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イベント阻止の影響
理性的で平和的な解決方法
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運命共同体だと思ってたサーブに裏切られた俺をニヤけ面で引きずり回した赤メッシュに髪を持たれたままの俺は、1つの教室に投げ込まれた。
ぶん、と勢いづけて放り込まれた瞬間、というか道中からぶちぶちと髪の毛が抜ける音がしたが、まぁいい。いや、よくないけど。今世は両親共に頭髪が豊かだったからきっとまた生える。……髪は。
地面に這いつくばる俺を見下ろす3人の生徒。そのうち1人は俺が金的食らわせてしまった男だ。
目には目を。歯には歯を。
かつて義務教育で習ったそんな一節が脳裏を過り、ひゅっと息を呑む。
これはなりふり構っちゃいられない。男たるもの股間より大事なものはないのだ。
覚悟を決めた俺は、教室のカギを閉め、ニタニタと背筋が凍る笑みを浮かべる3人の足元に跪き、額を地面にこすりつけた。
「もっ、申し訳ございませんでした!」
ジャパニーズ謝罪スタイル、土下座だ。
この世界で通用すかどうかはさておき、この姿勢から溢れ出す誠意は万国共通だと思う。そうじゃないと困る。これがダメなら打つ手なしだ。
視界が制限された中、神経を尖らせてあたりの様子を窺う。しばらくして聞こえたのは衣擦れの音。誰かが近づく気配と前髪を掴まれる感覚に、またかと息を呑む。
「……で?」
髪を掴んでいたのは赤メッシュではなく、俺が股間を蹴り上げた男だった。ロンと呼ばれていた気がする。
俺のせいか元々そういう顔立ちなのか、おっかない顔に見られているだけで心拍数が上がっていく。そんな俺の心情などつゆ知らず、前髪を掴み上げたソイツは、額が触れ合いそうな距離でガンを飛ばしてくるのだ。
「あ、あの、ここは1つ示談で手を打ちませんか? ほら、暴力沙汰は皆さんも避けたいでしょうし、ねっ? ブランシュールの生徒らしく理性的に……ねっ?」
場を和ませようと、必死で愛想笑いを張り付ける。
正直この手が通用するとは思っていない。時間を稼いで、偶然通りがかった誰かに助けを呼ぶ算段だ。この際、股間を殴られる以外ならなんだって我慢する。
「示談、な。人の股間潰しておいて、てめぇは殴られたくねぇわけだ」
「つ、潰れたんですか?」
「潰れてねぇわ!」
「すんませんっ!」
ついついロンの股間を凝視する。実際に見ないことには何とも言えないが、それらしき膨らみがあるということは無事なんだろう。
「おい、どこ見てんだてめぇ」
「ロンさんのロンさんを見てました!」
「人のチンコジロジロ見てんじゃねぇぞ!」
「すみません! 強がりだったらどうしようかと思いまして……!」
「なっ、てめぇ……! ……おい、歯ぁ食いしばれ」
そう言って握り締めた拳を構えるロンに「ひぃっ」と情けない声が洩れた。
拳だけでもいたいというのに、その指にはゴツイ指輪が嵌められている。あんなもので殴られたら一溜りもない。
「やだやだ待てって! 穏便に! 暴力反対! 殴らないで!」
「先に手を出したのはてめぇだろうが!」
「だから謝ってるじゃん! ごめんって!」
「こっちが下手に出りゃ調子乗りやがって……!」
下手だと? 全然上から刺してきているくせに何を言うか。
ロンから離れようと髪を握る手を引っ張る俺と、そんな俺に狙いを定めるロン。流血必須な争いに終止符を打ったのは、意外にも赤メッシュだった。
「まぁまぁ、落ち着けよ。顔殴ったら萎えるだろ。コイツの言う通り、穏便にいこうぜ」
そう言って構えたロンの腕を赤メッシュが止めれば、舌打ちを溢しながらも拳を下ろしてくれた。
もしかすると、1番おっかない顔をしたこのデルバートこそが1番の常識人かもしれない。勝手にボス猿かと思っていたが、強面仲介人だったのか。
髪を解放してもらい、デルバートへ体を向ける。その背後に立っているはずの、その2の姿が見当たらず辺りを見渡そうとしたが、デルバートに「モーヴ・レイン」と名前を呼ばれた。
「お前、痛ぇのは嫌なんだろ?」
「嫌です!」
「でもよぉ、手出したんだから相応の落とし前はつける必要があるよな?」
「はい! 痛いこと以外ならなんでもできます!」
「いい返事だな」
姿勢を正して敵意がないことをアピールするように大きく頷く俺に、デルバートは目を細めた。
こういった場合の落とし前は金銭請求が相場だが、レイン家はいくらまでなら出せるのだろう。そのあたりの記憶はないし、そもそも相場も分からないわけだが、まぁ何とかなるだろう。伯爵家だし。たぶんいける。
違法な金額を請求されたときには父さんに揉み消してもらおう。
もしものときの打開策まで考えたところで、ふと疑問が生じる。
「そういえば、何故名前を……」
自慢じゃないが、俺はどこに出しても恥ずかしくない立派なモブだ。顔も身長も平均的で特徴がない。
たった1日で名前を突き止めるなんてよっぽど骨の折れる作業だと思ったのだが、デルバートはあっけらかんとした様子で「あぁ」と頷いた。
「そりゃ調べたからな。ある程度のことは把握してるぜ。例えば」
そこで一度言葉を切ったデルバートは不意に俺に手を伸ばし、顎下をするりと撫でた。
「入学早々、授業中にでけぇ声で喘いでたこととか、な」
「……えっ?」
和解の予感に上がっていた口角が固まる。背中に冷たいものが流れ、嫌な予感に呼吸が浅くなった。
そんな俺を尻目にデルバートの手は首を伝い、第一ボタンまで閉められたシャツの下、そこを暴く様に指を引っかける。
「落とし前はつけ方、分かるだろ?」
逃げないと。
デルバートの手を払いのけ立ち上がった瞬間、俺の足元に突然魔法陣が展開される。
何だこれと一瞬でも気を向けてしまったのが運の尽き。魔法陣が発した光に目を瞑ったが最後、体から力が抜け落ち、その場に倒れこんだ。俺の体を受け止め「暴れんなよ」と呟くデルバートの口元が歪むのを見て、自分の認識の甘さを痛感する。
エロゲ世界の報復なんてエロ一択に決まっているだろう。
ぶん、と勢いづけて放り込まれた瞬間、というか道中からぶちぶちと髪の毛が抜ける音がしたが、まぁいい。いや、よくないけど。今世は両親共に頭髪が豊かだったからきっとまた生える。……髪は。
地面に這いつくばる俺を見下ろす3人の生徒。そのうち1人は俺が金的食らわせてしまった男だ。
目には目を。歯には歯を。
かつて義務教育で習ったそんな一節が脳裏を過り、ひゅっと息を呑む。
これはなりふり構っちゃいられない。男たるもの股間より大事なものはないのだ。
覚悟を決めた俺は、教室のカギを閉め、ニタニタと背筋が凍る笑みを浮かべる3人の足元に跪き、額を地面にこすりつけた。
「もっ、申し訳ございませんでした!」
ジャパニーズ謝罪スタイル、土下座だ。
この世界で通用すかどうかはさておき、この姿勢から溢れ出す誠意は万国共通だと思う。そうじゃないと困る。これがダメなら打つ手なしだ。
視界が制限された中、神経を尖らせてあたりの様子を窺う。しばらくして聞こえたのは衣擦れの音。誰かが近づく気配と前髪を掴まれる感覚に、またかと息を呑む。
「……で?」
髪を掴んでいたのは赤メッシュではなく、俺が股間を蹴り上げた男だった。ロンと呼ばれていた気がする。
俺のせいか元々そういう顔立ちなのか、おっかない顔に見られているだけで心拍数が上がっていく。そんな俺の心情などつゆ知らず、前髪を掴み上げたソイツは、額が触れ合いそうな距離でガンを飛ばしてくるのだ。
「あ、あの、ここは1つ示談で手を打ちませんか? ほら、暴力沙汰は皆さんも避けたいでしょうし、ねっ? ブランシュールの生徒らしく理性的に……ねっ?」
場を和ませようと、必死で愛想笑いを張り付ける。
正直この手が通用するとは思っていない。時間を稼いで、偶然通りがかった誰かに助けを呼ぶ算段だ。この際、股間を殴られる以外ならなんだって我慢する。
「示談、な。人の股間潰しておいて、てめぇは殴られたくねぇわけだ」
「つ、潰れたんですか?」
「潰れてねぇわ!」
「すんませんっ!」
ついついロンの股間を凝視する。実際に見ないことには何とも言えないが、それらしき膨らみがあるということは無事なんだろう。
「おい、どこ見てんだてめぇ」
「ロンさんのロンさんを見てました!」
「人のチンコジロジロ見てんじゃねぇぞ!」
「すみません! 強がりだったらどうしようかと思いまして……!」
「なっ、てめぇ……! ……おい、歯ぁ食いしばれ」
そう言って握り締めた拳を構えるロンに「ひぃっ」と情けない声が洩れた。
拳だけでもいたいというのに、その指にはゴツイ指輪が嵌められている。あんなもので殴られたら一溜りもない。
「やだやだ待てって! 穏便に! 暴力反対! 殴らないで!」
「先に手を出したのはてめぇだろうが!」
「だから謝ってるじゃん! ごめんって!」
「こっちが下手に出りゃ調子乗りやがって……!」
下手だと? 全然上から刺してきているくせに何を言うか。
ロンから離れようと髪を握る手を引っ張る俺と、そんな俺に狙いを定めるロン。流血必須な争いに終止符を打ったのは、意外にも赤メッシュだった。
「まぁまぁ、落ち着けよ。顔殴ったら萎えるだろ。コイツの言う通り、穏便にいこうぜ」
そう言って構えたロンの腕を赤メッシュが止めれば、舌打ちを溢しながらも拳を下ろしてくれた。
もしかすると、1番おっかない顔をしたこのデルバートこそが1番の常識人かもしれない。勝手にボス猿かと思っていたが、強面仲介人だったのか。
髪を解放してもらい、デルバートへ体を向ける。その背後に立っているはずの、その2の姿が見当たらず辺りを見渡そうとしたが、デルバートに「モーヴ・レイン」と名前を呼ばれた。
「お前、痛ぇのは嫌なんだろ?」
「嫌です!」
「でもよぉ、手出したんだから相応の落とし前はつける必要があるよな?」
「はい! 痛いこと以外ならなんでもできます!」
「いい返事だな」
姿勢を正して敵意がないことをアピールするように大きく頷く俺に、デルバートは目を細めた。
こういった場合の落とし前は金銭請求が相場だが、レイン家はいくらまでなら出せるのだろう。そのあたりの記憶はないし、そもそも相場も分からないわけだが、まぁ何とかなるだろう。伯爵家だし。たぶんいける。
違法な金額を請求されたときには父さんに揉み消してもらおう。
もしものときの打開策まで考えたところで、ふと疑問が生じる。
「そういえば、何故名前を……」
自慢じゃないが、俺はどこに出しても恥ずかしくない立派なモブだ。顔も身長も平均的で特徴がない。
たった1日で名前を突き止めるなんてよっぽど骨の折れる作業だと思ったのだが、デルバートはあっけらかんとした様子で「あぁ」と頷いた。
「そりゃ調べたからな。ある程度のことは把握してるぜ。例えば」
そこで一度言葉を切ったデルバートは不意に俺に手を伸ばし、顎下をするりと撫でた。
「入学早々、授業中にでけぇ声で喘いでたこととか、な」
「……えっ?」
和解の予感に上がっていた口角が固まる。背中に冷たいものが流れ、嫌な予感に呼吸が浅くなった。
そんな俺を尻目にデルバートの手は首を伝い、第一ボタンまで閉められたシャツの下、そこを暴く様に指を引っかける。
「落とし前はつけ方、分かるだろ?」
逃げないと。
デルバートの手を払いのけ立ち上がった瞬間、俺の足元に突然魔法陣が展開される。
何だこれと一瞬でも気を向けてしまったのが運の尽き。魔法陣が発した光に目を瞑ったが最後、体から力が抜け落ち、その場に倒れこんだ。俺の体を受け止め「暴れんなよ」と呟くデルバートの口元が歪むのを見て、自分の認識の甘さを痛感する。
エロゲ世界の報復なんてエロ一択に決まっているだろう。
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