媚薬売り~感度ビクビク、百倍、千倍、マンバイ、イクイグ~ R18作品

木全伸治

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灰色のネズミ

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三尾だけでは金にならなかったかもしれないが、そこに女装っ子や髪を自在に操る首輪メイド、軽業師などが揃うと、なかなか人目を引く見世物一座になった。
昼間、金を稼ぎ、その金で宿を取り、一晩ゆっくり休むことにした。平和な旅で、王都に近づいた。いずれ戻ってくることもあるとは思っていたが、こうも早く戻って来ることになるとは思っていなかった。売春街の皆は元気だろうか。私が来るまでは、性病などで不衛生な場所だった。娼婦は大切な商品のはずだが、大切に扱わない宿も多かった。サキュバスがいてバンパイヤが仕切っていた宿は高級店で奇麗だったが、私が店を構えるまであそこぐらいしか清潔と言える店はなかったと思う。私がいなくなってすぐ環境が悪くなるとは思えないが、私の商品を贔屓にしてくれた売春宿は多い。どうしても、その後が気になる。うまく九尾を退治したら、この国の危機を救ったという恩を王妃に着せてあの辺りの保護を依頼してみようかとも思う。売春宿を潰して、娼婦を自由にとまでは言わない。せめて毎日身体を石鹸で洗う程度の衛生観念を守ってもらうだけでも、随分と違う。ひどい宿では、お嬢を休ませずに客を取らせる店もあった。私とバンパイヤが目を光らせるようになってからは、そんなことはさせなかったが。再び、私が王都に店を構えることはできないだろうが、あの王妃なら、頼めば売春街に目を光らせるくらいやってくれるだろう。
そんなことを考えなら、月明かりに照らされた宿の屋根に風の魔法でふわりと降り立つ。
そこには無数の猫たちがいて、その中心には二股のクロがいた。
「どう? 猫たちから新しい情報はあった」
「それが、国中のネズミが消えて、どこかに集っているらしいと」
クロが私に教えてくれる。
「ネズミが集まってる? ま、私が王都に近付けば、何か仕掛けてくるとは思ったけど、待ち構えているのかしら。もしかしたら、私が王都に辿り着いたタイミングで、そのネズミたちが一斉に王都を襲い、疫病などをばらまき、魔女の私が王都に帰って来たから災厄が起きたと、すべて私のせいにするつもりかもね」
灰色の考えそうなことが容易に想像できる。弟子のサバトを潰した私に、それぐらいの嫌がらせは平気でするだろう。
「こちらも、できるだけ国中の猫を集めて。ネズミの群れが王都を襲うとしたら、こちらも、数で防ぎましょう」
ネズミは小さく、チョロチョロ動き回るから厄介だ。数で対応するのが妥当だろう。
「でしたら、ご主人様。うまくネズミどもを駆逐できた際のご褒美をこの子たちに」
クロは集まっている猫たちを見渡した。
「ええ、いいわよ。海から竜巻で大量の魚を運んでくるから、それでいい」
「はい、お願いします」
私の言葉が理解できたのか、猫たちはゴロゴロと喉を鳴らして、私にすり寄ると、ネズミを探しに夜の闇に消えていった。
「あ、それから、御主人さま、こちらの二匹が、尻尾が二つになりかけているようで」
クロのそばに、三毛と茶トラが残っていた。確かに、普通の猫には感じない魔力を感じた。
「そう、じゃ、この子たちも近いうちには話せるようになるのね」
「はい」
クロは仲間が増えるのがうれしそうに笑い、私もその二匹の頭を優しく撫でた。確かに、使い魔として呼んだ時によく見かける二匹だった。私が撫でると、二匹は自分の使命を分かっていますという顔をして、ネズミを追って闇に消えた。
竜巻を起こす魔法は知っているし、魚を引き寄せる匂いも知っている。媚薬づくりが得意になる前に、作物を獣から守りたい、豊作にして欲しい、豊漁にして欲しいなど、魔女の秘術をあてにされて人の願いのあれこれを私は聞いていた。そういう願いを無視すれば、力があるくせに何もしてくれないのには、なにか裏があると勘ぐられるからで、私は人々から嫌われないように魔女の秘術でできるだけのことはした。その中で薬作り、媚薬売りがもっとも人々に受けたから媚薬作りに精を出した。
だが、灰色が得意だったのは、人々に恐怖を与える疫病や呪いであり、当然、私のように人の街に住めるわけがなかった。人々から忌み嫌われたのは自業自得だと思うが、王都に店まで持ってしまった私に嫉妬した理由もなんとなく分かる。魔女で善人と呼べたのは白だけだったろう。私は人々から嫌われないようにできる範囲で人々の願いを聞いていたが、白は、困っている人を見ると、無理してでも助けようとした。魔女ではなく聖女になりたかったのかもしれない。とにかく、今、私は灰色と敵対しているし、白の残した弟子は私の味方になった。動向がよく分からないのは九尾だけだったが、やることは決まっている。お仕置きとして、生きたまま捕らえて九尾を見世物として人々にさらしてやるのもいい。
決戦が近いと私は感じていた。


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