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眠れぬ夜のホットミルク(前編)
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「掃除終わったよー」
「ほうか」
今日も何時のように、私はお婆ちゃんと食堂で会話していた。まだ10時。
心地良い陽射しが大変Goodである。
日光は鬱予防も出来るので、私は丁度良い天気の日は全力で陽を浴びに行く習性がある。
お客さんがくるまで2時間。
掃除も終わったし、どう過ごそうか…。
そんな事を考えていると、
白くて少し泥汚れのついた1台の軽トラが、ゆっくりと走ってきて、食堂の前でキキッと止まった。
「お客さんかな」
「こげん早くに誰だろうなぁ」
軽トラから出てきたのは、
森さんのお爺さんと、男の子だった。
『森さん』は、お婆ちゃんのお兄さんだ。
お婆ちゃんは元々は「森 米子」で、
結婚して「本条 米子」になった。
よく畑仕事のかえりに梅おにぎりを食べに来る常連さんなのでよく覚えてる。
年中肌は日に焼け、こんがりしている。
(今日は珍しく麦わら帽子かぶってるな~)
そして隣の男の子を私はちらりと見る。
初めて見る子だ。中学生くらいの背丈で、灰色のパーカーが体格に合わない様でだぼだぼ。
スマホを持っている手が、袖にちょこんと隠れている。
(サイズあってないんだろうな~)
お婆ちゃんが食堂から出て軽トラから出た2人に駆け寄る。
「兄さん、そん子は誰だ?」
お爺さんは男の子の背中を叩く。
「紹介しとこうと思ってなぁ。
本条さん、結子ちゃん、
こいつ娘夫婦から預かる事になった『秋也』だ。宜しくな。」
娘夫婦…という事は
私と秋也君は親戚に値するのだろう。
従兄弟の従兄弟…といった所だ。
パーカーの男の子…秋也君はこっちをジッと見たまま何も喋らない。
「ふぅん、あんたの娘は
なんでまたこんな田舎に預けたんだ?」
「まぁ離婚したかなんかで…」
(お婆ちゃん…!そーゆー事は本人の前で聞かない方がいいんじゃ…!)
そんな私のアイコンタクトにも気付かず、お婆ちゃんはまた質問をしだす。
「弟は?」
「あいつは弟びいきだったからなぁ…。手元に置いときたいんじゃろ」
お爺さんはハッハッハと笑う。
全然笑えないし、
本人の前で言っていい話じゃない…!
男の子は俯いてしまった。
私は急いで2人の間に割り込んだ
「おばーちゃんッ!折角だからこの子に稲荷様しょーかいしてくるよッ!」
「ほうか、気をつけてな」
「日が暮れるまでには帰ってこいよー」
2人の了承を得、私は男の子の手を引っ張った。
✴眠れぬ夜のホットミルク
(前編)
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