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異世界ライフは甘くない
事実は小説より奇なり
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事実は小説より奇なり何て言うけれど、全く持ってその通りで、この言葉を考えた人にはノーベル賞をあげたっていいと思う。
顔も名前も知らないその人に称賛の言葉を捧げながら、俺はぐるりと目を回し、辺りを見渡した。
煌びやかなシャンデリアがぶら下がる天井と、職人により施された繊細な彫刻。視界いっぱいに広がる豪華絢爛な建造物は、前世を含め海外旅行経験のない俺にとってはどれも目新しい。
そんな絵画の中でしか見ることができないような光景は、一人の男によって遮られる。
「モーヴ様!」
バタバタと足音を立てながら近づいてきたその男の名前は、エリオット・グレイ。代々俺の家に使える家系の一人息子で、物心ついた頃には同じ年の俺に付いていてくれていた頼りになる人物だ。
今だって、階段の最下段で逆さまに寝転んでいる俺に、真っ先に駆け寄ってくれたのだから本当に心強い。
「モーヴ様! 大丈夫ですか!」
エリオットに続き、騒動を聞きつけた使用人たちが次々に集まってくる。その顔には一様に不安が滲んでいた。
そりゃあそうだ。だって今の俺は、レイン伯爵家の一人息子、モーブ・レインなんだから。
前世の俺は、斎藤大輔。どこにでもいる普通のサラリーマン……っていうのは嘘。ちょっと見栄を張った。高校卒業と共に定職につかずふらふらと生活していた、しがないフリーターだ。時々ニートもしてた。
飲食店を中心にアルバイトをしていたのだが、年々膨らんでいく腹部のだらしなさに心を入れ替え、工事現場でアルバイトをすること数週間。落ちてきた鉄骨が胴体に突き刺さり死んだ。
享年23歳。随分と呆気ない死である。
恋人もおらず、家族とも疎遠気味だった俺の葬儀には一体どれほどの人が来てくれたのか、そもそも家族は俺の死を悔やんでくれたのか。気になることは湯水のように溢れるわけだが、俺は案外薄情なので、それはいったん置いておく。
いや、だってそりゃそうだろ。だってだってだってだって、これって。
「異世界転生じゃん!!」
そう、俺は転生した。
転生のきっかけは暴走トラックに轢かれるというのが相場だが、仕事中の不慮の事故でもできるらしい。というか、あれってマジなんだすげぇ!
何故、今の今まで前世の事を忘れてしまっていたのか、齢15にして漸く自分が転生者であることを思い出した。階段を踏み外し、衝撃を受けた拍子の出来事である。こっちは随分とテンプレ通りだが、そんなことはどうでもいい。
このでっかい屋敷! たくさんの使用人! 何より、この15年間の記憶が全てを告げている。
今世の俺は金持ちだ、と。
前世の実家は中間管理職の父親と専業主婦の母親、そして3つ下の妹という家族構成で、特別貧乏と言うわけではなかったが裕福でもなかった。高校卒業後1年間働きもせずに惰眠を貪った俺は、堪忍袋の緒が切れた父親に家を追い出され、19歳のときに一文無しになり、このときは随分と苦労をしたものだ。
アルバイトを始めてからは人間らしい生活もできるようになったが、労働ってだるいじゃん? 嫌じゃん?
すべてを放り出したくなる俺の悪い癖は一人暮らしを始めてからも健在で、時々無職の立派なニートになった時は、そこそこ生活には困ったわけよ。自業自得だけれども。
それが今世ではどうだ。
前世で住んでいた古びたアパートとは似ても似つかない、無尽蔵の財産がありそうなこの屋敷! 一人息子である俺は、何の苦労もなくこの大金を貰えるというわけだ。
そんな状況で残された家族の心配をできる程余裕のある大人ではなく、この恵まれた今世を噛みしめる方が最優先だった。
「やっば、やっば! 今世はぷーたろーできんじゃぁん!」
取り囲む使用人の存在などは忘れて、寝っ転がったまま万歳三唱をする俺を不可解な目で見下ろす視線など気にも留めなかったこの時の俺はまだ知らない。
異世界転生がどれほど恐ろしいのかを。
顔も名前も知らないその人に称賛の言葉を捧げながら、俺はぐるりと目を回し、辺りを見渡した。
煌びやかなシャンデリアがぶら下がる天井と、職人により施された繊細な彫刻。視界いっぱいに広がる豪華絢爛な建造物は、前世を含め海外旅行経験のない俺にとってはどれも目新しい。
そんな絵画の中でしか見ることができないような光景は、一人の男によって遮られる。
「モーヴ様!」
バタバタと足音を立てながら近づいてきたその男の名前は、エリオット・グレイ。代々俺の家に使える家系の一人息子で、物心ついた頃には同じ年の俺に付いていてくれていた頼りになる人物だ。
今だって、階段の最下段で逆さまに寝転んでいる俺に、真っ先に駆け寄ってくれたのだから本当に心強い。
「モーヴ様! 大丈夫ですか!」
エリオットに続き、騒動を聞きつけた使用人たちが次々に集まってくる。その顔には一様に不安が滲んでいた。
そりゃあそうだ。だって今の俺は、レイン伯爵家の一人息子、モーブ・レインなんだから。
前世の俺は、斎藤大輔。どこにでもいる普通のサラリーマン……っていうのは嘘。ちょっと見栄を張った。高校卒業と共に定職につかずふらふらと生活していた、しがないフリーターだ。時々ニートもしてた。
飲食店を中心にアルバイトをしていたのだが、年々膨らんでいく腹部のだらしなさに心を入れ替え、工事現場でアルバイトをすること数週間。落ちてきた鉄骨が胴体に突き刺さり死んだ。
享年23歳。随分と呆気ない死である。
恋人もおらず、家族とも疎遠気味だった俺の葬儀には一体どれほどの人が来てくれたのか、そもそも家族は俺の死を悔やんでくれたのか。気になることは湯水のように溢れるわけだが、俺は案外薄情なので、それはいったん置いておく。
いや、だってそりゃそうだろ。だってだってだってだって、これって。
「異世界転生じゃん!!」
そう、俺は転生した。
転生のきっかけは暴走トラックに轢かれるというのが相場だが、仕事中の不慮の事故でもできるらしい。というか、あれってマジなんだすげぇ!
何故、今の今まで前世の事を忘れてしまっていたのか、齢15にして漸く自分が転生者であることを思い出した。階段を踏み外し、衝撃を受けた拍子の出来事である。こっちは随分とテンプレ通りだが、そんなことはどうでもいい。
このでっかい屋敷! たくさんの使用人! 何より、この15年間の記憶が全てを告げている。
今世の俺は金持ちだ、と。
前世の実家は中間管理職の父親と専業主婦の母親、そして3つ下の妹という家族構成で、特別貧乏と言うわけではなかったが裕福でもなかった。高校卒業後1年間働きもせずに惰眠を貪った俺は、堪忍袋の緒が切れた父親に家を追い出され、19歳のときに一文無しになり、このときは随分と苦労をしたものだ。
アルバイトを始めてからは人間らしい生活もできるようになったが、労働ってだるいじゃん? 嫌じゃん?
すべてを放り出したくなる俺の悪い癖は一人暮らしを始めてからも健在で、時々無職の立派なニートになった時は、そこそこ生活には困ったわけよ。自業自得だけれども。
それが今世ではどうだ。
前世で住んでいた古びたアパートとは似ても似つかない、無尽蔵の財産がありそうなこの屋敷! 一人息子である俺は、何の苦労もなくこの大金を貰えるというわけだ。
そんな状況で残された家族の心配をできる程余裕のある大人ではなく、この恵まれた今世を噛みしめる方が最優先だった。
「やっば、やっば! 今世はぷーたろーできんじゃぁん!」
取り囲む使用人の存在などは忘れて、寝っ転がったまま万歳三唱をする俺を不可解な目で見下ろす視線など気にも留めなかったこの時の俺はまだ知らない。
異世界転生がどれほど恐ろしいのかを。
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