言って、フジカルは、片足でその場で何度か跳ねて。

「片足で跳び続けるだけっすか?簡単っすねー」と言いながらパタヘネが真似をする。

その場での片足ホップは、拍子抜けするぐらいシンプルだ。やっていることは、その場で片足でポンポンと小さく跳ねているだけだ。他にも方法は色々あって、たとえば、片足なわとびも面白いかも知れない。

「次は、片足ホップで進むぞ!」

そう言ってフジカルは、片足でケンケンをしながら前へと進んだ。

「これも簡単っすねー。」と言いながらパタヘネは真似をする。

ここまで、基本的に非常にシンプルなトレーニングを中心に行って来た。
このシンプルなトレーニングをコツコツと続けるのを数ヶ月続けてた、その後が楽しみだ。


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参考文献
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[Chu1998]
Chu, Donald A. 1998. Jumping Into Plyometrics. Human Kinetics.

Donald Chuによる書籍では、Plyometircsの定義の原文は以下のようになっています。
a quick, powerful movement that involves pre-stretching the muscle and activating the stretch-shortening cycle.

[Burgess2007]
Burgess, K. E., Connick, M. J., Graham-Smith, P., & Pearson, S. J. (2007). Plyometric vs. isometric training influences on tendon properties and muscle output. The Journal of Strength & Conditioning Research, 21(3), 986-989.
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