R18BLゲームの序盤で処刑されるモブキャラなのに何故か攻略対象に狙われています。

白井ゆき

文字の大きさ
26 / 63
イベント阻止の影響

感謝感激雨霰

しおりを挟む
 澄み切った冷たい空気。雲一つない青空。頬を照らす柔らかな春の陽射し。

 はいそうです新しい朝です希望の朝でもあります喜びに胸を開いて大空を仰いでいます。

 こんなに気持ちよく目覚めた朝は初めてです。何て言ったって今日はミリたそとの初登校なので。朝なんて大嫌いだし学校何てクソ食らえだと思っていた俺が嬉々として登校する日が来るなんて。
 どれもこれも全ては俺の友達――そう、ミリたそのおかげです。俺の友達です。素直で可愛くて時には体を張っちゃうかっこよさまで持ち合わせた最高の友達です。
 昨日の突然の体調不良が原因で学校を休ませようとするエリオットの説得に30分もかかったのは想定外だったけど間に合ったのでオールオッケーです。ミリたそとの楽しい学生生活を送って元気なことを証明しようと思います。

 あーやばい緊張してきた。寝癖あったらどうしよう。エリオットに限ってそんなミスはないだろうけど、どうも落ち着かない。
 なぜこの世界にはスマホがないのか。カメラで身だしなみを整える待ち合わせ中のカップルの気持ちが痛いほど分かる。いつも爆破を祈ってごめん。
 スマホの画面なんてふいに現実を見せてくる呪具だと思ってたけど今は恋しいよ。いつもひび割れを祈ってごめん。
 この世に存在しない文明が作り上げた奇跡の電子機器を強請っても仕方ないから明日からは鏡を持ち歩こうと思う。

 随分と心配性になっていた従者の顔を思い浮かべ、用意してもらおうと考えていたとき。

 開いた寮棟の扉からピンク色の頭が顔を出す。
 制服をきっちり着こなし、肩にかけたカバンを両手で握るミリたそは、俺を見つけた瞬間パッと花が咲いたように笑顔になり駆け寄ってきた。

「モーヴ君!」
「は、はわわ……っ」

 か、可愛い……!

 制作者が作った不特定多数に向ける平面的な笑顔でも、クラスメイトに向ける愛想笑いでもなく、正真正銘俺に向けた俺だけのための笑顔だ。
 そんな笑顔から1日を始めることができるなんて俺はなんて幸せ者なんだろう。

「おはようございます」
「お、おおおおおはよう」

 「なぁに、それ」と口元を隠してくすくす笑う。

 えーミリたそは笑うとき口隠す系なんだ、可愛いー……。挙動不審な俺にも引かずにいてくれるなんて優しー……。

「もしかしてお待たせしてしまいましたか?」
「全っ然! さっき! 来ました!」
「本当ですか……? ならよかったです。さ、行きましょう。遅刻してしまいます」
「はい!」

 歩き出したミリたその2歩後ろへ恐る恐る立てば、首だけで振り返ったミリたそがぴと、と隣に移動する。そのまま斜め上の俺を見上げ、にこっと口角を上げた。

「モーヴ君は魔法って使えますか?」
「ま、魔法っ? あ、いやー、からっきしで……」
「そうなんだ! 僕も全然で……仲間みたいで嬉しい……。ほら、周りの人たちは皆小さい頃から教育を受けてて、元々魔法を使える人が多いでしょう? だから、ずっと不安だったんです」
「あ、安心して! 俺、本当に1ミリも使えないから!」
「ありがとう」

 一瞬きょとんと眼を丸めたミリたそは、ふっと笑って再び前を見る。
 安心させたい一心で無能アピールをしてしまった気もするがまぁいい。ここで見栄張って本番で失敗する方がダサいし。そんなことよりも、だ。

 プレイヤーの皆さんご存じですか。ミリたそは小柄なので、俺たちのような平均に届いているのか微妙な身長の男相手でも、自然に上目遣いになるんですよ。

 時々こちらを見るミリたその、大きい目がさらに強調される角度はゲームでは見ることのできない現実ならではのものだ。

 ミリたそを小柄に作ってくれてありがとう。
 体格差を活かしたアレソレのためだろうけど、おかげ救われた命がここにあります。

「そういえば、今日提出の魔法理論の課題やりましたか?」
「……え、待って何それ」
「先週出された課題です。最後の問題が分からなかったので聞こうかなって思ったんですけど……」

 足を止めて顔を青くする俺を、ミリたそが不安げに見上げる。

 推しとの初登校に浮かれきってそろそろ成層圏をぶち破るところだった俺の気分は谷底に落とされる。
 なんせ俺の記憶違いでなければ、魔法理論の担当教員は、1週間前俺の尻を叩いて悦に浸っていた変態クソメガネことヴィクターなのだ。

 肩にかけていたカバンを開き、中を漁る。目的のものはカバンの底、そこで教科書たちに押しつぶされ、見るも無残な姿で見つかった。
 ……もちろん、白紙の状態で。

「だ、大丈夫ですよ! 提出は午後一の授業ですし、僕のでよければ見せますから!」

 ぐしゃぐしゃのプリントを握りしめ絶望に震える俺の背中をミリたそがそっと支える。その優しさに涙を浮かべた俺は、心の中で盛大な感謝を述べる。

 ミリたそを優しい子にしてくれてありがとう、と。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

転生したが陰から推し同士の絡みを「バレず」に見たい

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

処理中です...