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勇者尋問

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伯爵は、「今日はたくさん働いたからもう休む」と言って、勇者たちの尋問を俺たちにませて自分は魔王城の客間に引きこもった。俺たちは捕縛した勇者たちの尋問を魔王城の一室で始めようとしていた。
その部屋には俺の他に吸血鬼の姫様と王女様と黒騎士がいた。いま、伯爵についてきたが出番のなかった者たちが人間どもに荒らされた魔王城の片づけを行っていた。純金製の調度品や宝石など金目の物はすべて持ちさられていた。王女が城内を軽く見回って、破かれた魔王の肖像画や砕かれた歴代の魔王の石像や、純金製のドアノブが取り払われ開け放たれたままのドアなど、野盗でも徘徊したような惨状にうんざりして、俺の勇者尋問に付き合うことにした王女様が、無様に捕縛された勇者たちをさげすむように見ている。彼女たちを縛るのは切り取った俺の触手だ。前回は縛ってそのまま放置して、逃げられたが、今度は見張っているから、抜け出せる隙はない。
仮に触手抜けができても、見張っている俺たちが勇者たちを逃がすはずがない。
触手縄に縛られながら、勇者たちはふてくされたような顔をしていた。なにせ、二度の完全敗北で、不機嫌になるなという方が無理があるだろう。
「さて、何から聞かせてもらおうかな」
俺は無数にある触手のそれぞれを勇者たちに向けた。
ぬめぬめの触手で彼女たちの頬や唇を撫でると、彼女たちはヒッと声を上げた。
「また、こうして君たちと遊べるとは思わなかったよ」
「くっ、また貴様に会うとはな。今度会う時にはその醜い触手をすべてむしり取って丸裸にしてにしてけり飛ばしてやろうと思ってたのに」
槍使いの女戦士が、言葉だけは精一杯毒づいていた。
「殺すなら、さっさと殺せ、二度も辱めは・・・」
「おいおい。前回、俺、お前らを放置して殺そうとはしなかっただろ。あまり流血を望んでいないことは理解して欲しな。それとも、放置されている間にトイレが我慢できなくて漏らして、それでカッとなってるのか」
そうやって挑発しつつ、触手で、舐めるように頬をさすったり、その顎を撫でたりした。その肌に触手を這わせると、勇者たちの動揺が伝わってきた。
「おい、分かってるのか。この前は王女が逃げている途中だから、見逃してやったが、今回は時間がたっぷりあるんだぜ」
そう、今は逃げている側ではなく、魔王城を取り返して、反撃している側だ。
「ああ、そうだ、今度は俺じゃなく、お前たちを他の魔物たちにまわさせるというのもありだな。俺の触手は優しいけど、他の奴らの肉棒は、どうかな? 人間に恨みのある魔族もいるだろうし・・・」
勇者に復讐したい魔族を募るのは簡単だろう。彼らに任せるのも一興だ。
「き、聞きたいことは何ですか、知っていることは話します」
俺の言葉に、本気で怯えた賢者が素直に俺に申し出た。
「お、物分かりがよくて助かる。じゃ、まずは、ここにいたはずの人間たちは、どこに逃げた? 魔王を殺した後、人間の大軍が押し寄せたんだろ。ここも占拠されていたと聞いていたが」
魔界で好き勝手している人間たちの噂を、俺はいくつか聞いていた。
「彼らなら、この魔王城に魔族の大軍が向かっていると聞き、我らに足止めを命令し、自分たちはすぐに撤収しました。今頃、人間界に戻る門のそばでしょう」
「えらく、あきらめがいいな。この城を落とすのにお前ら勇者たちは苦労したんだろ。それをあっさり捨てるとは、どういうことだ?」
「別に、魔界征服が目的の戦ではありませんから」
「は? なら大軍派遣の遠征なんて面倒なことを、どうして?」
「戦を起こし、大衆の気をそらす必要があったのです。人間界では、ここ数年天候不順による不作が続き、民衆の不満が統治者に向いていました。で、王や教会などの支配者階級はすべて魔界の魔族のせいだ、魔王が人間界に侵攻する手始めに天候を狂わせていると流布し、魔界に攻め込んだのです」
「なんじゃ、そりゃ・・・」
俺は正直呆れたが、国外に敵を示して、民の不満を国外に向けるという政治的手法は実在する。
「つまり、なにもかも魔族が悪いと叫んでの出兵か」
「何もかも総理が悪い。だから退陣、総辞職だ」と叫ぶ野党は現実世界に実在する。そういう連中が実権を握り、敵は魔界にありと民衆を扇動して攻めてきたわけだ。
「なるほど、魔界支配が目的ではなく、大衆の敵に仕立てられた魔王を成敗できたから、もういいかなと引き上げたわけか」
「はい・・・」
賢者は少し驚いていた。言葉をしゃべるとはいえ、触手の化け物が、こうも簡単に自分の言葉を聞き入れるとは思っていなかったのだ。
「じゃ、これで、この戦は収束していくのか?」
「遠征の軍費が、そろそろ限界だと思うので、おそらく」
あの小さい軍師も不満を臭わせていたが、そういうことかと俺も納得した。
「では、停戦の落としどころを、そろそろ模索している奴も多い?」
「はい。たぶん、遠征に加わっている国すべてが戦争を永続できるほど裕福ではありませんから」
「なるほど。いい情報だ。褒美にくれてやるよ」
俺はたっぷりぬるぬるの触手を賢者の口に押し込んだ。賢者は抵抗せずにそれを受け入れ、ビクンビクンと震えた。
「あっ、ぁぁ、ぁ、ふとい、ひぃぃ・・・」
「さて、次はと」
俺は賢者に触手を突っ込んだまま、尋問者を魔法使いに代えた。
「おい、この世界には魔法使いが少ないようだが、どうしてだ?」
これまで人間たちと戦い、勇者一行以外の魔法使いに会わなかった疑問をぶつけた。
「魔法使いは昔、自分たちの力を過信し、自分たちこそがこの世を統べるべき者だと勘違いして、王らと戦い、逆に魔法使いは危険な存在だと、その家系のほとんどをつぶされて、私のようにわずかな魔法使いの家系が生き残っているだけだからだ」
なるほどと、また一つこの世界の謎が理解できた。断絶した魔法使いの家系が多いから、魔王使いが少ないのか。
「いいことを、聞いた」
もちろん、褒美の触手を与えてやる。
「あ、あぅ、また、だめ、うぶ、ぬぶ、ぬぶ、こ、これはらめぇぇ・・・」
賢者と魔法使いを悶えさせながら槍使いに近付く。
「さて、お前さんには何を聞こうかな」
この世界について、聞きたいことはたくさんあったが、その中から気になっていたことを口にする
「お前ら、インキュバスなどの魔族を奴隷として捕えてるだろ。今、どこに集められている?」
「そんなのは、知らん」
「おいおい、まさか、勇者一行は人間たちが魔族を奴隷にするために捕まえていることを知らないと?」
「魔族の奴隷のことは何となく知ってるが、我らには関係ないことだ」
「なるほど。勇者と奴隷商売で儲けている連中と、自分たちは関係ないと? もともとはお前たちが魔王を討って人間たちが魔界で好き放題できるようにしたせいだという自覚はないと。なるほど、わかった、とりあえず、褒美だ」
俺は槍使いにも俺の触手をねじ込んだ。
「あぅ、ひや、やめろぉ、ひやめろ、うぶ、ぬぶ、じゅぶ」
「さて、最後は勇者のあんただ。人間たちが引き始めてるのは分かった、そこで頼みがあるんだが」
「なんだ?」
「我々は戦いを望まず停戦を望んでいる。で、北で小さな軍師と接触した。彼女と協力してこの戦を止めてほしい」
「小さな軍師というといま吸血鬼城にいる?」
「そうだ。勇者様は、このまま血が流れ続ける方が好みかい?」
「いや・・・」
「なら、決まりだ。あんたらは解放してやるから、その小さい軍師と協力して停戦を。魔界に平和を」
「本気か?」
「本気だ。信じないというなら、信じてくれるまで、俺の触手を楽しんでもらうぜ」
「お、おい、や、やめろ、う、うぶ、ぬぶ、な、なかに、し、下は、だめだ・・・」
「俺の言うことを信じてもらうまで、俺の触手で、楽しんでもらうぜ」
勇者たちの悦楽の声がその部屋に響き、その喘ぎ声に感化された姫様たちも交えた乱交が始まった。
「触手様、今日頑張った私たちにもご褒美を」
そして、奪回した魔王城の一室で勇者たちは俺の触手と絡み合う淫靡な夜を過ごした。
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