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賢い触手の使い方

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さすが勇者である。俺の無数にうごめく触手を警戒して、充分に間合いを取って、うかつに仕掛けてはこない。槍使いのように足を掴んで吊るそうとしたが、そうやって足を狙う触手も、注意深くにらんでいる。同じ手は使えないようだ。これまでの三人は頭の上とか足元とか、奇襲的な攻撃で捕らえたが、勇者は、聖剣を抜き神経質そうに警戒し、俺の触手のすべてを睨んでいた。彼女の握る剣から嫌な感じがした。
だが、数で攻めれば何とかなるかと思い、俺は触手を伸ばしたが、その触手を勇者の剣が斬る。即再生できない。勇者が持っているから聖剣に違いないのだろうが、本当になにか特別な力を持っていそうだ。勇者自身をすごく怖いとは感じないが、身につけている武具がやばいと感じる。ゲームと同じで、何か底上げされているのかもしれない。
とりあえず、触手を天井や壁や床に這わせて、部屋を俺の触手で満たし続けた。槍使いの身体の上も俺の触手が通過したが、彼女は嫌がらず、部屋を満たす触手たちを見て笑っていた。
「はは、すごいビクビクしてる、こんなの初めて・・・」
その姿に勇者は、憐れむような視線を向けてから、俺を睨んだ。
「貴様、彼女を元に戻せ!」
「いやいや、俺は触手の楽しさを伝えただけだって、目覚めたってやつじゃないか?」
「なに?」
「どうせ、武道一本で、今まだ男を知らずにいたから、その反動で、呆けてるだけじゃないのか」
適当な俺の推測だったが、床を這う俺の触手の一本を自分でつかんで自分で咥え込んでいる様は、いままで男を知らなかった反動にも見えた。
とにかく、俺は彼女の肉体に大きな外傷はつけてはいなかった。触手で叩いて体力を奪ったが、骨を折るような無粋な攻撃はしていない。男を知らなそうな肉穴に性的な快楽を伝えただけで、その肌に大きな傷は一つもない。
むしろ、俺の方が、何本も触手を槍で斬られていた。再生するからと言って、いい気はしない。ふと、俺は床の上でのたうつそれに気づいた。槍使いに切り落とされたたくさんの俺の触手の一部が、俺から切り離されても蛇のような状態で生きていた。すごい生命力だ。だが、それだけではない、その切れ端に触れると反射的にくるんと丸まった。単純な反応だが、触られたら丸くなるのは、いい。こいつは使えると。俺は床に散らばって動いている俺の触手の分身を見て、その触手の切れ端を拾い上げて、ブンと勇者に向かって放った。地面に落ちている石を投げる以上の効果があった。
それは勇者にぶつかると、グルンと彼女に巻き付こうとした。槍使いは槍の達人だったが、勇者は剣の達人というわけではないようだ。一応、飛んでくる触手を聖剣で何本か叩き落とすが、完ぺきではない。剣を持つ腕に巻き付かれたり、足に絡みつかれたりして、動きが鈍る。床でうごめいていた、俺の触手たちをすべて投げつけると、俺の触手たちに巻き付かれ、縄でぐるぐるにされたように勇者がバランスを崩してふらついた、そのすきを逃さず、今度は切られていない俺の本体のありったけの触手を伸ばして、勇者を抱きしめた。
触手の切れ端で動きが鈍り、俺の無数の触手が四方から襲う。
「ひっ」
勇者は、焦ったが、俺の触手の切れ端が巻き付き、動きの鈍った勇者を拘束するのは容易だった。
力づくで強引に触手の束縛から逃げようとするが、切れ端でもしなやかで軟らかい俺の触手たちは、勇者の力を受け流すようにビヨーンと伸びるだけで、ちぎれも離れもせず、勇者にしっかりと巻き付いた。が、勇者の鎧が邪魔だった。槍使いの甲冑みたいに引きはがしたいが、神の加護を得ているらしい勇者の鎧は、いかにチートな触手とはいえ、壊せそうにない。ぬめぬめと鎧の上を這うだけで、その地肌に俺の粘液を染み込ませる隙間がなかった。

どうすればと、悩みつつ、触手で勇者を抱きしめ続ける。とにかく、勇者の鎧は頑強でひん剥いて肌に粘液をすり込めない。それなら口からと思ったが、勇者は俺の意図を読んだのか、ぐっと歯をかみしめるように口を塞いでいた。
触手で、ぐりぐりと口をこじ開けようとするが、勇者は死に物狂いで拒んだ、
「あは、ははは・・・だから、お前は、もっと剣の鍛錬をした方がいいって言っただろ」
俺に捕まった勇者を槍使いが笑ってみていた。
「いくらなんでも斬れる聖剣でも、使い手が未熟じゃもったいないって・・・」
なるほど、もし勇者が聖剣で素早い剣さばきができていたら、俺の触手をすべて斬られ、聖なる力で再生を押さえられて俺は、触手のない丸坊主にされていたかもしれなわけだ。
おれは、必死で口を閉ざして抵抗する勇者に見せつけるように槍使いに触手をからませる。もう抵抗はない。逆に、俺の触手に絞めつけられるのを喜んでいた。
「あ、ああ、も、もっと、きつく、きつく、あ、そ、そこ、ひ、ひいい・・・」
粘液まみれになりながら喜ぶ姿を勇者に見せつける。
「どうだい。あんたも、お仲間と同じように俺の触手を楽しみな」
「くっ・・・」
勇者は俺を睨んだが、無数の触手に抱きしめられて、睨むのが精一杯だった。しかも、いくら口を閉ざしても顔とか、肌の露出している部分はある。勇者の頬が少し赤くなっていた。
「や、やめろ、貴様、こんなことして,タダで済むとおもってるのか」
「あぅ、う、太いのが、中に、す、すごひぃ、はぁう、ひや、ぁぁ・・・」
必死にあらがう勇者の声と俺の触手を膣にぶち込まれてもだえる槍使いの卑猥な声が神殿に響いていた。
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