R18BLゲームの序盤で処刑されるモブキャラなのに何故か攻略対象に狙われています。

白井ゆき

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異世界ライフは甘くない

俺はミリたそじゃない!(前編)

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 始まった。ストーリーの進行だ。

 この後、ヴィクターに呼び出されたミリたそは仕置きを受けるのだ。

 誰が見ても怒り心頭なヴィクターの姿に恐れをなしたのか、サーブの腕がようやく緩まった。チャンスだと言わんばかりに抜け出し、何事もなかったように姿勢を正す。
 攻略対象に目をつけられたくないので。

「私の授業をなんだと思っている!」

 教室を震わせる怒声に肩が震えたのはご愛嬌。

 温室育ちのモーヴ・レインは怒鳴られたことはないので、おおよそ20年ぶりの怒られなのだ。大目に見てほしい。
 ゲームではボイスなしのセリフだから聞き馴染みもないし。
 この怒声を直接浴びているミリたそが可哀想だが、俺にできることはない。無念。

 目を瞑り手を合わせる。

「ふざけているのか! モーヴ・レイン!」

 あぁ、名指しまでされて……って、ん? 俺……?

 閉じていた目を開けると、俺を指差しわなわなと体を震わせるヴィクターがいた。切れ長の碧い目を吊り上げた姿は般若のように恐ろしくて。生まれたての小鹿よろしくカタカタと震える自分の体をそっと抱きしめる。

 あ、俺の人生終わったかも。




 ゲームでは、授業後に呼び出されていたはずだが、一体全体何が起こったのか、授業を中断して職員室に呼び出された。
 ちなみに諸悪の根源であるサーブは呼び出されていない。何故。

 お前も来いと視線で訴えたのだが、それはそれはとてもいい笑顔で親指を立てられただけだったので、俺が無事生還した暁には、あの生意気な指をへし折ってやろうと思う。

「あのレイン家の嫡男であるお前が、これ程愚かとは思わなかったな」

 座り心地のよさそうな椅子にふんぞり返るメガネを睨みつける。
 どちらかと言えば俺は被害者だ。結果的に授業を妨害してしまったとはいえ、呼び出すべきは俺ではなくサーブだろう。2人呼び出すならまだ分かる。何故俺だけなんだ!

「何だその生意気な目は」
「……すみませーん」
「もしかして、今のは謝罪のつもりか? ……はっ、レイン家も哀れなものだな。先人たちが築き上げてきた功績を一人の馬鹿息子に壊されるのだから」

 鼻で笑うその姿は悪役そのものだ。そして、高2のときの頭でっかちな担任そっくりで、あの日の苛立ちまで思い起こされる。

 あぁーやだやだ、こういうヤツは格下には正論をぶつけるが格上にはごまをするんだよ。俺は知っている。

 ゲーム内でミリたそばかりを呼び出して、公爵家の長男であるダリウスには一度も注意をしなかったことがその証拠だ。
 この長いものに巻かれるカスに屈するわけにはいかないのだ。

 覚悟を込めた目で見れば、メガネの奥の目がスッと細まった。

「何だその目は」
「何でもないです」
「何でもないという表情じゃないだろう」
「……」
「はぁー、全く反省の色が見えないな。……仕方ない、そこに手を付け」
「……は?」

 ヴィクターが顎で指したのは机だ。机に手を付けと言っている。ヴィクターの性格を表す様に整理整頓された綺麗な机の上、見覚えのおあるシチュエーションに、震える足で後ずさった。

 俺は、このセリフに聞き覚えがある。それは、もう。大変。非常に。

「……いやいやいやいや、は?」
「耳まで悪いのか? 机に手を付けと言っている。早くしろ」

 片眉を上げたヴィクターに冷たいものが背中を伝った。

 一言一句違わず、ゲームのセリフを言っている。ミリたそに言うセリフを、だ。
 そして、この後ヴィクターは、ミリたそに反省を促すため、という名目で仕置きをするのだ。仕置き――スパンキングスチル獲得のイベントである。

「え、え、待って、俺? 違くね? 俺モブだけど? ……は?」
「態度だけでなく言葉遣いもまるでなっていない。一体伯爵家はお前にどんな躾をしているんだ」
「いやいやいや、今伯爵家とかどーでもいいから。え? ガチで言ってる?」
「おい」

 地を這うような低音に背筋が凍る。
 ガチだ。この男、全てガチである。

 なんの間違いか、ミリたそがこなすはずだったイベントが俺に回ってきている。

 よりによってスパンキング。いや、ケツの安全が保証されているだけマシか? いやいや、そんなわけない。
 父ちゃんにも打たれたことのない俺のプリティーなお尻を変態クソメガネの毒牙に晒すわけにはいかないだろう。

「待って、ごめんごめんマジでごめん! 謝るからそれだけは許し――ぎゃっ!」

 後退りながら必死に謝る俺の謝罪に耳を傾けず、ヴィクター立てた人差し指を宙でくるりと回した途端、どこからともなく現れた光の線が俺の両手首に巻き付き、机に張り付いた。

「あ、待て卑怯! 魔法とかズルじゃんそれ!」
「……お前は黙るということを知らないのか?」
「――ぁあ゙!?」

 風を切る音のあと、乾いた音ともに鋭い痛みがお尻に広がる。
 じんじんとした痺れに体をわなわなと震わせて肩越しに振り向けば、ヴィクターが表情を変えずに手を振り上げていた。その視線は俺の尻に注がれている。

 コイツ本当に叩きやがった!
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